新しく女性ジャズ・ボーカルを開拓してみたいと思い、どうせなら美人ボーカリストが良いと思いながら、たまに中古屋を見ていますが同じ人になりがちで4枚目です。Sings Lullabys Of Birdland (1954)、A Jazz Date With Chris Connor(1958)、Chris Connor At the Village Gate(1963)、そして本アルバム Chris 1956 となります。Chris Connor は、1927年生まれのハスキー・ボイスが特徴の1950年代に活躍したジャズシンガーです。こうした白人女性の、低音の効いたハスキー・ボイスは色っぽくは感じるのですが、ゾクッとくる部分はあるし、曲によりますが色っぽさを強調する歌い方でもなく意外とサラッとした心地のものが多いように感じます。
Bethlehem からのリリースのラストで4作目、次のアルバムからは Atlantic からの発売となり、本アルバムは流行りの歌手へと羽ばたいていく初期の過程の作品で1953年から1955年にかけた4つのセッションが収録されています。既に何回か聞き流しながら聴いていますが、派手さや独創性は無いですが堅実に聴かせてくれる歯切れの良い聴き心地の印象です。
最近聞き流している時と、聴きこんだ時の印象が違うことも多いので今回もそんなことが起きるのかどうか、1曲づつ聴きこみながらレビューしていきます。All About Ronnie / Joe Greene ピアノ、ベース、ギターで、歌を徹底的に支えるドラムレスのバックで余分なものを、そぎ落としたシンプルに歌い上げています。Miser's Serenade 1曲目とガラッと変わってサイ・オリバー楽団(Sy Oliver And His Orchestra)の賑やかでスインギーな演奏がワン・コーラス、イントロにしては長いと思っていたらからポップにワン・コーラス歌い上げて直ぐに終了のシンプルさです。1953年ですから1曲の長さに制限があるため、ほぼ3分以内のため元々のテーマが長いためこのような構成はしょうがない。Miser's はケチな男って意味らしい。Everything I Love コールポーターの作品で1941年のミュージカル Let's Face It の中のラブ・ソングで、2曲目に引き続きサイ・オリバー楽団の演奏は明るく楽しい。Chris Connor も開放した歌いっぷりでが清々しい。Indian Summer 1919年に Victor Herbert がピアノ曲として作曲、20年後の1939年に Al Dubin が歌詞をつけてシナトラが同楽団で歌って話題になった楽曲を、今度は Chris Connor がカバー。楽団のワンコーラス目は相変わらず長いですが、そこから超低音から歌い始め中域までの音程で歌い上げています。Indian Summer とは小春日和らしいですが、荘厳な夜明けみたいな重めのアレンジ。 I Hear Music 今度は軽めにポップ、のびやかに歌い上げて短めに語尾をゆする Chris Connor の歌い方が良く合います。曲によってビブラートの長さを Chris Connor は使い分けているようで、これに着目して次の曲 Come Back To Sorrento を聴いていると長めのビブラートになっていて、長めになると少しネバっこくなります。日本語訳は「帰れソレントへ」です。なるほど確か中学校時代の音楽で聴いたカンツォーネのあれです。全く違う曲に聞こえましたが良く聴けば、あのテーマがあのメロディになっています。が懐かしいと思えるのは、このテーマをゆっくり歌うワンコーラス目の一瞬です。 Out Of This World マイナーなフィーリングでイントロから Chris Connor が歌いだし、直ぐに明るい感じに変わりますが、ノビノビとした感じにはなるのですが、ある程度までで抑制した感じで止めているので底抜けに明るいまでは到達しません。そこら辺の表情のつけ方が Chris Connor の持ち味でもあるなと感じました。Lush Life この曲はナットキングコールで有名なヤツかと思いますが Billy Strayhorn がエリントン楽団のオーディション用に入団前年の1938年につくった楽曲とのこと。Joe Cinderella のギターをバックにしっとりと優しく歌い上げていて、シンプルに好きです。From This Moment On 1950年の Cole Porter 作品。この作品で最も凝ったアレンジで、イントロはJ.J. Johnson, Kai Winding の2管のトロンボーンの軽快なユニゾンスリリングな高速パート、ワルツにしてテンポを落としたサビ とコロコロと表情が2分30秒で変わり、Chris Connor はキッチリと忙しく歌い分けていて歌っている感じもとても楽しそうです。A Good Man Is A Seldom Thing ニューヨーク出身の Charles DeForest の作詞作曲の辛口ラブソング。レイジーな演奏をバックに、短いビブラートと長めのビブラートを使い分けて、やるせない表情で歌い上げています。Don't Wait Up For Me バラードが最後に続きます。don't wait up for me, don't start suspecting me, don't start trying teas と、静かに歌いかけてきます。これも良い曲です。In Other Words これは?? Fly Me To The Moon じゃないですか。そうですねサビの出だしが In Other Words のタイトルです。1954年に Bart Howard が書いた原曲はこのタイトルだそうです。From This Moment On と同じように、ワルツにしてスイングにしてバラードにしてと表情を変えるアレンジ手法が、気持ち良い。
最初に聴いた印象は短い長さの曲が散在している地味なアルバムだったんですが、しっかり聞けば地味でシンプルな曲に Chris Connor の味が詰まっている曲も多く、また低音ハスキーボイスのお色気のようなイメージも、丁寧に曲に少しづつ表情をつける上手い歌い手であると思いました🎶
【1,5,6】
vocals : Chris Connor
piano : Ellis Larkins
guitar : Everett Barksdale
bass : Beverly Peer
recorded in New York on August 9, 11, 1954.
【2,3,4】
accompanied by : Sy Oliver And His Orchestra
recorded in New York on December 17, 18, 1953.
【7,8】
vocals : Chris Connor
bass : Vinnie Burke
guitar : Joe Cinderella
drums : Art Mardigan
accordion : Don Burns
Flute, Clarinet – Ronnie Ordich
recorded in New York on August 21, 1954.
【9,10,11,12】
piano, arranged by : Ralph Sharon
bass : Milt Hinton
guitar : Joe Puma
drums : Osie Johnson
flute, tenor sax : Herbie Mann
trombone : J.J. Johnson, Kai Winding
recorded in New York on April 1955.
1. All About Ronnie / Joe Greene
2. Miser's Serenade / Claude Reese, Fred Patrick, Jack Val, Marvin Fisher
3. Everything I Love / Cole Porter
4. Indian Summer / Al Dubin, Victor Herbert
5. I Hear Music / Burton Lane, Frank Loesser
6. Come Back To Sorrento / Claude Aveling, Ernesto de Curtis, Giambattista De Curtis, arranged by Ellis Larkins
7. Out Of This World / Harold Arlen & Johnny Mercer
8. Lush Life / Billy Strayhorn
9. From This Moment On / Cole Porter
10. A Good Man Is A Seldom Thing / Charles DeForest
11. Don't Wait Up For Me / Charles DeForest
12. In Other Words / Bart Howard
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