2024年5月25日土曜日

Roy Haynes Quartet / Out Of The Afternoon

 

 「リーダーは Roy Haynes となっているが、実質 Roland Kirk のアルバム」 と皆さんが、こぞって書かれている下馬評。Roland Kirk はアクが強すぎるだけに、自分が主役のアルバムだと、そればかりが目立ってしまいますが、Roy Haynes がリーダーとなることで Roland Kirk が、その色を出して、カルテットとして成立しているアルバムと表現しなければ Roy Haynes に失礼ではないかと思いますが、ドラマーと強烈な個性を持つ管楽器奏者では目立ち方は違いますので致し方ない。
 タイトルは収録曲には無いので、このアルバムのコンセプトを示すものと普通想像します。ジャケ写も森の中で撮影され、さぞかしゆったり、のんびりした内容であると思いきや Roland Kirk の参加するアルバムで、攻めていない内容などはあり得ませんでした。実際その通りで Roland Kirk はハードボイルド。Roy Haynes は自分がリーダーではあるものの、Tommy Flanagan や  Roland Kirk のソロの時はバックから支えに回り、出る時は出る印象です。そしてこのセッションの舞台裏が書かれているものを発見。Haynes が、ある夜 Five Spot で、対バンとして出演していた Kirk とのセッションを行い感銘を受けて Impuls のプロデューサー Bob Thiele に本作の企画を持ちかけたことで実現したとあります。しかし自分のリーダーアルバムの前に Kirk のリーダーアルバム Domino に参加している。アルバムは Mercury から発売されている事実を考えると Haynes の一方的なラブコールでは無いようです。


 私の行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」では、Roland Kirk 信者が多いのですが確かこのアルバムをかけた時には熱量がマダマダ足りないような発言をされている人が多かったような気がします。それでは改めて聴き直していきましょう。Moon Ray は、ミドルテンポでじっくりときます。Kirk はまずはテナーサックス、そして恐らくマンゼロでテーマを吹き、一人ユニゾンが相変わらず強烈ですが未だおとなしい。ちなみにマンゼロはソプラノサックスのネックとベルを曲げてある楽器で、サクセロとも言われます。ストリッチは古代楽器で、ソプラノとアルトの中間音域を受け持つサックスの仲間とのこと。Fly Me to the Moon が始まると Kirk は普通にテーマが吹きますが、やはり圧が強いのと発音がやたらはっきりしています。やはり Kirk に注目が集まってしまうのは仕方ないですか。彼ら流の演奏だが本当に月まで飛んでいきそうな力強い演奏です。Raoul はリーダーの Haynes の荒々しいドラムから始まる高速バップ。作曲は Haynes。バンドとしては Kirk 少な目のバランスの取れた演出です。リーダーのドラミングに高揚感があります。Snap Crackle イントロで「ロイ!」「ヘインズ!」と叫んでいるのはTommy Flanaganで、当初はカークに叫ばせる案もあったらしい。Kirk はテーマをテナー、マンゼロ、ストリッチの3管で吹いている。If I Should Lose You 1930年代の古いスタンダード。テーマはストリッチで吹いているらしい。演奏は熱くなりすぎることなく過ぎていくと思ったらソロ部分になると、やはり時々いきなり連発してしまうのは、やはりと言った感じ。Tommy Flanagan のソロの冷静さとの対比が極端です。Long Wharf は Haynes が少年時代を過ごしたボストンをイメージして作曲したとのことですが、ボストンのイメージがこの単純な音から浮かぶことは私にはできませんでした。Grimes のアルコでのベースソロはこの曲以外でも聴けますが、このアンバランスにエネルギーは感じます。最後は Some Other Spring はしっとりとしたバラードで、Haynes は自分リーダーアルバムだけに平穏に終わりたかったようです。そして随所に小技は入れてきてるのがニヤリ。
 改めて聴いてナルホド少々スパイスの効いた感じがマニアにはたまらない魅力かもしれません。たまに聴き直したいアルバムですね🎵

drums : Roy Hayne
tenor sax, manzello, strich, C flute, nose flute : Roland Kirk
piano : Tommy Flanagan
bass : Henry Grimes

producer: Bob Thiele May 16(1, 6, 7) & 23(2, 3, 4, 5), 1962

recorded at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey Label: Impulse!  May 16 & 23 1962
 
1. Moon Ray (Artie Shaw, Paul Madison, Arthur Quenzer) 
2. Fly Me to the Moon  (Bart Howard) 
3. Raoul 
4. Snap Crackle 
5. If I Should Lose You (Leo Robin, Ralph Rainger) 
6. Long Wharf 
7. Some Other Spring (Irene Kitchings, Arthur Herzog Jr.) 

▶ Raoul




  

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