ギター弾きで大学からジャズ研に入ってジャズに触れてきたのですが、ジャズフュージョン・ファンク路線ばかりでジャズに傾倒することなく卒業してしまいました。周囲は、ラテンバカ、フュージョン路線の管楽器の方が多く、コルトレーン教の方が周囲にいなかったため、人生半分を大きく過ぎてから John Coltrane を聴き始めました。と言っても聴いていないと、周囲のジャズ好き系の友人の話が分からないので、密かに研究のために聴いている側面が大きくて好きになってしまったから、もっと聴いてみたいという感じには未だなっていません。
ですが、前回に書いたレビューを見直していると「コルトレーン入門をこれにしておけば、もっと色んなアルバムを聴く気になっていたんではないか?と思われるほど響いた」と書いてあります。でもですね、聴きなおすまではどんなアルバムだったのか全く忘れていたので、心の底から感動したよりは一過性のものであったのか、爺になっているので記憶力が乏しくなっているのか。
原盤の Gene Lees 氏のライナーノーツでは、It's Easy To Remember を除き、このカルテットでは収録されているどの曲も事前に演奏したことがなかったので、彼らは音楽店で買ってきた市販の楽譜を持ってスタジオに現れて、使用するコード進行のメモを書き出し、30分ほど軽くリハーサルをしてから、本番に臨み大半の曲はワンテイク(1回の録音)で完了したと書いてありますので、入念な打ち合わせとコンセプトがある凝ったものではなく、ライトな感覚でのセッションの模様。
Say It (Over And Over Again) Coltrane の豊かなトーンで吹かれるエモーショナルな演奏です。先にも書いたように吹きすぎないのが、とても心地よい。McCoy Tyner のピアノも分かりやすく極上のタッチで優しく、ロマンティックで温かい雰囲気が魅力的な演奏です。
You Don't Know What Love Is 多くのジャズメンが好んで演奏する Gene DePaul で有名な名曲。大げさなイントロから始まるので、どんな難しい展開になるのかと思いきや、逆にシンプルな展開になるので拍子抜けします。フレーズとテーマを大切にした演奏ですが、1曲目の Say It の演奏が良すぎて印象に残りにくいかもしれない。
Too Young To Go Steady この曲もメロディーを崩しすぎず旋律の輪郭を丁寧に残していて歌心や余白を前に出していて、Coltrane の音が 柔らかく、近い距離で語りかけるように 聞こえます。これも良きです。
All Or Nothing At All Frank Sinatra が 1939年8月31日 に Harry James Orchestra と録音した版が大きなヒットになったスタンダード。イントロでも、やっと何か仕掛けてきたなと思わせてくれます。このアルバムでもこの曲だけが例外的に複数テイクや再録音を伴った曲として扱われていて、アルバムの中でも特に完成に時間をかけた1曲ですが以外に短く3分40秒で大きく展開する前に終わってしまいます。
I Wish I Knew 1945年の映画 Diamond Horseshoe のために書かれた楽曲で、アルバムの全体の雰囲気の歌心や余韻を前に出している流れにきれいにはまっています。メロディーを急がず、1つ1つの音を置くように吹いているところに、この曲の良さがあり、もともと歌ものとして成立しているので、Coltrane 版は 旋律の切なさが伝わりやすいし、もっと聴いていたいぐらいです。
What's New 1939年に登場したスタンダードで、もともともインスト曲として書かれています。バラードにはなっていますが、もともとポップス寄りの曲なので、今までと少し流れが違う雰囲気になっています。
It's Easy To Remember これだけは、1961年に録音された別テイクが採用されています。そう言われて聴いてみると、今までのリラックスした表情とは違うような気がして、多少冷めた温度感になっているように聞こえるが、どうでしょう。
Nancy (With The Laughing Face) 1942年の Jimmy Van Heusen 作曲 / Phil Silvers 作詞 のスタンダード曲で、Frank Sinatra が 1944年 に録音した版で広く知られるようになったスタンダード。原曲の甘さが伝わってくる、やわらかく愛情のこもった雰囲気 が核になっています。これも良いは良いのですが、やはりこのアルバムは1曲目の Say It (Over And Over Again) にカッコよさが集約されている気がします。
「サックスのマウスピースの調子が悪く、速いフレーズを弾けなかったため、苦肉の策としてバラード・アルバムを作った」というエピソードもあるようですが、実際は、プロデューサーの Bob Thiele が、よりファン層を広げるために仕掛けたものらしいのでガセネタっぽい。
ライナーノーツの中で1986年に 市川正二氏 がこう書いています。「哀しいムードの曲をいかにも哀しそうに演奏するとセンチメンタリズム(感傷主義)に陥って俗っぽくなるが、甘さをセーブしてしかもエモーションを大事にプレイすると、そこにリリシズム(叙情主義)と呼ぶにふさわしい優美な音楽が生まれる」
ライナーノーツに書いてある内容は当然アルバムの売り文句ですし、マニアの美辞麗句が書かれていると思われることが多いですが、この市川正二氏の評論には納得がいきます。また時間がたつと忘れてしまうこともあるかもしれませんが、もう少し心に留めておくようにします🎶🎷
tenor sax, soprano sax : John Coltrane
piano : McCoy Tyner
bass : Jimmy Garrison (1 to 6, 8), Reggie Workman (7)
drums : Elvin Jones
producer : Bob Thiele
recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey
1-5 : November 13, 1962
6,8 : September 18, 1962
7 : December 21, 1961
1. Say It (Over And Over Again) / Frank Loesser, Jimmy McHugh
2. You Don't Know What Love Is / Don Raye, Gene DePaul
3. Too Young To Go Steady / Harold Adamson, Jimmy McHugh
4. All Or Nothing At All / J. Lawrence, A. Altman
5. I Wish I Knew / Harry Warren, Mack Gordon
6. What's New / Bob Haggart, Johnny Burke
7. It's Easy To Remember / Lorenz Hart, Richard Rodgers
8. Nancy (With The Laughing Face) / Jimmy Van Heusen, Phil Silvers
















