2023年7月22日土曜日

Doc Powell / Laid Back


 スムース・ジャズ系に凝っていた時期に購入した一枚です。正直かなり完成度は高く、曲のセンスの良さもピカイチです。Laid Back、Sunday Mornin'  などは、一時期TV番組のバックなどでも使われるていることが多かったので、流れるとオッっとなって再度聴き直して、その良さを確認なんてこともよくありました。
 何故TV番組などで、よく使われていたのか、楽曲の良さは当然ながら、インストなので曲の途中でも切り取りやすいし延々とかけていても邪魔にならない、ギターの音色が主張しすぎず適度にメロディーが心に残る。フレーズが小節ごとにテーマごとにきちっと考えられて配置されているので切り取って使うフレーズが随所にある。バックのサウンドに透明感がありながらも、しっかりとしたベース・ラインも感じられ映像の邪魔をしない。なんてことが考えられますが要するに映像のバックに使いやすい、前にセンスが良いきっちりとした楽曲が多いと言うことですね。


 ソロ・アルバムのデビューは1987年で最後のアルバムは1997年となっていますが、未だ健在のミュージシャンです。経歴としては Wilson Pickett、Luther Vandross などの音楽ディレクター、ミュージシャンとしては、Stevie Wonder, Bob James, Grover Washington, Jr., Aretha Franklin, Quincy Jones and Teddy Pendergrass とともに仕事をされている売れっ子ミュージシャンですが、日本では知名度はさほど無い渋めの方です。docpowell.com
でも、現在の精力的な活動が確認できます。(マンツーマン・レッスンをバーチャルでもやってるみたいですがリンクは無しです。そりゃ素人は無理ですよね)音はベンソン系ではありますが、同系列のノーマン・ブラウンより、しっかりとして、しまった感じがあります。
 さて、レビューですが4曲目 From The Heart は Marcus Miller の作曲です。実はこれを書いていてわかったんですが、カバーも3曲入っています。8曲目 Tropical Love は Narada Michael Walden、Jeff Cohen、Lisa Walden の楽曲で、Angela Bofill の3作目 Something About You のナンバー、5曲目の Lover for Life は Sun Dees によるナンバーで Whitney Houston の I'm Your Baby Tonight のナンバーです。
 Laid Back は、タイトル曲で曲目は覚えていないけど聞いたことがある人も多いはず。R&B を強く感じるバックにジャズなギターでよくできています。Let's Dance はラテンンなナンバーで、きっちりとしたサックスが盛り上がります。Sunrise は、ギターのテーマ・メロディが単純なのにきっちりと印象に残るナンバーで、シングル・ノートで聴かせながら、オクターブを随所に入れ込んでフレーズの最後のゴニョゴミョはベンソンみたいですね。From The Heart どこかで聞いたことがあります。サンボーンでもありそうな感じのスローな曲です。胸がキュンとくるフレーズも満載。と思ったらマーカスですんもんね。Lover for Life は、ガット・ギターの音色が美しく、女性コーラス入り。ホイットニーの曲にしては爽やかかもしれない。Sunday Mornin' は、テーマのギターのスライド部分が朝感ですね。これもセンスの塊りです。You Won't Be Alone は、ボーカルものです。アルバムは1996年発売だから、ここら辺の時代にありがちなフュージョンアルバムにボーカル物を忍ばせるヤツですね。Tropical Love は、カバーですね。歌物のカバーっぽくなく全くもってフュージョンで成立しています。Charlene は、女性の名前ですね。恋人か奥さんのための曲でしょうか。優しく美しく可愛らしい曲です。Pacific Coast Drive も良いですね。テーマが美しいし印象的なのがこの人の素晴らしいところです。締めは Sunday Mornin' のコーラス無しバージョンです。こっちの方がスキかなあ。
 いや、いつ聞き返しても良い曲ばかりの素晴らしいアルバムです。他の音源も買いに行こう🎵

electric guitar, drums, keyboards : Doc Powell (tracks: 1 to 11)
electric piano : Jason White (4, 9), Wayne Linsey (8), patrice
Keyboards, electric piano : Patrice Rushen (tracks: 5, 10)
piano : Bobby Lyle (8)
synthesizer : Scott A. Cannady
bass : Stanley Clark, Marcus Miller (4), Freddie Flewelen (8)
bass, synthesizer : Reggie Hamilton (1, 3, 5)
drums : Hank Rivers (4), Tony Moore (9)
percussion : Arno Lucas (1, 4), Munyungo Jackson (8, 10), Sheila E. (2)
soprano sax : Boney James (1)
tenor sax : Gerald Albright (2), Kirk Whalum (6, 10)
flute : Najee (10)
harp : April Aoki (8)

vocals : Arnold McCuller (7), Lori Perry (6)
backing vocals : Bridgette Bryant (5), Kim Devereaux-Parchman (5), Lynne Fiddmont (5, 7)

produced by  Doc Powell 

1. Laid Back
2. Let's Dance 
3. Sunrise   
4. From The Heart       
5. Lover for Life 
6. Sunday Mornin' 
7. You Won't Be Alone 
8. Tropical Love     
9. ( My Dear ) Charlene       
10. Pacific Coast Drive 
11. Sunday Mornin'( Instrumental )





  

2023年7月21日金曜日

Bill Evans / A Simple Matter Of Conviction

 

 私の行きつけの店「おでんバー」は、音楽好き、ジャズ好きが多いのですがフリージャズ、ノイズが多め、古典ジャズも愛聴されながらクラシック、浪曲なんかもかかります。その雑多な趣味嗜好の中、何故かアンチ Bill Evans 的な風潮があり、極度のアンチ様がいる時には、Bill Evans の持ち込みを避けています。基本購入した音源の最初は家より音の良いこの店で聴くことにしているので、Bill Evans が家には多めに残っています。
 と言うことで人目を避けるようにして持ち込んだ、このCDをマスターに丁寧に断りを入れて聴かさせてもらいました。マスターも一応アンチ Bill Evans ではありますが、このアルバムは、これは嫌いではないと評価いただいたのでホッとしたアルバムです。
 

 録音は1966年、Verve からの発売で Van Gelder Studio での録音、プロデューサーは Creed Taylor です。このアルバムからベースはChuck Israels から Eddie Gomez に交代し1975年まで活動を共にすることとなります。この時 Eddie Gomez は21歳でした。ドラムは Shelly Manne でちょっと控えめ、Eddie Gomez のインパクトは大で、ありながら丁度良い感じがします。エバンスもコード進行やハーモニナイズが変化して躍動感があり、エバンスのはかなさが誇張されるものではないところが調子の良さを感じ、そこら辺が アンチ Bill Evans にも受け入れられた点でしょうか。
 ということでレビューです。A Simple Matter Of Conviction はイントロがブロック・コードで始まり、ゴメスのソロも小気味よい良くドラムとのバースも緊張感があって良いですが、3分20秒は少しもったいないしフェイドアウトはどうなんだろう。Stella By Starlight
は、エバンスが最初から快調に飛ばしながらゴメスが即座に絡んできます。そして絶好調のベースソロの後、流れるようなピアノとの絡み、細かく繊細なドラム・ワークでかなりの出来ではないでしょうか。Unless It's You はエバンスのオリジナル。ステラとは打って変わったエバンスのシングル・トーン中心のソロの対比も良い。Laura 少し古典的な香りのする曲です。バラードではなくミディアム・テンポのアレンジにしてスリリングにしているのが、このアルバムの特徴でもある気がします。My Melancholy Baby は、1912年 Ernie Burnett, George Norton, W. E. Watson による作品。オールドなコード進行とメロでありながら、エバンス流ジャズに仕上げていて、ここでもゴメスが大活躍で芸が細かくてなかなかのもの。I'm Getting Sentimental Over You は Bassman 作曲, Washington 作詞 の曲です。良い曲に良い演奏でこれも評価高くつけたいところ。Star Eyes 1943年の映画「I Dood  It」の主題歌。チャーリーパーカーにも演奏された名スタンダード。ゴメスのエバンスとの絡み落ち着いた演奏はお洒落で渋い。Only Child は、エバンスのオリジナルでこのアルバムで一番しっとりした曲です。エバンスっぽいと言えば、この曲がイメージですね。These Things Called Changes で最後です。明と暗が見え隠れするエバンスオリジナル。締めに選ばれただけあって、ゴメスも素晴らしいソロ。マンのドラミングも素晴らしいの一点です。
 CDでの焼き直しで替えられたんでしょうか?アルバムの裏面に表記と曲順が違いました。と、そんなところも気になりましたが、全体的に曲が短くてコンパクトに作られている印象がありますが、エバンスの陽な部分がとても良い感じで出ているアルバムで、ゴメス・ファンにもたまらない演奏が詰まっているアルバムではないでしょうか🎵

bass : Eddie Gomez
drums : Shelly Manne
piano : Bill Evans

producer : Creed Taylor

recorded 1966.10.04

1. A Simple Matter Of Conviction
2. Stella By Starlight
3. Orbit (Unless It's You)
4. Laura
5. My Melancholy Baby
6. I'm Getting Sentimental Over You
7. Star Eyes
8. Only Child
9. These Things Called Changes





  

2023年7月17日月曜日

Madeleine Peyroux / Dreamland

 

 新しく女性シンガーを見つけたいと思って、DiscUnion の棚を見ていて、名前の読み方もわからない、このアルバムを手にしました。ジャズの棚にあったので、そちら系かと思って聞いたらブルース、カントリー、フォーク、ジャズなど、ノージャンルのシンガーで Norah Jones を、もっとブルース寄りにしたような感じで、購入してから数か月は聴かずに貯蔵されていた一枚で、初聴きは、いつもの「おでんバー」でした。今日は何があるの?知ってますか、この人?などと会話しながらかけ始めるとおや?ジャズではないな、と直ぐにわかり反応が少ない。確かにジャズボーカルと思ったので私も拍子抜けで最初の試聴は終了しました。
 Madeleine Peyroux(マデリン・ペルー)は、アメリカ出身ですが名前はフランス系。父親が、かつてフラン領だったニューオリンズ出身とのこと。南カリフォルニアやNYのブルックリンなどで育ったのだが、両親の離婚で母親と一緒にパリに移り、13歳から22歳までの期間はパリで過ごし、15歳の時からパリの路上でバスキングを始めロスロ・ワンダリング・ブルース&ジャズ・バンドに加わって、欧州各地をツアーしたという経歴の持ち主。


 そのデビューアルバムがこのアルバムでプロデューサーは、トム・ウェイツやルー・リードなどを手掛けてきた Tow Waitsバンドの Greg Cohen, Yves Beauvais の二人でした。デビューではありますが、渋い声で貫録が十分なアルバムです。
 Walkin' After Midnight は、Patsy Cline の曲で1956年の楽曲で、いかにも古臭い曲をだるそうに歌っています。グッと惹きつけるわけではありませんがベテラン感漂う曲は聴き直せば味がある。Hey Sweet Man は、Peyroux 作曲のゴリゴリのブルースでドブロギターは Marc Ribot。堂に入った貫録の演奏と歌ですが、声を張り上げて主張するタイプではありません。I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter は、Fred E. Ahlert作曲、Joe Young作詞の1935年のポピュラー・ソング。なるほど、古き良きは良いものとして、そのままの、この路線ですね。そう思えば悪くない。(Getting Some) Fun Out Of Life は、ビリー・ホリデイですね。メンバーも変えて、きっちりジャズアレンジで声を震わせています。La Vie En Rose は、1946年の Édith Piaf の代表曲ですね。邦題はバラ色の人生でフランス語とアコーディオンで情緒たっぷりで、ラジオから流れているみたいな感じです。おっと、これも歌いかた変えてますね。つぶやき系かと意外と器用な人でもあります。Always A Use も聴きおぼえあります。でも作詞作曲は Madeleine Peyroux とありスタンダードは無いようです。流行ったかなあ。耳覚えあり。A Prayer は Euston Jones とあります。調べてもわからないし聞き覚えは無いですね。アメリカの古い歌っぽい感じがします。Muddy Water は、てっきり、あのマディ・ウォーターズを讃えるドロドロのブルースかと思ったら違いました。1926年のアメリカン・ポップスという感じの Harry Richman, Jo Trent, Peter DeRose による楽曲で、レトロ・ジャズっぽいアレンジです。ゆったりとした4ツ刻みのギターが心地よい。Was I? も、古き良きアメリカンな感じでバンジョーなども入った軽めのポップスで、これも良いですね。Dreamland は、Madeleine Peyroux の曲でポップス調です。悪くはないけど、これは売れそうにない感じですかね。ラスト2曲目は、Reckless Blues で Bessie Smith の曲です。これはピアノ主体のブルースで古き良きアメリカの情緒たっぷりスロー・ブルースのピアノに小説の最後だけアップテンポにするお茶目さも良い。このパターンがこの人の持ち味は活かされます。ラストは Lovesick Blues は、ギター・ブルースです。きっと、ずーっと歌いこんできた曲なんでしょう。他の曲よりボーカルが、歌いなれた主張の仕方をしています。
 最初は控えめな感じがして、印象があまりに薄かったんですが聴き直してみたらかなり味が出てきたアルバムです。おそらく色んな引き出しがあるかたと思われますので、以降のアルバムも聴いてみたいとは思います。現代のビリー・ホリデイなどと言われているとの評を目にしますが、このアルバムに限ってはそんなことはありません🎵

vocals : Madeleine Peyroux
piano : Cyrus Chestnut (4, 8, 11)
electric organ (hammond B3) : Charlie Giordano (1)
mellotron : Charlie Giordano (10)
accordion : Charlie Giordano (5, 9)
guitar : Madeleine Peyroux (4, 8, 9, 12)
acoustic guitar : Marc Ribot (5)
dobro : Marc Ribot (2, 6)
electric guitar : Larry Saltzman (10), Marc Ribot (1, 3, 10), Vernon Reid (8)
banjo : Marc Ribot (9)
bass : Greg Cohen (1, 9, 10), Steve Kirby (4, 8)
bass (bowed) : Greg Cohen (7)
marimba (bass marimba) : Greg Cohen (3)
drums : Kenny Wollesen (1, 3, 9, 10), Leon Parker (4)
percussion : Kenny Wollesen (1)
cymbal : Leon Parker (8)
cymbal (parade cymbals), bass drum (marching bass drum) : Kenny Wollesen (7)
tenor sax : James Carter (3) (1, 3)
trumpet : Marcus Printup (2, 7)
bass clarinet : James Carter (3) (8)
violin : Regina Carter (5, 9)

producer : Greg Cohen, Yves Beauvais

1. Walkin' After Midnight
2. Hey Sweet Man
3. I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter
4. (Getting Some) Fun Out Of Life
5. La Vie En Rose
6. Always A Use
7. A Prayer
8. Muddy Water
9. Was I?
10. Dreamland
11. Reckless Blues
12. Lovesick Blues





  

2023年7月16日日曜日

Journey / Trial By Fire



 Journey と言えば、Steve Perry のボーカルがイメージです。1973年がに結成され初アルバム Journey (宇宙への旅立ち)を発売でこの時のボーカルは Gregg Rolie でした。1977年に、Steve Perry が加入し、これまでのプログレ路線からボーカルを中心としたロックに転転換し 1978年に4作目の Infinity が発売されプラチナ・ディスクを獲得します。このアルバムのジャケットから、ジャーニーを象徴するアートワークとしてスカラベがデザインされるようになりましたが、この Steve Perry が最後となるアルバムジャケットには使われていませんので路線を変更している内情も見て取れます。


 数々のヒット作を生み出した Journey ですが、その後メンバーは各自のソロ活動を主体としたり、メンバーも入れ替わり、1986年の Raised On Radio が黄金期としては最後のアルバムになり、それから10年後の 1996年 に Steve Perry, Neal Schon、 Ross Valory, Steve Smith , Jonathan Cain の Escape、Frontiers のメンバーでの録音となります。
 Message of Love はいかにも Journey で、Separate Ways で聴いたことがある歌いまわし、ギターなどが盛り込まれています。One More は、荘厳なスケールのある楽曲です。When You Love a Woman は、96年グラミー賞ノミネートされた楽曲で、これは聞き覚えがありました。If He Should Break Your Heart はコーラスが重厚な楽曲でニールショーンのお決まりのパターン。Forever in Blue は、少し今までと雰囲気変えてきたのかと思ったらそうでも無い。聴いたことがあるサビの歌メロですね。Castles Burning の方が雰囲気変えてます。このぐらい振り切った方が好みです。Don't Be Down on Me Baby はバラードで、Steve Perry の得意なパターンですね。Still She Cries もバラードで、これも聴きおぼえありますね。メロディーラインがしっかりしていて耳に残ります。Colors of the Spirit は民族楽曲のようなオープニングで、プログレっぽく凝ったバッキングですがやり過ぎ感があるかなあ。When I Think of You もバラードです。多いですねえ。やはりスティーブは、歌って聴かせるボーカリストだなと。Easy to Fall 透明感あるメロディーにコーラスワークが良いですね。キラキラしてます。Can't Tame the Lion アップテンポで、ギター全開です。このアルバムは、ギターの出番少なめですので貴重。ライオンは飼いならせないってタイトルですが、ライオンは誰なのか?脱退する Steve Perry ですかね。やっぱり。It's Just the Rain 雨空に向かって歌い上げるせつなさのようなスローナンバー。そして Trial by Fire はタイトル曲ですが、Steve Perry のソロ・アルバムなのかと思うボーカルもの。最後の Baby I'm a Leavin' You は、ライナーノーツに掲載されていない Hidden Track となっているレゲエ・ナンバーで、これは珍しい。
 Journey は私が高校生ぐらいの時のライブ・アルバムが凄く好きでした。ギターのニール・ショーンの流れるようなフレーズと、フレーズの最後のゴニョ・ゴニョは特徴ありすぎででこれが良いんですよね。ということで私の知っている Journey のアルバムでは無かったけど、やっぱり Journey でした🎵

lead vocals : Steve Perry
guitar : Neal Schon
keyboards : Jonathan Cain
bass guitar : Ross Valory
drums : Steve Smith

producer : Kevin Shirley

1. Message Of Love
2. One More
3. When You Love A Woman
4. If He Should Break Your Heart
5. Forever In Blue
6. Castles Burning
7. Don't Be Down On Me Baby
8. Still She Cries
9. Colors Of The Spirit
10. When I Think Of You
11. Easy To Fall
12. Can't Tame The Lion
13. It's Just The Rain
14. Trial By Fire
15. Baby I'm a Leavin' You (Hidden Track)






  

2023年7月14日金曜日

Carey Bell / Deep Down

  
 1936年にミシシッピ州メイコン生まれで、サックス奏者になりたかったけど、高価なサックスはあきらめてブルース・ハープを始めた。この人のブルースハープは、リトル・ウォルターやビッグ・ウォルター・ホートン、サニー・ボーイ・ウィリアムスン二世などから直伝だそうだ。アグレッシブなプレイのシカゴのファンキー・ブルースは気持ちよすぎます。ちなみに息子は Lurrie Bell というブルース・ギタリストで本アルバムにも参加しています。もう一人のギタリストは Carl Weathersby で、こちらはブルースのみならずR&Bやファンク系ファンクなどでも活躍するギタリストです。私の手持ちではブルースアルバムですが、Billy Branch / Satisfy Me なんかに参加されています。


 デビュー作 Carey Bell's Blues Harp(1969)をリリースしてから四半世紀26年後の1995年で、録音されたこのアルバムは、キャリーならではハープのスタイルが開花した快作で、より幅広いファンを獲得するきっかけをつくるヒット作となりました。
 1曲目  I Got To Go は、Little Walter のカバーで、イントロも原曲と同じ出だしで、Muddy の Got My Mojo Workin' も同じですね。アンプリファイドされた音のブルース・ハープ、Lucky Peterson のファンキー・ピアノ、そして力入れすぎて音程がシャープする寸前のキンキンのギターは、Carl Weathersby で、王道過ぎる盛り上がりです。Let Me Stir In Your Pot は、Carl Weathersby のペタッとしたイントロから始まります。ミドル・テンポのブルース曲です。息子 Lurrie Bell は、リズムギターに徹していて地味に頑張っています。When I Get Drunk は、ブルースハープ控えめの昔からよくあるワンリフのブルースで地味な曲ですが時折しごくようなブンブンというギターの音が良いですね。Low Down Dirty Shame で、ファンキーなジャンプ・ブルースに戻ります。James Cotton とかでも、よくあるリズム・パターンですが最高ですね。途中のブレイクした Carey Bell のハープソロも最高の盛り上がりです。 Carl Weathersby はアルバート・キング風のギターソロで少し味付けを変えてきています。完成されているなあ。Borrow Your Love のイントロのギターは、聴いたことがあるぞと思いなおすと、Stevie Ray Vaughan だと思います。このニュアンスを激しめにするとああなります。と思って聞いてると歌い方も Ray Vaughan のような気がします。Lonesome Stranger は、また古典的なワンリフのブルース。メンバーの誰も無理しすぎたり外しかけたりしないのは、エンターテイナー集団って感じです。After You は、Sonny Boy Williamson の曲ですね。これは王道のシャッフルでペタペタでキンキンのギターソロが合います。そして Muddy の I Got A Rich Man's Woman です。この歌い方ですよね、これ。ブルース好きにはたまらない訳で流行る訳です。Jawbreaker は、跳ねるようなブルース・ハープから始まります。王道のようでありイントロにインパクトありです。ボーカル無しですか、これもまたカッコ良いですね。微妙な少しづつのテンポアップもじれったくて良い味を出してます。Must I Holler は、Muddy のゆったりとした曲です。そして Tired Of Giving You My Love で、現代風のファンク・ブルースに戻り、Easy でしんみりと締めるわけです。
 確かに売れる訳ですね。キャッチーな演奏と昔からのブルースファンも楽しめる内容でメンバーが良かったですね。これは!楽しいです🎵

vocal, harmnica: Carey Bell
piano : Lucky Peterson
guitar : Carl Weathersby, Lurrie Bell
bass : Johnny Gayden
drums : Ray "Killer" Allison

producer : Bruce Iglauer, Carey Bell

recorded at Streeterville Studios

1. I Got To Go
2. Let Me Stir In Your Pot
3. When I Get Drunk
4. Low Down Dirty Shame
5. Borrow Your Love
6. Lonesome Stranger
7. After You
8. I Got A Rich Man's Woman
9. Jawbreaker
10. Must I Holler
11. Tired Of Giving You My Love
12. Easy





  

2023年7月9日日曜日

Keith Jarrett Trio / Stella By Starlight

 

 1977年のGary Peacock のアルバム Tales Of Another が初顔合わせとなり、Gary Peacock 、Jack DeJohnette、Keith Jarrett の組み合わせによるトリオは1983年になって再び Standards Vol 1、Vol 2、Changes の3枚のアルバムを発表し、このトリオは80年代以降のジャレットを代表する」活動となりました。これは、このトリオでの初のライブ盤で、有名なスタンダードナンバーを独特の解釈で聴かせる、美しく宇宙的な広がりの中に、絶好調なキースの唸り声がクセになる作品です。


 アルバムは、タイトル曲 Victor Young 作曲のStella By Stalight から始まります。冒頭からキースのソロはアドリブから始まり、ゲイリーとジャックが加わると更に絶好調になり熱気が伝わってきます。The Wrong Blues は、クラシックとともにポピュラーソングの作曲家でもある Alec Wilder の楽曲ですが、スタンダートと言うには少しマイナーな曲のようです。でも曲名のようなアクの強そうな感じではなくスマートな曲で軽くスイングするような感じが素晴らしい。Falling In Love With Me は、イントロで原曲を感じるのでホッとしましたが、アップテンポのスイングアレンジでスリルある演奏になっています。ゲーリーのベースソロ、キースのけしかけるようなプレイが良い感じです。Too Young To Go Steady は、James Francis "Jimmy" McHugh の作曲で1955年のミュージカル「ストリップ・フォー・アクション」のナンバーで、1956年にナット・キング・コールの歌が、1960年にはコニー・スティーヴンスのレコードがヒットしている。原曲の」メロディを提示し優しくピアノで歌うキースがキラキラしています。The Way You Look Tonight 邦題は「今宵の君は」だそうで原曲はバラードらしい。ここでは、やがり普通にはやらずに高速にスピード感と迫力を持った演奏になっています。最後は The Old Country でコルネット奏者 Nat Adderley の楽曲で、この人は Cannonball Adderley の実弟だそうだ。ブルースを感じますがメロディを美しく泥っぽくなく演奏するキースのプレイがやはり素晴らしい
 いつもの「おでんバー」でかけたら今更これですか?超スタンダードだよねって、言われながら、来週また聴きたいから置いといてって言われました。やはり名アルバムなんですよね、これは🎵

piano : Keith Jarrett
bass : Gary Peacock
drums : Jack DeJohnette 

producer : Manfred Eicher

recorded July 2, 1985 at the Palais des Congrès Studios de la Grande Armée.

1. Stella By Starlight
2. The Wrong Blues 
3. Falling In Love With Me 
4. Too Young To Go Steady 
5. The Way You Look Tonight 
6. The Old Country






  

2023年7月2日日曜日

Kenny Burrell / Midnight Blue


 Kenny Burrell を聴く人には、マスト・アイテムの1963年発のソウルフルでラテン・テイストなブルース・アルバム。バレルは1956年にブルーノート・レコードからデビューしたなのでデビューから7年にあたります。メンバーはテナー・サックスの Stanley Turrentine スベースにMajorHolley. jr ドラマーに Bill English コンガにRey Barretto と、ピアノレスにして、コンガを入れることで魅力的な深夜のブルースの演出です。
  プロデューサーの Alfred Lion は、レコーディングをする際は必ずオリジナル・ブルース曲を1曲は用意してくるようにミュージシャンにリクエストをしていたり、ギターという楽器にも愛着があったようで、ブルーノートレーベルの初期は、Tal Farlow、Sal Salvador、Lou Mecca などの白人ジャズ・ギタリストが多く黒いフィーリングを持ったプレーヤーとしてはバレルが代表格です。Alfred Lion は、数多くの作品の中でも一番のお気に入りで、ライオンが亡くなった後、亡骸と共にこのアルバムも埋葬されたとのこと。その理由は「全ての音符がスウィングしているからだよ!」とライオンが言っていたとのエピソードもあります。

 私もバレルを聴き始めた頃からのお世話になったのアルバム。久しぶりに聴いてみると、やっぱり王道で安心感のある存在感のあるアルバムですね。さてレビューしましょう。
  Chitlins Con Carne は、リズム&ブルース等のジャズ畑ではないブルース・ミュージシャンにも好まれる名ジャズ・ブルース曲。Stevie Ray Vaughan の The Sky Is Crying なんかにも収録されてます。Mule は静かにダークに進行するブルースで暗いジャズ喫茶で煮詰まった珈琲が似合いそうな曲になっています。ずっしりとしたベース、中盤からの Stanley Turrentine のサックスも粋です。 ちなみに Mule とは「ラバ」の意味ですが、それ以外にも「運び屋」の意味もあるようで、なるほど。禁酒法時代の1920年~1933年までに生まれたカントリー・ブルースを表現したような曲名だと感じます。Soul Lament はいかにもバレルらしい名演の独奏です。テーマにコードを挟みこんで不安定にも感じるコードの響きも魅力。タイトル曲 Midnight Blue は、ドラムとコンガがリズミカルにスイングします。いかにもジャズ的で、ピアノレスなのでシングルノートとコードを一人「コール&レスポンス」している優等生的な印象の曲です。Wavy Gravy は、ウォーキング・ベースのイントロから始まる渋いブルースで、アーシーなサックスソロも聴き所。Gee Baby, Ain’t I Good To You はバレルの十八番でもあり様々なミュージシャンに愛される名ブルース・スタンダード、曲が良いだけに名演も多いですよね。大好きな曲です。Saturday Night Blues はバレルの作曲で、明るめのブルースです。Kenny's Sound、K Twist はボーナストラックで軽く流すブルースセッションのようでライトでカッコ良いですね。
 正統派ブルースが気持ち良いアルバムです🎵

guitar : Keny Burrel
tenor sax : Stanley Turrentine
bass : MajorHolley. jr
drums : Bill English
congas  : Rey Barretto

producer : Alfred Lion
recorded by : Rudy Van Gelder

1. Chittlins Con Carne
2. Mule
3. Soul Lament
4. Midnight Blue
5. Wavy Gravy
6. Gee Baby Ain't I Good To You
7. Saturday Night Blues
8. Kenny's Sound
9. K Twist
▶ Chittlins Con Carne




  

2023年6月17日土曜日

Billy Sheehan / Niacin


 Niacin(ナイアシン)は、Mr Big に在籍のロックベース界の重鎮 Billy Sheehan のプロジェクトで、メンバーはフュージョン、ジャズ、ファンクを中心とした数々のドラム名演を残す Dennis Chambers 、そして私にとっては若干正体不明のキーボード奏者 John Novello で構成されるインスト・バンド。(John Novello は、このNiacinに参加で名が売れたらしいのでそれほど失礼でもない事実かと思われます)フュージョンというよりはほぼインスト・ロックなのでこれはプログレですね。


 これはキーボード奏者の方からの頂きものなのですが、いただいた時は実は「良さがわからず」あまり聴かなかったアルバムでした。しかしながら時間が経てば、趣味趣向は変化するもので違和感のようなものは無くなり「好みである」とは言えないけど「良さがわからない」では無く聴けるようになってきました。
 このアルバムは、トリオ演奏で、キーボード奏者 John Novello がメロディーのメインになっているため、全編にわたりロック・オルガンが延々と続けられています。ここら辺が以前はしんどいかったのが、ジャズ・オルガンも最近は結構聴くようになったせいか今聴いても全くしんどいことはありません。ただロックとして楽しめるかと言えば、派手なこれ見よがしのテクニックオンパレードが良いとは思わないですが、期待としては派手なベースが聞ける方が、この手のアルバムでは楽しいことは間違いと思います。
 アルバムとしての感想はこのようなことになりますが、YouTube動画を検索していたら Blue Note Tokyo でのライブ画像があり、これを見たらぶっ飛びました。スタジオ版とは明らかに違うグルーブ感とテンションです。素晴らしい。これみよがしなテクニックでは Pat Torpey (MR.BIG) jamming with Billy Sheehan の動画もまたこれ素晴らしい🎵

bass : Billy Sheehan
keyboads, organ : John Novello
drums : Dennis Chambers

producer : Billy Sheehan

1. No Man's Land
2. Do a Little Dirty Work
3. I Miss You (Like I Miss the Sun)
4. One Less Worry
5. Three Feet Back
6. Bullet Train Blues
7. Hell to Pay
8. Alone on My Own Little Island
9. For Crying Out Loud
10. Klaghorn
11. Spring Rounds
12. Spring Rounds Squared
13. Pay Dirt
【Bonus Track】
14. Last Ditch Rag





  

2023年6月16日金曜日

Miles Davis / Seven Steps To Heaven

 

 1960年に Coltrane がグループを去り、ここからしばらくメンバーは固定されず、1965年 Wayne Shorter との第2の黄金クインテットが誕生するまでの間、サンフランシスコ・ロサンゼルス等の西海岸で様々なジャズメンと演奏を行っていて、まずは3週間のクラブ・ギグ後、1963年4月の Los Angeles でレコーディング。I Fall In Love To Easily、Baby, Won't You Please Come Home、Basin Street Blues の曲を録音で残りの曲は録音はしたけどお蔵入りとなったとのこと。ピアニストの Victor Feldman はニューヨークに来ないかと誘われたが断ったらしい。あくまでもこのクインテットは暫定的なメンバーとなり New York で、リズム隊を Herbie Hancock、Tony Williams に変えて、サックスに George Coleman にして 同年5月の New York で異なるセッションによって収録されました。マイルス的には、このセッションの違いはリズムにあり New York のクインテットの方が満足していたようです。LA吹込みの So Near, So Far は、どのアルバムかわかりませんが、1981年に発表されているらしいので、そこも聴いてみたいところです。コレクション増やしていけば、そのうち聴けるでしょう。

 落ち着いたマイルスで良いのだが、このアルバムは古めかしいかな。メンバーを探しながら、ツアーに明け暮れて稼いでいた時期なので革新的な音楽の開発と言うよりは当時のメンバーでの記録的な録音でもあるのかもしれません。

 Basin Street Blues は、マイルスが淡々と最初から吹いているバラード調のブルースでカッコ良い演奏ではあるけれど流れてしまうような感じの美しい曲に仕上げています。聴けよこの野郎感は全くありません。タイトル曲の Seven Steps To Heaven は、なるほどリズム隊が変わり古臭くはありますが中身が全く違います。やっぱり、こっちの方が楽しんでいる感じが伝わります。I Fall In Love To Easily では、またバラードとなります。のっぺりとした感じが強い対比に感じます。交互に So Near, So Far はアップテンポになり、マイルスのトランペットの音の張りも違います。Baby, Won't You Please Come Home では、またバラード。なるほどLA録音は Victor Feldman とマイルスの二人が主体となった静的な美しさを強調してるわけですね。最後の Joshua は当然アップテンポで盛り上げていきます。

 心に残る一枚かと言えば、淡々とした演奏を聴いている感が強く、たまに聴いてみたくなるアルバムの類となるような気はします。または在宅勤務時のBGMには良いのかもとも、ここらへんのアルバムを時系列に沿って聴くと面白いのかもしれないとも思ったりしながら最後聴いております🎵

trumpet : Miles Davis
piano : Herbie Hancock (2, 4, 6), Victor Feldman (1, 3, 5)
bass : Ron Carter
drums : Tony Williams (2, 4, 6), Frank Butler (1, 3, 5)
tenor sax : George Coleman (2, 4, 6)

producer : Teo Macero

tracks 1, 3, 5 recorded in Hollywood, Cal.
tracks 2, 4, 6 recorded in New York

1. Basin Street Blues
2. Seven Steps To Heaven
3. I Fall In Love To Easily
4. So Near, So Far
5. Baby, Won't You Please Come Home
6. Joshua



▶ Joshua