2024年9月15日日曜日

Jessica Lauren / Siren Song


 これは Jessica Lauren(ジェシカ・ローレン)の1994年のデビューアルバムでした。イギリスのJazz-Funk系を主とする女性キーボード奏者で、動画とかを見てるとこのアルバムよりもう少しジャズよりな感じのものが多いようです。
 程よくジャジーでファンクで、たまに聞き直して「かなりいいじゃないか」と思っては、何回か聞いてその良さを確認しながらも、しばらくすると存在を忘れてしまう少し幸が薄い不思議な魅力?のアルバムです。フュージョンやアシッドを中心に集めてた時のコレクションなんで、購入から20年くらいは経っていると思われます。
 改めて参加ミュージシャン見てたらギタリストの Tony Remy の名前もあります。ブラコン系にジャズ的なギターをトッピングしたアシッド系のサウンドで自身のアルバム Boof! 、Incognito Eleven に参加など。さらにベースの Stuart Zender も気になって調べたら Jamiroquai の Travelling Without Moving に参加。サックスの Ed Jones は Incognito のサックスでした。好きな音だと思っていたらやはりでした。


 なるほど、私がアシッド系に凝った時期を懐古させてくれる一枚。再度聴きながら楽しくなってきます。アシッド・ジャズ系の音作りなんだけど昔風のフュージョンぽさもありブラスの使い方もまさに私のツボであります。さてレビューです。Leo Rises 日本の超絶テクバンドフュージョン Aribaba かと思いましたが、バッキングだけが似ていました。ひたすらファンクな Jessica Lauren のクラビのバッキングに Chris Bowden のサックスがウネウネとソロを続ける大好きなパターンです。Fire Monkey は、またブラス・アンサンブルが楽しい日本のフュージョンバンド風で、こんな作風が昔流行っていました。学生時代に戻ったようでな感じが懐かしい。ピアノでスキャットもよし、ソロ一発目がトロンボーンも良いですね。その後のトランペットのハイトーン・ソロも素晴らしい。Siren Song タイトル曲は静かにアシッドなベースから始まり、エレピで怪しげなテーマが演奏され、Ragga のソウル風ボーカルで味付けです。When You Call My Name バラードで ボーカルは Ragga 聞き取れないくらいのささやき系で最初入ってますが、ほぼインスト曲でジャムのような感じです。エンディングでもささやきが聴けます。Serengeti は、インコグ的なインストで Stuart Zender の、ベースラインはそれ系です。ここでも Ingrid Mansfield-Allman のボーカルは歌詞無しで楽器的な使い方ですね。Just A Dream ラテンなナンバーで、これも日本っぽい。Juliet Roberts のボーカルがメインですが、これも日本人が好みな感じがとても良し。Dance For Lotte これもラテンですが、松岡直哉が好きだったんでしょうか。とてもそんな雰囲気です。Dangerous Curves ラテンのリズム続きです。ジャズフォーマットに近いフュージョンで、非常に馴染みやすい感じです。最後にどんな曲を持ってくるのかで、作り手の趣味がわかります。Freefall は、フュージョン的なジャムセッションです。
 基本、好きな部類に昔から属しておりヘビロテです。楽曲自体の作りこみよりノリ重視なところがまた良いです🎶

Jessica Lauren / electric piano (1, 3 to 9), acoustic piano (2, 6), oberheim OB8 (3)
roland JV80 (3, 5), clavinet (1, 5)
guitar : Jeremy Shaw (7), Tony Remy (1, 4, 6)
bass : Graham Silbiger (1, 4, 8), Nick Tideman (3, 6, 7, 9), Stuart Zender (5)
drums : Frank Tontoh (1, 8), Nick van Gelder (2 to 7, 9)
percussion : Jessica Palin (5), Thomas Dyani (1 to 4, 6 to 8)
Ed Jones / alto sax (5), soprano sax (3), tenor sax(8, 9), flute (7)
alto sax : Chris Bowden (1, 2, 4, 6 to 9)
tenor saxophone : Scott Hamilton (2, 4, 7, 9)
trumpet : Claude Deppa (2, 4, 6, 8, 9)
trombone : Andy Rogers (2, 4, 7, 9)
vibraphone : Orphy Robinson (4)
vocals : Juliet Roberts (6), Ragga (3, 4)
backing vocals : Ingrid Mansfield-Allman (5)

producer : Stuart Baker
recorded at Falconer Studios 1994

1. Leo Rises
2. Fire Monkey
3. Siren Song
4. When You Call My Name
5. Serengeti
6. Just A Dream
7. Dance For Lotte
8. Dangerous Curves
9. Freefall






  

2024年9月14日土曜日

Jaco Pastorius / Word Of Mouth


 これはジャコがウェザー・リポートに在籍中の1980年に録音したジャコ自身がリーダーとしては2作目のソロ・アルバム。このアルバム制作にはいろいろと裏話(今となっては表ですが)があります。このアルバム「Word Of Mouth」の制作の契約発売のレーベルは Warner Bros(ワーナー・ブラザーズ)1枚目のデビュー作「Jaco Pastorius(ジャコパストリアスの肖像)」は Epic Records (エピック)で、当時加入していたしていた Weather Report(ウェザー・リポート)のレーベルである Columbia(コロムビア)にはこのジャコのソロ制作の印象は裏切り行為のように映り印象は当然良くありませんでした。
 ワーナーは、話題のジャコのアルバム制作なので期待もあり、ロサンゼルス交響楽団から31人を雇って「John And Mary」「Three Views Of A Secret」に9,000ドルかけたが、ボツにしてその中から7人を選んで9回のオーバーダブで63人編成に仕上げなおしたり、ニューヨーク、ロサンゼルス、フロリダとあちこちで録音しオーバーダブで仕上げるなど予定した予算を大幅にオーバーしたとのこと。制作サイドにはかなりの迷惑をかけているようで、雑誌インタビュー記事などからは、このアルバムの制作の構想はかなりの前からあったことは間違いないですが、ウェザー・リポート加入での名声と成功、ドラッグと酒に侵されたジャコの正常な金銭感覚は失われてたようで、制作サイドも翻弄されていたようです。
 発売の結果、評論家の間では評判は良く日本ではゴールド・ディスクを獲得。しかしアメリカでは5万枚の売り上げだけで終わり、ワーナーの目論見は大誤算の結果となりました。



 音楽好きの集う「おでんバー」では評判の悪いジャコですが、自宅では思いっきり聴けますので、久しぶりに聴きながらのレビューです。Crisis 混沌とした楽曲になっていますが、それもそのはず。参加ミュージシャンたちは、互いの音を聴かずにパストリアスのベース・トラックに合わせて演奏したトラックを、ミキシング時に重ね合わせたからです。ある意味フリージャズのようなエネルギーの塊りとなっています。アンサンブルをコラージュしたフリージャズのような熱気のある仕上がりになっている。3 Views of a Secret ジャコの代表曲の一つでもあります。Weather Report でも演奏されていた曲です。Toots Thielemans のハーモニカがとても効果的で印象的です。ジャコがおかしくなってしまってからも、Toots Thielemans は、この曲をあちこちのライブで吹いていてくれているほど気にいってくれているようです。Liberty City このビッグ・バンドでの演奏を念頭に置いて書かれた曲です。ジャコによるホーン・アレンジもしっかりと構想を練ったものです。リズム楽器なしの最初のホーン部隊のイントロはノリよく、イントロが終わるとジャコのフレットレスを活かしたフレーズとパーカッション、ジャコの愛するスチールドラムもしっかりと脇を固めていますし、Toots Thielemans もしっかりとオブリガード。アコースティックピアノは、Herbie Hancock しか弾いていないようなので、このピアノはハンコックですね。今更発見です。Chromatic Fantasy は、バッハのチェロのための練習曲を自身のベース運指の練習曲としていたパストリアスの録音です。左手の運指と右手のピチカートによる壮絶なテクニックで、後半は組曲のように曲が付けられています。Blackbird 学生時代に最後のあるアルペジオのようなベースを猛練習、破壊的なベースソロまでもコピーしようとしていたベーシストがいたのを思いだします。メロディ・パートはToots Thielemans が又も大活躍です。続いてはロックのようなディストーションをかけた Word of Mouth です。最初はジャコのソロで後半からエンディングにかけてはビッグ・バンドによる演奏となります。ジャコはこの前半ソロをファンサービスと思ってやりだすと、いかれてしまう時もあったようで、ドンドン過激な演出になっていったようです。John and Mary は、ジャコの2人の子供の ジョンとメアリーの笑い声や歌声がちりばめられていたり、お父さんの歌声も録音されている曲で、Wayne Shorter のソプラノ・サックスも花を添えています。いかれたオヤジさんでしたが子煩悩ではあったようです。
 録音内容としては秩序のあるフリージャズのような Crisis で幕開けするこのアルバムは、聴いていると情熱的であり、何かの情景が浮かびそうな美しさ、幻想的であり、せつなさもあり荒々しさもある素晴らしい作品ですが、Warner としては Weather Report 級の売り上げを期待していたのでしょう。十分良いアルバムではありますが、ジャズ・ビッグバンドの形式では購入層もウェザー・リポートで取り込んでいたアメリカのロック世代の若年層には響かなかったということ。その意味では音楽性のほかセールスのセンスにも優れた Weather Reort は偉大なバンドであることもわかります🎶

horn & string arrangements, electric bass, synthesizer : Jaco Pastorius
conductor, String Arrangement : Michael Gibbs

【Basic Tracks】
harmonica : Toots Thielemans
drums : Jack DeJohnette, Peter Erskine
acoustic piano : Herbie Hancock
keyboads : Richard Hilton, Tim Devine
lyricon : Tom Scott
percussion : Bruno Castellucci, Don Alias, Robert Thomas, Jr. 
steel drums : Leroy Williams, Othello Molineaux, Paul Horn-Muller
trumpet : Bob Findley, Chuck Findley, David Weiss, Snooky Young)
flugelhorn : Warren Luening
tromborne : Charles Loper, James E. Pugh, Lew McCreary
trombone, tuba : David Bargeron
bass trombone : Bill Reichenbach, David Taylor
french horn : Brad Warnaar, John Clark, Peter Gordon
tuba : Tommy Johnson
tuba, bass horn : Roger Bobo
piccolo, flute : James M. Walker
soprano alto flutre : Hubert Laws
sax : George Young
soprano sax : Wayne Shorter
tenor sax : Michael Brecker
baritone sax : Howard Johnson
basoon : David Breinenthal
【Strings】
conductor : Jules Chaikin
violin, cocert master : Gerald Vinci
violin : Stuart Canin, William Hymanson
viola : Denyse Buffum
double bass : Arni Egilsson, Bruce Bransby
【vocalist】
Alfie Silas, Edie Lehmann, Jim Gilstrap, John & Mary Pastorius, John Lehman, Marti McCall,Myrna Matthews,Petsye Powell,Zedric Turnbough,
【unknown】
Allan Harshman,David Duke,Deborah Sabusawa,Dennis Karmazyn,Harvey Michael,Schaps,Jeff Reynolds,Jerry Hudgins,Mike Butcher,Ray Kelley,Ricky Schultz,Robert Cowart,Russell Schmitt,Simon Levy

1. Crisis (Jaco Pastorius)
2. 3 Views Of A Secret (Jaco Pastorius)
3. Liberty City (Jaco Pastorius)
4. Chromatic Fantasy (Johann Sebastian Bach)
5. Blackbird (Lennon-McCartney)
6. Word Of Mouth (Jaco Pastorius)
7. John And Mary (Jaco Pastorius)

Crisis




  

2024年9月13日金曜日

The Bonnie Raitt Collection


 女性ながら様々なブルース・セッションなどでお見かけする方で、女性スライドギターの草分け的存在として知られています。実際私もスライド・ギターを練習していた時には動画などは参考に見させていただいていました。これは、そんなスライドを練習している時代に札幌の中古屋のCDワゴンで見かけたときに購入と記憶しています。
 1949年生まれのギタリストでありシンガー。1971年からブルース、ロック、フォーク、カントリーの要素を取り入れた音楽で、多数のアルバムをリリースし続けて評論家からは評判が良かったものの、セールス的にはほとんど成功していませんでした。しかし1989年アルバムの Nick of Time がヒットし、Luck of the Draw (1991年)と続けてヒットが出ます。Longing in their Hearts (1994年)に至っては数百万枚をセールスし、グラミー賞もこれまでに10回受賞の大御所。このアルバムに収録の曲は、不遇の時代の Warner Brothers 1971年~1986年のアルバムからのセレクションで、ライナーノーツには、ご本人の解説、思い出が掲載されている丁寧なつくりのコレクション・アルバムとなっています。


 1stアルバム Bonni Raitt は、4トラックのレコーダーを使って行われ、ジュニア・ウェルズ、そしてサックスのA.C. リードのブルースが参加し、濃厚なブルースですが声が若いです。2ndアルバム Give It Up のミュージシャンはフリーボ(ベース、チューバ、ギター)エリック・カズ でカバーと自作で構成されています。Give It Up Or Let Me Go はスライドのイントロから始まるカントリー・ブルース、Under The Falling Sky はサザンロック風など多彩。3rdの Takin' My Time リトル・フィートのメンバーが参加し、このアルバムの Guilty はソウル・バラードで味わい深い歌声。Streetlights の Angel From Montgomery は、John Prine のカバーのカントリー・ブルース。Home Plate の Sugar Mama まで来るとバンド・サウンドもだいぶリッチになってきていてエリック・クラプトン風のブルース・ロックがカッコ良い。The Glow では更にコマーシャルなロック・サウンド。Nine Lives では、レゲエの True Love Is Hard To Find なんかも収録されていて、売れ線のライトなロック調の No Way To Treat A Lady まで収録されていますが、こうやって聴いてくると売れ線はつまらなく感じてしまいます。と、ここまで来て1stの歌声と比較すると初々しい歌声が、貫録あるミュージシャンへと進化してきたことがよくわかります。ファンというほどでもないので、こうやって年代を追って変化を聴けるアルバムは面白い🎶

1. Finest Lovin' Man /  Bonnie Raitt (1971)
2. Give It Up Or Let Me Go / Give It Up (1972)
3. Women Be Wise / Bonnie Raitt (1971)
4. Under The Falling Sky / Give It Up (1972)
5. Love Me Like A Man / Give It Up (1972)
6. Love Has No Pride / Give It Up (1972)
7. I Feel The Same / Give It Up (1972)
8. Guilty / Takin' My Time (1973)
9. Angel From Montgomery / Streetlights (1974)
10. What Is Success / Streetlights (1974)
11. My First Night Alone Without You / Home Plate (1975)
12. Sugar Mama / Home Plate (1975)
13. Louise / Sweet Forgiveness (1977)
14. About To Make Me Leave Home / Sweet Forgiveness (1977)
15. Runaway / Sweet Forgiveness (1977)
16. The Glow / The Glow (1979)
17. (Goin') Wild For You Baby / The Glow (1979)
18. Willya Wontcha / Green Light (1982)
19. True Love Is Hard To Find / Nine Lives (1986)
20. No Way To Treat A Lady / Nine Lives (1986)





  

2024年9月12日木曜日

黒い性・白い性 Black / White SEX グレース・ハルセル


 1972年に発刊された、米国ジャーナリストで大統領報道担当官も務めた
グレースハルセルのリポートです。
 自らの肌を黒く染めた女性ジャーナリストの話は、TVドキュメントを昔見たことがありますので、おそらくこの人のことだったのかと思われます
 TVでの印象はそれほど強くなく、変わった人もいるもんだぐらいにしか思っていませんでした。
 しかし、このころのアメリカは
1963年 キング牧師のワシントン行進
1965年 ベトナム戦争本格化
1968年 キング牧師殺害
 著者は未だ人種差別の残る社会で生きてきた人です。おそらくセックスのことも女性が大っぴらに話をするのもタブーだった時代に、人種差別を切る観点でこの著を出版するのは相当なエネルギーと決意があったことと思います。
 著書の中身は、セックスの角度から歴史観点からの宗教、黒人から見た白人、白人から見た黒人、など、テーマは複雑な話題です。最初は、興味津々で読み始めました。しかし、色々な迷信や考え方、生き方があるとは思うものの、理解するは、かなり難解な内容でした。
「著名な学者などの他人の言葉」と「登場人物の言葉」「著者の考え」が交錯しているため
これは偏見だと他人が言っているのか、登場人物がそう思っているのかが解らなくなるのも難解な要因です。さらに外国文学の訳書にありがちな比喩が長いことや、文章のセンテンスが長すぎて何を言っているのかさっぱり?に近いものでもありました。
 しかし、黒人白人抜きで色々な環境に、おかれている人のセックス観が書かれていることは興味深い作品ではあります。今では中々手に入らない著作でしょう。
 出版はサイマル出版会で、1998に廃業しているが、理論・人間・問題・話題・外国語
にカテゴリー分けして出版している尖った出版社だったようです。これはB980なので、当時980円での販売であったようです。🎶


  

2024年9月8日日曜日

Yousuke Onuma / Jam Ka 2.5 The Tokyo Session


 グアドゥループの民族音楽“グォッカ”をジャズに取り入れたプロジェクトの「Jam Ka」。2010年発表の「Jam Ka」は、ニューヨークにて録音、 2016年の「Jam ka Deux」は、パリでした。今作は、東京録音のライブ盤。2017年 Jam ka Deux ツアー最終日の翌日スタジオに入り、ライヴ・セッション形式で一発録りしたアルバムです。
 タイトルの 数字 ですが、楽曲がライブを重ねることで進化することを確信し、ツアー後にアルバム曲の進化したバージョンを記録したいと思ったことによるスタジオ・ライヴ。ツアーで次の可能性を見せるためなど、過渡期の作品と位置づけての2.5としたとのこと。
 メンバーは、Jam KaJam ka Deux でも参加していたベースの Reggie Washington、Ka やドラムを担当の Arnaud Doimenm、Olivier Juste、ピアノの Gregory Privat など、ほぼ同じメンバーでの録音です。

 

 

 それでは、レビューです。Moai’s Tihaiは、Jam Ka Deux の収録曲で少し早めで、リズムはより現代的なアレンジで、Reggie Washington のベースはファンクしていて小沼氏のギターも歪み強めです。初心者にもとっつき易い曲ですね。Flyway は一枚目の Jam Ka からの収録曲。元曲よりも、Ka のリズムをより強くした演奏となっています。小沼のギターの音も元の曲は爽やかなトーンであったものを、少しモコモコさせたりして表情をよりつけています。Beyond the Sea / Le Bonheur は Jam Ka Deux の収録曲でもありますが、よりフリーなピアノイントロとなっています。Le Bonheur はまた違うテーマで Gregory Privat 作曲ですので Jam Ka Deux とはほぼ違う曲になっています。Gradation Part 4 は、ka奏者と小沼の完全即興演奏となっています。Jam Ka で Part1,2、Deux でPart3、そしてこのアルバムで Part 4 となっています。会話している演奏なのがよくわかる演奏です。The Elements これも Jam Ka Deux の収録曲ですが、元の曲のアレンジも凝っていましたが、こちらの方がバンドらしいグルーブが良く表れている重厚な演奏になっています。
 こちらのスタジオセッションの方が、やりたいこと、やってきたことが凝縮されているんでしょう。直感的にバンド演奏を楽しめる内容となっております🎶

guitar : Yosuke Onuma
keyboad , piano : Gregory Privat
bass : Reggie Washington
ka ,drums : Arnaud Doimen , Olivier Juste

1. Moai’s Tihai
2. Flyway
3. Beyond the Sea / Le Bonheur
4. Gradation Part 4
5. The Elements





  

2024年9月7日土曜日

Rod Stewart / Lead Vocalist


 中古屋で見つけたRod Stewart 、ファンではありませんが悪かろうはずがないと購入しました。このアルバムは1993年に発売で、実際聴いてみて懐かしい曲も入っているので、オムニバスかベストなのだろうと思いながらそれなりに楽しいアルバムでした。
 しかし、このレビューを書くために、色々なものを読み込んでいくと、なかなか物議を提供していたアルバムのようです。結論から言えば、1~8曲目までは発売済の Faces時代やソロ初期などの、なつかしの名曲選でそれ以降は新曲であるとのこと。なるほど全部が懐かしの曲ではないことは初めて理解でした。
 なんでもベスト盤を作ろうと思っていたのではなく「カバー曲を収録してたアルバムのレコーディングをしていたら、MTVアンプラグドへの出演が決まってロッドがそちらの方に乗り換えた」からだとのことでした。ちなみにアンプラグド発売とダブってしまうためこのアルバムはアメリカではリリースされていないとのこと。


 当然音楽はビジネスでありますから、アーチストの生活としてのお金儲けの手段であります。しかし大人の事情が色々と詰まっているとはいえ、かなり中途半端なアルバムの作り方です。私のような人間はこれでも楽しいのですが、ロッドファンで収集マニアの方は、知らない曲があるなんて許せないのでしょう。ファンとしては買わざるを得ないようなアルバムなのにブーイングが起きている模様です。スーパースター、ロッドスチュアートなら、売れたヒット曲を入れときゃ、再発でも売れるのでしょうね。
 カバーとしては、フリートッドウッドマックで Stand Back、ストーンズの Ruby Tuesday、ソウルの Roy 'C'で Shotgun Wedding、The Contours で J. Geils なんかもカバーしている First I Look At The Purse、トム・ウェイツの Tom Traubert's Blues、ストリングスなんかを入れたソフトでクラシカルな録音です。前半と後半の落差が激しくて、いい加減なつくりが、またニヤリですな🎵

1. I Ain't Superstitious / Jeff Beck Group
2. Handbags And Gladrags / Rod Stewart
3. Cindy Incidentally / Faces
4. Stay With Me / Faces
5. True Blue / Rod Stewart
6. Sweet Lady Mary / Faces
7. Hot Legs / Rod Stewart
8. Stand Back / Rod Stewart
9. Ruby Tuesday / Rod Stewart
10. Shotgun Wedding / Rod Stewart
11. First I Look At The Purse / Rod Stewart
12. Tom Traubert's Blues / Rod Stewart





  

2024年9月6日金曜日

Idris Muhammad / Power Of Soul

 


 ドラマーの Idris Muhammad(イドリス・ムハンマド)1974年のリリースの作品です。アメリカ合衆国ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれのセッション・ドラマーで本人の名前「レオ・モリス」でイスラム教への改宗で「イドリス・ムハンマド」となったとのこと。
 タワレコでクラシックのお勧めコーナーに置いてあって、髭が気になって購入してみたのですが、ジャズ・ファンク界では有名な人のようでシンバルのシグネイチャー・モデルも出ているようです。



 このアルバムの共演者は演奏/編曲/指揮が Bob James、テナー・ソプラノサックスが Grover Washington, Jr.、トランペットとフリューゲルが Randy Brecker、ほかベース Gary King、ギターJoe Beck。
 イスラム系の格好に髭がアップのジャケットですから中近東系のマニアな展開になることかと期待しながらかけ始めると、日本のムード歌謡にあるようなベタなテーマのフュージョンです。マニアな展開になりそうかなあと思わずニヤリとしながら聴いておりました。しかし2曲目に突入すると繊細な感じの爽やかなフュージョン。そして4曲中の3曲目に突入すると静かなフュージョン曲で Grover Washington, Jr.(グローバー・ワシントン・Jr)の甘めのソプラノ・サックスに、硬質な音のギターカッティングも1970年代中盤に流行っていたサウンド。期待していたマニアな展開はなく若干拍子抜け。テーマ曲の Power Of Soul がアクが強いぐらいで、あとは普通にフュージョンでした。しかしアメリカ系のバカテク・フュージョンを期待すると少し肩透かしで、B級ジャズ・ファンクでもなく、少し物足りない感じがするかもしれません。家で聴く前に行きつけの「おでんバー」で聴いたのですが、私同様、皆様ジャケットを見てマニアックな内容を期待していたようですが、聴き終わった後には皆さま「音楽に髭は生えていなかった」「ターバンの雰囲気も無かったね」などなど、どうしてもジャケットと中身のギャップばかりが気になる一枚となってしまいました。お勧めはサンプリングにも使われている Loran's Dance ですが、ゆったりとしたフュージョン曲であばれる Randy Brecker とかは居ませんのであしからず。
 気になって検索してみると今まで注目していなかっただけで、私所有の音源にも結構参加しているので既に聴いているドラマーでした。特に私の好きなRoy Hargrove's Crisol / Habana で叩いていたとはびっくり🎶

drum : Idris Muhammad
keyboards : Bob James
guitar : Joe Beck
bass : Gary King
percussion : Ralph MacDonald
soprano sax, tenor sax : Grover Washington, Jr.
trumpet, flugelhorn : Randy Brecker

producer : Creed Taylor
recorded at Van Gelder Studios, March 1 & 14, 1974

1. Power Of Soul
2. Piece Of Mind
3. The Saddest Thing
4. Loran's Dance





  

2024年9月5日木曜日

ハーレムの熱い日々 BLACK IS BEAUTIFUL 吉田ルイ


 この本は音楽本という訳では無かったのですが、それまで音楽を聴くだけであった私が、音楽の時代背景も考えながら聴くようになったきっかけの名著です。

 吉田ルイ子さんは北海道生まれのフォトジャーナリストで、この本はニューヨークのハーレムに10年住んだ時の記録です。1962年に渡米され1971年に帰国されるまで、ちょうど60年代をアメリカ黒人ゲットーで過ごした記録です。1963年ケネディ暗殺、1964年ハーレムの暴動、1965年マルコムX暗殺、1966年ブラックパンサー設立、1968年マーチンルーサーキング牧師暗殺、1969年ウッドストック・・・すごい時期にハーレムに出入りされていました。
 また、1972年に帰国して写真展「ハーレム Black is beautiful」を開催して、この本も「ハーレムの熱い日々」も出版されました。私はそれを2019年に古本屋で見つけて読んでみたわけです。別に音楽論を語るわけでもなく人種差別に対する政治的なメッセージがあるわけでもないルポルタージュなのですが、さらりとカメラ目線と自身の目線で人間をとらえています。

 私自身はこの本を読むまでこれらの出来事を何となく知っていましたが興味を持つことも無かったのですが、リアルにこの時期にハーレムに女性一人で住まわれて感じたことを読んでから、音楽との時代の密接なかかわりに興味が出て音楽に隠されているメッセージも知りたいと思うようになりました。
 ちなみに過ごされた「ゲットー」とは、黒人やヒスパニックの密集居住地のことで、この場合ハーレムに事を指します。ダニー・ハザウェイで歌にもなってますね「ザ・ゲットー」
 ブラックパンサーは余り知らなかったのですが、黒人が居住するゲットーを警察官から自衛するために結成された政党のことで、毛沢東主義にかなり強く影響を受けており、これがハーレムの人の本を読むきっかけになったことあるとか、日本のゲットーとも連絡を取っていたこともここで少し詳しくなりました。(この本を読むまで毛沢東主義も良く理解していませんでしたから)
 そして音楽的なつながりでも興味深いことも書かれています。
「ウェインショーターはハーレムに住んでいて著者と知り合いでお子様の名前はミヤ子ちゃん」「住んでいればチャーリーミンガスに普通に会える」「アートブレイキーは売れてからも、金持ちのパーティーで演奏しニグロとして差別的な扱い、しかしこれは本人も容認していた」

 私の愛好する音楽は、ジャズ、ブルース、ソウル、ファンクなど黒人ミュージシャンの演奏するものが大半を占めます。しかしその黒人ミュージシャンの音楽が発展してきた中には哀しい事実も歴史にはあります。

BLACK IS BEAUTIFUL
このタイトルを見るといつも思い浮かべるのは、Esperanza Spalding(かなり好きです)のBLACK GOLD です。最後にBLACKのみんなを指さす彼女に泣けてきて、この本の中で描かれているハーレムの生活オーバーラップします。

 この本を読んでから、人種問題に関する本などを読む機会も増えました。同じ人種問題のルポではありますが白人のグレース・ハルセルの書いた「黒い性・白い性 Black / White SEX」なんかもセックスの角度から歴史観点からの宗教、黒人から見た白人、白人から見た黒人、などが書かれており興味深くはありましたが、かなり難解でした。これももう一回読んでみるかな。

  2024年5月31日に吉田ルイさんは永眠されました。89歳で胆管がんだったそうです。