1963年のライブ録音で、邦題は「ヴィレッジ・ゲイトのクリス・コナー」私のCDでは Chris Connor At the Village Gate ですが、オリジナルは At the Village Gate : Early Show / Late Show と名前が付けられているようで、ニューヨークの老舗ジャズ・クラブのVillage Gate の2ステージを、収めたライヴ盤となっています。バンドはギターに Mundell Lowe(マンデル・ロー)が参加したカルテット編成で、前半はスイング、後半はブルージーな曲となっています。クリスの歌はフェイクや振り幅の大きいスイングはシャウトはせず抑制美のあるクールなスタイルで、ハスキーな歌声にローボイスで魅せる色気が特徴です。この会場では臨場感が伝わる観客の拍手などもバランスよく録音されていて聴いていて気持ちの良い録音です。
Chris Connor(クリス・コナー)は1927年のカンサス生まれ。元々はクラリネットを習っていたのですが、1945年にジェファーソンシティにある大学の卒業式で歌った時、自らの歌に対する聴衆の反応が良かったことをきっかけに、本格的に歌手の道を目指し、1948年にニューヨークへ渡り、速記者をしながら楽団のコーラス、歌手で生計をたて、1953年にベツレヘム・レコードと契約し、1954年の Sings Lullabys of Birdland がヒット。2009年8月29日、癌によりニュージャージー州にて死去しています。私はこのアルバムの他 Sings Lullabys of Birdland しか持っていないので、これを聴いてもう少し音源を入手していきたいと思いました。
それでは素晴らしい印象の Chris Connor At the Village Gate を再度聴きながらレビューです。演奏曲は全曲スタンダード。ライブではありますが全曲2分から5分程度にまとめられています。Lot Of Livin' To Do スピーディなスイングで1961年ミュージカル「Bye Bye Birdie」の挿入曲で、ライブがこの曲順だったとすれば最初に観客の気分を上げてくる短めのこの短めのナンバーで、つかみはバッチリです。Any Place I Hang My Hat Is Home ミュージカルからの楽曲で、1946年の「St. Louis Woman」 のオープニングです。Judy Garland Barbra Streisand Rosemary Clooney など多くの女性アーチストにカバーされている名曲です。私自身も全部は覚えていなかったけど、出だしの部分は耳に覚えがあります。小さい頃に聴いて覚えている曲は嬉しくなります。 All Or Nothing At All この曲は映画やミュージカルの挿入曲ではなく、1939年の当時ハリー・ジェイムス楽団の専属シンガーとしてデビューしたばかりだったフランク・シナトラが歌ったがヒットしなかった楽曲で、1943年にMCAに移籍後にヒットした楽曲となります。クリスの録音はこれが初めてでこれ以降に得意レパートリーになった楽曲とのこと。ラテンなパート、スイングが交互に歌われる3分の間に表情の変化が楽しめる。Something's Coming 1961年 Leonard Bernstein による West Side Story の楽曲で、これも目まぐるしい場面転換がある曲で緩急が極端で面白い。West Side Story は見たことがありますが、この曲は覚えていませんでしたのであしからず。You Came A Long Way From St. Louis オールド・ロックンロールですね。へえ。 Old Devil Moon この曲で Early Show は終わりです。これもミュージカル曲で1947年「 Finian's Rainbow」のポピュラーソング。この印象的なメロディーは聴いたことがあります。ラテンのリズム部分で言葉でリズムを詰め込むところが良いです。さて後半戦の Late Show です。I Concentrate On You ブルージーで夜の部だからかワザと色っぽく歌っているのでしょうか。そして、さらに色っぽく Black Coffee ペギーリーで有名な曲ですが、曲の途中で観客に何か色っぽいアピールでもしているのでしょうか。客の笑い声があり間奏、そして1分過ぎにkeep going と言って笑っています。何が起きているのか気になります。 Goodbye 1935年に書かれた Benny Goodman orchestra のクロージング・ソングであるとのことを見ましたが、しっとりしすぎていますね。曲名から曲順として早すぎるような気がしましたが、途中のバラードとしては良い選曲です。低音からじっくり攻めてきてサビで少しだけ声量を増して、ひたすらしっとり。客はうっとりでしょう。Only The Lonely 静かなブルース・イントロから、クリスの歌いだしがインパクト充分。低音でブルージーでハスキーで、途中マイクに近づきすぎての吐息が聞こえるのが、また色っぽい。最後は Ten Cents A Dance 語り調の歌で物語を歌い語り大団円となります。
私クセのあるボーカルが好きなタイプですが、ストレートで、クール。時に色っぽい歌声。この魅力的なボーカルも良いではないかと再認識です🎶
vocals : Chris Connor
piano : Ronnie Ball
guitar : Mundell Lowe
bass : Richard Davis
drums : Ed Shaugnessy
producer : Michael Cuscuna
recorded live in 1963 at the Village Gate, New York City.
【Early Show】
1. Lot Of Livin' To Do (C. Strouse, L. Adams)
2. Any Place I Hang My Hat Is Home (H. Arlen, J. Mercer)
3. All Or Nothing At All (A. Altman, J. Lawrence)
4. Something's Coming (L. Bernstein, S. Sondheim)
5. You Came A Long Way From St. Louis (B. Russell, J. B. Brooks)
6. Old Devil Moon (B. Lane, E.Y. Harburg)
【Late Show】
7. I Concentrate On You (C. Porter)
8. Black Coffee (P. F. Webster, S. Burke)
9. Goodbye (G. Jenkins)
10. Only The Lonely (J. Van Heusen, S. Kahn)
11. Ten Cents A Dance (L. Hart, R. Rodgers)