2023年12月10日日曜日

Stan Getz / Stan Getz Plays

 

 私、音楽は無節操に聴くタイプのジャズ好きです。聴かず嫌いは後で聴いた時になんでもっと早く聴きこんでおかなかったのかと思うことがしばしばあるものの、何となくフィーリングが合わない人もいます。Stan Getz はアクが強くない上品でクールなサウンドでテナーサックスの高音域を多用したプレイスタイルです。
 そんなクールな印象ですが、人生はこの頃によくある酒とドラッグによる激しい状況のようです。1942年代の15歳の頃には演奏活動に入り16歳で酒浸りになりヘロインもやるようになる。1954年にはモルヒネ欲しさに、シアトルの薬局で武装強盗未遂事件を起こし逮捕となる言う写真や演奏からは想像もつかないアグレッシブなジャンキーぶりで、この録音が終わるころにはギターの Jimmy Raney は Getz の麻薬中毒に嫌気がさしてバンドを脱退したとのことです。このアルバムは、そんな状態の悪い時期の 1952年と1954年の3回の録音を一つのアルバムにまとめたものですが実にソフトで自然でアドリブとスイング感はとても良いバランスです。(良いことは認めまうが、今のところ私にはそれほど響いてはいません。何年後かに聴くと良さがわかるパターンのような気がします)


 このアルバムは、オリジナルは、Clef Records から発売の2枚の10inchLP MGC 137 and MGC 143 の2枚が収録されたもので、それに1988年の再販で Verve Records から発売の MGV 8200、MGN 1034 が加わってできたアルバムのようです。と言うことはオムニバスの形式とは思いますが、単体でも有名なようです。
 それではレビューです。Stella By Starlight は、素晴らしいメロディーですが流れるような感じで演奏は良いけど印象には残りづらいような気がします。教科書っぽいかな。Time On My Hands も、嫌みの無い演奏です。これも上手いんだけど主張は少ないですね。サックス奏者には良いのかな。’Tis Autumn は、まさに秋の様相です。Jimmy Raney ギターも軽くて素晴らしい。これは良いですね。前の2曲に比べると高音の使い方が良いんでしょう。The Way You Look Tonight では、アップテンポになります。少し熱めスイングなのでここら辺は好きな感じ。Lover Come Back To Me もアップテンポの2連続です。3分程度の小曲ですがこれもフレーズの洪水のような演奏が〇。Body & Soul は、何か完成されたものを感じます。早くなくても良いじゃないですか。Stars Fell On Alabama もバラードで高音使いが上手いです。細かなフレーズを詰め込んでくるのは32分音符攻めと言われているようでこの時代の特徴のようです。You Turned The Tables On Me これも甘いですねバラードです。延々と短い曲が続きますが短いのであっというまに流れていきます。Thanks For The Memory も落ち着いた曲です。なんとなくわかってきました。ここら辺が好きな人はこの嫌みの無い聞き流せるパターンがたまらない人達ですね。Hymn Of The Orient ここでアップテンポに戻ります。昔のダンスホールでかかっていたと思われる楽し気な曲でギターソロ短め、ピアノソロ短めは3分以内の制約ではしょうがない。These Foolish Things で、またバラードです。家でレコードを楽しんでいた時代には、このぐらいのライトな感じが丁度良いのかもしれません。How Deep Is The Ocean アップテンポではありますが少し哀愁漂います。Nobody Else But Me も短いが良い曲ではあります。Down By The Sycamore Tree これも良い曲なんですけど、短い曲の連発は疲れますね。I Hadn't Anyone Till You と
With The Wind And The Rain In Your Hair は、さすがにおまけっぽい感じで練習曲のような気もしてきました。
 非常に評価が高いアルバムなのでファンとしては16曲も聴けるのは嬉しいのでしょう。しかしファン出なかったら前半は楽しかったのですが、結構聴ききるにはキツい感じでした。曲順などの構成も含め プロデューサーの Norman Granz も惰性で作ったのかなあと思ってしまいますが・・・🎵

tenor sax : Stan Getz
bass : Bill Crow (1 to 12), Bob Whitlock (13 to 16)
drums : Frank Isola (1 to 12), Max Roach (13 to 16)
guitar : Jimmy Raney (1 to 12)
piano : Duke Jordan (1 to 12), Jimmy Rowles (13 to 16)

producer : Norman Granz
 
Selections 1-8 recorded  in New York City, December 12, 1952
Selections 9-12 recorded in New York City, December 29, 1952
Selections 13-16 recorded in Los Angeles, CA., January 14, 1954 

1. Stella By Starlight
2. Time On My Hands
3. 'Tis Autumn
4. The Way You Look Tonight
5. Lover Come Back To Me
6. Body And Soul
7. Stars Fell On Alabama
8. You Turned The Tables On Me
9. Thanks For The Memory
10. Hymn Of The Orient
11. These Foolish Things (Remind Me Of You)
12. How Deep Is The Ocean
13. Nobody Else But Me
14. Down By The Sycamore Tree
15. I Hadn't Anyone Till You
16. With The Wind And The Rain In Your Hair





  

2023年12月9日土曜日

Bryan Adams / On A Day Like Today


 1998年に発表された通算の8枚目アルバムです。当時ブライアンが活動の基盤を置いていたのはカナダではなくイギリスとなっていた時で、このアルバムもイギリスでは11位となったものの、アメリカでは103位と売り上げは低迷でした。しかし飛ばしすぎない落ち着いた印象で、普段着のロックが気持ち良い作品となっています。


 ブライアンが音楽的な思考を改造したら今までの「売れる音楽」ではなくなってしまったという感じがします。人間誰しも変化していくものでありますから、それでしょうがないじゃないかと思いながら聴いています。ブライアン自体、これからあまりヒットには恵まれず、2015年からは、2年に一回ぐらいのマイペースなアルバム制作の間隔になっているようです。
 なにはともあれ、ヒット・メーカーとしての役割はもう卒業で、その時に感じる感性で音楽活動を続けるという姿勢に変更したとも思える音作りのアルバムでもあります。

 Bryan Adams の近況を見てみようと思って調べていたらオフィシャルHPは非常にシンプルなつくりで音楽性と一致した感じでした。でも少し見にくいかな 

Universal Music Japan のページはさすがに見やすい


guitar, bass, piano, vocals:Bryan Adams
keyboards : Phil Western, Robbie Buchanan
organ piano : Dave Pickell, Vince Jones
guitar , bass : Keith Scott
bass:Dave Taylor
drums:Mickey Curry
percussion : Danny Cummings

producer : Bob Rock (1 to 3, 5 to 9, 11, 12, 14), Bryan Adams

recorded at the Warehouse Studio Vancouver, Canada and by the Warehouse Studio Mobile Unit Ocho Rios, Jamaica June - August 1998

1. How Do Ya Feel Tonight
2. C'mon C'mon C'mon
3. Getaway
4. On A Day Like Today
5. Fearless
6. I'm A Liar
7. Cloud Number Nine
8. When You're Gone
9. Inside Out
10. If I Had You
11. Before The Night Is Over
12. I Don't Wanna Live Forever
13. Where Angels Fear To Tread
14. Lie To Me





  

2023年12月8日金曜日

Booker Ervin / The Song Book

 

 The Song Book は、ジャズのスタンダード集のこと。1964年録音の、ワン・ホーン・カルテットによるスタンダード集。タフ・テナーと呼ばれ「お下品」と評されることもある独特な力強いサックスと Flanagan の優美なピアノが Ervin に惑わされることも無く絶妙なコントラストでジャズらしいダイナミックさ、Richard Davisのベースはズンズンと気持ちよくリズム隊の出来は見事。また、Alan Dawsonのドラミングに関する評価の高さがあちらこちらに散見されるのでそれにも着目して聴いてみたい。Booker Ervin の作品は、私は That's It! しか持っていませんので楽しみなところです。


 それでは全編スタンダードで固めた6曲構成をレビューです。The Lamp Is Low は、強いビートでぐんぐん迫るベースに、小気味よい Flanagan のピアノも長めのソロに大満足、最高にスウィングする Dawson の太鼓は確かに素晴らしい。息をもつかさないスピード感あふれる曲展開です。ドラムの録音状態はかなり良いので細かな表情がよくわかるうえにドラム・ソロが素晴らし過ぎました。最後はフェイドアウトなのかフェイドアウト風なのか?これも面白い。Come Sunday は、アダルトなエリントンの楽曲。しっとりとした演奏で1曲目との対比がグッときます。All The Things You Are 有名なところが出てきました。誰もが耳になじんでいる曲こそ、どのような展開なのか注目ですが、しっかりとこのアルバムの親方の Ervin が奇をてらうことなく実に楽しい進行でバンドを引っ張っていきます。曲中にダレてしまいそうなところで、音使いを変えたりしてスイングするところもお洒落な感じです。ドラミングも超スタンダードに少しづつ変化を与えてくれているかと思ったらフェイド・アウトです。どうやら先ほども風」では無かったようです。Just Friends も、スタンダードなだけに息のぴったりあったスムースな演奏が聴いていて気持ち良い。Yesterdays も言わずもがなの名曲。最近この曲を聴くことが多いような気がしますが、この演奏は結構心に残る感じがします。テナー独特のエロっぽさがありますが、それほど大袈裟なわけでもなくサラッと吹いています。ブットいサックスの後の Flanagan のピアノ・ソロの美しさが際立ちます。どこまでも聴いていたいですが曲には終わりがあるものしょうがない。Our Love Is Here To Stay で最後になりますが、サラッと終わる感じですね。ライブ・ハウスで聴いていて最後に締めくくる感じです。
 ドラムの素晴らしさはわかりましたが皆さん褒め過ぎじゃないのか?トータルで聴きごたえが評価したい。最初にガツンと持ってきて、落として、中盤はお馴染み曲でリラックスして聴いてもらい。最後はハッピーなスイングで仕上げといった構成で非常によくできたアルバムでした🎵

tenor sax : Booker Ervin
piano : Tommy Flanagan
bass : Richard Davis
drums : Alan Dawson

producer, design, photography : Don Schlitten

recorded on February 27, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

1. The Lamp Is Low
2. Come Sunday
3. All The Things You Are
4. Just Friends
5. Yesterdays
6. Our Love Is Here To Stay





  

2023年12月3日日曜日

Kurt Rosenwinkel / Deep Song


 Kurt Rosenwinkel の私の入門は intuit だったんで正統派バップ系ジャズ・ギタリストだと思っていました。しかし実はこのアルバムやScott Kinsey との実験作品みたいなものもあります。Do It 1992 では抽象的な不思議系のフレーズのギタリストでした。
 過去の私ではあまり好んで聞かないタイプのギター・ジャズでしたが今の私では余裕でこのサウンドが楽しめます。知らない音楽を聴くのは楽しいことですが聴くにいたるまでに時間はかかります。聴かないことには良さはわからないのでジャズ誌とかで絶賛されていて気になるものは購入することが多いのは私の良いクセだと思っております。
 最近はフリージャズでもノイズでも受け入れられるように耐性がついてきたので、久しぶりにこのアルバムを聴いても、この程度の抽象的なタイプの音楽では以前の私が感じていたほどの違和感はありません。他にも今まで聞いてこなかったメセニーとかのギター音楽も最近は興味を持って聴けるようになってきたり全く聴いている自分の感性が変わってきていることに改めて自分でも驚きます。


 と思って曲の印象はと言えば、1、2曲目のThe Cloister、Brooklyn Sometimesは不思議系、3、4曲目のThe Cross、If I Should Lose Youは不思議な感じはするものの意外と正統派のジャズ。5曲目の Synthetics 7曲目 Cake はサックスが前面に出たブレッカー風のテーマのアップテンポな楽曲、6曲目の Use Of Light や8曲目の Deep Song などはバラード風で聞かせてくれます。パーツとしては各楽器はジャズしてて、全体的には組み合わせると異次元からやって来たかのようなサウンドに変わるという構造が楽しめる内容。不思議世界ではあるものの、いかにもジャズギターらしい濃密な音色で幅広いスケールの使い方をしています。
 ユニークなフレーズのクセ者ギタリストであることは間違いなく、このアルバムのクォリティーは高いかもしれなく世の中ではこれを傑作というのかもしれません。何回か聴いて耳になれてくるとじっくりと味が出てきます。
 ライナーノーツによるとこの不思議さはアメリカ人であるが、ノルウェー人の血が流れていることに関係があるのでは?とか、小学校の頃にAC/DC、ラッシュにあこがれてギターを始めたとか、やはり最初の入り口はこんな人でもハードロック!だった。

guitar : Kurt Rosenwinkel
bass : Larry Grenadier
drums : Ali Jackson 
piano : Brad Mehldau
tenor Sax : Joshua Redman

producer : Kurt Rosenwinkel

1. The Cloister
2. Brooklyn Sometimes
3. The Cross
4. If I Should Lose You
5. Synthetics
6. Use Of Light
7. Cake
8. Deep Song
9. Gesture [Lester]
10. The Next Step




  

2023年12月2日土曜日

Bootsy Collins / What's Bootsy Doin'?


 マイケルとかにもよくある80年代末の機械的な打ち込み系のシャカシャカ、ペラペラな音のクセに肉感的な粘っこいグルーヴ。やはりこの人奇才ではあるのが見えてしまうアルバムです。どう考えてもテクノ系の音楽も聴きながらリズムマシン使いながら遊んでいたら出来てしまった音が良かったんで、さらにおちゃらけて見たというような余裕が感じられます。実際、彼はP-FUNKで、総帥 George Clinton の軍団メンバーとして働き、坂本隆一、Talking Heads の Jerry Harrison と活動をしていた時期もあり、おちゃらける素養は十分にあったようです。
 メンバーはバッキング・ボーカルでは、総帥である George Clinton、ラップでは Moma Collins (ブーツィーのお母さん?)、ホーン部隊には Maceo Parker も参加の楽しそうな内容です。Bootzilla、Bootzilla、Boot-Tron などの名前は恐らく Bootsy 本人。


 作品はエレクトリックでスペイシー、エフェクティブな打ち込みとサンプリング。好んで聴くサウンドでは無いのですが、Bootsy であると私にとっても別格に聞こえてきます。
 それでは、レビューです。 Party On Plastic (What's Bootsy Doin'?) は、イントロの力強いラップの掛け合いが迫力ありリズムがあって素晴らしく、様々な曲が絡み合い、これもあれも聴いたことがあるといった内容が素晴らしい。デジタルにつなげながら違う曲にしてしまうDJ的な手法もありのデジタルばかりと思ったらスラップ・ベースもカッコ良い。 Subliminal Seduction (Funk Me Dirty) 思いっきりデジタルなテクノ・ポップになるが当時としては新しいんでしょう。ボーカルの姉さんも迫力。スキではない曲調なんですがBootsy なら採点は甘くなります。Leakin' 思いっきりサンプリングとプログラミングで、エレクトロ・ポップの嫌いなところ満載の典型ですね。これも作り手が良いのでセンス良しで許します。Shock-It-To-Me ヤクにやられて絶叫しているようなオジサンの声から入りセクシーなお姉さんの歌声とラップのドッキングにヘビーメタルなギターがソロだけ入ります。繰り返されるサビは、またどっかの曲のパクリですが合ってます。1st One 2 The Egg Wins (The Human Race) 軍隊のラッパ風のキーボードに軽快なラップ。卵巣に最初に到達したヤツの勝ちって意味らしい。Love Song は、ストリングのキレイな感じからは始まるデジタル・ポップ。思いっきりセクシー風に歌いあげる男性ボーカルに何かコミカルな要素も感じる曲の作りとしては本格的な曲。(Iwannabee) Kissin' U ラブソング的なところが続きます。プリンスの曲でこんなのあったような気がします。-ing The 'Luv Gun' 曲名だけ見て Kiss の要素が無いかどうか聞いていたけど、さすがにそれは無かった。Yo-Moma-Loves Ya は、ソフトロック路線でコード進行とメロディー的には Police の Every Breath You Take ですね。曲名からすると人間愛の曲なのでしょう。赤ちゃんの泣き声も聞こえます。Save What's Mine For Me は、夜の星空を原っぱで眺めるイメージのイントロから始まるミドルテンポのポップス。最後はまじめなラブ・ソングで締めくくるようです。
 派手でデジタルなだけの印象があったアルバムですが久しぶりに聴き直すと、もしかしたら深みのあるアルバムかも知れないと思い始めています。遊びが好きな人種なのでおちゃらけの中に何か大事なもの少しだけ入れているのかもしれませんね🎵

bass : Bootsy, Bootzilla, Casper (7), The Player (3)
lead vocals : Bootsy, Gary Mudbone Cooper
vocals (computer talk) : Boot-Tron
rap : Mico Wave, Moma Collins, Pretty Fatt
backing Vocals : Anita Walker, Bernard Fowler, Bernie Worrell, Carolyn Stanford, Cynthia Girty, Eddie Martinez, George Clinton, Mallia Franklin, Nicky Skopelitis, Robert "P-Nut" Johnson, Taka Boom, Tony Feldman, Vicky Vee
keyboards , programmed by : Bootsy, Mico Wave, Trey 'Goldfish' Stone, Wes Boatman
sampler : Bootsy
guitar : Bootsy, Catfish, Ron 'Attitude' Jennings, Stevie 'No Wonder' Salas
drum programming : Bootsy, Mico Wave
drums : Bootsy, Bootzilla
horns (Still 'Horny Horns') : Fred Wesley, Maceo Parker, Kush Griffin, Rick Gardner

producer : Bootsy Collins

1. Party On Plastic (What's Bootsy Doin'?)
2. Subliminal Seduction (Funk Me Dirty)
3. Leakin'
4. Shock-It-To-Me
5. 1st One 2 The Egg Wins (The Human Race)
6. Love Song
7. (Iwannabee) Kissin' U
8. -ing The 'Luv Gun'
9. Yo-Moma-Loves Ya
10. Save What's Mine For Me



  

2023年12月1日金曜日

Michael Brecker / Tales From The Hudson

 

 1996年、4作目のストレートなアコースティック・ジャズで、ウインド・シンセも使わず生テナーでの取り組みです。但し3曲目でギター・シンセを Pat Metheny が使っています。全体的には、ハードバップ全盛期のジャズが熱かった50年代から60年代のストレートな作風でハードバップの進化系として Michael の魂のこもったブロウに満足の一枚です。ただ違うのは96年録音のクリアで現代的な録音の音質で聴きやすく入りやすい。
 イメージ的には無機質な感情を押し殺したサックスのイメージが彼にはあるがこのアルバムに関してはさにあらず。熱い演奏が楽しめます。


 かなり売れたアルバムで、アメリカの ビルボード では、ジャズ・アルバム・チャートで 2位、第39回グラミー賞では、最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞を受賞し、収録曲 Cabin Fever は最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・ソロ賞を受賞です。
 そんなアルバムをレビューです。Slings And Arrows アップテンポで全開の迫力。Jack DeJohnette のドラムの音のリアル感が凄いですね。Midnight Voyage ピアノの Joey Calderazzo作の哀愁路線の渋いミディアムの4ビート。Michael Brecker のサックスも無機質どころか有機的に他のメンバーと絡み合い渋みのある演奏。Song For Bilbao は、Pat Metheny 作のラテンノリで McCoy Tyner の重厚なピアノと良くマッチしています。ギター・シンセが入っているのと楽曲の作りこみにより、この曲はフュージョンテイスト。Beau Rivage は、Michael Brecker の作ではありますが、曲調は Pat Metheny っぽい大地を感じる大きなものを感じます。African Skies は曲名のとおりアフリカを感じるリズムと力強いテーマが魅力。Introduction To Naked Soul スローで短い1分13秒の不思議な音の世界の次の曲の序章。Naked Soul は、で厳かに静かにジャズの世界に突入しますが浮遊感のある曲と主張の強い Michael Brecker のテナーの音色でグッと引きしまります。Willie T. では、渋めのミディアムな4ビートとなり、不思議の世界から現実に戻ってくる感じで安定感のある演奏が心地よい。Cabin Fever は最後に最も熱い演奏を持ってきたようで心憎い。一番良かったかなあ。
 ハドソン川の物語のネーミングは、レコーディング・スタジオの Power Station がハドソン川の近くに立っていたのでしょうか? とにかくコンテンポラリー・ジャズの巨匠「Michael Brecker」が真剣にジャズ・フォーマットを追求したアルバムとして、これは聴きごたえのある名作でしょう🎵
 
tenor sax : Michael Brecker
piano : Joey Calderazzo (1, 2, 4, 6 to 9), McCoy Tyner ( 3, 5)
guitar : Pat Metheny
guitar synthesizer : Pat Metheny (3)
bass : Dave Holland
drums : Jack DeJohnette
percussion : Don Alias (3, 5)

producer : George Whitty, Michael Brecker

recorded and mixed at the Power Station, NYC.

1. Slings And Arrows
2. Midnight Voyage
3. Song For Bilbao
4. Beau Rivage
5. African Skies
6. Introduction To Naked Soul
7. Naked Soul
8. Willie T.
9. Cabin Fever





  

2023年11月26日日曜日

Herbie Hancock / Fat Albert Rotunda

 

 ハービーが29歳になる1969年にリリースされた8thアルバム。元々はテレビアニメのサントラとして作られていた楽曲です。当時、Hey, Hey, Hey, It's Fat Albert と呼ばれるテレビアニメの音楽を担当していて、その楽曲を大人向きにアレンジし収録しています。当時のハンコックの作品群とは内容がかけ離れていたので、ファンの間でも評価が分かれる作品とのこと。またハンコックが Blue Note から離れてメジャーの Warner Bros との契約3枚分の最初の1枚でありセールスを意識する必要があったことも、このアルバムの制作の契機でもあるようです。Warner Bros からは Mwandishi、Crossings を発表し、Columbia へ移籍し、あの Head Hunters を発表することなります。


 さて、行きつけの「おでんバー」で聴いた時にも賛否(好み)が半々だったように思われるこの作品をレビューしていきます。冒頭は Wiggle Waggle ですが、中近東音楽を思わせるイントロから、ジャズよりのジャズ・ファンクが始まります。テーマの後は各自のソロが繰り広げられセッション的な感じです。テーマに入ると物語性が強いメロディーがあるような気もします。Fat Mama いかにもファンク風のネーミング。出だしはアフリカンな雰囲気で、その雰囲気を持ってソウルっぽい感じのリフとブラスの入れ方の楽曲です。2曲を聴いてきて、ハンコックのイメージである知的ファンクよりはブラック色がでている感じがして好きな感じかもしれません。Tell Me A Bedtime Story 後に Quincy Jones などにもカバーされるブルース形式でモードな今ではちょっとしたスタンダードのような楽曲。ジャズです。Oh! Oh! Here He Comes そしてジャズ・ファンクに戻ります。Jessica では、リリカルなピアノと、柔らかいやらかいホーンの作り出す世界。曲名はハンコックのその頃生まれた娘さんの名前。Fat Albert Rotunda アニメの主人公の名前の曲ですね。明るめで軽快なジャズファンクです。つくりはやや単純。Lil' Brother は、弟って意味ですかね。やんちゃな雰囲気があるジャズファンクです。テーマ曲よりこっちの方が好きかも
 ファンキーなR&Bに寄せた曲が多数存在しているのが魅力的で、電化フュージョンに完全に移行する前の作品であるところが良い感じです🎵

piano, electric piano, conductor, producer : Herbie Hancock
electric guitar : Billy Butler (1,7), Eric Gale (1,7)
electric bass : Jerry Jemmott (1,7)
double bass, bass : Buster Williams
drums : Albert "Tootie" Heath, Bernard Purdie (1,7)
alto flute, tenor sax : Joe Henderson
alto sax, tenor sax : Joe Farrell (1,7)
baritone sax : Arthur Clarke (1,7)
trombone : Benny Powell (1,7), Garnett Brown
trumpet : Ernie Royal (1,7), Joe Newman (1,7)
trumpet, flugelhorn : Johnny Coles

recorded at : Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey

1. Wiggle Waggle
2. Fat Mama
3. Tell Me A Bedtime Story
4. Oh! Oh! Here He Comes
5. Jessica
6. Fat Albert Rotunda
7. Lil' Brother





  

2023年11月25日土曜日

The Eric Byrd Trio / Triunity


 これは The Eric Byrd Trio の自主制作版の2004年の作品を限定復刻プレスしたアルバムです。2013年発売でジャケットはオリジナルと変わっているようです。人気テナー奏者 Paul Carr(ポール・カー)もゲスト参加したマイナー・ピアノ・トリオの名盤で、現在では廃盤となっているようです。
 「Eric Byrd」はピアニスト兼ボーカリストでプロ歴は30年以上。自身のリーダーアルバムは少ないものの、Wynton Marsali、Chick Corea、Mike Stern、Randy Brecker などの著名なミュージシャンとの共演もある方でした。私の所有音源としては、今のところ 21st Century Swing Live と、この一枚です。また、このトリオは音楽史、ジャズ、そして霊歌/ゴスペル、ブルース、ジャズの関係についてクリニックを頻繁に行って音楽教育への取り組みを行い南アメリカ、中央アメリカ、カリブ海をツアーする米国国務省ケネディセンターのジャズアンバサダーやゴスペル楽団の指揮者を務めたりしています。が、マイナー系な人のようなのでメジャー系レーベルからの発売は少ない人のようです。


 さて、レビューです。Sunday Mo'nin' Chu'ch 日曜日の朝の教会と言う名の通り、爽やかな朝にミサに行くのがぎりぎりなので少し小走りで教会へ行くシーンが思い浮かびます。ベースソロは日曜日にしか会えない教会の友達と少々小難しい話でもしているかのようなところでしょうか。Get Happy は Harold Arlen 作曲 Ted Koehler 作詞のスタンダード。Judy Garland の1950年の映画 Summer Stock で使われて有名になった曲だそうです。歌無しで流れるようなジャズフォーマット。Just For a Thrill は、Eric Byrd のボーカルが聴けるバラード、ソウル感があるボーカルで良いですね。うんカッコ良い。Love Letter to Lima は、自身の作品でボサ・ノバのリズムのとても穏やかな曲です。何でもない日常感があって良いです。Nanami これも自身のオリジナル。曲名は日本の女性の名前のようですが・・激しめの情熱的な曲ですね。 Come Back to Me は、Alan Jay Lerner の古めかしいスタンダードで、Eric Byrd のボーカルが聴けます。何か楽しい人のようでこの人のライブは楽しそうだと想像できます。Lullaby For Jason Miles も自身のオリジナル。こちらはジャズフォーマットのピアノ曲ですが、スタンダードや歌物と違った音の響きの美しさが聴いて取れます。曲の並び順もバランス良しです。Wrap Your Troubles in Dreams ゴスペル調の楽曲で、弓弾きベースがユーモラスで、ピアノは余計なことをせずに楽しんで弾いているのが伝わります。これも良い曲だ。I Thought About You 1939年の Jimmy Van Heusen のスタンダード、王道スイングが気持ち良い。We Are One 自身のオリジナルでアフリカンなドラミングから始まり、そちら系のソプラノ、子供たちのコーラスが入ってくるワールド・ミュージックでほのぼのします。いきなりの曲調の変換ですが違和感なく、続けて聴けます。I Love You Lord ピアノ独奏のバラードでLaurie Klein 作曲とあります。 2分と短いですが浸みます。Roll With My Baby Sam Sweet のオールド・スタンダードで踊れるやつです。嫌みの無いソウルフルなボーカルがこれも心地よい。
 基本スウィングとビバップのオールド・スタイルで、古典的なピアノジャズあり、ボーカルものありあり、小学生のコーラスありで、さらにソウルやゴスペル的なフィーリングは嫌みがなくて音楽は楽しいもんだなって思えるアルバムです🎵

piano,vocals : Eric Byrd
bass : Bhagwan Khalsa
drums : Alphonso Young, Jr.  
GUEST
sax : Paul Carr 

1. Sunday Mo'nin' Chu'ch
2. Get Happy
3. Just For a Thrill
4. Love Letter to Lima
5. Nanami
6. Come Back to Me
7. Lullaby For Jason Miles
8. Wrap Your Troubles in Dreams
9. I Thought About You
10. We Are One
11. I Love You Lord
12. Roll With My Baby





  

2023年11月24日金曜日

James Cotton / Baby, Don't You Tear My Clothes


 2017年3月16日に亡くなりました御大 James Cotton(ジェイムス・コットン)の最後のアルバム。喉頭ガン手術を受けてから、歌えなくなってしまったためブルースハープだけ吹いておられます。とびっきりのジャケットの笑顔がまぶしいです。
 マディ・ウォーターズのバンドにリトル・ウォルターの後任として正式参加は1957年。マディのバンドには在籍1966年まで、そして1967年 Cut You Loose! (Vanguard)でソロデビュー。以降コンスタントにアルバムを作り続けて本作まで多分合計20枚。
 James Cotton を最初に聴いたのは、大学時代でブルースと言えば BBキング、マディ・ウォーターズだと思っていた私に ブルース・ハープのカ訪ッコよさ、シカゴ・ブルースという伝統芸、ジャンプ・ブルースという熱いブルースを教えてくれた、私にとってブルースを深く掘り下げてくれたの先生のような人で、訃報を聴いた時にはお疲れさまでしたと手を合わせたのを覚えています。


 このアルバムで、御大はもう歌えないのでボーカルものは ゲストによる客演です。御大のブルース・ハープも超ロングトーンやブレスなしの大技とかもなく、ゆったりとしたプレイで最後を飾っています。タイトル曲 Baby, Don't You Tear My Clothes は Lightnin' Hopkins(ライトニン・ホプキンス)の曲です。ボーカルは Bobby Rush。この人もファンク・タイプのブルースを歌う人で、ビル・クリントンが大統領に就任したとき、彼は James Joseph Brown と一緒に、ホワイトハウスでも演奏、2007年には中国で初めてのブルース・マンとして公演し、このアルバムの発売と同じ2017年に自己のアルバムでグラミー賞を受賞の人です。他、Dave Alvin が歌う Stealin', Stealin' , Doc And Merle Watson の弾き語り How Long Blues はコットンとハープでほのぼの、最後の Friends のハープを聴くとコットンのブルース人生がこれで終了したのかと感無量のハープ演奏です。

harmonica : James Cotton
piano : David Maxwell
guitar : Derek O'Brien
bass : Noel Neal
drums : Per Hanson

producer : Randy Labbe

1. Coach's Better Days
2. Baby, Don't You Tear My Clothes / vocals : Bobby Rush
3. When You Got a Good Friend / vocals, piano : Marcia Ball
4. Stealin', Stealin'  / harmony vocals, tambourine : Chris Gaffney vocals, guitar : Dave Alvin
5. Key to the Highway / vocals : Odetta
6. I Almost Lost My Mind
7. Rainin' in My Heart / vocals, accordion : C.J. Chenier
8. Bring It on Home to Me / vocals : Jim Lauderdale
9. Muleskinner Blues / vocals, guitar : Peter Rowan
10. How Long Blues / vocals, guitar : Doc And Merle Watson
11. Mississippi Blues / vocals, guitar : Rory Block
12. Blues for Jacklyn
13. Friends



▶ Friends