2024年6月8日土曜日

Steve Lacy / The Straight horn of Steve Lacy

 

 Solid Jazz Giants という復刻版の名盤シリーズで見かけて、試聴せずに購入の一枚です。ソプラノ・サックス片手のジャケも気になりどんなもんかの試し買いでした。後で知りますが、Steve Lacy はソプラノ・サックス奏者で、フリージャズで有名な方。Monk の愛好家でもあり、Cecil Taylor と出会ってからフリー派となったらしい。このアルバムでもアルバム6曲中、Monkを3曲、Cecil Taylorを2曲、Parkerを1曲 となっています。がフリーの片鱗ぐらいの音使いなのでフリーに変化する過程の貴重な録音と言うことでしょうか。フリー好きの「おでんバー」のマスターはフリーの時代のこの人の演奏を知っていたのですが普通の演奏を聴くことはなかったらしく、一緒に聴きながら普通のジャズに感慨深いとのことでした。
 しかしながら再度、そう思って聴くと饒舌で吹き出すと止まらないソロや、吹きながらドンドン展開していくインプロにその片鱗は見えるような気がします。ジャズはアドリブにこそ面白さがあるということが世に言われておりますが、まさにこのアルバムは上手く楽曲を構成させる技術ではなく、感じることを音にして出していくジャズの面白さがこのアルバムでは伝わってきます。バリトンとソプラノ・サックスの組み合わせでピアノレスのカルテット編成は斬新で、低音と高音の対決なのか?と思いきや、バリトンもソプラノもテナー寄りの音域に近づけた演奏になってます。フリーになりそうではありますが音程と秩序は保たれています。


  私の中でグッと興味ある人になった Steve Lacy、ピアノレスのこの編成でこの盛り上げ方をした共演者にも注目すしてみましょう。バリトンの Charles Davis は Sun Ra とも一時共演する人物で斬新な感覚と才能で、Taylorの曲 Air でのアドリブは明らかにレイシーを触発していますね。そしてベーシスト John Ore は、このアルバムで3曲とりあげられているMonkのカルテットに参加していたベーシストで、共演者がどんなところに飛んで行っても堅実なリズムキープを続けます。自分は決して熱くはならず共演者に火をつけてしまうベーシストで、堅実な演奏です。がこちらも後に Sun Ra に参加していますね。ピッタリと寄り添 いながら弾くベース徹しているように思えます。ドラムの Roy Haynes はコルトレーン Impressions 、モンクとコルトレーンの共演ライブ Live at the Five Spot Discovery! なんかに参加していて、やはり後にフリージャズにも突入する人です。
 モダン・ジャズから前衛的ジャズへ切り込んでいく境界線のアルバムは非常に興味深い🎵

soprano sax : Steve Lacy
baritone sax : Charles Davis
bass : John Ore
drums : Roy Haynes

recorded at Nola Penthouse Sound Studios, New York on November 19, 1960.

1. Louise / written by Cecil Taylor
2. Introspection / written by Thelonious Monk
3. Donna Lee / written by Charlie Parker
4. Played Twice / written by Thelonious Monk
5. Air / written by Cecil Taylor
6. Criss Cross / written by Thelonious Monk

Louise




  

2024年6月7日金曜日

The Brand New Heavies / Heavy Rhyme Experience vol 1


 以前はDJ・ラッパーがどうも苦手で、正直、最初は苦手なアルバムでしたが今ではお気に入りになっています。ラップを好んで聴くようになったわけではありませんが、ジャズ・フュージョン系にラップを取り入れたもの等が普通にありますし、どうやら耳慣れしてきたようです。耳馴れとは面白いものでフリー・ジャズなんかも同じように、以前は聴かなかったのですが、いつもの音楽好きの集う「おでんバー」でかかっているのを聴いているうちに普通に聴けるようになってきました。環境と経時変化で好みの音楽が変わってきているのに気づくと自分でも時々ビックリします。
 このアルバムも最初は違和感があった一枚ですが、いつの間にか普通に聴くようになっていた一枚です。そして今回気づいたのがアルバム名ずっと Rhythme と思っていたのが、実は Rhyme であったこと。rhythm(リズム)は最後にeが付かないので気づけよと自分でも思いますが 韻(イン)でした。つまりラップの韻のことを指していたんですね。なるほど。
 いつもお馴染みの華やかなグルーブではない。HIP HOPであるけど、ファンクに音を寄せた生の演奏。打ち込みではないバックトラックが素晴らしい。


 それではレビューです。Bonafied Funk ファンクにのせたラップは Main Source (Large Professor、Sir Scratch、K-Cut) で、Andrew Levy のベースはいつもより単純ではあるけど、やはりツボを押さえています。ベースラインが印象的でありますがギターの単音リフもツボです。It's Gettin' Hectic は、ユニットGang Starr をフューチャー。このユニットは Guru、DJ Premier のお二人。これも単純なファンク・リフにのせたラップで、ラップをのせやすいように楽曲的に細かい仕掛けは無し。Who Makes the Loot? は、このアルバムで一番耳に残るベースラインで印象的で、BNH的なサウンドかも知れません。ラッパーは Grand Pubaで緩い感じで余裕があります。Wake Me When I'm Dead 更に曲的には凝った演奏となります。Masta Ace がフィーチャーで雄叫び系ラップ。Jump N' Move レゲエ系MCの Jamalski で、早口言葉のようなラップは楽しい。タイトルがジャマイカンに訛っているのも面白い。Death Threat はBNHの音が後ろにあるファンクサンドに Kool G Rap がフィーチャー。Simon Bartholomew のワウが聞いたギターがとても相性がよろしいようでこの曲も捨てがたい。State of Yo は、Black Sheep がフィーチャー。ややジャジーな感じのするリフに Hip-Hop で相性はかなりよろしいようで。力の抜けた感じが好感。Do Whatta I Gotta Do 凄くラップ感がありますが、曲に動きがあります。Ed O.G がフィーチャー。演奏にもスリリングさが加わっています。Whatgabouthat 南夫と読むのか、レゲエMCの Tiger がフィーチャー。言葉に勢いがあります。こんな言葉で普通にまくしたてられたら迫力で怖いと思います。Soul Flower ラップではありますが、非常にダンサブルでこれも良い。ラストは The Pharcyde がフィーチャー。やはり最後は渾身の一撃って感じですね。
 私自身相変わらずラップに興味は無いのですが、このアルバムはBNHらしさとラップの共存が素晴らしく別格の一枚🎵

bass : Andrew Levy
drums : Jan Kincaid
guitar : Simon Bartholomew
percussion : Paul Daley
sax : Mike Smith
trumpet : Martin Shaw

producer : The Brand New Heavies

1. Bonafied Funk  featuring : Main Source
2. It's Gettin Hectic  featuring : Gang Starr
3. Who Makes The Loot?  featuring : Grand Puba
4. Wake Me When I'm Dead  featuring : Masta Ace
5. Jump N' Move  featuring : Jamalski
6. Death Threat  featuring : Kool G Rap
7. State Of Yo  featuring : Black Sheep
8. Do Whatta Gotta Do  featuring : Ed O.G
9. Whatgabouthat  featuring : Tiger
10. Soul Flower  featuring : The Pharcyde






  

2024年6月2日日曜日

Boscoe


 1970年代のシカゴのアフロ・ファンクで発売は Kingdom Of Chad Records。かなりアンダー・グラウンドなサウンドで、Sun Ra、Art Ensemble Of Chicago などのスピリッツを内包しているとの評もあります。ドロドロのサウンドはアーシーでコズミックさも感じます。レコードなんかは amazon で $4,500 ですから2024年5月現在のレートで、なんと 688,500円 と高額取引であります。もちろん私はリイシューのCDの購入でしたらからリーズナブル。入手が中古か新品かは覚えていません。リイシュー版も発売はレアものの再発/発掘を手がけるシカゴのレーベルの「NUMERO」が立ち上げた紙ジャケ専門レーベル「アスタリクス」とのこと。アスタリクスの表記は恐らく「4*」(ライナーノーツの裏側にありました)愛聴盤ではありますが、今回調べて見て初めて知りました。


 メンバーは6人でベースの Ron Harris は、Ramsey Lewis の Salongo に参加していましたが、他のメンバーの活動は結構マイナーな感じです。


 それではレビューです。Introduction は、スタートからスピリチュアルな幕開け。最初に聴いた時には退屈な感じがした気がしますが何十回も聴いていると、このドラマチックで大袈裟な構成とオドロオドロしいボーカルが大好きになってきます。またエンディングのベースが怪しさを醸し出すところも最高です。Writin' On The Wall も、イントロに続き怪しさ満載の朗読ボーカルとトランス状態になっているかのような叫び。管楽器はトランペットとトロンボーンですが誰が吹いているのかフルートがホラーっぽい。行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」の常連の一人には、このエネルギー最高ですねの誉め言葉頂きました。He Keeps You あたりからは、普通にファンクの演奏ですがボーカルが野太い声で、更にどこかがアフリカンな響き。ここらへんでベースの Ron Harris の変態なベースラインとバカ馬なテクニックと正確なリズム感が気になってきます。We Ain't Free では、グルービーなリズムになってきて普通にファンクもするのかと妙に感心していると、いきなりのベースとドラムとパーカッションのアフリカンの長い間奏とフリーのようなソロに脳がやられてから最後はテクニック剝き出しのソロ合戦とサイケな展開にノックアウトです。If I Had My Way は は Sly とかが好きな人には受け入れやすい楽曲になります。ギターのカッティングとホーン部隊の上手さにも注目です。I'm What You Need では、メロー・ソウルの始まりにコマーシャルな部分を感じながら、ボーカルの野太いバリトン・ボイスが怪しさを加えながらファルセットのボーカルがポップさを加えコーラスがチャンと上手い所が怖いです。Money Won't Save You ここまで聴いてくると、この曲が一番普通に聞こえるので何かつまらなく思えてくるようになれば、相当このアルバムを聴きこんでいる証拠でしょう。私には、もはや普通過ぎて刺激が足りません。Now And Den きっとNow and Then なんですかね。普通ではありますがカオスを含んだスピリチュアルなソウル風ファンクです。
 購入当初ジャケットがレゲエカラーなのでそっち系かと思いきや、そちら要素は全くなく、スピリチュアル一歩手前のファンク。古きよきサウンドで全体的にリバーブかかりすぎでサイケな雰囲気カオスな香りが漂い、マニアにはヨダレものの一枚かと思います🎵

guitar : James Rice
bass : Ron Harris
drums : Steve Cobb
sax : Darry Johnson
trumpet : Harold Warner
trombone : Reg Holden

Producer – Joseph Ehrenberg

Recorded at Paragon Studios, Chicago, Illinois.
Originally released in 1973.

1. Introduction
2. Writin' On The Wall
3. He Keeps You
4. We Ain't Free
5. If I Had My Way
6. I'm What You Need
7. Money Won't Save You
8. Now And Den





  

2024年6月1日土曜日

Miles Davis / The Best Of Miles Davis 80th Anniversary

 

 Miles Davis 生誕の80周年記念ベスト。発売は2006年の既に20年以上経過した盤で、日本でのみ発売のコンピですね。改めてマイルスが何時亡くなったの調べると1991年ですが、当時マイルスが亡くなった時に日本のテレビでも大きく報道されたていました。この時は私はマイルスにほぼ興味なしでしたが、ジャズ・ミュージシャンが亡くなってもテレビで大きく取り扱われることは、ほぼ無いのに、さすが大物マイルスと思った記憶あります。
 選曲に使われた盤は Cannonball Adderley / Somethin' Else(1958)Miles Davis / All Stars Vol1(1952,1953)、Miles Davis / All Stars Vol2(1952,1953)、Miles Davis / Birth Of The Cool(1949-50) のしっかりジャズしていた時代の作品で、楽曲全体の構成に重きを置いていた時代のものとなっています。
Japan-only compilation sourced from Somethin' Else (Cannonball Adderley), Miles Davis Vol. 1, Miles Davis Vol. 2, and Birth Of The Cool. Although not named among the credits, the obi states RVG (Rudy Van Gelder) remasters are the audio source.


 選曲は「スイングジャーナル」の編集長、後に音楽評論家となる中山康樹氏で「マイルスを聴け!シリーズ」を中心としてマイルスに関する著作を多く出版されています。私自身は中山康樹氏の著書ではマイルスではなく、「ビル・エヴァンスについていくつかの事柄」「スイングジャーナル青春録 大阪編、東京編」「現代ジャズ解体新書」などを楽しく読ませていただいております。私自身は、昔「音楽は聴いて感じるものであって、時代背景・解説なんて面倒なものは知らなくても良い」のスタンスでしたが、ここ最近は「作品を作った時代背景やミュージシャンの関係性などを知ってから聴くと、また違った感覚で作品を楽しむことが出来る」ことに楽しみを見出しています。また単体での作品を楽しむこともありますが、アルバムを通して聴いて、その構成にプロデューサーやミュージシャンの製作意図を感じることも楽しみの一つとなってきました。
 改めてコンピ・アルバムも単純に作品を並べただけの駄作もあれば、選曲者の意図やセンスを感じるものもありリスナーとして楽しんでいます。この作品も行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」の住人に最初は「なんだコンピか、全部聞いたことはあるけどね」の反応であったのが、聞き始めれば懐かしんでもらい「ああ、これ好きだったんだよね」「これは面白くないアルバムだったんだよな」などの様々な反応があり、改めて中山氏の選曲にセンスを感じる次第です🎵

1. Somethin' Else / Somethin' Else
2. Israel / Birth Of The Cool
3. Autumn Leaves / Somethin' Else
4. Ray's Idea / All Stars Vol1
5. I Waited For You / All Stars Vol2
6. Boplicity / Birth Of The Cool
7. Love For Sale / Somethin' Else
8. Dear Old Stockholm / All Stars Vol1
9. Deception (aka Conception) / Birth Of The Cool
10. Donna (aka Dig) / All Stars Vol2
11. Yesterdays / All Stars Vol1
12. Weirdo (aka Sid's Ahead) / All Stars Vol2
13. How Deep Is The Ocean / All Stars Vol1
14. Lazy Susan / All Stars Vol2
15. It Never Entered My Mind / All Stars Vol2





  

2024年5月31日金曜日

Shelly Manne & Bill Evans Feat. Monty Budwig / Empathy

 


 整然としたトラッドな内容で悪くもないが、楽しくも無いと最初に思っていましたが、再度聴いていると、意外と中毒性があるかもしれません。相変わらず中古で購入です。購入時の帯には「アルバム・タイトルそのままに、三者がお互いに感情を移入しあった、滋味溢れる名盤です」とあり楽しみにしてました。しかし行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」では Bill Evans は好まれていないので、持って行くのを後回しにしていたため、かなり寝かせての試聴でした。持ち込み試聴の結果、好きではないとは言われなかったが、興味は示されなかったので、まあまあの反応。ちなみに、以前に持ち込んだ Bill Evans / A Simple Matter Of Conviction でも、似たような反応で、このアルバムはドラマーが Shelly Manne で同じ、ベースは Eddie Gomez でしたので、Bill Evans 嫌いに Shelly Manne の組み合わせは緩和する傾向にあるようですが、Bill Evans と Shelly Manne の録音はこの2枚しかないようです。ちなみにこのアルバムは1961年に盟友のベーシスト Scott LaFaro を交通事故で亡くした失意の Evans が Riverside から Verve にレーベル移籍してからの第一作で Interplay の次の録音となっています。


 それでは意外と中毒性があるかもしれないと思い始めたアルバムを再度聴きながらのレビューです。The Washington Twist 1962年のブロードウェイ・ミュージカル Mr President の主題曲とのことで流行りを直ぐに取り入れたもので古典スタンダードでは無いようです。Evans は右手のシングルノートで軽やかにメロディーにより陰鬱な感じはしません。 Danny Boy は、アイルランド民謡で Evans の美しい演奏と魅力が堪能できる3分44秒の小作品の名演と思います。イントロから引きこまれます。LaFaro への鎮魂歌のようにも想像をかき立てられます。Let's Go Back to the Waltz  1曲目と同じ Irving Berlin による作品で同ミュージカルに使われた曲です。ゆったりワルツとアップテンポを組み合わせた楽曲でバンドとしてのインタープレイが堪能できます。これも4分34秒と短め。With a Song in My Heart 1952年映画『わが心に歌えば』(With a Song in My Heart)の主題歌で Richard Rodgers の作品。Manne Budwig のコンビが快適なリズムを作ってインタープレイがとても良いと思います。後半で Evans が活躍してきます。Goodbye は、物憂げな出だしですが、このトリオを象徴する内面的な美しさを表現した作品で Gordon Jenkins の有名なスタンダード。I Believe in You 1961年のミュージカル How To Succeed In Business Without Even Trying 努力しないで出世する方法 の主題歌で Frank Loesser 作品。割と流行りの作品をとりれた選曲です。リズミカルでありながら繊細な Evans のピアノが映える作品で、これもこのトリオならではの演奏のような気がしますし、静かに陰として終わるようなイメージの Bill Evans 作品よりも、この爽やかさで終了するのはとても印象が良いです。
 面白みに欠けるような気もしたが、よくよく聞いてみると演奏や構成など、味がある録音かと思います🎵

piano : Bill Evans
bass : Monty Budwig
drums : Shelly Manne

producer : Creed Taylor

recorded in New York, Aug. 14, 1962. 

1. The Washington Twist  (Irving Berlin)
2. Danny Boy  (Frederick Weatherly) 
3. Let's Go Back to the Waltz  (Irving Berlin)
4. With a Song in My Heart (Richard Rodgers, Lorenz Hart)
5. Goodbye  (Gordon Jenkins)
6. I Believe in You (Frank Loesser)





  

2024年5月26日日曜日

Stone Free / A Tribute To Jimi Hendrix


 1993年リリースで、ジミヘンのプロデューサー・エンジニアだった Eddie Kramer の発案から製作されたジミヘンのトリビュート・アルバムです。Eddie Kramer は南アフリカ生まれですが、19歳の時にロックが流行り出した60年代初期のイギリスに移住。レコーディング・プロデューサー/エンジニアとして、ビートルズ、デヴィッド・ボウイ、エリック・クラプトン、ジミ・ヘンドリックス、キンクス、KISS、レッド・ツェッペリン、ストーンズ、サンタナ、ピーター・フランプトン、ホワイトスネイクなど、かなりの大物のコラボレーターを務めておられる凄い人です。


 ジミヘンは音楽のジャンルを問わずに、様々な影響を与えたミュージシャンです。このトリビュートにも様々なジャンルの人が参加しています。だからジミヘンの曲をやってもジャンルを超えた個性がでるもので、演奏者によってこのジミ・ヘンの曲が全く別物に生まれ変わっています。ロックやブルースのミュージシャンは直接的に音やコード遣いが影響を受けるのは容易に想像を受けますが、パット・メセニーもやっぱり聴いてたんだと言うこともわかり、メセニーらしからぬロック的ギターにビックリしたりニヤリとします。そういった意味でも中々の濃い内容のトリビュートであると思います。


 ジミヘンはみんな好き・・でも時代は変わるし音楽も変化していきます。これは名盤ではないが演奏している人が楽しんでいるし、聞いている私たちもニヤっと楽しめるヤツです。既に廃盤みたいですが、中古盤店などでたまにお手ごろ価格で見かけます。是非聞いてみてニヤッとしていただきたい🎵

1. Purple Haze / The Cure
vocals : Robert Smith
guitar : Perry Bamonte, Robert Smith
keyboards : Perry Bamonte
bass : Simon Gallup
drums : Boris Williams

2. Stone Free / Eric Clapton
vocals : Eric Clapton
backing vocals : UNV
guitar : Eric Clapton, Nile Rodgers
keyboards : Richard Hilton
bass : Bernard Edwards
drums : Tony Thompson

3. Spanish Castle Magic / Spin Doctors
vocals : Chris Barron
guitar : Eric Schenkman
bass : Mark White (2)
drums : Aaron Comess

4. Red House / Buddy Guy
guitar, vocals : Buddy Guy
piano : Johnnie Johnson
bass : Billy Cox
drums : Ray Allison

5. Hey Joe / Body Count
Bass : Mooseman
Drums : Beatmaster "V"
Guitar : D-Roc (3), Ernie C
Lead Vocals : Ice-T
Mixed By : Michael White (4)
Producer : Ernie C

6. Manic Depression / Seal & Jeff Beck
vocals : Seal
guitar : Jeff Beck
bass : Pino Paladino
drums : Jimmy Copley

7. Fire / Nigel Kennedy
acoustic guitar, guitar (Bottleneck) : Sagat Guirey
guitar : John Etheridge
bass : Rory McFarlane
drums : Rupert Brown
cello : Caroline Dale
viola (acoustic), violin (phased), violin (kerrang), piano (doctored) : Nigel Kennedy

8. Bold As Love / Pretenders
mixed by : Bob Clearmountain

9. You Got Me Floatin' / P.M. Dawn
guitar : Herbie Tribino

10. I Don't Live Today / Slash & Paul Rodgers With The Band Of Gypsys
vocals : Paul Rodgers
guitar : Slash
bass : Billy Cox
drums : Buddy Miles

11. Are You Experienced? / Belly
Vocals : Gail Greenwood, Tanya Donelly
Bass : Gail Greenwood
Drums, Percussion : Chris Gorman
Guitar : Tanya Donelly, Thomas Gorman
\
12. Crosstown Traffic / Living Colour
lead vocals : Corey Glover
vocals : Doug Wimbish, Will Calhoun
guitar : Vernon Reid
bass : Doug Wimbish
drums, piano, whistle (Kazoo) : Will Calhoun

13. Third Stone From The Sun / Pat Metheny
guitar, bass, keyboards, programmed by, synthesizer (Synclavier) : Pat Metheny
bass : Jaco Pastorius, Matthew Garrison
drums (additional) : Jack DeJohnette

14. Hey Baby (Land Of The New Rising Sun)/ M.A.C.C
vocals : Chris Cornell
guitar : Mike McCready
bass : Jeff Ament
drums : Matt Cameron





  

2024年5月25日土曜日

Roy Haynes Quartet / Out Of The Afternoon

 

 「リーダーは Roy Haynes となっているが、実質 Roland Kirk のアルバム」 と皆さんが、こぞって書かれている下馬評。Roland Kirk はアクが強すぎるだけに、自分が主役のアルバムだと、そればかりが目立ってしまいますが、Roy Haynes がリーダーとなることで Roland Kirk が、その色を出して、カルテットとして成立しているアルバムと表現しなければ Roy Haynes に失礼ではないかと思いますが、ドラマーと強烈な個性を持つ管楽器奏者では目立ち方は違いますので致し方ない。
 タイトルは収録曲には無いので、このアルバムのコンセプトを示すものと普通想像します。ジャケ写も森の中で撮影され、さぞかしゆったり、のんびりした内容であると思いきや Roland Kirk の参加するアルバムで、攻めていない内容などはあり得ませんでした。実際その通りで Roland Kirk はハードボイルド。Roy Haynes は自分がリーダーではあるものの、Tommy Flanagan や  Roland Kirk のソロの時はバックから支えに回り、出る時は出る印象です。そしてこのセッションの舞台裏が書かれているものを発見。Haynes が、ある夜 Five Spot で、対バンとして出演していた Kirk とのセッションを行い感銘を受けて Impuls のプロデューサー Bob Thiele に本作の企画を持ちかけたことで実現したとあります。しかし自分のリーダーアルバムの前に Kirk のリーダーアルバム Domino に参加している。アルバムは Mercury から発売されている事実を考えると Haynes の一方的なラブコールでは無いようです。


 私の行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」では、Roland Kirk 信者が多いのですが確かこのアルバムをかけた時には熱量がマダマダ足りないような発言をされている人が多かったような気がします。それでは改めて聴き直していきましょう。Moon Ray は、ミドルテンポでじっくりときます。Kirk はまずはテナーサックス、そして恐らくマンゼロでテーマを吹き、一人ユニゾンが相変わらず強烈ですが未だおとなしい。ちなみにマンゼロはソプラノサックスのネックとベルを曲げてある楽器で、サクセロとも言われます。ストリッチは古代楽器で、ソプラノとアルトの中間音域を受け持つサックスの仲間とのこと。Fly Me to the Moon が始まると Kirk は普通にテーマが吹きますが、やはり圧が強いのと発音がやたらはっきりしています。やはり Kirk に注目が集まってしまうのは仕方ないですか。彼ら流の演奏だが本当に月まで飛んでいきそうな力強い演奏です。Raoul はリーダーの Haynes の荒々しいドラムから始まる高速バップ。作曲は Haynes。バンドとしては Kirk 少な目のバランスの取れた演出です。リーダーのドラミングに高揚感があります。Snap Crackle イントロで「ロイ!」「ヘインズ!」と叫んでいるのはTommy Flanaganで、当初はカークに叫ばせる案もあったらしい。Kirk はテーマをテナー、マンゼロ、ストリッチの3管で吹いている。If I Should Lose You 1930年代の古いスタンダード。テーマはストリッチで吹いているらしい。演奏は熱くなりすぎることなく過ぎていくと思ったらソロ部分になると、やはり時々いきなり連発してしまうのは、やはりと言った感じ。Tommy Flanagan のソロの冷静さとの対比が極端です。Long Wharf は Haynes が少年時代を過ごしたボストンをイメージして作曲したとのことですが、ボストンのイメージがこの単純な音から浮かぶことは私にはできませんでした。Grimes のアルコでのベースソロはこの曲以外でも聴けますが、このアンバランスにエネルギーは感じます。最後は Some Other Spring はしっとりとしたバラードで、Haynes は自分リーダーアルバムだけに平穏に終わりたかったようです。そして随所に小技は入れてきてるのがニヤリ。
 改めて聴いてナルホド少々スパイスの効いた感じがマニアにはたまらない魅力かもしれません。たまに聴き直したいアルバムですね🎵

drums : Roy Hayne
tenor sax, manzello, strich, C flute, nose flute : Roland Kirk
piano : Tommy Flanagan
bass : Henry Grimes

producer: Bob Thiele May 16(1, 6, 7) & 23(2, 3, 4, 5), 1962

recorded at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey Label: Impulse!  May 16 & 23 1962
 
1. Moon Ray (Artie Shaw, Paul Madison, Arthur Quenzer) 
2. Fly Me to the Moon  (Bart Howard) 
3. Raoul 
4. Snap Crackle 
5. If I Should Lose You (Leo Robin, Ralph Rainger) 
6. Long Wharf 
7. Some Other Spring (Irene Kitchings, Arthur Herzog Jr.) 

▶ Raoul




  

2024年5月24日金曜日

Louis Armstrong / Plays WC Handy

 

 この手のCDは、聴いてみたらコンピと言うことが多いのですが、これはチャンとした録音です。1954年7月に米コロンビアのディレクター George Avakian が、デッカから、このメンバーを借り受けてシカゴで吹込みを行ったとのこと。Louis Armstrong にとっても、1人の作品を一時にまとめて録音するのは初めてであり「ブルースの父」と言われたWC Handyのものであるだけに十分な準備を行ってレコーディングに臨んだとのことです。


 WC Handy は、1873年生まれで、この録音の4年後の1958年でした。元々はクラシック音楽の訓練を受けたミュージシャンで、ブルースマンでは無く、彼のダンス・バンドが提供していたのは、黒人の富裕層向けの品のいい音楽だったそうです。しかし1903年にナイフでスライドを弾くブルースマンに魅せられ、ブルースを楽譜出版したのがMemphis Blues で   St. Louis Blues、Beale Street Blues、Yellow Dog Blues を発表して大儲けしたそうです。ブルースだけど始まりはシート・ミュージックだった訳で、ここら辺が知的な感じです。この録音時に81歳だった WC Handy は視力を失って病床にいたとのことですが感激で涙を浮かべていたそうです。


 古い録音のコンピでは3分程度の曲が20曲ほど羅列されることも多いので聴いている途中で飽きてしまうことが多いのですが、これは行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」でも、飽きがこない録音と評判が良かったアルバムです。
 それではレビューです。初っ端は St. Louis Blues から始まります。第1部は Velma Middleton が歌い、Louis がトランペットで短く間奏を入れてから、自身がユーモラスに歌います。Louis 自身も何度かレコーディングしているのを聴いたことがありますが、これは名レコーディングなのではないでしょうか。Yellow Dog Blues これも Handy のヒット曲。Yellow Dog は黄色い犬では無く、ミシシッピー・デルタとその奥地をつなぐヤズー・デルタ鉄道の別名とのこと。ボーカルは Louis 一人でとっている軽めのブルースです。クラリネットがあると柔らかく聞こえます。最後は情感たっぷりのトランペットソロに満足です。 Loveless Love は、どこかで聴いたことがあります。それもそのはず原曲は古い民謡の Careless Love で Velma、Louis が交代で歌っています。私も原曲をどこで知ったのか覚えていませんが、おそらく小学生とかの時のような気がします。懐かしいですね。Aunt Hagar's Blues ゆったりめのテンポで丁寧な演奏です。ボーカルは無しかなと思わせる長めのトランペットソロから Louis の歌です。改めてトランぺッターは歌好きで上手い人が多い。Long Gone これも聴いたことがあります。恐らくSlim Gaillard あたりがやっていたのをどこかで見たのかと思います。コミカルで和気あいあい。大好きです。The Memphis Blues 超有名ブルースが来ました。 WC Handy 作品の中でもブルースの名前が付く最初の作品とのこと。1909年に市長選に使われた Mr. Kramp が、原曲とのことで試聴の名前は Edward Crump 後に伝説の市長となる方のようです。拝見したところ丸メガネの真面目そうな白人でした。Beale Street Blues メンフィス市街のビール市街が舞台で、この盛り場の情景が歌われています。情感を込めて歌われています。歌詞は確認していませんが昔の酔っ払いが歌う酒や女がテーマで無いことと予想しています。Ole Miss Blues これはメンフィスとニューオリンズを結ぶ、当時の高速鉄道が舞台とのこと。これはインストのジャズ・ブルースとなっています。ニューオリンズ・ジャズの雰囲気が時代を反映しています。Chantez Les Bas 題名はフランス語のようです。ルイジアナがフランスの植民地であった時代にクリオール(黒人とフランス人の混血)が多フランス語訛りのクリオール語が使われていたことが由来とのこと。クラリネットの Barney Bigard もクリオールとのこと。Hesitating Blues これも古くからの民謡とのミックスらしいですが、聞き覚えは私にはありません。純然としたブルースに聞こえます。Atlanta Blues これも前半は囚人の民謡とのこと。民謡とは、おそらくオールド・タイプのフォーク・ブルースかと思います。ここでは Louis のスキャットがチラリ。テープ操作による初めての試みとのことで貴重な録音なのでしょうか。
 もう一回聴き直しても飽きない録音でした。それどころかライナーノーツ等を見ながらの曲の背景などを確かめながらの聴いていると賢くなったような気がします。ベトナム戦争や人種差別の社会的な背景を強く思うところもありますが、悲劇ではない古き良きブルースとアメリカの歴史が、ここに在るようです🎵

trumpet, vocals : Louis Armstrong
trombone : Trummy Young
clarinet : Barney Bigard
piano : Billy Kyle
double bass : Arvell Shaw
drums : Barrett Deems
vocals : Velma Middleton

recorded in 7-12-1954 (3,4,5,7,8,10),  7-13-1954 (1,6,11), 7-14-1954 (2,9)

producer : George Avakian

1. St. Louis Blues (Handy)
2. Yellow Dog Blues (Handy)
3. Loveless Love (Handy) 
4. Aunt Hagar's Blues (Brymn, Handy)
5. Long Gone (From The Bowlin' Green) (Handy, Chris Smith)
6. The Memphis Blues (Or Mister Crump) (Handy, George A. Norton) 
7. Beale Street Blues (Handy) 
8. Ole Miss Blues (Handy) 
9. Chantez Les Bas (Sing 'Em Low) (Handy) 
10. Hesitating Blues (Handy) 
11. Atlanta Blues (Make Me One Pallet on Your Floor) (Dave Elman, Handy)