それでは改めて全曲聴きながらレビューしていきます。「Panther」 イントロは、Chick Corea の Spain を連想するスパニッシュな印象のテーマをベース・オンリーで始め、そこらからドラムと2番目のギターソロ以外は、全てマーカスによる多重録音で作られているベースを前面に押し出したフュージョン作品です。「Steveland」は、David Sanborn、Wayne Shorter の二人をサックスに起用する豪華布陣をバックに、ベースでライトハンドとスラップでメロディー楽器として使用すしています。Jonathan Butler のアコギが渋く最後のDavid Sanborn のソロはいつものヤツで、安心のマーカス・サウンド。「Rampage」は、Miles Davis のマーカスをはじめとする若手を起用したファンク・アルバム Amandla の録音の未発表曲です、親分 Miles Davis が参加しています。「The Sun Don't Lie」アルバムのテーマ曲になります。フレットレス・ベースを使ったテーマがとジャコを意識したような指弾きのベース、マーカス得意のスラップと曲の流れによって奏法を変えています。Andy Narell のスチールドラムが、またジャコを指揮している感じですが、テーマのメロディーが良いです。
「Scoop」は ギラギラしたスラップとキャッチーなテーマがとてもカッコ良い曲で、Kenny Garrett のソロが、またイケてますしノリノリでフレーズで遊びまくるマーカスが素晴らしい。この曲の作り方はサンボーン系です。「Mr.Pastorius」はタイトルでわかるように、ジャコの追悼曲となっていて、ベースのみのソロ曲です。ジャコ的なフレーズよりスパニッシュとクラシックの融合みたいな曲でした。「Funny」ボーカル曲をインストにしたような曲で(いや最後にはボーカルが入ってくるので厳密にはインストではありませんね)テーマを吹く楽器はミュート・トランペットかと思っていたらソプラノ・サックスとなっているようです。「Moons」これもジャコをかなり意識したような曲となっています。 「Teen Town」 ジャコ・パストリアスの追悼で取り上げていているようで、スティール・ドラムで Andy Narell、ギターの Hiram Bullock の参加も嬉しいところ。「Juju」は、いかにも Murcus Miller らしく、David Sanborn かと思いきや アルトサックスは Everette Harp でした。ファンキーフュージョン全盛期の音がそのまま。「The King Is Gone」のキングは言うまでもなくMiles 事で、メンバーもマイルスゆかりの面々の追悼です。さらに「Round Midnight」がきますが、これは、日本版のみのボーナス・トラックですがかなりの良い出来かと思い、日本盤のみはもったいない。
こんな感じの作品を作り続けてくれれば・・ソロ作品をもっと買い集めても良いんですが
と改めて思う次第であります🎶
producer : Marcus Miller
recorded by : Brian A. Sperber*, Bruce Miller, Leslie Ann Jones, Marcus Miller, Peter Doell, Ray Bardani, Ray Blair, Ron McQuaig, Vittorio Zammarano, Yan Memmi
Recorded at Camel Island, New Jersey / Power Station, Right Track Recording, East Hill Studios and Soundtrack, New York / Capitol Recording Studios, Hollywood / Mankind, Encino / Battery Studios, London
Mixed at Soundtrack, Axis Studios and Right Track Recording, New York / Schnee Studios and Summa Recording Studios, Los Angeles
Mastered at Masterdisk, New York
1. Panther / Marcus Miller
bass guitar, keyboards, drum programming, bass carinet, rhythm guitar, guitar (1st half of solo) : Marcus Miller
lead guitar (2nd half of solo) : Dean Brown
drums : Poogie Bell
programmed by (sound) : Jason Miles
2. Steveland / Marcus Miller
bass guitar, keyboards, programmed by (percussion), bass clarinet : Marcus Miller
guitar : Jonathan Butler
drums : Lenny White
percussion : Don Alias
percussion (additional) : Paulinho Da Costa
alto sax : David Sanborn
tenor sax : Wayne Shorter
programmed y (sound) : Jason Miles
3. Rampage / Marcus
bass guitar, keyboards, rhythm guitar, drum programming : Marcus Miller
guitar : Vernon Reid
drums : William Calhoun
trumpet : Miles Davis
trumpet (additional) : Sal
programmed y (sound) : Jason Miles
4. The Sun Don't Lie / Marcus Miller
bass guitar, keyboards : Marcus Miller
piano : Joe Sample
drums : Michael White
percussion : Paulinho Da Costa
steel drums : Andy Narell
programmed by (sound) : Eric Persing
5.Scoop / Marcus Miller
bass guitar, keyboards, drum programming, programmed by (percussion), bass clarinet : Marcus Miller
rhythm guitar : Paul Jackson, Jr.
sampler (vocal) : Maurice White
alto sax : Kenny Garrett
6. Mr. Pastorius / Marcus Miller
bass guitar : Marcus Miller
7. Funny (All She Needs Is Love) / Marcus Miller, Boz Scaggs
bass guitar, keyboards, rhythm guitar, bass clarinet, vocals : Marcus Miller
lead guitar : Dean Brown
drums : Poogie Bell
percussion : Steve Thornton
soprano sax : Everette Harp
programmed y (sound, additional) : Jason Miles
pogrammed by (sound) : Eric Persing
8. Moons / Marcus Miller
bass guitar, keyboards, drum programming, programmed y (percussion), bass clarinet : Marcus Miller
9. Teen Town / Jaco Pastorius
bass guitar, bass clarinet : Marcus Miller
keyboards : Philippe Saisse
guitar : Hiram Bullock
drums (fill: snare drum, bass drum, cymbals) : Omar Hakim
drums (main beat: high hat, sidestick, bass drum) : Steve Ferrone
percussion : Paulinho Da Costa
congas : Don Alias
steel drums : Andy Narell
10. Juju / Murcus Miller
bass guitar, keyboards, programmed by (percussion), guitar : Marcus Miller
keyboards (additional) : Christian Wicht
drums : Poogie Bell
drums (fills) : Michael White
performer (funky countoff) : Jonathan "Juice" Miller, Julian "Juju" Miller
alto sax : Everette Harp
tenor sax : Kirk Whalum
programmed by (sound, additional) : Philippe Saisse
programmed by (sound) : Eric Persing
11. The King Is Gone (For Miles)
bass clarinet, bass guitar, keyboards : Marcus Miller
The Yardbirds のバンド名は、Charles Parker のあだ名が由来となっているなんて知ってました?ロックとジャズと音楽性も音も全く違いますが、Charles Parker はモダンジャズの創生者の一人で「ジャズ・ジャイアンツ」とも呼ばれていますから、新たなロックの創生者になるなんて願いも込められていたのか、メンバーの誰かが Charles Parker 好きだったのか? ドラッグととアルコールで破滅的な生涯を送った Charles Parker にロックっぽさを感じたのか? また、Yardbirds という単語自体は「囚人」「雑務を割り当てられる軍隊入隊者」という意味を持っています。
バンド自体の創設は1962年で、当初のメンバーは、ボーカル・ハープの Keith Relf、ドラムの Jim McCarty、ベースの Paul Samwell、リズムギターの Chris Dreja、リードギターの Tony 'Top' Topham で結成されています。アルバム・デビューは Five Live Yardbirds(1964年)でした。メンバーの入れ替わりは激しくギタリストは、Eric Clapton、Jeff Beck、Jimmy Pageと入れ替わりながらヒットを飛ばすこととなるのはご周知のとおり。
曲順は必ずしも録音年代順ではないようですが、「For Your Love」「Heartful Of Soul」は、Beatles, Monkeys の影響があるような楽曲で、「Shapes Of Things」については、The Who 系、「Still I'm Sad」 は、グレゴリオ聖歌から拝借したメロディらしい。「Evil Hearted You」は、Monkeys系ですが、The Doors も感じる曲。「Good Morning Little Schoolgirl 」「A Certain Girl」も同様に Monkeys系ですがですが軽め。「Got To Hurry」硬派系ブルースになります。Clapton の歪ませたギターがやっと出てきます。「Ain't Got You」これは、Beatles風ですが、Clapton + Beck のギターソロだけギンギンです。「Jeff's Blues」単純なブルース曲名の通り Jeff Beck を楽しむための楽曲です。この頃は未だ Beck のギターの主張は少な目。「I Wish You Would」日本のGSの原型みたいな楽曲ですが、段々と現代ロックに近づいてきた感あります。「I'm A Man」ブルースの基礎的な楽曲で、きっちりとブルース・ロックの形態に進化し、リズムも音も分厚くなってきます。「Stroll On」?? Train Kept A Rolling じゃないですか。映画 Blow-Up に出演してこの曲を演奏することになってが、曲の使用許可が出ずに 歌詞を書き換えて違う曲にして使ったとのこと。 Jeff Beck, Jimmy Page のツインギターで有名なヤツですね。「Train Kept A Rolling」Chris Dreja と Jeff Beck がギターで Jimmy Page のバージョンとかもあるらしいけど、これはどれなんだろう。楽曲としての完成度はどうなんだろうと思うのですが、ロックファンなら、この曲を聴くと胸騒ぎがする人も多いと思います。私もそうです。
1994年リリースの James Cotton 御大が、良好な状態で発声で録音した最後のアルバムとなります。この後 Deep In The Blues (1995) で御大の歌声は、だいぶ苦しそうになり1996年のブルース・カーニバル出演時自身で歌われていて、その後での喉頭がんで手術となります。1997年来日時はボーカリストを連れてきていたようです。歌は歌えなくなってもブルース・ハープで音楽を私たちに届けていただいた御大は、2017年3月16日、米テキサス州オースティンにあるセント・デイビッズ・メディカル・センターにて肺炎のため死去されています。
1. 13. Mississippi Freight Train - ドラム 、3.Pacific Blues - ギター、6. Hucklebuck、9. Black Knights - オルガン、11. Cotton in the Kitchen - ピアノ
どれが、どんなのかは、全曲レビューします。「Mississippi Freight Train」アルバムのイントロとエンディングに、 使われています。ドラムのブラッシングで、汽車が走るリズムを、ブルース・ハープで汽笛を表現しています。エンディングの Part 2 ではイントロよりもアドリブが多くしてファン・サービスしています。このパターンは、Cotton Boogie、Rockett 88、The Creeper などにも使われる「汽車ポッポ・サウンド」で、御大の得意技ですね。「You Didn't Think About That」御大の声はだいぶ苦しそうではありますが、迫力があって大好きでした。オルガンの Lucky Peterson も良いのですが、ギターの Larry McCray の粘っこいオーバー・ドライブが深くかかった短いギターソロも素敵です。ドラムの Brian Jones も御大のブルース・ハープ・ソロを煽る煽る。バンドとしてのサウンドはかなり完成されています。「Pacific Blues」ギターのJoe Louis Walker とのデュオでボーカル・レスのインストですが、アコースティック・ギターのバッキングが、とても心地よいです。簡単そうですが、こんなギター弾けないんですよね。「Take a Message」 ギターは二人 John Primer, Larry McCray で、歯切れの良いドラムがグイグイと曲を引っ張ります。この Brian Jones は Junior Wells、Magic Slim なんかのレコーディングに参加しているブルース系のドラマーでした。「Hungry Country Girl」Otis Spann の楽曲で、ボーカル無しのハーモニカメインのインストです。なんてことはない典型的なコード進行のブルース・セッションなのですが味わい深い。John Primer のギターリフも珍しいことはやってないですが印象に濃いパターンです。「Hucklebuck」 Lucky Peterson のオルガンとのデュオの珍しい組み合わせのインスト。ペダル・ベースがあるので、トリオのようなもんですが二人でこのノリの良さは脱帽です。「One Little Piece of Shade」ボーカルは、ピアノの Dr. John がとっているジャジーな響きのブルースです。御大はハープでしっかり聞かせていますが、やっぱり喉の調子が悪かったのもあるのでしょうか。「Living the Blues」御大の声をふり絞って歌うタイトル曲で、バンドの息はピッタリの完成されたサウンドです。心なしか御大のボーカルパートは短めの録音ですね。「Black Knights」 Lucky Peterson のオルガンとのデュオの2曲目です。御大のハープを吹くときのウプっウプって音が鮮明に聴こえて、それが妙に迫力を感じます。オルガンとハープの音色は近いものもあるかもしれませんね。「Mississippi Saxophone 」激しめのジャンプ・ブルースで迫力あります。楽曲は Hawks ってバンドのギタリスト Dave Steen で、本アルバムでは2曲目。白人ですがバリバリのド・ブルースです。「Cotton in the Kitchen」本アルバムで大活躍のピアニスト Dr. John とのデュオです。Lucky Peterson のオルガンとは全く違うデラックス感があります。 「Certified」曲は、白人系ブルースバンドの Fish Heads & Rice あたりの楽曲でしょうか。このバンドの誰かが曲を持ち込んでいるんですかね。
recorded March and June, 1993 at Chicago Recording Corporation, Chicago, Illinois; July, 1993 at Kiva Recording Studio, Memphis Tennessee; September, 1993 at Soundtrack, New York City and January, 1994 at Russian Hill Recording, San Francisco, California.
1. Mississippi Freight Train / James Cotton
harmonica : James Cotton
drums : Brian Jones
2. You Didn't Think About That / Dave Steen
vocals, harmonica : James Cotton
organ : Lucky Peterson
guitar : Larry McCray
bass : Johnny B. Gayden
drums : Brian Jones
3. Pacific Blues / Joe Louis Walker
harmonica : James Cotton
guitar : Joe Louis Walker
4. Take a Message / Dave Steen
vocals, harmonica : James Cotton
organ : Lucky Peterson
guitar : John Primer, Larry McCray
bass : Johnny B. Gayden
drums : Brian Jones
5. Hungry Country Girl / Otis Spann
harmonica : James Cotton
piano : Dr. John
guitar : John Primer
bass : Johnny B. Gayden
drums : Brian Jones
6. Hucklebuck / Andy Gibson, Roy Alfred
harmonica : James Cotton
organ : Lucky Peterson
7. One Little Piece of Shade / Dave Steen
harmonica : James Cotton
piano, vocals : Dr. John
bass : Johnny B. Gayden
drums : Brian Jones
8. Living the Blues / Gary Nicholson
vocals, harmonica : James Cotton
piano : Dr. John
guitar : John Primer, Larry McCray
bass : Johnny B. Gayden
drums : Brian Jones
9. Black Knights / Ferdinand "Fats" Washington
harmonica : James Cotton
organ : Lucky Peterson
10. Mississippi Saxophone / Dave Steen
vocals, harmonica : James Cotton
piano : Dr. John
guitar : Larry McCray
bass : Johnny B. Gayden
drums : Brian Jones
11. Cotton in the Kitchen / James Cotton
harmonica : James Cotton
piano : Dr. John
12. Certified / David James, Gary Taley, Stuart Brower, Walter Fergeson
vocals, harmonica : James Cotton
piano : Lucky Peterson
guitar : John Primer, Larry McCray
bass : Johnny B. Gayden
drums : Brian Jones
13. Mississippi Freight Train - Part 2 / James Cotton
邦題は、1曲目「The Night Has A Thousand Eyes」の直訳で、この訳をした時には、この曲がこのアルバムの中心であると考えたのでしょう。しかし個人的には8:39の長尺で延々とコルトレーンが吹き続けマッコイタイナーも、延々と弾き続け力の入った「Equinox」のほうが中心でもよいのではないかとも思えます。ソロ部分で派手さは無いですが力強く、修行でもしているかのような精神的な強さを感じます。「Central Park West」は、リリカルで優しげなコルトレーン作のソプラノ・バラードで、モーダルな旋律ですが、どこかで聴いたことあります。Giant Steps を遅くしてコードの順番を入れ替えればこの曲になるような気がするのは私だけ?でしょうか。「Liberia」は Coltrane の曲になりますが、曲調は深いものがあり、この後の活動の展開はこういたものから派生してくるものかと深く聴き行ってしまいます。「Body & Soul」有名スタンダードを独自の解釈で演奏されていますが、これはそれほど極端な解釈ではないようです。「Equinox」は、時間や季節の分岐点の意味でエキノコックスではありません。熱演であるのは前述のとおり。 「Satellite」については、ネタ元は How high the moon らしいですが、これは一聴ではわかりづらい感じです。
過去録音のせいか Nesuhi Ertegun はこのアルバムではプロデューサー表記ではなく、とうとう supervised by になっています。前衛的なジャケットは、写真家・画家として活躍していた Marvin Israel で、前作からも Coltrane は、Atlantic とはケンカ別れっぽい気がしますがここら辺のお金のかけ方は趣味が良いです🎶🎷
soprano sax (2), tenor sax : John Coltrane
bass : Steve Davis
drums : Elvin Jones
piano : McCoy Tyner
supervised by : Nesuhi Ertegun
recorded October 24 and 26, 1960 at Atlantic Studios, New York City.
photography : Marvin Israel
1. The Night Has A Thousand Eyes / Ben Weisman, Dotty Wayne, Marilyn Garrett
2. Central Park West / John Coltrane
3. Liberia / John Coltrane
4. Body And Soul / Edward Heyman, Frank Eyton, Johnny Green, Robert Sour
Coltrane 続きで書いて3枚目になりますのは、実は廉価版の5枚組を昔購入したものを聴いているからです。つまり未だ続きあります。1959年にアトランティック・レコードに移籍し、Giant Steps を録音し、大きな名声を得ます。これを機に1960年に Miles Davis のバンドを離れたころからバンド・リーダーとしての活動を優先させ、1960年10月に大がかりなレコーディング・セッションを行い、その一部は本作で1961年の発売、残りは1964年 Coltrane's Sound に収録されています。
この録音でコルトレーンは、ソプラノ・サックスを使用しています。コルトレーンは、Don Cherry とのセッション The Avant-Garde(1960)などで、ソプラノ・サックスを使い、本作でも大々的に取り入れています。このアルバムのタイトル曲 My Favorite Things は、ミュージカル Sound Of Music の劇中で使われた超スタンダードですが、Coltrane の晩年のフリースタイルとなるまではコンサートの定番曲として演奏されています。
と言うことで全曲レビューしていきます。「My Favorite Things」先にも書いてしまいしたが、このアルバムではソプラノ・サックスという楽器を使用しているのが特徴で、この曲では、個性的な吹き方で演奏していて、最初の Coltrane ソロは、怪しい音色とメロディですが、ピアノソロでは淡々と美しいジャズになり、また Coltrane がソロをとると途端に怪しい曲に変化します。最後はかなりフリーキーに変化していくのも面白い。ちなみに録音された時点では、Sound Of Music はまだ封切られていなかったようなので、この3拍子の曲に注目した Coltrane の目の付け所も素晴らしい。「Everytime We Say Goodbye」この曲は Cole Porter 作曲のスタンダードで、1曲目よりも正調な演奏です。ここでも Coltrane は、ソプラノを使用しているので、非常にタッチが軽いです。使っているソプラノは Miles からのプレゼントとのこと。「Summertime」ビニールLPであれば、ここで盤がひっくり返ります。ひっくり返したところで太い音のテナーに音が変わり、かなり饒舌な語り口になります。この曲は、ゆっくり目で演奏されることが多いイメージですが、速めにしてテーマも少し簡略化して曲全体のイメージを作り替えています。「But Not For Me」次もガーシュイン作品で、テナーで吹きまくりの曲になっています。また楽しげな雰囲気のこの曲はコンサートのラスト曲のような感じにも聞こえ、アルバムを締めくくりとしては良い雰囲気です。
ジャズファンを自称する方は、ほぼ持っているマスト・アイテムかと思います。1958年に、Coltrane は Monk のバンドを脱退し、Miles Band に再加入します。そして1959年には、Miles のモード奏法の金字塔 Kind of Blue の収録に参加。Atlantic Records に移籍。1月にMilt Jackson と共同名義で Bags & Trane を収録し、4月~12月にかけて本アルバム Giant Steps が録音されています。Miles の Kind of Blue 影響なのか、曲目は全てオリジナルで固め、Kind of Blue の録音メンバーからは、Naima だけ、ピアノの Wyn Kelly ドラム Jimmy Cobb が参加、ベースのPaul Chambers は全曲を弾き、ピアノは Tommy Flanagan が Naima 以外は全曲弾いています。また、全7曲中、4曲が身近な人間をテーマにしていることも特徴です。
それでは全曲レビューしていきます。「Giant Steps」複雑に変化するコード進行(1コーラス16小節中に長3度という珍しい転調を10回行う)♩=240を超えるハイテンポと、最初から大曲が投入されます。Coltrane の音数の多いサックスが、とんでもないプレイですが忘れてはいけないのが、Tommy Flanagan の不名誉事件で、ハイテンポでの音数に Tommy Flanagan はついていけず、ピアノ・ソロでは途中からコードを押さえるだけになってしまい、コルトレーンが被せるようにサックス・ソロを入れてきます。このリベンジで録音したと言われていますが Coltrane 敬意かと私は思いのが Tommy Flanagan / Giant Steps (In Memory Of John Coltrane) (1982) です。「Cousin Mary」これは、従姉妹に捧げた曲で、Cookin With The Miles Davis Quintet (1957) に収録の Blues By Five を改作したもので、原曲よりも少し荒々しくなっているように感じます。「Countdown」Art Taylor の長めドラムソロから始まり、Coltrane の乱入がカッコ良いです。それからの Tommy Flanagan の参加は、Giant Steps 同様に苦しそうなのは今回聴いて思いました。ベースが最後に入ると生き生きしてきます。と思う間もなく駆け抜けるように終了。メンバーには結構きつかった曲かも知れません。「Spiral」今までが激しいだけに、少し休憩みたいな感じです。ただ演奏には緊張があるような気がします。「Syeeda's Song Flute」自分の娘が遊びで吹いていたフレーズを取り入れた曲で、曲調はユーモラスなのですが、これでもかと Coltrane がぶつけてくる音の洪水には圧倒されます。Tommy Flanagan のソロが単音部分でも詰まっているところもあり、あれほどの名手が、この時は相当に緊張されていたんだと改めて発見で、Tommy Flanagan にとっては試練のセッションだったんだと感じます。「 Naima」は、瞑想するような曲調で、詰め込まれていな音符の一つ一つを聴かせるバラード。こういった対比が聴くものを更に引きづりこまわれるのが、アルバムとして聴く楽しみが生まれます。Wynton Kelly のピアノもシンプルで余計な音を省いたピアノに凄みを感じます。後に発売される reissue されたアルバムでは Cedar Walton が弾いたバージョンも収録されています。そして最後は「Mr. P. C.」は 録音中のメンバーである Paul Chambers の為に書かれた曲で、このアルバムへの貢献度の高さを示している曲でもあります。ベースをランニングさせながら、バンドを引っ張っていく本人のベースも、やはりカッコ良いものがあります。曲としても何より覚えやすくて印象的なテーマで楽曲としての出来も良いし大好きな曲の一つです。