2023年3月19日日曜日

Craig Scott Quintet / Introducing

 


 全く Craig Scott Quintet という存在を知らずにタワレコで試聴購入しましたので音は良いのはわかっていました。なので購入後の初聞きを、いつもの「おでんバー」でする時に、どんなアルバムなんだろうと言うドキドキはありませんでした。がマスター及び常連の反応はどうなのか?このタイプは微妙なのがわかっていましたので、そこがドキドキでした。
 今日は何かもってきたのかい?と言われビニールを破いてセットします。音が鳴るとタワレコで聴いた時よりもこの店でかけた方が良い感じです。反応はありませんがマスターがリズムをとる感じでツマミの準備をしているので合格かな。そうこうしているうちにビブラホン好きの常連さんが登場です。反応はこちらも薄いですが、気に入らないと酷評がある人だけにこちらも合格ですね。そうこうしているうちに聴き終わりましたので深くは感想を聴かずに家で聴くことにします。


 音的には古めで、ある程度有名なミュージシャンなのかと思いググっても情報は全くと言っていいほど出てきません。辛うじてわかったのはヴィブラフォン奏者 Craig Scott は、2012年ごろ Douglas College Jazz Camp という学校でドラムの講師として働いていたらしい。その学校のコンサートでドラムに座りながらビラフォンを演奏し The Cellar Jazz Club で週末に演奏するようなる。そのライブで Milt Jackson が Ray Brown、Teddy Edwards とレコーディングしたアルバムからアレンジした演奏を行っていて、それが注目を浴びるようになり、このレコーディングが2013年録音2014年7月22日に行われたとのこと。他の録音メンバーも含め所有音源の検索しましたが、一人もヒットしなかったことも珍しいレア音源です。
 さてマイナーではありますが、レビュー参ります。Lunar Blues は Craig Scott のオリジナルです。全体の雰囲気もそうですが50~60年代の古き良きジャズのような感じで素朴なテーマのブルースは聴きやすい。難しいことはしていませんが気負い少な目で演奏を楽しんでいる雰囲気は十分に伝わる演奏です。Groovin' High はチャーリー・パーカーです。ピアノとビブラフォンでテーマをユニゾンしてからのサックス、ビブラフォン、ピアノのソロ回し、ビブラフォンのソロの出だしが少し怪しいところはあったけど、クリアに細かいことはせずに演奏されている教科書ののような演奏です。とにかく聴きやすい。Chart Of My Heart は、B.Newman 作曲の50年代によくあるような楽しいスイング。思わず横揺れになりますし踊れないけど踊りたくなるような演奏はこれも楽しい。毎週末は、このメンバーでライブだったようですから息もぴったり。The Night We Called It A Day は、M.Dennis とあります。ここでバラードが挟まります。ビブラフォンにピッタリのテーマに聞こえます。サックスソロが特に気持ち良いかな。と思っていたらビブラフォンも良いですな。 Corner Table は誰の曲かと思えば、C. Scott のオリジナル。ピアノソロがまたも教科書のような譜わりで、聴きやすいけどアルバムを聴き進めてきて少し物足りない気もしてくる気もします。Head And Shoulders はC.Walton とあります。少しアルバムが単調かなと息もしてきたところで、ピアノソロでモンクっぽいフレーズが出てきたりアルバムのアクセントになっています。Banana Funk はピアノの T.Foster 作曲です。こういう曲名はどこから来るんでしょうか。朝食でバナナ食べてた時に思い浮かんだからでしょうか。現代風のファンク的な要素も入ってきてメンバーの演奏内容もぐっと変化します。やっぱりプロですね。これは良い。Auntie Mame は B.Kaper 作曲で、再び古き西海岸のクール・ジャズっぽい雰囲気で、ライトです。Stolen Moments は、O.Nelson ほんわかしながらも推理小説を読んでいるような少しだけ怪しいところも匂う時代がかった曲です。録音順に曲は並んでいないとは思いますが、耳が慣れてきたのか演奏にエンジンがかかってきた感じはあります。Bossa Nova Do Marilla は R. Evans とあります。曲名でもわかるようにボサノバではありますが、物悲しいタイプのやつですね。テーマの節回しはクラシックっぽいものもあります。ラストは  Ginza Samba V.Guarvaldi です。Ginzaはもしかして銀座ですかね?コミカルな曲です。全体を通してベテランぽくて、チームという感じの演奏で好感の持てるアルバムですが、スリリングさを求める人には物足りないかもしれません。
 
vibraphone : Craig Scott
piano : Tony Foster
tenor sax : Cory Weeds
bass : Russ Botten
drums : Joe Poole

producer : Craig Scott

recorded December 3, 2013 by Dave Sikula at Cory Weeds’ Cellar Jazz Club in Vancouver, BC

■曲目:
1. Lunar Blues
2. Groovin' High
3. Chart Of My Heart
4. The Night We Called It A Day
5. Corner Table
6. Head And Shoulders
7. Banana Funk
8. Auntie Mame
9. Stolen Moments
10.  Bossa Nova Do Marilla
11.  Ginza Samba





  

2023年3月18日土曜日

Mal Waldron Trio / Spring In Prague

 

 Mal Waldron(マル・ウォルドロン)は1925年ニューヨーク生まれのジャズ・ピアニスト、作曲家。ビリー・ホリデイの伴奏者としても知られ、ビリー・ホリデイ死去の5か月前に、アルバム Left Alone(レフト・アローン)を制作しビリーが作詞マルが作曲の Left Alone は、スタンダード・ナンバーとなっています。2002年12月2日ベルギーのブリュッセルで77歳で他界されています。
 「プラハの春」という単語は知っていますが、学生時代に世界史は無視してきたので何が起きたのか、よくわかっていませんので、ググります。
1968年4月に始まった「人間の顔をした社会主義」を掲げるドプチェクの指導の下で展開された、チェコスロヴァキアでの民主化運動。しかし、同1968年夏になると事態は急変、8月20日にソ連のブレジネフ政権は、ワルシャワ条約機構5ヵ国軍を侵攻させて軍事弾圧に踏み切り、市民の抗議の嵐の中をプラハの中心部を制圧、ドプチェクらを連行した。このチェコ事件によってプラハの春は踏みにじられてしまった。しかし、ゴルバチョフは1988年3月の新ベオグラード宣言の中でブレジネフ・ドクトリンの否定、東欧諸国へのソ連の内政不干渉を表明、1989年11月10日にベルリンの壁が破壊され、チェコスロバキアでも、1989年からの「ビロード革命」によって共産党体制は崩壊し自由化を実現した。この民主化運動自体を「プラハの春」と呼ぶこともあれば、チェコ事件を含めた期間の一連の流れを「プラハの春」と呼ぶこともあるらしい。
 このアルバムは1990年にドイツ・ミュンヘンで録音された作品です。その後1989年にベルリンの壁が崩壊し、ルーマニアのチャウシェスク王朝が吹きとび社会主義が崩壊。国内の秘密警察網が整備強化されて国民同士の監視と秘密警察への密告が奨励され、旧東ドイツと並んで東欧で最悪の警察国家となった。チェコがスロバキアと合併していたチェコスロバキアの時代、スターリン的抑圧に対する不満が爆発して、スロバキア人のドプチェク率いる政権が誕生し、自由化・民主化路線が布かれた訳です。1966年以降は、西ドイツのミュンヘンに住んで音楽活動を続けていた マルにとってはとてつもない環境の変化が周りに起きていた訳で、このアルバムは「プラハの春」と呼ばれる1968年の自由化の波という社会的なテーマを取り上げショパンの「革命」で幕を開ける本作が、旧ソ連によって叩き潰された「プラハの春」へのオマージュであるということで背景は、かなり重いアルバムですね。(そんな気はしていましたが調べるまで分かりませんでした)


 録音場所は、西ドイツのミュンヘン。レーベルは「Alfa Jazz」。いかにも日本のレーベルらしい、あからさまな企画盤で、プロデューサーも Tetsuo Hara と日本なところが素晴らしい。力強いピアノが印象的な作品で、出だしがショパンの Revolution のジャズ・バージョン。クラシックの原曲は知らないのですが、きっとやり過ぎなんだろうしピアノで、ばっさり切られるような曲になっています。ピアノをちゃんと勉強した人はあっけにとられることが容易に想像できますので、あえて原曲のクラシックは暫く聴かないことにします。そして East Of The Sun はスタンダードで Brooks Bowman 作曲。これは中々聴きごたえがある演奏でゴツゴツしたマルのピアノにタイトなドラムとブンブンするベースが素晴らしい。Let Us Live - Dedicated To East Germany はマルのオリジナル。アグレッシブなドラム・ソロから始まり、緊迫感のあるインプロが展開されます。少し劇場チックな展開なのがやり過ぎ感もありますが、その後のオリジナリティある展開は結構好きかもしれないです。いや独特です。そして主題である Spring In Prague もマルのオリジナル。どれほど激しい曲なのかと思っていたら、ゆったりとして落ち着いた曲です。先にも書きましたが ”民主化運動自体を「プラハの春」と呼ぶこともあれば、チェコ事件を含めた期間の一連の流れを「プラハの春」と呼ぶこともあるらしい" と言うことであれば、この曲は先の ”民主化運動自体を「プラハの春」と呼ぶ" 考えでの作曲だったのでしょう。ゆったりとした民主化へ向けての流れがこのイメージにあったのかと思います。次いで、On A Clear Day はスタンダード。なるほど革命が起きて、日が昇り、ドイツで生き延びる、そしてプラハの春、ある晴れた日とpらはの春の一連の流れが表現されている。重いですが次の曲は Spring Is Here 美しい風景描写のような世界、最後は We Demand で重々しく幕を閉じます。一瞬光が見えたかのようなプラハの春ですが、戦いと混沌は続くようです。硬質な重いタッチと言われるマルのピアノは、まさにその表現がぴったりで、またパウロ・カルドソのベースもマルに負けない個性的な演奏です。単なる企画ものでは終わらないイージーに聴くというより噛みしめるアルバムでした。重いなあ・・

piano : Mal Waldron
bass : Paulo Cardoso
drums : John Betsch

producer : Tetsuo Hara

recorded At Arco Studios in Munchen Feb. 19 & 20 1990

1. Revolution
2. East Of The Sun
3. Let Us Live - Dedicated To East Germany
4. Spring In Prague
5. On A Clear Day
6. Spring Is Here
7. We Demand




  

2023年3月17日金曜日

Quincy Jones / Q's Jook Joint


 ミュージシャンとしてはトランぺッターしてジャズ界で活躍し1960年代からはプロデューサーとして、ブラックミュージック界、アメリカのポピュラー音楽界の重鎮としてしたQuincy Jones。クインシー・ジョーンズを聴くといつも思うのは、ヒットする音楽をつくる方程式を持っている人ってイメージです。同時に思い浮かぶのが Incognito の Bluey で、同じような方程式を持っている人のイメージ(ブルーイはプレーヤーなので同じではないですか)
 それにしても久しぶりに、このアルバムを聴きます。発売されたのは1995年ですが、発売を待っていてのリアル・タイムで購入ではないはず。いつどこで購入したのかは思い出せないですね。可能性が高いのは札幌在住時代の、ソウル・ファンク系が充実していた中古レコード屋かなあと思ったりしながら聴いております。だとすると2015年ごろだから発売から20年以上経ってからの購入で、私的には新しめの音ですが実際は新しくはないですね。クインシーと言えば「愛のコリーダ」マイケル・ジャクソンの「スリラー」が思い浮かびますがマイケルの若い時との2ショット写真を発見しました。アルバムのジャケ写はマフィア感漂いますが、この写真はお若いですね。懐かしい。


 1989年に同じように多数のミュージシャン、それも大御所ばかりを集めた Back on The Block の時はグラミー賞などでプロデューサー・オブ・ザイヤーを受賞、それほど当時は勢いがあり、脂ののっていた時期だったと思いますが、それから5年、さすがにあれほどの勢いは感じられませんが、著名ミュージシャンの参加数の多さ、若手の起用もありながら、これだけのアーティストが集えるのは大御所クインシーにしか成し得ないことですし、これも充実の1枚で、甘くて、かっこよい。
 さてアルバムを再度聴き直して参りましょう。ヒット作のリメイクで Jook Joint Intro オープニングはショーに駆け付けるメンバーの慌ただしい様子を演出しているようで、その流れで次の曲 Let the Good Times Roll ビッグ・バンドによるショーの幕開けの演出。挨拶のようにボーカルが変わっていき、Stevie Wonder、U2のBono,、Ray Charlesなどなど。Cool Joe, Mean Joe (Killer Joe) インスト曲で、Keyboard ソロだけで Herbie Hancock 参加。耳覚えがある曲ですが調べてもよくわかりませんでした。同名の映画があるようで常識破りにエロ映画っぽいです。クインシーとはおそらく関係ない?You Put A Move On My Heart もともとイギリスのソウル・シンガー、マイカ・パリによってレコーディングされたもの。ボーカルは当時名前が未だ知られていなかったのカナダ人 Tamia が起用の透明感ある歌声が素晴らしい。Rock With You は Michael Jackson のヒット曲ですね。Brandy が可愛らしく色っぽく歌い、ラップでHeavy D。懐かしい~けど新しくなっちまった。Moody's Mood For Love では、James Moody と Take 6 のしっかりTake6サウンドの甘いハーモニー。Stomp はブラザース・ジョンソンへの提供曲。デッキブラシなどでリズム、サウンドを奏でるグループ Stomp が「Stomp」Chaka Khanがバックでシャウト。Jook Joint Reprise ここで Ray Charles が Funkmaster Flex と共にビッグ・バンドで再度登場と思ったら56秒。Do Nothin' Til You Hear From Me はJazzyな楽曲を Phil Collins が歌い Jerry Hey がトランペット。ヂューク・エリントンの作曲でした。Is It Love That We're Missin' は、現代的なネオ・ソウルで、セクシーな Gloria Estefan と これぞブラックの甘い歌声の Warren Wiebe で間違いなく誰が聴いてもカッコイイヤツです。Heaven's Girl は R.Kelly、Ronald Isley、Aaron Hall に Charlie Wilson のバラードっぽい曲です。楽曲的にはよくあるパターンだけど参加者の実力で極上に引き上げられている感じ。Stuff Like That はファンキー・ビートに Charlie Wilson、Brandy、Chaka Khan が登場。Ray Charles、Charlie Wilson、Brandy、Ashford & Simpson が豪華に花を添えていて、チャラい曲だけど良い曲なんですよね。Slow Jams は SWV、Babyface、Barry White、Portrait でBabyface から始まるバラード。曲の展開の仕方が上手すぎ。At The End Of The Day (Grace) は トーツ・シールマンのハーモニカが美しい。グッときます。Jook Joint Outro で、Barry White、Tamia がエンディング。
 売れ筋の曲に、これぞ売れるブラック・フレイバーを振りかけて、極上のミュージシャンがこぞって参加の、いくら金がかかってるんだかわからない超大作です。

producer : Quincy Jones

1. Jook Joint Intro
featuring : Funkmaster Flex, Queen Latifah, Shaquille O'Neal, Tone Loc
vocals : Barry White, Bono, Brandy, Chaka Khan, Charlie Wilson, Gloria Estefan, James Moody, Patti Austin, Ray Charles, Siedah Garrett, Stevie Wonder
2. Let The Good Times Roll
vocals : Bono, Ray Charles, Stevie Wonder
3. Cool Joe, Mean Joe (Killer Joe)
featuring : Queen Latifah, Tone Loc
vocals : Nancy Wilson
4. You Put A Move On My Heart
vocals : Tamia
5. Rock With You
featuring : Heavy D
vocals : Brandy
6. Moody's Mood For Love
vocals : James Moody, Take 6
7. Stomp
featuring : Coolio, Luniz, Melle Mel, Shaquille O'Neal, Yo-Yo
vocals : Chaka Khan, Charlie Wilson
8. Jook Joint Reprise
featuring : Funkmaster Flex
vocals : Ray Charles
9. Do Nothin' Till You Hear From Me
vocals : Phil Collins
10. Is It Love That We're Missing
vocals : Gloria Estefan, Warren Wiebe
11. Heaven's Girl
producer : R. Kelly
vocals : Aaron Hall, Naomi Campbell, R. Kelly, Ronald Isley
12. Stuff Like That
vocals : Ashford & Simpson, Brandy, Chaka Khan, Charlie Wilson, Ray Charles
13. Slow Jams
vocals : Barry White, Portrait, SWV, babyface
14. At The End Of The Day (Grace)
vocals : Barry White
15. Jook Joint Outro
vocals : Barry White, Tamia





  

2023年3月12日日曜日

Robert Glasper Experiment / Black Radio

 

 あまり興味が無かった Robert Glasper(ロバート・グラスパー)ですが、食わず嫌いもイカンかと思い、中古ならいいかと最近になって購入してます。2009年の Double Booked は既にレビュー済ですが、同時購入のアコースティックのトリオ作品は未試聴のまま。しかし超売れたことは知っている Black Radio が中古で売っていたので先に聴いてしまいました。聴いたのは当然行きつけの「おでんバー」ですが、古いもの好きな人が多いので、皆さん存在は知っていたものの聴いたことは無く、反応としてフーン程度でした。拒否は無かったですね。私は今なら聴いても違和感ないんですが、発売当時の2012年だったらヒップ・ホップは聴かなかったので拒否だったかもしれません。


 Robert Glasper の個人名義ではなく Experiment と名付けられたことで実験的なプロジェクトと位置づけされていると思われるこのバンド。21世紀のジャズの最重要アルバムと言われる Black Radio を再度聴いてみます。最強なのかはレコード業界の売り文句なので、その人それぞれに感じ方は違うとは思いますが・・
 それでは再度聴きながらレビューでも、Lift Off/Mic Check 出だしはジャズ調ですがボコーダーを使用して近未来的、映画の予告編で場面がパラパラ変わっていくような感じです。良きかな。Afro Blue は Erykah Badu をボーカルに起用したアシッド的な楽曲です。Roy  / Hard Groove で1曲参加していた方でハスキーな歌声が魅力で、この楽曲も極めて正統派な感じです。Cherish The Day は Lalah Hathaway (ダニー・ハザウェイの娘さんですね)がボーカル。時代は違うので当たり前ですがお父さんのイメージとは異なり現代的なソウル・シンガーですね。今風の音作りですが違和感は全くなしですし開放感があって良い曲です。Gonna Be Alright (F.T.B.) は、 Ledisi がボーカルです。はじめて聴く人ですがレンジが広くて黒さがあって好みなので、今度アルバム買ってみたくなりました。Always Shine になると、グッとラップっぽい曲になってきます。しかしバックで鳴るピアノがジャズ的で心地よい感じ。斬新なアイデアでここで初めて演奏されたようなコンセプトではないような気がしますが、非常にコマーシャル。ここら辺が評価高い理由なんですかね。Move Love は、渋いつぶやき系のモロにラップではじまり、透明感のある楽曲に展開していきます。メロディーも薄目で目立たない曲ですが印象には残る不思議な楽曲です。Ah Yeah は、ネオソウル的な曲調とラップでよく聞くリズム展開で現代的ではありますが、エレピが古さを感じさせてくれていて、さりげない雰囲気づくりが上手い。なるほど。Consequence Of Jealousy きれいな曲ですが、少しこの雰囲気に飽きてきました。作業時に流して聴くには良いかな。Why Do We Try は、Stokley のクセのあるボーカルですが曲のアレンジが、かなり素敵です。ソウル的でありながら無機質なリズム(5変拍子かな)そして、これに乗せた違和感のないボーカルとすごいですね。終わり方も渋い。Black Radio はアルバムタイトルですから最も力を入れている曲でしょうが、あまりにラップでどうなんだろうか?ラップ・ファンにとってはジャズの入り口にもなるだろうし評価される曲なんでしょうが、私にとってはそれほどでもない。他に良い曲がこのアルバムにはいっぱいあります。Letter To Hermione は、Bilal のボーカル。この人も初めて聞きますが良いですね。渋い黒人のおばちゃん的な皺がよったやや低めの声質も素敵です。と思って聞いていたら、ディアンジェロのツアー・バック・ボーカリストの男性でした。それも1978年生まれでした。 Smells Like Teen Spirit でラストとなります。ニルバーナですね。Robert Glasper もこれを聴いて育ったんですねえ。良きことかな。
 コラボしたミュージシャンがネオ・ソウルのベテラン勢で皆が素晴らしいパフォーマンスなので、イメージしていたヒップ・ホップ・バリバリではありませんでしたので、ゲストの作品を聴いてきた方はには容易に想像がつくアルバムなのではないかと感じ世紀の大発明という感じはしなかったです。真剣に聴きこむというより流して聴いた方が気持ち良いアルバムですね。他のアルバムも興味持って聞いていこうと思います。

The Robert Glasper Experiment
Robert Glasper :k:eyboards, piano, fender rhodes (exc. 10, 11), synthesizer (10), arrangements (2, 11, 12)
Casey Benjamin : vocoder (1, 3, 4, 8, 12), flute (2, 11), saxophone (3, 6, 9, 10), synthesizer (3–5, 12), arrangement (8)
Derrick Hodge : Bass
Chris Dave : Drums, percussion
Jahi Sundance : turntables (1, 8, 10, 12)
Stokley Williams : percussion (9)

Featured Artists
Shafiq Husayn : vocals (1)
Erykah Badu : vocals (2)
Lalah Hathaway : vocals (3, 12)
Bilal : vocals (4, 11)
Lupe Fiasco : vocals (4)
Ledisi : vocals (5)
KING (6)
Anita Bias : vocals
Amber Strother : vocals
Paris Strother : keyboards
Chrisette Michele : vocals (7)
Musiq Soulchild : vocals, snapping (7)
MeShell Ndegeocello : vocals (8)
Stokley Williams : vocals (9), percussion (9, 12)
Yasiin Bey : vocals (10)

1. Lift Off/Mic Check (featuring Shafiq Husayn)
2. Afro Blue (featuring Erykah Badu)
3. Cherish The Day  (featuring Lalah Hathaway)
4. Always Shine (featuring Lupe Fiasco and Bilal)
5. Gonna Be Alright (F.T.B.) (featuring Ledisi)
6. Move Love (featuring KING[3])
7. Ah Yeah (featuring Musiq Soulchild and Chrisette Michele)
8. Consequence Of Jealousy (featuring Meshell Ndegeocello)
9. Why Do We Try (featuring Stokley)
10. Black Radio (featuring Yasiin Bey)
11. Letter To Hermione (featuring Bilal)
12. Smells Like Teen Spirit





  

2023年3月11日土曜日

Kenny Burrell with Art Brakey / At The Five Spot Cafe

 

 大学に入り、ジャズ研に入ってもフュージョン系ばかりでウェスぐらいは知っていましたが他のジャズ・ギタリストの知識はほぼ皆無でした。 Kenny Burrell(ケニー・バレル)を知ったのも結構オジサンになってからでしたが、ブルージーなギターなので非常にとっつき易く今では大好きなギタリストの一人です。このアルバムは購入してから数か月家で寝かせてから、行きつけ「おでんバー」で初聴きしたのですが、王道過ぎると完全にBGMとなってしまい、中々の演奏の割に周囲の反応は可もなく不可もなくで、若干つまらない結果に終わりました。へえ、これ誰?ジャケット見せてよ。みたいな反応があると自慢できるんですがねえ。


 さてこのアルバム、ビレッジ・ヴァンガードと並び、ジャズのライブ録音で有名なニューヨークのクラブの Five Spot Cafe(ファイブ・スポット)での録音です。録音は1985年8月15日の、昼の部と夜の部のライブを録音したもので、アルバム前半が夜の部、後半が昼の部で本盤収録と実際の当日の演奏順序は逆だった書いてあるものを見ました。オリジナルLPより本CDのほうが曲目が増え曲順が違っています。メンバーの参加を見るとピアノの Bobby Timmons(ボビー・ティモンズ)が 1~4曲目, Roland Hanna(ローランド・ハナ)が 5~8曲目を弾き、テナー・サックスの Tina Brooks は 1~4曲目の前半参加ということは、昼の部は後半、夜の部は前半は本CDでは正解。オリジナルなら違うと言うことになりそうです。なおTina Brooks はあまり見かけない名前なので私の所有音源で調べてみたら、Jimmy Smith で Groovin' At Smalls Paradise Volume 2 という1958年のアルバム1枚分だけ参加されていました。調べてみると ミュージシャンとしての活動は 1951~1961年ですが、ブルノートとの契約は1958年で薬物依存により引退せざるを得なくなったとのことでなるほど。
 1曲目は Birks' Works は、イントロの黒さ漂うティモンズのピアノのイントロから始まりバレルがシングル・トーンのブルージーなギターで曲の雰囲気を作っていってティナ・ブルックスの高めのトーンの丁寧なテナーサックス・ソロで、ボビー・ティモンズのコード・ソロはカッコイイ!最初から盛り上がります。1曲目のインパクトが大きいです。Lady Be Good はバレルのアルバムによく出てくる曲でガーシュインの作曲です。この曲ではブレイキーのドラミングが冴えています。自身のバンドで見られる派手さは控えめにしているものの短め控えめのナイアガラ・ロールや他の楽器のソロの時に、絶妙のタイミングでスネアを入れて煽り、それに応えるメンバーを聴いていると非常に息の合った演奏です。ティモンズのノリノリのピアノ・ソロではひたすらリズム・キープでスピード感で煽るところなど集中して聴くと店で流して聴いているときと全く印象が異なりますね。Lover Man は、一息入れるゆっくりめの曲。バレルのギターも色気がたっぷりでサービスたっぷりですが音の粒立ちや滑らかさが非常によい脂ののった演奏。ピアノ・ソロの後のバレルのギター・ソロの後ろで寄り添うような小さい音でのフルートのようなテナーも秘かにしびれました。Swingin' これで前半の夜の部が終了となります。最後には一挙に盛り上がりますね。ブレイキーの途中ではさむ行進曲のようなリズムの取り方もセンスあります。Hallelujah アルバムでは後半、ライブ当日では前半が始まります。ハレルヤというよりイメージより混沌とした地獄を感じるようなテーマが斬新で印象的。メンバーが4人に減っただけにソロも長尺長いドラムソロなどもあります。ピアノはローランド・ハナに変更となりティモンズの黒っぽさ漂う演奏からクラシック・ピアノの感覚を感じるピアノになりました。 Beef Stew Blues は、名前からするとR&B的な曲を予想しましたが、正調なジャズ・ブルースをキチンと演奏されている感じです。バレルのイメージはこっちの方がしっくりきます。If You Could See Me Now もシックなバラードでローランド・ハナのピアノが美しく響きます。これを聴きながら昼から酒を飲んだら心地よく寝れそうです。36-23-36 はこのアルバムで唯一のバレルのオリジナル曲でバレルの曲だけに、これぞまさにブルージー。大御所メンバーも勢揃いの盛り上がっている後半ライブを前半に持ってきて聴き手を惹きつけたところで、静かに後半を聴かせるというプロデューサーの Alfred Lion の演出もにくい作品です。

guitar : Kenny Burrell
piano : Bobby Timmons (1 to 4), Roland Hanna (5 to 8)
bass : Ben Tucker
drums : Art Blakey
tenor sax : Tina Brooks (1 to 4)

recorded by : Rudy Van Gelder
producer : Alfred Lion

recorded at "Five Spot", New York on August 25, 1959.

1. Birks' Works
2. Lady Be Good
3. Lover Man
4. Swingin'
5. Hallelujah
6. Beef Stew Blues
7. If You Could See Me Now
8. 36-23-36





  

2023年3月10日金曜日

Sly And The Family Stone / Stand!


 1969年リリースの4thアルバムで、全米で300万枚以上を売り上げ1960年代を代表するアルバムの1枚。ローリング・ストーン誌の『オールタイム・ベスト・アルバム500』においては第121位にランクイン、1968年11月に先行販売のシングル Everyday People は、4週間全米シングルチャートの第1位となっています。
 次作の1971年「暴動」 There's a Riot Going On は、ドラッグまみれになりながらオーバーダブなどでほぼスライが独りで創りあげたアルバムで暗くヘビーなアルバムで評判は必ずしも良くないようです。しかし、このアルバムはバンド全員で作ったハイテンションで解りやすいサウンドになっていて、この落差を楽しむのも面白いのではないでしょうか。


 本アルバムは前述したとおり、バンド・サウンドの勢いに乗っているゴリゴリ・ファンクもあり、ポップ路線もありで、とにかく力強いサイケなサウンドですのでスライの入門として、ここからハマってる人もおそらく多いのではないでしょうか。サウンドの要は何よりも絶好調のラリー・グラハムの強いベースラインで、聴いているうちにどんな人間の気持ちをも高揚させ、体を揺らせる効果があります。そして全体的に多用されるワウとボコーダーがサイケな気分にさせてくれます。
 捨て曲が無いのも名アルバムの要因の一つでしょう。Sing a Simple Song、I Want to Take You Higher はアップテンポに気分を高揚させてくれて You Can Make It If You Try、Stand! などはメッセージ性が強い曲です。また Everyday People、Don't Call Me Nigger, Whitey には政治的・社会的なテーマがあります。特に Don't Call Me Nigger, Whitey という人種差別撤廃を旗に掲げている曲がありながらも黒人の自立を説くブラックパンサーはスライに対して、白人のグレッグとジェリーをバンドから追い出し、もっと黒人寄りの曲を作るように圧力を掛けたと言われており、この時代の背景の複雑さには相変わらず考えさせられるものがあります。やはりこの時代の音楽を聴くには、吉田ルイの名著「ハーレムの熱い日々 BLACK IS BEAUTIFUL」を読み直すとより深いものになるような気がします。 
 本作の発表後の8月には、愛と平和と人種統合の理想を背景にウッドストック・フェスティバルに出演した。アルバム・タイトルの Stand! はこの時代の人種差別などへのメッセージでもあり、ダンスフロアで人々を踊らせながらも Stand! と人種問題への提起を行うアルバムでもあるのが意味深です🎵

vocals, organ, guitar, piano, harmonica : Sly Stone
vocals, guitar : Freddie Stone
vocals, bass : Larry Graham
trumpet : Cynthia Robinson
trumpet : Greg Errico
background vocals : Little Sister (Vet Stone, Mary McCreary, Elva Mouton)

1. Stand!
2. Don't Call Me Nigger, Whitey
3. I Want to Take You Higher
4. Somebody's Watching You
5. Sing a Simple Song
6. Everyday People
7. Sex Machine
8. You Can Make It If You Try

▶ Stand!




  

2023年3月5日日曜日

Herbie Hancock / Quartet

 

 いきつけの「おでんバー」では、ジャズに、こだわりのある方が多いので持って行った音源をかけて反応を見るのが楽しいのですが、傾向として、Bill Evans とJaco Pastorius の反応は悪いことはわかっています。Herbie Hancock、Chick Coreaについては嫌われてハイなようですが反応は薄目、コメントはほぼ無しなので歓迎はされていないようです。という訳で、このアルバムも実験として持って行きましたが1曲目だけ反応があり以降は薄目でした。なんとなく、わかっていましたので別に悔しくもなく、むしろ1曲目に反応があったのは発見でした。(やはり嫌われてはいない)
 と言うことでこのアルバム、ジャケットをよく見ると2Record set on 1 Compact Disc の表示なので2枚のアルバムが一つにまとまっているようです。そのうちダブル可能性があるのでなるべく覚えておきたい情報です。ライナー・ノーツはついていませんでした。裏面には曲目、メンバー、録音場所などは書いてありますが二つのアルバム名は書いてありません。でググって見ると、1981年夏の来日の際、信濃町のスタジオで録音された14曲は二枚のアルバム「Herbie Hancock Trio.1981」「Quartet Herbie Hancock」でリリースされた。日本では前者のアルバムに収録された「ステイブルメイツ」が素晴らしく人気盤となる。しかし「ステイプルメイツ」はこのアルバムには入っていない?ではありませんか。この東京のレコーディングでは2枚分のアルバムが収録されたが、状況証拠としては、本CDで2枚分のアルバムは収録されていないのではないでしょうか?想像するに、CDに入っていたのはライナーノーツが無く、安っぽい1枚の紙印刷物を4つ折りにしたものなので「海賊版のようなもので中身を確かめずに違うCDのジャケットをスキャンしてコストを抑えるために4つ折りにした」で当たっているような気がします。つまりはダブる可能性は無いってことですか。なるほど。


 下調べにだいぶ時間を使ってしまいましたが、状況がわかったところでアルバムのレビューです。Well You Needn't 言わずと知れたモンクのナンバーが1曲目。原曲よりもスピード感あふれる演奏で完璧なフレージングで突っ走ります。特に目立つのは Wynton Marsalis  の独壇場のような正確無比な音使い若干19歳の若者が先輩たちについてこいと言わんばかりのソロを展開し、続くハンコックのピアノ、ロン・カーターのベースも本気さが伺えます。つまらない演奏が多いと言われる Wynton Marsalis ですが、これは当たりのほうの演奏ではないでしょうか。 'Round Midnight もモンクです。ハービーのリリカルなピアノのイントロ、ミュート・トランペットがテーマを吹きフリー・テンポからきっちりとしたリズムになり、いきなりのビッグバンドのような爆音でテーマが終了してソロ回しに展開。ベタですが楽しいかもしれない。そしてテンポ・アップしてまた表情を変え、エンディングは、テンポを落として夜中に散歩に戻るような展開は、これまたにくいエンターテイメント。Clear Ways は Tony Williams の楽曲で、スピード早めのハード・バップ。音量は各楽器マックスの録音ですがピアノ・ソロの時に興奮して誰かがわめいているような音が聞こえます。ハンコックでしょうか?そのぐらいのノリノリの演奏であります。A quick sketch は、Ron Carter の楽曲で16分30秒の大作で、テーマ部分はサビ以外はワン・コードでタイトル通り手早く作った曲なのでしょうか。構造が単純な分、退屈な感じはしますがメンバーの技量が素晴らしいだけに聴きごたえのある内容になっています。The Eye Of The Hurricane はハンコック作曲で、Maiden Voyage でもお馴染みのヤツです。嵐がモチーフの曲だけあってエネルギッシュな演奏にもってこいの楽曲です。ここでもピアノ・ソロで誰かがわめいているかのような音が聞こえます。やはりハンコックですか。そしてトニーのドラム・ソロが本能の演奏と言う叩き方に興奮。終わりも派手ハデでナイス。Parade も Ron Carter の楽曲で今回は短いですが長めの8分。ボサのリズムで良い曲で箸休めのような役回りの曲かと思っていたら後半が熱い。Parade はエレガントなピアノイントロが長めに展開、トニーのリム・ショットが効いたドラムとトランペットで場面を変える。この Wynton Marsalis の演奏も当たりですね。つまらなくないし押し引きもバランス良いです。ハンコックのバラバラと音がちりばめられるようなソロも素晴らしい。The Sorcerer はハンコック、Pee Wee は Tony Williams の楽曲でともに、ハンコック、トニー、ロン・カーターが参加しているマイルスの Sorcerer 1967年からの楽曲です。I Fall In Love Too Easily は、Jule Styne, Sammy Cahn のスタンダード。シナトラが歌い、マイルスの Seven Steps to Heaven でもこのメンバーで吹き込まれています。しっとりとした美しい響きで大人なジャズの雰囲気にと Wynton Marsalis の響きが合っています。
 廉価版のいい加減なパッケージではありますが聴き終わっても余韻の残るアルバムでした。モンクとマイルスの曲の選曲が多いのですが、このメンバーでは、ただのスタンダードの演奏ではなくなるところが良かったです。当たりです🎯

piano : Herbie Hancock
bass : Ron Carter
drums : Tony Williams
trumpet : Wynton Marsalis

producer : David Rubinson & Friends Inc., Herbie Hancock

recorded  July 28, 1981 at CBS Sony Studios, Shinanomachi, Tokyo, Japan

1. Well You Needn't
2. 'Round Midnight
3. Clear Ways
4. A Quick Sketch
5. The Eye Of The Hurricane
6. Parade
7. The Sorcerer
8. Pee Wee
9. I Fall In Love Too Easily



▶ Parade


  

2023年3月4日土曜日

Thelonious Monk / Piano Solo On Vogue

 


 フランスの Disques Vogueレーベルに1954年に残した作品です。モンクは Blue Noteで2作品を録音し 1952年に Prestige に移籍し、この1954年に2作品を発表しています。モンクは、Salon International du Jazz なるジャズ祭に出演でフランスに行きフェスが終わった6月7日にラジオ用にこの作品は録音されていたのですが、 Prestige と契約していたため直ぐに発売されることはなく後にLPでリリースされたとのこと。ちなみにこの作品の録音前に行ったフェスでの演奏はフランスのミュージシャンとのトリオで、腕は良かったらしいが相性はあまりよくなかったらしいです。
 つまり、当時 Prestige での契約条件は良くなかったこと、ニューヨークでの酒場での演奏をするための キャバレー・カード も無かったこと等からフランスへの出稼ぎに行ってこの名作が録音されたわけでファンとしては嬉しい限り。ジャケットはオリジナルのものからは変更されているようですが、CDの方はラッパーがピアノ弾いてるみたいなジャケ写で私としては下の元のジャケ写が好み。そしてよく見ると、このジャケットのスペルは【THEOLONIOUS】!となっています。それも上下です。Vogueレーベルの担当者は発売後に、どこで気づいたのだろうか、その時の焦り具合が気になります。
 

 モンクのソロ作品と言えば、1957年の Himself、1957年 Alone In San Francisco、 1965年 Solo Monk があり。最初のソロ作品は、この1954年のこのPiano Solo On Vogue。
 録音した時代によってモンクのモンクらしさは異なります。私的にはモンク自身そのものが滲み出ており、独特の世界エッセンスが色濃くでて一人フランスで尖がった演奏をしているこのソロ作品がかなり好きです。素朴な演奏ですがじっくり聞くと味わいがドンドンでてくる作品です。
 それではこの作品を再度聴きながらレビューです。 'Round About Midnight 1944年モンク作曲で、モンクの作曲した作品の中でスタンダードとして最もよく演奏されている曲と思います。この時点で作曲してから10年経っているのかと思いながら聴くと、迷い箸のような音の模索は無くこの演奏は完成されているなと感じます。Evidence これもモンク作。テーマのメロディ自体がバッキングのような個性的な楽曲です。モンク独特の不協和音が適度にちりばめられていて1拍ベース音を先に入れて独特のリズム感が生まれています。Smoke Gets In Your Eyes これはJerome Kernの名スタンダードで、出だしは原曲に忠実にしながら段々とモンク節をちりばめていく演奏は素晴らしい。有名スタンダードをとりあえず選曲してアルバムに入れている感じは全くなくモンクの曲のように収められています。Well You Needn't モンク作曲で自身の作品でも数多く演奏されている名曲で、ユーモラスに感じてしまうメロディーが特徴的な曲でソロで弾かれると、また良いですね。Reflections これもモンク作品ですね。優雅なメロディーで正統派な感じがする曲で、モンク作品の中では比較的モンク臭さが少ない曲かと思います。このアルバムの演奏でも割合と滑らかで平坦な演奏の部類に属する感じでゴージャス感があります。We See もモンク作品です。テーマの音のばらけ具合が丁度良くモンクらしさが出る。曲も良いがモンクの演奏もかなりのもの。聴き直して再確認です。Eronel これもモンクです。エレガントなメロディーの中の狂気のような感じでしょうか。正統派のコードの流れに少しづつ違和感が入ってくるのが気もち良いですね。クセになります。Off Minor これも良い曲ですよね。モンク作品です。モンクは楽々弾いていますが、こういった曲を頭の中に入れてインプロビゼーションしていくのって大変そうだなって思いながら聴いてます。Hackensack モンクの作品ですが、テーマは Well You Needn't と被っていますね。どういった事情なのか調べるのは面倒になってきたんで置いときます。
 これはいつでも聴けるお気に入りの場所に保存しておきます。

1.'Round About Midnight
2. Evidence
3. Smoke Gets In Your Eyes
4. Well You Needn't
5. Reflections
6. We See
7. Eronel
8. Off Minor
【Bonus】
9. Hackensack





  

2023年3月3日金曜日

Miles Davis / Live Evil


 1950~60年代前半ぐらいの品行方正なジャズをやっていたマイルスの方がどちらかと言えば好みではあるんですが、Bitches Brew が最初に購入したマイルスのアルバムでした。カッコいいことやってるんだなという認識はありましたが、興味はそれほどなくマイルス自体は自分は好きではないという意識がありましたが、色々な年代のアルバムを聴いているうちに、これは奥が深いかもしれないと思い始め、現時点での音源所有枚数は38タイトルで1人のアーチストでは最大の音源数を所有するようになってしまいました。人は変わるもんで自分でもビックリです。
 これは自分はマイルスは好きではないんだと自覚している段階でタワレコでウロウロしていてジャケットが目につき、帯を見たら「ここでのキース・ジャレットの演奏は本当に凄まじい」に煽られて思わずレジに行ってしまった作品であります。


 気になるジャケットデザインのモチーフはコンセプトはインドで描かれているのは「シヴァ神」(1曲目のタイトルでもありますね)それで、シタールが使われていたりギターが John McLaughlin(ジョン・マクラフリン)な訳です。ファンクに彩られた大傑作と帯にある通り、Michael Henderson(マイケル・ヘンダーソン)のベースのファンク要素がかなり強め。ほとばしるエネルギーは感じるけど多少聴いてて疲れるアルバムかなあというのが最初に聴いたころの感想で、好きに暴れろと言わんばかりの皆さんのソロに若干チープさを感じていました。が、このタイプのアルバムは聴いているうちに印象が変わるもので、チープだと感じていたものが、今回聴き直すと独創的に感じたことを表現する手段としてフォーマットが使われ楽器の持つパワーをリズムと電気的な力で増幅させている素晴らしい演奏に感じてきました。結局 Bitches Brew と比較し てどっちが好みと思っていたことは、どうでもよいことで、楽しみ方は色々あるということですね。
 先に総評を書いてしまいましたが曲のレビューです。Sivad は Davis の逆さ読みで1970年の Get Up With It の楽曲 Directions と Honky Tonk を Teo Macero が編集合体させた作品で、Milesのワウ・トランペットがギターのような唸りを上げ邪悪なムード。ちなみにLive-Evil も Live のスペルを反対に書くと Evil で、このアルバム全体も交互に「静と動」が表現されるコンセプトとなっています。ということで Little Church は、Hermeto Pascoal作の静の作品で、不思議感漂う3分間となります。Medley: Gemini/Double Image そしてGemini 、Joe Zawinul作の Double Image のメドレーとなっていますが、レビューは未だ書いてありませんが Gemini は聴いたばかり、どこが使われているのかは実は未だ私にはわかっていません。静と動の繰り返しと書きましたが静が続いています。What I Say は、HendersonとDeJohnetteのリズム隊がきっちりかみ合った動の部分になります。今は気になりませんが多分ここら辺の8ビートのドラムが私には雑に聞こえていたんですかね。Keith Jarrettのキーボードも暴れています。Milesもプレイで応えますが、ここら辺が今はオッとなるんですが聴きなれていないうちは雑に聞こえていたのもわかる気がします。ラストはDeJohnetteの圧巻のドラムはファンクではなくロック。Nem Um Talvez は、またもHermeto Pascoal 作の静の4分作品。なるほど、この人は静の役割なんですね。
 と、ここで1枚目CDは終わり、2枚目 Selim は Hermeto Pascoal 作の2分。タイトルは Miles の逆綴りで、ここまでくると相反性を示すアートよりも駄洒落感あります。Funky Tonk は、そうです動になり、Miles のワウをかけた電化マイルスのトランペットでブラックな感じ満載で、McLaughlin のカオスなギター、Jarrett のとりとめの無い独奏状態のエレピ・ソロが不思議感を出しながら、コードス・トロークのギターが入ったりで不思議感満載になりファンクで終了。この良さが前回聴いた時は理解できませんでした。最後は Inamorata and Narration by Conrad Roberts で動のハイテンション。基本ファンク路線で、Miles のワウ・トランペットは、結構前に出て仕事しています。おそらく観客は大興奮でしょう。

2CDで1971年発売で、1970年12月19日のセラー・ドアで行われたライブ。コロムビア・レコードのスタジオB録音が収録されています。

trumpet : Miles Davis
guitar : John McLaughlin (except 2-1 2-2)
percussion : Airto Moreira
drums : Jack DeJohnette

producer : Teo Macero

【Disc1】
1. Sivad
bass : Michael Henderson
piano : Keith Jarrett
sax : Gary Bartz

2. Little Church
bass : Dave Holland
keyboards : Chick Corea, Herbie Hancock, Keith Jarrett
sax : Steve Grossman
electric piano, whistling : H. Pascoal

3. Medley: Gemini / Double Image
bass : Dave Holland
drums : Billy Cobham
keyboards : Chick Corea, Joe Zawinul
sax : Wayne Shorter
sitar : Khalil Balakrishna

4. What I Say
bass : Michael Henderson
piano : Keith Jarrett
sax : Gary Bartz

5. Nem Um Talvez
bass : Ron Carter
keyboards : Chick Corea, Herbie Hancock, Keith Jarrett
sax : Steve Grossman
voice : Hermeto Pascoal

【Disc2】
1. Selim
bass : Ron Carter
keyboards : Chick Corea, Herbie Hancock, Keith Jarrett
sax : Steve Grossman
voice  Hermeto Pascoal

2. Funky Tonk
bass : Michael Henderson
piano : Keith Jarrett
sax : Gary Bartz

3. Inamorata And Narration
bass : Michael Henderson
piano : Keith Jarrett
sax : Gary Bartz



Sivad


Selim