私、音楽は無節操に聴くタイプのジャズ好きです。聴かず嫌いは後で聴いた時になんでもっと早く聴きこんでおかなかったのかと思うことがしばしばあるものの、何となくフィーリングが合わない人もいます。Stan Getz はアクが強くない上品でクールなサウンドでテナーサックスの高音域を多用したプレイスタイルです。
そんなクールな印象ですが、人生はこの頃によくある酒とドラッグによる激しい状況のようです。1942年代の15歳の頃には演奏活動に入り16歳で酒浸りになりヘロインもやるようになる。1954年にはモルヒネ欲しさに、シアトルの薬局で武装強盗未遂事件を起こし逮捕となる言う写真や演奏からは想像もつかないアグレッシブなジャンキーぶりで、この録音が終わるころにはギターの Jimmy Raney は Getz の麻薬中毒に嫌気がさしてバンドを脱退したとのことです。このアルバムは、そんな状態の悪い時期の 1952年と1954年の3回の録音を一つのアルバムにまとめたものですが実にソフトで自然でアドリブとスイング感はとても良いバランスです。(良いことは認めまうが、今のところ私にはそれほど響いてはいません。何年後かに聴くと良さがわかるパターンのような気がします)
このアルバムは、オリジナルは、Clef Records から発売の2枚の10inchLP MGC 137 and MGC 143 の2枚が収録されたもので、それに1988年の再販で Verve Records から発売の MGV 8200、MGN 1034 が加わってできたアルバムのようです。と言うことはオムニバスの形式とは思いますが、単体でも有名なようです。
それではレビューです。Stella By Starlight は、素晴らしいメロディーですが流れるような感じで演奏は良いけど印象には残りづらいような気がします。教科書っぽいかな。Time On My Hands も、嫌みの無い演奏です。これも上手いんだけど主張は少ないですね。サックス奏者には良いのかな。’Tis Autumn は、まさに秋の様相です。Jimmy Raney ギターも軽くて素晴らしい。これは良いですね。前の2曲に比べると高音の使い方が良いんでしょう。The Way You Look Tonight では、アップテンポになります。少し熱めスイングなのでここら辺は好きな感じ。Lover Come Back To Me もアップテンポの2連続です。3分程度の小曲ですがこれもフレーズの洪水のような演奏が〇。Body & Soul は、何か完成されたものを感じます。早くなくても良いじゃないですか。Stars Fell On Alabama もバラードで高音使いが上手いです。細かなフレーズを詰め込んでくるのは32分音符攻めと言われているようでこの時代の特徴のようです。You Turned The Tables On Me これも甘いですねバラードです。延々と短い曲が続きますが短いのであっというまに流れていきます。Thanks For The Memory も落ち着いた曲です。なんとなくわかってきました。ここら辺が好きな人はこの嫌みの無い聞き流せるパターンがたまらない人達ですね。Hymn Of The Orient ここでアップテンポに戻ります。昔のダンスホールでかかっていたと思われる楽し気な曲でギターソロ短め、ピアノソロ短めは3分以内の制約ではしょうがない。These Foolish Things で、またバラードです。家でレコードを楽しんでいた時代には、このぐらいのライトな感じが丁度良いのかもしれません。How Deep Is The Ocean アップテンポではありますが少し哀愁漂います。Nobody Else But Me も短いが良い曲ではあります。Down By The Sycamore Tree これも良い曲なんですけど、短い曲の連発は疲れますね。I Hadn't Anyone Till You と
With The Wind And The Rain In Your Hair は、さすがにおまけっぽい感じで練習曲のような気もしてきました。
非常に評価が高いアルバムなのでファンとしては16曲も聴けるのは嬉しいのでしょう。しかしファン出なかったら前半は楽しかったのですが、結構聴ききるにはキツい感じでした。曲順などの構成も含め プロデューサーの Norman Granz も惰性で作ったのかなあと思ってしまいますが・・・🎵
tenor sax : Stan Getz
bass : Bill Crow (1 to 12), Bob Whitlock (13 to 16)
drums : Frank Isola (1 to 12), Max Roach (13 to 16)
guitar : Jimmy Raney (1 to 12)
piano : Duke Jordan (1 to 12), Jimmy Rowles (13 to 16)
producer : Norman Granz
Selections 1-8 recorded in New York City, December 12, 1952
Selections 9-12 recorded in New York City, December 29, 1952
Selections 13-16 recorded in Los Angeles, CA., January 14, 1954
1. Stella By Starlight
2. Time On My Hands
3. 'Tis Autumn
4. The Way You Look Tonight
5. Lover Come Back To Me
6. Body And Soul
7. Stars Fell On Alabama
8. You Turned The Tables On Me
9. Thanks For The Memory
10. Hymn Of The Orient
11. These Foolish Things (Remind Me Of You)
12. How Deep Is The Ocean
13. Nobody Else But Me
14. Down By The Sycamore Tree
15. I Hadn't Anyone Till You
16. With The Wind And The Rain In Your Hair