2023年1月28日土曜日

Bobbi Humphrey / Blacks And Blues

 

 インパクトのあるジャケットなのでタワレコに行くたびに気になってしまって購入してしまいました。微妙に安いような気がする1,500円のジャズ百貨店シリーズでした。帯の文句は「ヒット・メイカー、マイゼル・ブラザーズが手掛けた女性フルート奏者の傑作。豊饒なトーンで自在に歌う彼女の魅力が最大限に味わえる」
 ナルホドなんですがマイゼル・ブラザーズがよくわかりませんのでググりますとAlphonso "Fonce" Mizell、Larry Mizell の兄弟で音楽制作チームで私の好きな Donald Byrd の Black Byrd 以降の作品群、The Miracles、The Jackson 5、Michael Jackson、、A Taste Of Honey などの制作にかかわっているらしい。ちなみに Black Byrd では、Larry Mizell(vocals)、Fonce Mizell(trumpet, vocals)での参加でした。最近よくある知らなかったけど実は聴いていた現象で世間は狭いものだと改めて思います。
 私の所有音源での Bobbi Humphrey を一応調べてみると Beginner's Guide To Jazz Funk なるジャズ・ファンクの初心者用オムニバスに1曲だけ入ってました。


 さてマイゼル兄弟はこのアルバムでどのような役割を果たしているのかと言えば、ボーカル、アレンジ、プロデュースをブラザースで担当しております。主役の Bobbi Humphrey については1950年テキサス州生まれのジャズ・フルート奏者で、このアルバムではフルートとボーカルをとっています。このアルバムのジャケ写はボーイッシュでスリムな印象ですが晩年の写真をみると迫力の豊満ボディでした。
 アルバムの紹介です。Chicago, Damn シンセによる風のような効果音で始まり、ダークなベース、ボーカルが入ってくると深いリバーブがかかっています。この時代特有のジャズファンクの音処理で「キター」って印象です。ボーカルはマイゼル兄弟のコーラスのみ。フルート・ソロは超絶技巧と言う感じではなくソツなくこなしています。Harlem River Drive はベースラインから始まり、車のエンジン音が小さく聞こえます。曲名からしてもハーレムを流れる川岸を爽快にドライブするイメージの曲なのでしょう。ダークな1曲目と違い爽快な感じのするメロー・ソウル的な曲調です。こちらもボーカルはマイゼル兄弟のコーラスのみ。フルートは1曲目より長めで主張してきています。最後はパトカーのサイレンです。ぶっ飛ばし過ぎて捕まるという終わり方ですね。ほう。Just a Love Child では、メイン・ボーカルを Bobbi がとります。少女のような歌声に!となりますが曲の頭の方だけしか長く歌わず曲の最後で少しだけでてくるのが不完全燃焼。もっとこのボーカルを押し出した方がこの曲は絶対良いと思います。でもフルート・ソロが今までの曲の中で一番良いですね。Blacks and Blues タイトル曲は売れ筋路線のフリーソウル・サウンドでシンプルな曲で聴きやすい。マイゼル兄弟のボーカルも聴きやすく、曲に寄り添うようにオブリ的にフルートを吹き続けるのもフルートならではの爽やかさがあって良いです。Jasper Country Man は完成されたアレンジのジャズ・ファンク。Baby's Gone ラストは怪しげな出だしですが、ソウルフルなバラードへ変化していきます。ゆったりとしたグルーブがヒーリング・ミュージックのように心地よい。Bobbi のボーカルは1曲だけだったのがもったいない。
 アルバムを通して聴きこむと、結構しっかりと作りこんだジャズ・ファンクでした。B級路線は1曲目の Chicago, Damn のみだったので、ジャズファンクはダサいぐらいがカッコ良いと思う私としては、優等生的なこのアルバムはとても良かったのですが面白みは少ないかなと思います。つまりは世間からしてみたら傑作と言われる部類ですね(面倒な言い方になりましたがニュアンスわかりますでしょうか?)
 メンバーのおさらいしたら David T. Walker がギターで参加ですね。どのギターだろう?ささやき系ギターでわかりにくいのかも。再度そこに注意して聴いてみます。

flute, vocals (solo3) : Bobbi Humphrey
piano, electric piano (fender rhodes) : Jerry Peters
synthesizer (arp) : Fred Perren
guitar : David T. Walker, John Rowin
electric bass (fender) : Chuck Rainey, Ron Brown
drums : Harvey Mason
percussion : Stephanie Spruill
congas : King Errison
clavinet, trumpet : Fonce Mizell
vocals, arranged by (vocals) : Fonce Mizell, Fred Perren, Larry Mizell

arranged by, conductor, composed by : Larry Mizell
producer : Chuck Davis, Larry Mizell

recorded June 6, 7 & 8, 1973.

1. Chicago, Damn
2. Harlem River Drive
3. Just A Love Child
4. Blacks And Blues
5. Jasper Country Man
6. Baby's Gone





  

2023年1月27日金曜日

Esperanza Spalding / Esperanza

 

 時空を超えてどこかに行ってしまいそうな楽曲が多いエスペランザですが、これは大丈夫。ジャズをベースにリラックスできて、かつ彼女の中にある独特の音階も楽しめるのでジャズ好きのエスペランザ初心者なら入門編としてお勧めです。普段はポップな音楽を好まれている方の初心者入門は売れたアルバムの Radio Music Society ですね。
 エスペランザは史上最年少の20歳で、バークリー音学院の講師に就任したベース・プレイヤーであり、ソング・ライターであり、ボーカリストであります。ルーツとしては、アフリカ系アメリカ人、ウェールズ及びスペインの血を引いているとのこと。ベース・プレイヤーとしても高い技術がありますが、ジャズ、ポップス等のジャンルに寄せた曲も素晴らしいですが、その曲の中に見える彼女の独特の音階やリズムが凄いのと、ジャンル分け出来ない音楽も一聴すると訳がわからないのですがファンになると、それが高い芸術性を持っているように聞こえる訳です。ボーカルも非常に透明感があり的確に複雑な音程の中を泳ぐように歌います。イブとかは見たこと無いですけど、どうやら私はすっかりエスペランザのファンになってしまっているようで、はるか前に降参しております。ライナー・ノーツの手書きの字までアートですから。


 さて、このアルバム、エスペランザのセカンドで2008年リリースです。本年は2023年になってしまいましたので約14年前のアルバムですか、いつのまにか懐かしのアルバムになってしまいました。
 再度拝聴しましょう。Ponta De Areia はイントロでアフリカンな響きなようで浮遊感のあるコーラスで始まりますがイントロが終わるとポップスのようなボーカルのメロディーラインになりクルクルと展開していくジャズ・フォーマットですが最後はポップスのように聴きやすいメロディーでいきなりノックアウトですね。I Know You Know は、ゴツゴツしたベース・ラインから始まるのですが、ここでアコースティック・ベースなのに粒だちの良い発音と滑らかな音にベーシストとして本物がここにいることが実感できます。拍子の数え方はよくわかりませんが、おそらく6拍子でしょうか。この拍子がぐるぐると音の波が押し寄せるような効果があってまた気持ち良い。Fall In は静かな曲です。エスペランザの曲でバラードというのは何か当てはまらないような気がするので静かな曲と表現しました。中域を活かした伸びやかなボーカルが心に響く美しい曲です。I Adore You は、アフリカンな響きのあるスキャットで1曲目と同様にポップス、ワールドミュージック、ジャズのような要素が目まぐるしく1曲の中で変わっていきます。ピアノ・ソロの時はジャズ・フォーマットでの演奏でのアドリブですが続くベース・ソロ部分(おそらく)はエスペランザはフォーマットはお構いなしでの演奏で格が違います。Adore は憧れる、熱愛するということだそうです。Cuerpo Y Alma はスタンダード Body & Soul ですが、ここはエスペランザはスペイン語で歌っています。語感の違いが情熱的な印象を持たせてくれるのが面白いですね。変拍子っぽいところを入れていることはありますが珍しく変則技があまりない完全にジャズですね。She Got To You では、フュージョンぽい出だしで出だしの表情はあまり変えずに曲が進行します。これは聴きやすい。ですが面白くはないかな。ライブでは盛り上がりそうです。Precious は、可愛らしいメロディーで、このアルバムで一番印象に残るメロディーラインです。惚れます。Mela は、ザ・ジャズって感じです。普通にジャズです。ソロなんかは凄いクオリティ高いんだけど、エスペランザのアルバムの中では面白みにかけるような気がしてしまうのが困ったもんです。Love In Time は、曲名通り甘い感じです。ディナー・ショーとかでかかるようなゴージャス感もあります。Espera は当然自分の名前から曲名をとったんだろう曲です。自分の存在を確認するような歌詞と我々普通の人に安心感を与えてくれる曲の進行でこれも良いですね。If That's True は、8ビートのドラムから始まり4ビートに変化したりする曲でメンバーのセッションのような曲です。なかなかスリリング。Samba Em Preludio でアルバムは終了します。バド・パウエルの曲のようですがボーカルがまたスペイン語になっています。このしっとりエスペランザも良いですね。ずっと愛聴します。

bass : Esperanza Spalding
vocals : Esperanza Spalding (1 to 10, 12)
piano : Leo Genovese (1 to 11)
guitar : Niño Josele (12)
drums : Horacio Hernández "El Negro"(4, 6, 8), Otis Brown (1, 2, 5, 7, 9 to 11)

bongos : Jamey Haddad (1, 2, 6)
percussion : Jamey Haddad (4, 10)
backing vocals : Gretchen Parlato (1, 4), Otis Brown (4, 7), Theresa Perez (4)
alto sax:  Donald Harrison (6, 11)
trumpet : Ambrose Akinmusire (8, 11)

1. Ponta De Areia
2. I Know You Know
3. Fall In
4. I Adore You
5. Cuerpo Y Alma (Body & Soul)
6. She Got To You
7. Precious
8. Mela
9. Love In Time
10. Espera
11. If That's True
12. Samba Em Preludio



Espera
 


  

2023年1月22日日曜日

Duke Pearson / Now Hear This

 

 マンネリ気味、偏り気味の音源の幅を広げるべく、あまり聴いたことが無いミュージシャンの音源をあえて購入するパターンで購入の一枚。購入店舗は、おそらくディスク・ユニオンだったはず。このような買い方をするときは、何が入っているのか?参加メンバーは?などと気にすることなく、安くて名盤っぽい売り文句があれば購入してしまいます。ロック系はこの買い方で失敗する(2度と聴かない)ことは多いのですが、ジャズに限っては後悔することは少ないですよね。
 と言うことで、私がこの Duke Pearson(デューク・ピアソン)に関しては、ほぼ知識が無いことは察していただけることかと思いますのでググって見ます。1932年生まれのピアニスト、作曲家。有名曲はよくわかりませんが、アート・ファーマー、ベニー・ゴルソン、私の好きなドナルド・バードなどと共演されているとのこと。Duke Pearson の名前は、デューク・エリントンにあやかって「Duke」とおじさんにつけられた愛称とのこと。1963年には Blue Note でスカウトを担当し1963年から1970年までセッションに参加しながらプロデューサーを務めています。1966年にブルーノートがリバティ・レコードに買収されピアソンも1971年に Blue Note を引退しクラーク大学で教鞭を採りその後ビッグバンドを結成してのこのビッグ・バンド・アルバムの録音となったようです。
 でピアノを弾き、Herbie Hancook / Speak Like A Child ではプロデューサーでした。つまり全くしらないオジサンでは無かった訳です。


 さてこのアルバムもうおわかりの通り、晩年のビッグ・バンド作品で1968年の録音です。メンバーは有名どころではトランペットで Randy Brecker、サックスは Frank Foster、バリトン・サックス Pepper Adams 先の Herbie Hancook / Speak Like A Child でドラムを叩いていた Mickey Roker なんかが参加しています。
 ただ聴いているときよりも面白くなってきました。それではレビューですが、まずは Disapproachment これは Frank Foster のオリジナル。ザ・ビッグ・バンドって感じの派手でカッコ良い曲なんですが、ソロ回しでサックスがノリノリでソロが終わってトロンボーンの出番となります。少したどたどしいかなと思いつつ聴いていると、3分9秒ぐらいから素人でもわかるレベルで音を外し始め?となりました。放送事故っぽいレベルのような気がします。で気を取り直して I'm Tired Cryin' Over You ブルース・ピアニストのバディ・ジョンソンのブルースでボーカルもので一休みって感じですが一休みが2曲目は早いなあと思います。Tones For Joan's Bones はチック・コリアのオリジナル曲でチックコリアの初リーダーアルバムのタイトル曲とのこと。オリジナルを聴いて比較したいですね。Amanda はピアソンのオリジナルでボッサです。ピアノ、ベース、ドラムのトリオで始まり、トロンボーン・ソロ 1分16秒4あたりが、また音程があやしい。4人いますが犯人は誰なのか気になります。Dad Digs Mom もピアソン・オリジナルのバラードです。パパはママを探し当てる(ママもパパを探し当てる)みたいな意味でしょうか。抜き足差し足でにじみよっていくような曲です。Minor League は景気の良いビッグ・バンド・アレンジでドラムが楽しそうにバカバカやってます。トロンボーン大丈夫だろうな?と思いながら聴いているとこの曲ではソロは回ってこなくて終了です。ホッとした。Here's That Rainy Day は Jonny Burke の作曲でチーク・タイムにかかるやつですね。甘いヤツです。テナー・サックスがエロい感じです。Make It Good もピアソンのオリジナルで豪快なパターンで Pepper Adams のバリサキが暴走族みたいで素晴らしい。最後は名曲 The Days Of Wine And Roses です。甘美な旋律の美しい曲ですが確か曲名とは裏腹に悲しい曲だったんですかね。間違いなく安定した演奏です。これはトロンボーンが率先してのソロ。出だし怪しいところは少しありましたが、うまくクリアです。ホッとしました。
 最初はふーんって感じだったんですが結局は聴きこんでしまったアルバムでした。面白かったかな。

piano : Duke Pearson
bass : Bob Cranshaw
drums : Mickey Roker
alto sax : Al Gibbons, Jerry Dodion
tenor sax : Frank Foster, Lew Tabakin
baritone sax : Pepper Adams
trumpet : Burt Collins, Jim Bossy, Joe Shepley, Marvin Stamm, Randy Brecker
trombone : Benny Powell, Garnett Brown, Jimmy Cleveland, Kenny Rupp
vocals : Andy Bey (2)

recorded by : Rudy Van Gelder
producer, arranged by : Duke Pearson

recorded on December 3, 1968.

1. Disapproachment
2. I'm Tired Cryin' Over You
3. Tones For Joan's Bones
4. Amanda
5. Dad Digs Mom (And Mom Digs Dad)
6. Minor League
7. Here's That Rainy Day
8. Make It Good
9. The Days Of Wine And Roses


▶ Amanda



  

2023年1月21日土曜日

Kenny Burrell / Jazzmen Detroit


 多くのジャンルをミュージシャンがニューヨークを目指した1950年代。盛んにジャズが演奏された都市で派閥を分類するとしたらシカゴ、デトロイト、フィラデルフィアでしょうか。デトロイトのジャズ・クラブの Blue Bird Inn では、ポール・チェンバース、ケニー・バレル、サド・ジョーンズ、トミー・フラナガンが入れ替わりでセッションをしていたそうです。そこでデトロイト出身ミュージシャンを中心とするセッションのアルバム名。デトロイトと言えば自動車の街のイメージ、そんな街にゆかりのミュージシャン。と思って改めて略歴を眺めていたら完全にそうであるとは言えないようで、デトロイト仲間でアルバムを作るか録音したが、全員は賄えなかったようですね。

デトロイト生まれ : Kenny Burrell (ケニー・バレル)、Tommy Flanagan (トミー・フラナガン)、デトロイト育ち : Paul Chambers (ポール・チェンバース)、Pepper Adams(ペッパー・アダムス):おそらく関係ない人 : Kenny Clarke(ケニー・クラーク)
 
 でジャケットを見ていたら四人しかいない?おそらくデトロイト関係ないリストのドラムのケニー・クラークがいないってのはしょうがないけど、アルバム録音は一緒にやってるんだから問題あるんじゃねえのか?などと余計なお世話なことを思いながら濃い目の珈琲を飲みながらこのアルバムを聴き直しております日本版はケニーバレル名義ですが、海外のアルバムは、Kenny Burrell, Tommy Flanagan, Pepper Adams, Paul Chambers, Kenny Clarke : Jazzmen: Detroit 実はこのアルバムリーダーはいないようであります。


 さてレビューですが、都会的なブルース・フィーリングのジャズをやりながらもポップさも感じます。録音は 1956年4月30日(4.~6.)、5月9日録音(1.~3.)です。この録音当時は20歳代後半ぐらいの「若者たち」を中心としたセッションであるにも関わらず落ち着いたリラックス度が高くやっている本人たちが楽しそうな演奏内容でやっぱりケニーバレルのギターは響くなあと感じます。
 Afternoon In Paris は1949年にピアニスト John Lewis によって書かれたスタンダードで、やはりトミフラ・メインの展開ですがリラックスした演奏で肩ひじ張らずにゆったりと聴ける演奏。You Turned The Tables On Me ではケニーバレルが主導権を握ります。ペッパー・アダムスのバリサキがアダルトな雰囲気で格調高く続くバレルのソロも滑らか、ピアノソロはそつなく平常心、モコモコしたチェンバースのベース・ソロはもまとまっています。Apothegh は、ペッパー・アダムス作。バリサキとギターでユニゾンしながらの展開し、ソロ部分の各人の絡みあうところとか譲り合うところが聴いててわかる気ごころ知れた仲の良さそうな人たちならではの演奏。Your Host はバレル作の曲でアダルトって感じの渋い演奏ですね。お酒が似合います。Cottontail はエリントンのカバーですが、テーマの後に直ぐに始まってしまうギターとサックスの掛け合いでしょうか。とても仲が良さそうにしゃべっているような掛け合いがとっても素敵で、この曲はワクワクします。Tom's Thumb もバレル作の曲です。Tomってトミフラのことでしょうか?親指の使い方に特徴でもあるのかな?などと思いながら小気味よい演奏はリラックス。

guitar : Kenny Burrell
piano : Tommy Flanagan
acoustic bass : Paul Chambers 
drums : Kenny Clarke
bariton sax : Pepper Adams

producer : Ozzie Cadena
recording on April 30, 1956 (4 to 6), May 9, 1956 (1 to 3).

1. Afternoon In Paris
2. You Turned The Tables On Me
3. Apothegh
4. Your Host
5. Cottontail
6. Tom's Thumb





  

2023年1月20日金曜日

Donald Byrd Live Cookin' With Blue Note At Montreux July 5, 1973

 

 Donald Byrd(ドナルド・バード)はトランぺッターのジャズをもっと聞いてみたいと思って結構最近になって聴き始めた人で、私の周囲にもそれほど詳しい人はいないのです。したがって年代はバラバラに聴いてみています。1955年初リーダーアルバムを発表し1955年末にはジャズメッセンジャーズにケニー・ドーハムの後がまとして入隊。ブルーノートを中心にハードバップの作品を数多く残し、1960年代はゴスペルを取り入れ1970年はファンク・ロックを取り入れるというトランぺッターにありがちな最終ファンク路線の人なので、時代ごとにアルバムごとに音楽性はかなり変化するため、ある意味買ってから聞くまではどんなものが出てくるかわからない人です。そこが面白いと最近思うんですが正体つかめないので私の周りには残念ながら愛好家は見当たりません。


 これはタワレコの新品で「全盛期の凄まじい熱量や勢いをそのままパッケージ。ジャズ・ファンのみならず全ての音楽ファン必聴のライブ盤」の帯につられての買いです。これは家で寝かせずに購入して直行で「おでんバー」で聴きました。マスターも「ジャズ・ファンクかい?好きだね、あんたも相変わらず」的な顔をしています。しばらく経ってから「これは誰?」で「誰でしょう?」とジャケットを見せてもわかりません。ドナルド・バードであることを告げると「えっ」の顔でした。ここら辺がマニアの集いの楽しいところで気分が良い。
 ということで、これを読む人にはもうわかってしまいましたが、ドナルド・バードが1973年にモントルー・ジャズ・フェスティバルに出演した際に録音されていたライヴ音源で中身はジャズ・ファンクでございます。
 1973年は傑作アルバム Black Byrd を発表しており、ライブの冒頭は Black Byrd から始まる構成となっております。コーラス・ボーカル入りのファンクで、だるそうに歌うのがカッコイイ曲です。スタジオ盤よりアップテンポになっているので、ジャズ・ファンクよりもファンクよりに聞こえます。You’ve got It Bad Girl は Stevie Wonder(スティービー・ワンダー)が作曲で Quincy Jones の同じ1973年に販売したアルバムの曲を早くも取り入れているようです。The East はバードのオリジナルですが作曲というよりセッション用のバッキングだけ用意したような曲でファンク度が高くて良いです。そして Introductions はメンバー紹介です。Introductionsだから最初にメンバー紹介をしているんでしょうか。アルバムでは真ん中に持ってきたんですね。Kwame はアフリカンな音使いのシンセ・サウンドがイントロになり7拍子でひたすら同じフレーズが繰り返されるカオスな曲でファンクに振り切れているのが凄い。Poco-Mania では、激しいギターのカッティングから始まるファンクでJBを意識している感じですが演奏に関しては先輩のJB’sに軍配は上がります。私にとってはこれは当たりで素晴らしいアルバムですが万人受けはしないかな。

★ブルーノートの社長ドン・ウォズは、今回の商品化について「2013年にバードが亡くなった直後、私たちはイギリスの著名な音楽アイコン、ジャイルズ・ピーターソンから、1973年のモントルー・ジャズ・フェスティバルでの伝説的な演奏について問い合わせのメールを受け取った。なんと、そのテープはブルーノートの保管庫にしまわれていたのだ。16トラック、2インチのアナログ・マスター・テープは、ドナルド・バードの70年代の音楽がより生々しく、よりハードなものであることを明らかにしてくれた。このジャズ界の不滅のレジェンドへの特別なトリビュートとして、またブルーノートの社員と同じように、彼が残した音楽を大切にしている多くの愛好家への贈り物として、我々は誇りをもって、1973年7月5日のモントルーでのライヴ音源である本作をお届けする」とコメントしている。

trumpet, flugelhorn, vocals : Donald Byrd
electric piano : Kevin Toney
synthesizers : Larry Mizell
electric guitar : Barney Perry
electric bass : Henry Franklin
drums, vocals : Keith Killgo
congas, percussion : Ray Armando
trumpet, vocals : Fonce Mizell
tenor saxophone, flute : Allan Barnes
tenor & soprano saxophone : Nathan Davis
 
produced for release by Rachel Jones
recorded live by Chris Penycote at Montreux Jazz Festival Montreux, Switzerland,July 5,1973

1. Black Byrd
2. You’ve got It Bad Girl
3. The East
4. Introductions
5. Kwame
6. Poco-Mania





  

2023年1月15日日曜日

Mike Stern / Is What It Is


 最近聴いていなかった Mike Stern(マイク・スターン)を久しぶりに聴いてみることにします。 大学に入ってロック小僧からジャズ研に入ったはいいけどジャズって聞いたことがない。何を聴いてったら良いのだろう?と悩んでいた時、ジャズよりはロックに近い演奏をしていたマイク・スターンには、かなり傾倒しました。しかし難し過ぎてコピーしたのは数曲でした。当時マイク・スターンがどのようなバンドで活動していたのかには、全く興味も無く、その後社会人になり色々なアルバムを聴くにつれ、マイク・スターンの名前が色々なアルバムに出てくることに気づきましたので、改めて略歴を追ってみると新発見もあります。まず知らなかったのは Blood, Sweat & Tears(BS&T)に1976年に参加していたこと。確認しましたが私の BS&T 所有のアルバムは、Child Is Father To The ManBlood, Sweat & Tears と古いので残念ながら名前はクレジットされていませんでした。たまに BS&T の棚はチェックしているんですが置いてあるアルバムは非常に少ないので、これからもチェックですね。略歴としてはその後ビリー・コブハムのフュージョン・バンドに参加し、マイルス・バンドへの加入、ジャコのツアーのバンドに参加しソロ・デビュー。ブレッカー・ブラザースにも参加されていました。

 
 さてこのアルバム、ソロ・アルバムとしては7枚目で1994年発売で、再結成されたブレッカーブラザーズに参加は1992年ということから見てもキャリアとしては十分に積みあがって安定していたころの作品です。すっかりスターンのパターンが出来上がっております。この手のフュージョン系ギタリストで手癖の塊りみたいな人は少ないので、ぶれない一辺倒のフレーズに感心するばかりです。
 さてレビューですが、初っ端 Swunk から、マイク・スターン特有の半音使いの少しづつ機械的にずれていくテーマの作り方、手癖ばりばりのソロが健在です。A Little Luck は、きれいなメロディのテーマでここら辺がマイク・スターンの非凡なところなんだよなと感心しつつ Jim Beard のピアノの展開の仕方がにくい演出です。What I Meant To Say もしっとりきます。歌もののようなわかりやすいメロディーが良いなと感じながら、クリーンな音色のギターが時々切なげな音をたてます。今まで注目してなかったけど良いですね。Showbiz はファンク・フュージョンな作品で、これがマイク・スターンのイメージピッタリです。テーマのメロディーの作り方はスターンの法則があるんでしょうね。Believe It は再度聴いて思い出しました。これがこのアルバムで一番のお気に入りでした。ブルース・ギタリストみたいな音使いがたまらんです。Wherever You Are では、アコギ?の音がイントロで使われマイク・スターンぽくない曲で、やはり手癖だけではないプロなんだと再認識。違う人が弾いているみたいで楽器が変わると弾き手の感情も変わるんだと思いながらしんみり。Ha Ha Hotel で静からいきなり動に変わります。曲名のごとくホテルで大騒ぎしている感じのあるマイク・スターン節が堪能できます。お馴染みフレーズのオンパレード。Signs では、また静の世界にもどります。このアルバムは極端な静と動を繰り返す感じですね。55 Dive では、動に近い楽曲で Bob Malach が後半サックス頑張ってます。私的にはMichael Brecker (マイケル・ブレッカー)と音使いが似ているサックス奏者のような気がしますので一つのアルバムにこの二人はもったいないような気もします。個人的には Believe It がこのアルバムでは一番のおすすめでした。奥が深い感じがします。

guitar, written by : Mike Stern
piano, synthesizer : Jim Beard
bass : Will Lee (1 to 5, 7 to 9)
drums : Ben Perowsky (6 to 9), Dennis Chambers (1 to 5)
sax : Bob Malach (7 to 9), Michael Brecker (1, 2, 5)

producer, engineer (additional engineering) : Jim Beard

recorded at Skyline Studios, New York, NY
additional recording at Carriage House Studios, Stamford, CT

1. Swunk
2. A Little Luck
3. What I Meant To Say
4. Showbiz
5. Believe It
6. Wherever You Are
7. Ha Ha Hotel
8. Signs
9. 55 Dive


▶ Showbiz



  

2023年1月14日土曜日

Rachael & Vilray

 

 私の音源は主として中古レコード屋で調達しているのですが、たまには新品を見ておこうと思ってタワレコなどは定期的にチェックすることにしています。しかし世の中音源をわざわざ買いに行く人はもう少なくなっているようで店舗はどんどん縮小していて寂しい限りです。アメリカのタワレコは相当数が閉店しているのはかなり前に、記事で見ていたがその波も私の愛用している新宿のタワレコにも訪れているようで、最盛期は4フロアあったと思うのだが今は2フロアとなってしまっていて、いつ行っても人はまばらであります。まあ今は流行りの曲はダウンロードするのが主流だろうし試聴もネットできるのでダウンロードでなくともネット通販で購入するほうが多くなったんでしょうね。しかしながら私としては「今日はパチンコで勝ったから2万円分買うぞ」と意気込んでレコード屋を歩いて回るのはそれぞれの店の店員さんのクセ(個性)あふれる推しが見れるのが好きなところでありますので実店舗もなくならないでいて欲しいと思う今日この頃です。


 そこでパチンコで勝った金を握りしめ中古でない新品も買ってもいいかなとタワレコを訪れたところ、タワレコのロングセラーとして紹介されていたのがこの一枚です。この日はタワレコとディスク・ユニオンをハシゴして疲れてしまったのでツタヤの中古コーナーには行かずに、いつもの「おでんバー」に直行です。早い時間の到着ですのでマスター以外誰もいませんので遠慮なしに買ってきたばかりのCDの20枚程度を自慢げにバサバサと広げこの日は4枚ぐらいを店でかけさせて頂きました。
 このアルバムを変える時には、マスターにタワレコ・ロングセラーの売り文句につられて買ったことは伝えていました。楽しそうに聴いているし反応としては悪くはなかったので私も気分を良くしてライナーノーツは無いかと見てみますが輸入盤なので日本語解説もなく参加ミュージシャンが曲別に書かれているぐらいのものでした。そして一体いつの発売なのだろうと裏面の小さな文字を見てビックリの2019年発売でした。マスターに「これいつ頃の録音と思います?」と聴くと「1950年ぐらいの録音かとは思うけど音が良いから65年ぐらい?」との返事。私だけではなく皆さんそう思うのは当然でしょう。発売から3年のロングセラーだった訳です。いやビックリでした。
 さて前置きがかなり長くなりましたがレビューです。Without a Thought for My heart トレモロのかかったギター、ピアノ、ベースをバックに Rachael Price がささやくように歌いと少し枯れたような声になり色っぽくてうっとりとさせられます。これに似合うのはブランデーでしょう。Do Friends Fall in Love? では、Vilray とのデュオになり、ラグタイム調で戦前にタイムスリップです。Rachael Price は1曲目より声を大きく出しているので少し艶っぽい声質になっています。ソロが口笛であるのもほんわかさせてくれました。Alone at Last では、クラリネット、テナー、トロンボーンが参加したレイジーな曲です。クラリネットが良い仕事し過ぎです。Treat Me Better は再び Vilray とのデュオとなりますが、交互に歌う Vilray はジャケットの写真よりもずっと男前な歌声でスイングって良いなと思わせてくれます。Nosotros は、キューバのペドロ・ジュンコが43年に書いた曲で、スペイン語で歌われていてスパニッシュ・ギターのリズムとスペイン語でグッと雰囲気が変わります。恐れ入りました。At Your Mother's House は、アップテンポで昔こんなスタンダードがあったのかと思わせてくれる曲で、今後この曲がスタンダードとしてジャズ・ボーカリストに歌われる可能性も感じます。古くてカッコ良い典型。 I Can't Go to Sleep は Vilray のギター1曲目に使われたトレモロ仕掛けのレトロな雰囲気が気持ち良い曲でハワイアンっぽい。 I Love the Way You're Breaking My Heart はトランペットの使い方が映画時代の曲ような雰囲気で Rachael Price はノリノリで世界に浸っています。The Laundromat Swing はフォーク調のテンポ良い曲でライブで近くで聴きたい楽しい曲ですね。Go On Shining はピアニスト Jon Batiste がフューチャーされたナンバーで右手だけで高いキーをコロコロ鳴らしていて可愛い楽曲にこれが合っているのもセンスの良さ Let's Make Love on This Plane は正調なジャズで今までの楽しい曲よりも少し格調高い店で酒でも飲む際に流れているようなナンバー。 There's No True Love でラストになります。寂しいけど暖かなメロディーが閉店をお知らせしますというアナウンスをバックに流れている感じでしょうか。
 ジャケットの白黒の写真と同様に小さな店でミニ・コンサートをお酒を飲みながら聴けたら楽しい音楽であり「まるでどこかの中古レコード屋の片隅でずっと眠って忘れ去られていたような、懐かしくも普遍的な魅力溢れるジャズ・ヴォーカル・プロジェクトである」と書かれていたことに同感!!

vocals : Rachael Price
vocals, guitar, written-by : Vilray
piano : Akie Bermiss
drums : Jason Berger

producer : Dan Knobler

1. Without A Thought For My Heart
2. Do Friends Fall In Love?
3. Alone At Last
4. Treat Me Better
5. Nosotros
6. At Your Mother's House
7. I Can't Go To Sleep
8. I Love The Way You're Breaking My Heart
9. The Laundromat Swing
10. Go On Shining
11. Let's Make Love On This Plane
12. There's No True Love





  

2023年1月13日金曜日

Soulive / Break Out


 2005年に BlueNote を離れ、Concord Records に移籍してリリースしたアルバムで、今までのインスト・ファンク路線を変更したので今までのファンが戸惑った作品ですね。作りては古いスタイルを踏襲し続ける人もいれば、新しい音を追求するための路線を変更する人もいる。ファンと言う購入者は、購入前に既に今までの昔の作り方が気に入っているためにそれを期待する人が圧倒的に多いので大幅な路線変更ではこういったことが起きるんでしょうね。作り手としては気に入らなかったら買わなきゃ良いだけの話で勝手に残念がられても迷惑な話かもしれません。そのような面倒なことが起きるのを防ぐために、この私の音楽レビュー・ブログを参考にしていただければと思います。但し基本音源と言うものは基本作り手が一生懸命作った作品ですのでネガティブな発言は避けるような言葉選びをしているのでそこは察していただければと思います。


 さて封建派からは酷評されることも多いこのアルバム、今までののジャズ・フォーマットから離れて Soul/R&B 色が強め、多数のボーカリストを起用しています。でもバンドの基本フォーマットはオルガン、ギター、ドラムのスタイルにブラスを追加した音作りで、ジミヘンの Crosstown Traffic なんかも持ってきているのは昔のギター小僧なら嬉しい曲も入っています。ちなみにこのアルバムはアメリカと日本発売の中身は曲順や曲目が微妙に違うようですが私は日本版だけ所有しとります。曲によっては長さも違うのでおそらくアレンジとかも変えてきているんでしょう。
 それでは嘆き悲しむよりも、このアルバムの良さを探りましょう。出だしの Reverb は今までの Soulive の路線は引き継いでいて違和感なく安心して聴けます。久しぶりにこのバンドを聴くと改めてオルガンの足で踏むペダルのベースって弦楽器よりもパンチが効いてて気持ち良いですね。ギターのリフもソロも良いではないですか。次いで Got Soul ではボーカル  Ivan Neville のソウルものになっています。曲はソウル何ですが演奏はアレンジはデジタルな感じの処理でイントロから「おや?」と思った人もここら辺から多いのかな。Cachaca は、フラメンコ風のアコースティック・ギターのイントロにリズム・ボックスっぽいドラミング。曲はスペイン風の旋律が取り入れられていますがここらへんの手法は他のアルバムでもあったような気がします。Back Again はいつもの Soulive ではありませんが低音でズシズシと刻みながら一流のボーカルを配した中々の売れ筋の作りです。Break Out ではいつものパターンに戻ってきてホッとします。シンプルながらメロディーの良さが光るインスト・ジャズ・ファンクです。She's はボーカルに Reggie Watts を起用したポップなセンスが光ります。プリンス入ってるかなあ。Vapor は少しいつもの Soulive よりポップ寄りのジャズ・ファンク。これは良い! Crosstown Traffic は言わずもがなジミヘンです。ダサ目のギターがカッコ良いですなあ。What Can You Do はバラードで Robert Randolph のpedal steel を起用でペダルのベースのカッコよさが際立ちます。Headphones はライブ風な音作りのジャズ・ファンクでいつもの奴です。ガシャガシャしてるけど落ち着く・・Left Behind は戻ってきました Soulive って感じでボーカルものではありますがガシガシとしたリズムが堪らんです。Glad Ta Know Ya も Cochemea Gastelum のサックス入りでコテコテのギター・ソロがたまりません。楽曲良さというより単純なカッコ良いリフの勝利。Crosstown Reprise はがっちり Robert Randolph のペダルが暴れます。最高です。Take It Easy は Ivan Neville をボーカルに廃しての楽曲ですがしっかり "Soulive!"
 結局よく聞いてみたら様々なタイプの楽曲が入っていますが本質は "Soulive”でしたね。異色ではあるけど期待が外れたと騒ぐほどの変質はないんではないかい? 
 しかしですね続きあります。このレーベルは1枚で2007年にスタックス・レコード移籍で「No Place Like Soul」1枚で終了。2009年以降はロイヤル・ファミリー移籍で「Up Here」発表以降落ち着いているようです。

electric guitar, acoustic guitar : Eric Krasno
organ , keyboards , clavinet, piano : Neal Evans
drums : Alan Evans

percussion : Daniel Sadownick
tenor sax, alto sax : Ryan Zoidis
trombone : Lasim Richards (5) , Robin Eubanks
trumpet : Rashawn Ross
backing vocals : Jordan Battiste (8)

producer : Alan Evans, Eric Krasno, Soulive

recorded : New York, NY
released : September 13, 2005.

1. Reverb
2. Got Soul / Feat  Ivan Neville
3. Cachaca
4. Back Again / Feat  Chaka Khan
5. Break Out
6. She's / Feat Reggie Watts
7. Vapor
8. Crosstown Traffic / Feat : Robert Randolph
9. What Can You Do / Feat Reggie Watts
10. Headphones
11. Left Behind / Feat Reggie Watts
12. Glad Ta Know Ya / Feat : Cochemea Gastelum
13. Crosstown Reprise / Feat : Robert Randolph
14. Take It Easy / Feat Ivan Neville




▶ Vapor



  

2023年1月8日日曜日

Paul Desmond / From The Hot Afternoon

 

 どのような音楽も雑多に聴いているような気になっていますが、知らないミュージシャンの音源にはなかなか手が伸びないもので、たまに冒険するのがジャケ買いでありジャズなんかでは帯の文言に惹かれて購入する帯買いがあります。このアルバムは後者の方の帯買いにあたります。帯の文言は「デイブ・ブルーベックとの活動でおなじみ、彼独特のリリカルで美しいアルトの音色が、まろやかに聴く人を包む」でした。
 ということでPaul Desmond(ポール・デスモンド)自体には注目して聴いてこなかったので、ほぼ初心者なのですがサイドマンとして私の所蔵音源に辛うじて2枚参加されており、その2枚は The Dave Brubeck Quartet / Jazz at OberlinJim Hall / Concierto 。やはりデイブ・ブルーベックは入っており、私の所有音源の中でも比較的格調が高めのジャズでしょうか。
 ポール・デスモンドは1924年サンフランシスコ生まれで1946年にデイヴ・ブルーベックのバンドでデビュー、その後ジェリー・マリガン、ジム・ホールなどと共演しています。デイブ・ブルーベックとのバンド在籍時にあの名曲5拍子の名曲 Take Five(テイク・ファイヴ)は、ポール・デスモンドの作曲であるとのことも発見。


 本作品は A&M レーベルから1969年の Rudy Van Gelder のスタジオの録音で、ブラジルの代表的作曲家 Milton Nascimento & Edu Lobo(エドゥロボとミルトンナシメント)の作品集であるとのこと。基本的にストリングスを加えたビッグ・バンドで綿密にアレンジしたサウンドに、ポールデスモンドが軽くサックスをのせてアルバムなので、おそらくこの人の真骨頂はもっと別のアルバムも聴きこまないとわからないような気もします。ストリングス・アレンジはDon Sebesky(ドン・セベスキー)
 ゆったりとしたブラジル・テイストでありますが、アレンジも凝っているせいか割とこってりとしています。ムード歌謡のような昭和感のあり昔の喫茶店でかかっていたかのような雰囲気を感じます。
 さてアルバムですが October はストリングスが入ったイントロから始まり映画のテーマ音楽のようなアダルトな曲調にのせて Paul Desmond が肩慣らしで軽くサックスを吹いています。全く脱力な感じ。Round N' Round 軽くリズムを刻むボサノバ・ギターが印象的ですが曲自体はブルースの進行です。Faithful Brother はムーディなブラジル音楽で軽めのアルトサックスとストリングスです。何回か聴きこみましたが、ここで思ったのはどれも3分~4分程度に短くまとめられているのでアルバムとしては聴きやすい。To Say Goodbye では、ボサノバの特徴である「ささやき系ボーカル」が出てきます。そしてムードのあるアルトのソロ。やっぱり昭和を感じるなあ。From The Hot Afternoon では少しテンポ・アップしたボサになります。今までは真夏の深夜薄暗い部屋で濃い珈琲でもすすりながら聴く感じですが、ここら辺は昼間を感じますが、けだるい昼間に少し明るい系のボサノバって感じでしょうか。Circles はサックスに焦点を当てたイントロに透明感のあるボーカルが静かにハモっています。この曲は好いかも。Martha & Romao はミドルテンポですが少しミステリアスでダンサブルな曲です。これはクソ厚い昼下がりに日光を避けた家の中から海を静かに見つめているような感じでしょうか。メロディー的にはボサを外せばポップス的に聞こえます。Catavento は細やかなリズムとパーカッションを使ったアップ・テンポで夜になって軽くカクテルでも飲んで軽くハイな気分になっている感じでこれも良きかな。 Latin Chant は古臭い映画の暗く静かなアダルトな映画のワンシーンと思っていたら、展開で明るいパッとしたガヤガヤした部屋に連れていかれた感じになり、そして疲れてお休みしてから朝になります。アレンジ凄いですね。Crystal Illusions で終了となりますが中東風の音使いで始まり少しポップなボーカルが入っています。正直、刺激が少ないなあと思っていましたがアレンジとかに注目して聴いていると少しイメージ変わりました。

alto sax : Paul Desmond
bass : Ron Carter
keyboards (keyboard instruments) : Patrick Rebillot
guitar : Dorio Ferreira (1 to 5, 8, 9), Edu Lobo (6, 7, 10)
drums : Airto Moreira
percussion : Airto Moreira, Jack Jennings, Stan Webb, Jr.
sax, clarinet, oboe : George Marge, Phil Bodner
trumpet, flugelhorn : Irvin Markovitz, Marvin Stamm
french horn : Jim Buffington
bass trombone : Paul Faulise
flute, alto flute : Don Hammond, Hubert Laws, Stan Webb, Jr.
harp : Margaret Ross
violin : Avram Weiss, Eugene Orloff, George Ockner, Lewis Eley, Matthew Raimondi, Max Pollikoff, Paul Gershman, Raoul Poliakin, Sylvan Shulman
cello : Charles McCracken, George Ricci
vocals : Edu Lobo, Wanda De Sah

arranged by Don Sebesky

producer : Creed Taylor

recorded at Van Gelder Studios June 24, 25; August 13, 14, 1969

1. October
2. Round N' Round
3. Faithful Brother
4. To Say Goodbye
5. From The Hot Afternoon
6. Circles
7. Martha & Romao
8. Catavento
9. Latin Chant
10. Crystal Illusions


▶ October

▶ Circles