1959年の Chet Baker(チェット・ベイカー)のセッションで久しぶりに出会った三人が、Riverside のプロデューサーの Orrin Keepnews(オリン・キープニュース)の勧めで録音したが、1969年に Riverside が倒産し1977年まで、何故かお蔵入りしていた音源です。アルバムの中で6曲は 1959年1月19日録音 のトリオ演奏で、最後の1曲が1962年8月21日録音 となっていますが、これは最初の6曲だけではアルバムとして長さが足りなかったから足しているものと思われ、盤によっては、全く違う別の日の録音の All of You だったりしていますので、尺が足りなかったのがお蔵入りの理由かと推測します。
1959年のこの録音のトリオメンバーは、1958年頃のマイルス・バンドのレギュラーですがトリオでの録音は無いので、この録音にマニアなファンは直ぐに食指が動くのも納得です。ちなみに、この2か月後の3月にマイルスの「Kind of Blue」が録音されています。
イメージ的には、硬派なイメージでしたので再度聴きながらレビューしてみましょう。 You And The Night And The Music 邦題では「あなたと夜と音楽と」とひねりも何もないのが寂しいですが、1934年の Revenge with Music というミュージカルの曲で、チェットのアルバムや後の1962年 Interplay でも取り上げています。イメージ通り派手さ華麗さは無いですが、歯切れよく熱くないところがカッコ良い曲かと思います。My Heart Stood Still これもミュージカルの主題歌。ミュージカルの題名は A Connecticut Yankee の楽しそうな名前で、この演奏は1曲目よりは気楽でリラックスした演奏となっています。アドリブで「サンタが街にやってくるの」フレーズが組み込まれているのはクリスマスの余韻を残した1月の録音だからでしょうか。Green Dolphin Street 曲名の前に On が付いている盤もあります。この曲は1947年の映画の主題歌で、映画のタイトルと曲名は同じですが邦題は「大地は怒る」となっています。本アルバムでは、8分13秒のアルバムの中でもっとも 長い曲となっています。Paul Chambers のベースが、ひとりソロになってからモコモコして何を演奏しているかよくわからない演奏で元気がないフリージャズみたいだなと思ってしまいました。How Am I To Know 1929年映画 Dynamait の主題歌です。エバンスのピアノは、曲の割に、華麗さを排除した硬派な演奏で抑揚少なめになっているかと思います。Paul Chambers のベースは、弓弾きのボウでとっていますが、このソロも精彩に欠く演奏と感じます。もしかしてお蔵入りの理由はこれ?でしょうか。Woody'n You (Take 1) (Take 2) と続きます。 (Take 2) のイントロでピアノが少しもたつきますが、全体的な演奏では後者の方が柔らかな印象を受けます。Loose Bloose エバンス・オリジナルのブルースのクインテットでの演奏。内省的で不可思議なイントロで始まり、Jim Hall の渋いギターと Zoot Sims のエロいサックスからエバンス、ロン・カーターのベース・ソロとの流れで今までの6曲と流れが全く違うぞと思っていたら、あっという間に5分37秒が尻切れトンボのようにあっけなく終了します。最後に1曲だけ、唐突な感じもしますがボーナス・トラックとして捉えれば、そんなものでしょう。
以前聴いた時には、凄いセッションが眠っていたもので、録音過多の時代に整理が悪かったり、予算とか契約の関係なのかと思っていましたが、冷静に今聴き直して、この録音にはどうしてもこの録音を販売したいと思わせるものがこの演奏にあったのか、これを世に出せば、ひと儲けできると思わせるようなものが Orrin Keepnews にも感じられなかったのではないか、だから尺も足りないしまあいいかと眠らせてしまったと、勝手に妄想を膨らませています。
若い時は音さえよければ時代背景やメンバーなどどうでも良かったんですが、最近は時代背景、当時の状況などを考えながらの聞き比べが楽しくなってきています。こやって日本のジャズ・マニアになっていくのですね。いや楽しい🎶🎹
piano : Bill Evans
guitar : Jim Hall (7)
tenor sax : Zoot Sims (7)
bass : Paul Chambers (1 to 6), Ron Carter (7)
drums : Philly Joe Jones
producer : Orrin Keepnews
recorded at Reeves Sound Studios, New York City, January 19, 1959
1. You And The Night And The Music (Howard Dietz and Arthur Schwartz)
2. My Heart Stood Still (Richard Rodgers and Lorenz Hart)
3. Green Dolphin Street (Bronislaw Kaper and Ned Washington)
4. How Am I To Know (Jack King and Dorothy Parker)
5. Woody'n You (Take 1) (Dizzy Gillespie)
6. Woody'n You (Take 2) (Dizzy Gillespie)
7. Loose Bloose (Bill Evans)
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