2024年5月24日金曜日

Louis Armstrong / Plays WC Handy

 

 この手のCDは、聴いてみたらコンピと言うことが多いのですが、これはチャンとした録音です。1954年7月に米コロンビアのディレクター George Avakian が、デッカから、このメンバーを借り受けてシカゴで吹込みを行ったとのこと。Louis Armstrong にとっても、1人の作品を一時にまとめて録音するのは初めてであり「ブルースの父」と言われたWC Handyのものであるだけに十分な準備を行ってレコーディングに臨んだとのことです。


 WC Handy は、1873年生まれで、この録音の4年後の1958年でした。元々はクラシック音楽の訓練を受けたミュージシャンで、ブルースマンでは無く、彼のダンス・バンドが提供していたのは、黒人の富裕層向けの品のいい音楽だったそうです。しかし1903年にナイフでスライドを弾くブルースマンに魅せられ、ブルースを楽譜出版したのがMemphis Blues で   St. Louis Blues、Beale Street Blues、Yellow Dog Blues を発表して大儲けしたそうです。ブルースだけど始まりはシート・ミュージックだった訳で、ここら辺が知的な感じです。この録音時に81歳だった WC Handy は視力を失って病床にいたとのことですが感激で涙を浮かべていたそうです。


 古い録音のコンピでは3分程度の曲が20曲ほど羅列されることも多いので聴いている途中で飽きてしまうことが多いのですが、これは行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」でも、飽きがこない録音と評判が良かったアルバムです。
 それではレビューです。初っ端は St. Louis Blues から始まります。第1部は Velma Middleton が歌い、Louis がトランペットで短く間奏を入れてから、自身がユーモラスに歌います。Louis 自身も何度かレコーディングしているのを聴いたことがありますが、これは名レコーディングなのではないでしょうか。Yellow Dog Blues これも Handy のヒット曲。Yellow Dog は黄色い犬では無く、ミシシッピー・デルタとその奥地をつなぐヤズー・デルタ鉄道の別名とのこと。ボーカルは Louis 一人でとっている軽めのブルースです。クラリネットがあると柔らかく聞こえます。最後は情感たっぷりのトランペットソロに満足です。 Loveless Love は、どこかで聴いたことがあります。それもそのはず原曲は古い民謡の Careless Love で Velma、Louis が交代で歌っています。私も原曲をどこで知ったのか覚えていませんが、おそらく小学生とかの時のような気がします。懐かしいですね。Aunt Hagar's Blues ゆったりめのテンポで丁寧な演奏です。ボーカルは無しかなと思わせる長めのトランペットソロから Louis の歌です。改めてトランぺッターは歌好きで上手い人が多い。Long Gone これも聴いたことがあります。恐らくSlim Gaillard あたりがやっていたのをどこかで見たのかと思います。コミカルで和気あいあい。大好きです。The Memphis Blues 超有名ブルースが来ました。 WC Handy 作品の中でもブルースの名前が付く最初の作品とのこと。1909年に市長選に使われた Mr. Kramp が、原曲とのことで試聴の名前は Edward Crump 後に伝説の市長となる方のようです。拝見したところ丸メガネの真面目そうな白人でした。Beale Street Blues メンフィス市街のビール市街が舞台で、この盛り場の情景が歌われています。情感を込めて歌われています。歌詞は確認していませんが昔の酔っ払いが歌う酒や女がテーマで無いことと予想しています。Ole Miss Blues これはメンフィスとニューオリンズを結ぶ、当時の高速鉄道が舞台とのこと。これはインストのジャズ・ブルースとなっています。ニューオリンズ・ジャズの雰囲気が時代を反映しています。Chantez Les Bas 題名はフランス語のようです。ルイジアナがフランスの植民地であった時代にクリオール(黒人とフランス人の混血)が多フランス語訛りのクリオール語が使われていたことが由来とのこと。クラリネットの Barney Bigard もクリオールとのこと。Hesitating Blues これも古くからの民謡とのミックスらしいですが、聞き覚えは私にはありません。純然としたブルースに聞こえます。Atlanta Blues これも前半は囚人の民謡とのこと。民謡とは、おそらくオールド・タイプのフォーク・ブルースかと思います。ここでは Louis のスキャットがチラリ。テープ操作による初めての試みとのことで貴重な録音なのでしょうか。
 もう一回聴き直しても飽きない録音でした。それどころかライナーノーツ等を見ながらの曲の背景などを確かめながらの聴いていると賢くなったような気がします。ベトナム戦争や人種差別の社会的な背景を強く思うところもありますが、悲劇ではない古き良きブルースとアメリカの歴史が、ここに在るようです🎵

trumpet, vocals : Louis Armstrong
trombone : Trummy Young
clarinet : Barney Bigard
piano : Billy Kyle
double bass : Arvell Shaw
drums : Barrett Deems
vocals : Velma Middleton

recorded in 7-12-1954 (3,4,5,7,8,10),  7-13-1954 (1,6,11), 7-14-1954 (2,9)

producer : George Avakian

1. St. Louis Blues (Handy)
2. Yellow Dog Blues (Handy)
3. Loveless Love (Handy) 
4. Aunt Hagar's Blues (Brymn, Handy)
5. Long Gone (From The Bowlin' Green) (Handy, Chris Smith)
6. The Memphis Blues (Or Mister Crump) (Handy, George A. Norton) 
7. Beale Street Blues (Handy) 
8. Ole Miss Blues (Handy) 
9. Chantez Les Bas (Sing 'Em Low) (Handy) 
10. Hesitating Blues (Handy) 
11. Atlanta Blues (Make Me One Pallet on Your Floor) (Dave Elman, Handy) 





  

0 件のコメント:

コメントを投稿