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2023年8月13日日曜日

Brigitte Fontaine / Comme A La Radio

 

 Brigitte Fontaine(ブリジット・フォンテーヌ)は、フランスの歌手でジャンル的にはアバンギャルド・ミュージックとされています。そして彼女はシャンソン史上、最も際立ったキャラクターと存在感を合わせ持つ女性シンガーとも言われています。フランスの歌と言えばシャンソンですが、定義としては、中世の吟遊詩人をルーツとした歌曲、フランス語の歌曲の総称とのことですので、古典的な歌でなくとも、フランス語の曲であればシャンソンを名乗ることができるわけで、フランス語で歌えば、フォークでも、ポップスでも、ジャズでもシャンソンと名乗ることが出来ます。私自身はフランスの歌手ものは聴いてこなかったので、Brigitte Fontaine が初体験となります。彼女のアルバムは Areski Brigitte Fontaine / Le bonheur に続く2枚目となります。DiscUnion でジャズボーカルの棚にあったものを見て、このアルバムと Le bonheur を見比べて購入したので気になっていました。Le bonheur も悪くは無かったのですが、好みという訳でもなかったため「おでんバー」の常連さんが、これを持っているのを見たときに、思わず「貸して!」となりました。


 聴いてみれば、最初に聴いた Le bonheur よりも前衛的。フランス語の持つ響きと呪術のようなささやきボーカルは強烈です。メンバーも Areski, Jacques Higelin そしてフリージャズの旗手 The Art Ensemble Of Chicago の名前があります。このアルバムの発売される1969年から1971年にかけてパリを拠点に活動していたとのこと。なるほど、このアルバムが際立っている訳もわかります。
 普段聞かないシャンソンですが、じっくり聴いてみます。出だしはタイトル曲「ラジオのように Comme à la radio」です。ジャズっぽくも聞こえるバックの演奏に、マイクを近づけてつぶやくように歌うのが不気味な雰囲気ですが、タイトル曲だけあってインパクトは強烈。何度も聴いていると様々な楽器の音がラジオにのって勝手に聴こえてくるようにも感じます。2曲目は Tanka II は日本語の「短歌」がテーマ。アフリカンなパカッションとベースが基本で日本っぽくはありません。次いで Le Brouillard は「霧」これもパーカッションがベースですがオリエンタルな管楽器のメロディーが迫力あります。段々とリバーブを深くかけて霧の彼方に恐ろしいものが消えていくようなイメージ。J'Ai 26 Ans は邦題「私は26歳」です。やはりおどろおどろしい雰囲気ではありますが、可愛らしい歌い方ではあるので清々しく聞こえないことも無い。お経のようでもある。L'Eté L'Eté もオリエンタルな感じです。軽い音色の弦楽器は lute でしょうか。曲調はフォークっぽいですね。邦題は「夏、夏」そして Encore 「まだ」は、セミの声の聞こえるところで可愛い女の子がささやくように歌い、つぶやいているイメージかた始まり、Leo で、フリージャズとなる演劇的な流れです。Les petits chevaux は「仔馬」は、女の子が仔馬に語り掛けているのでしょうか。43秒の短い歌。そして Tanka I ですが、Ⅱよりは、オリエンタルで日本のようなな感じはします。Lettre A Monsieur Le Chef De Gare De La Tour Carol は、中東の音楽の音階を使った楽曲で、またガラッと場面展開は変わります。邦題は「キャロル塔の駅長さんへの手紙 」で、キャロル塔は中東にでもある塔なのでしょうか。Le Goudron「やに」は、」オリジナルには無いボーナストラックでオリエンタル。Le Noir C'Est Mieux Chois「黒がいちばん似合う」は、一番普通の曲です。何か安心しいます。
 まあ何か演劇でも見ているかのようなアルバムで目まぐるしく変わる世界観が不思議でアバンギャルドとは、このようなパターンもあるのだなと感心してしまいます。かなり繰り返し聴いたので慣れてきました🎵

vocals : Brigitte Fontaine
percussion, vocals : Areski Belkacem
flute : Roscoe Mitchell
sax, oboe : Joseph Jarman
bass : Malachi Favors
trumpet : Lester Bowie, Léo Smith
cello : Jean-Charles Capon
guitar : Jacques Higelin
bass : Jean-Francois Jenny-Clark
zither :Kakino De Paz
lute : Albert Guez

producer : Pierre Barouh

featuring : Areski, Jacques Higelin, The Art Ensemble Of Chicago

1. Comme A La Radio
2. Tanka II
3. Le Brouillard
4. J'Ai 26 Ans
5. L'Eté L'Eté
6. Encore
7. Leo
8. Les Petites Chevaux
9. Tanka I
10. Lettre A Monsieur Le Chef De Gare De La Tour Carol
11. Le Goudron
12. Le Noir C'Est Mieux Choisi
tracks 11-12 are bonus tracks, originally released as 7", 1970.





  

2023年9月15日金曜日

Brigitte Fontaine / Kékéland

 

 女優、歌手、作詞家、詩人、小説家などの様々な顔を持ち、音楽は、ロック、フォーク、ジャズ、ワールドミュージックなど、多くの音楽のスタイルを融合させフランスのカリスマ的アーティスト Brigitte Fontaine。ディスク・ユニオンのジャズ・ボーカルの棚にこれがあったので、たまたま手に取って購入してみたのが、Areski Brigitte Fontaine / Le bonheur 1969 気になっていた一枚を友人が持っていたのを見て貸してもらったのが Brigitte Fontaine / Comme A La Radio 1975 と、このアルバム。Le bonheur はフォーキーな感じ、Comme A La Radio は、演劇でも見ているかのようなに目まぐるしく場面が変わる世界観が不思議でアバンギャルド。そして、これは、また違った一面が感じられる不思議なアルバムです。Virgin France から、2001年発売の進化系です。ロック、タンゴ、シャンソン、ダブ、アラブなど、敢えてジャンルを変えているのか混沌としたつくりにしているのがアバンギャルドな味を出しています。年代は新しいので、1,5曲目では ノイズ・パンクの Sonic Youth がバックで、ノイズギターとストリングスを合わせるなどアイデアも斬新で、売れるアルバムつくりに、Sonic Touth を迎えた訳ではないことがわかり、ここらへんも凄いと感心してしまいます。


 先に聴いてきた2枚目のアルバムは、なんとなく呪術的な感じのある狂気が感じられましたが、このアルバムは呪術系を感じさせるささやき系ボーカルではなく、力強いボーカルでポップな感じがしますので比較的聴きやすいように感じます。
 ということでレビューです。Demie Clocharde は、聴きやすいポップのように始まりますが途中からノイズ系のギターが入ってきます。でも、そんなにストレンジな感覚にはならず、心して聴き始めたのに意外と普通だねとなります。そして Bis Baby Boum Boum については、あれっパンクじゃないの?となり、こういう変化なのかと思いながら聴き進めると、Pipeau では出だしはクラッシュ風のタンゴです。なるほど。Y'A Des Zazous も出だしは歪んだギターがギリギリと鳴りながらポップな曲です。そしてボーカルの力強さと破裂音を強調したボーカルでニナ・ハーゲンっぽいかなと思わせます。しかし主題曲でもある Kékéland では、怪しい感じの曲調になり、ここら辺が、私の Brigitte Fontaine のイメージの曲です。異次元的な雰囲気に何故かホッとして意外とあっさりと終わることに気づきます。全体的に曲の長さは短めで聴きやすいことに気づきます。Je Fume は、ダブですね。普通の人でも違和感なく聴ける非常にポップな曲で何か物足りません。良い曲ですけどね。そして Je T'Aime Encore は、伝統的な歌曲風。狂気は感じられないのがこれも物足りませんが、ああこの人は演劇もやる方なんだなあと再認識。God'S Nightmare は、クラブ風の出だしにフォーク要素を入れたポップ・ロックです。ここらへんで場面がクルクル変わる演劇を見ているような不思議な感覚になり、Guadalquivir で、リュートの響きが中東のヤツになります。ドンドンネタが変わり、ここら辺でも、おそらく脳みそが揺らされています。Les Filles D'Aujourd'Hui でフレンチ・ソフト・ロックですか。Rififi はワールド系でサビが来たら、激しいロックになりそうな曲調で進んでいきますがサビが来ないで終了します。また頭がバグります。ここら辺は天才的ですね。そして Profond は演劇の中の歌曲のような感じとなり Nrv は、クラブ、ソウル、フリー・ジャズ、などをごった煮にした感じで締めくくります。ある意味最後の曲は一番カッコ良いかもしれません。と思っていたら終わらず映画音楽のストリングスが流れるようなエンディングになります。いやいやアルバムを通して聴くとバグります。割と中毒性があるかもしれません🎵

vocals : Brigitte Fontaine
piano : Anna Sigalevitch, Camille Bazbaz, Jean-Claude Vannier, Jean-Eflam Bavouzet, Jean-Philippe Rykiel, Jim O'Rourke, Pierre Comblat
bass : Bobby Jocky
guitar : Oswaldo G. Nieto
lute : Thierry Agne
drums : Patrick Baudin, Philippe Entressangle
horns : Akosh Szelevényi, Didier Malherbe
conductor : Areski "Bokass" Belkacem

written by : Ali Belkacem (13), Areski Belkacem (1 to 3, 5, 6, 9 to 12), Bobby Jocky (8), Brigitte Fontaine (1 to 3, 5 to 13), Georges Moustaki (7)

producer : Areski (1, 5 to 7, 9, 12, 13)

#1, 3 to 13 Recorded & mixed at Studio Gang (Paris).
#2 Recorded & mixed at Studio Ferber (Paris).

1. Demie Clocharde
2. Bis Baby Boum Boum
3. Pipeau
4. Y'A Des Zazous
5. Kekeland
6. Je Fume
7. Je T'Aime Encore
8. God'S Nightmare
9. Guadalquivir
10. Les Filles D'Aujourd'Hui
11. Rififi
12. Profond
13. Nrv



▶ Nrv


  

2023年5月18日木曜日

Areski Brigitte Fontaine / Le bonheur

 

 Brigitte Fontaine(ブリジット・フォンテーヌ)は、フランスの歌手でジャンル的にはアバンギャルド・ミュージックとされています。ディスク・ユニオンのジャズ・ボーカルの棚にこれがあったので、たまたま手に取って購入してみましたが、この分野の音楽に触れることは滅多にないため不思議な感覚です。
 と言うことでもう少し Brigitte Fontaine を調べてみると歌手もやっているが、女優、作詞家、詩人、小説家でもあるマルチな才能の持ち主らしく、音楽的にもロック、フォーク、ジャズ、ワールドミュージックなど、多くの音楽のスタイルをオリジナルに融合させていった、フランス音楽シーンが誇るカリスマ的アーティストとのこと。1940年ブルターニュのモルレー生まれ。パリのソルボンヌ大学に入学後、実験演劇と歌手の両方で活動を開始したとのこと。
 そしてこのアルバムのもう一人の登場人物は Areski Belkacem(アレスキー・ベルカセム)。彼も1940年のフランスのベルサイユ生まれ。ダンスクラブや二流のレストランでヒット曲の演奏を始め、兵役の前には、ジャム・セッションのためにサン・ジェルマン・デ・プレの洞窟でドラマーとし活動。兵役後は、フランス中のロックやジャズクラブで多様な楽器を演奏しながらツアーをするマルチ・ミュージシャンです。Brigitte Fontaine とは、Art Ensemble Of Chicago と共に、Théâtre du Vieux-Colombierで、地下クラシックになる Comme à la radio アルバムで演奏し役者としても活動しています。


 先にも書きましたように、この手の音楽には馴染みがなく雑多にお音楽を聴いている私にも、耳慣れない響きです。フランス語は美しい響きの言葉であると言われるのを耳にすることはありますが、自分ではそれほど意識して美しいと感じたことはありませんでした。そこで、このアルバムを聴いてどう感じたのかと言えば美しいと言うよりは結構力強い響きであること。(演奏者の性格も出ているような気はします)
 さて、アルバムの曲のレビュー。テーマ曲である Le bonheur は、11曲含まれている楽曲のうち10曲目に配置されています。劇場での録音なのか、SE的な演出なのか、わかりませんが、出だしは観客と思われる人の笑い声から始まります。アルバム全体がフォーキーで、印象に残りやすいメロディーな曲は少ないのですが、その中で、かなり聴きやすいハッキリしたメロディでユニゾンをハモリながら進行していく印象深い曲。フォーキーでありながら語るように歌うのでお経のように聞こえるところもあり不思議な響き。楽曲としては、幸福と自由を求める若者たちへのメッセージを伝える歌詞で、曲の冒頭では、「幸福は自分で見つけなければならないものだが、それを見つけたら、人生は自由になるだろう」と歌われてるとのこと。当時のフランス社会において、政治的、社会的変革を求める若者たちの反逆の象徴となったとのこと。1969年にこの曲は書かれたとのことで1968年にフランスは五月革命というゼネストを主体とした学生、労働者、大衆の一斉蜂起がおこった頃です。なるほど力強い響きになってくるわけです。世界的には、アメリカではベトナム反戦運動の泥沼化、中国では文化大革命、日本は全共闘、東大紛争、ワルシャワ条約機構軍によるチェコへの軍事介入(プラハの春)などがあり、最近聴いているアルバムは、この辺に関するもの、時期のものが多く政治、戦争、音楽はこの時期には切れない縁があると再認識です。
 さて、アルバムに戻り冒頭の1曲目は、かぼちゃ La citrouille で歌いだしの奇妙な笑い声に聞こえるのは、ハエの前足をすり合わせるようなフォンティーヌの声とライナーノーツでは書かれているが歌詞の中身からしてもハエではないと思いたい。可愛らしいメロディーと奇妙な笑い声、カボチャは馬車になることが出来ると歌い、実は自分は灰色ネズミであるという中々シュールな曲のようで、アルバムは全体的にこのような雰囲気が漂っています。
 言葉はわからないけれど、美しさ、抒情性など芸術性を感じるアルバムで、1曲よりもアルバム全体を聴いた方がその感覚がわかると思います🎵

vocals , percussion (tambour) : Brigitte Fontaine
guitar, percussion, flute, music by : Areski
lyrics by : Brigitte Fontaine ( 1 to 4, 6 to 11)

producer : Pierre Barouh

recorded during the winter of 1975 in a theatre, a kitchen, a stable and a studio.

1. かぼちゃ La citrouille 
2. 芝居 Theatre
3. 星と豚 Les étoiles et les cochons
4. オーナー Le propriétaire
5. ブーダリ Boudali 
6. 痛い痛い Bobo
7. 果樹園 Les vergers 
8. メフィスト Mepfisto
9. ベーコンがある Y’a du lard
10. 幸福 Le bonheur
11. 忘却のうた L’oubliana