2023年10月8日日曜日

Mal Waldron / Left Alone

 

 1959年 Verse の グループのレーベルである Bethlehem Records からリリースされたBillie Holiday の追悼アルバムで、基本は、ピアノ Mal Waldron、ベース Julian Euell、ドラム Al Dreares のトリオで、Jacky McLean がアルトサックスで1曲目のタイトル曲だけ参加しています。タイトル曲の Left Alone は、1959年に Mal Waldron が作曲、Billie H年oliday が作曲のボーカル曲ですがビリー自身の歌は残っていません。Mal Waldron は、1957年からビリーが1959年に亡くなるまで伴奏者を務めています。と、ここまで書くとビリーはもう亡くなっているのかと思いきや亡くなったのは、1959年7月17日で、このアルバムが録音された時点の2月24日でははビリー・ホリデイは、麻薬による肝硬変、腎不全で相当調子は悪いでしょうが、亡くなってはいませんでした。リリースが1960年なので録音後に彼女への追悼盤として発売されたようです。


 ジャズ喫茶のリクエストは、こればかりになったと言う名アルバムですが、発売当初1962年はあまり売れなかったらしい。それがレコード会社が変わるたびに売れてきて最後はベストセラーになってしまったという、噛みしめれば味が出るパターンのようです。当然日本でのみ抜群の評価を受けていたようです。
 それではレビューです。1曲目は、このアルバムのタイトルで有り Jackie McLean が参加しているのも、これだけという Left Alone です。あまりにも有名で様々な人によって演奏されている曲で、アルバム全体の出来も素晴らしいのだが、どうにもマクリーンの絡みつくサックスのインパクトが強烈です。Catwalk 以降は、トリオになります。これはマルのオリジナル曲で、ゆったりとしたテンポで各人のプレイは力の入った感じです。You Don't Know What Love Is は、邦題「恋の味はご存じないのね」でホリデイの愛唱歌であったようで、一音一音を確かめるように弾くマルのピアノです。アルバムのつくりとしても冒頭3曲は、聴き手を弾きづりこむために、かなり考えられて配置されているように感じます。Minor Pulsation では、一挙にトリッキーなテーマに変わりドキッとします。アップテンポのオリジナルで歯切れが良い演奏です。Airegin は、ロリンズの名曲ですね。最初はゆったりと聞かせてテンポがドンドン上がっていきます。マルのピアノも細かなフレーズを織り込みながら段々と熱を帯びていきます。最後は、The Way He Remembers Billy Holiday で曲ではなく対談を収録しています。
 ちなみに、行きつけの「おでんバー」で、これをかけたところ、昔聴いていたけど忘れていたよ。でも久しぶりに聴くと昔の印象よりも抜群に良いねとの玄人筋からの評価でした🎵

piano : Mal Waldron
bass : Julian Euell
drums : Al Dreares
alto sax : Jackie McLean

recorded February 24, 1959 in NYC

a dedication to Billie Holiday by her former pianist Mal Waldron.

1. Left Alone
2. Catwalk
3. You Don't Know What Love Is
4. Minor Pulsation
5. Airegin
6. The Way He Remembers Billy Holiday



▶ Airegin


  

2023年10月7日土曜日

Oz Noy / Twisted Blues Volume ①


 Oz Noyを最初に聴いたのがこのアルバム。聴いてびっくり、インパクトありすぎて一発でファンになり、Twisted Blues Vol2Ha!SchizophrenicOzone SqueezeBooga Looga loo など、他のアルバムも揃えていってます。イスラエル出身でスタジオ・ミュージシャンとして活躍し、飛躍を求めてニューヨークに移住、ロック、ジャズ、ポップス、サウンドトラック、CMソングなど幅広い音楽性を武器に手掛け、ソロ・ギタリストとして打って出てきたようです。自身のアルバムとしては5thアルバムとなるようで、未だ聴いてないのがありますので探しとかにゃなりません。メンバーは、Stevie Ray Vaughan & Double Trouble のドラマーの Chris Layton、ロック、ブルース系の敏腕セッションドラマーのAnton Fig、ザッパのバンドに参加し、ポップス、ロック、ジャズなど、あらゆる業界で活躍する御大 Vinnie Colaiuta が参加し、この面倒で変態的な展開のアルバムを強力なリズムで支えています。他 Eric Johnson は3曲目の You Are The State に参加しているし、こういった面白うなセッションでよく見かけるベースの Will Lee など、豪華メンバーが集結しています。


 曲目は、オズが研究家でもあるらしい Thelonius Monk から Light Blue、Trinkle Tinkle の2曲、Meters を混ぜながら、自作曲で固めた意欲作です。雑誌で見ましたが、彼の強力なサウンドはコンパクト・エフェクターのズラリとした連結のようです。あれだけやってしまうと、コンパクト・エフェクターはノイズが制御できなくなるし、音圧の制御が難しいと思いますが、それでこの音はかなりのマニアですね。
 さてレビューです。Twisted Blues は、Oz Noy のオリジナル。かなりエッジの効いたシングル・コイルのギターの音です。Tele と書いてありますので、Telecasterを使用ですね。シングル・ノートで弾く音も当然素晴らしいのですが和音が非常に良く練られているのがこの人の特徴ですね。Oh Really? オールディーズ風の曲がオズ流になるとこうなります。アウトなフレーズだけどポップで、どこか楽しい感じのする曲でとにかく感心してしまいます。 You Are The State は、Chris Tarry とオズの共作。Oz Noy Trio でも活動しているベーシストのようです。現在の手持ちのアルバムには彼の名前はありません。ここでのベースは Roscoe Beck で、Robben Ford, Eric Johnson, Leonard Cohe とプレイしているベーシストとのこと。Whole Tone Blues も、オズ・ノイの作品。どう聴いても Stevie Ray Vaughan のオマージュ作品ですね。オズ・ノイが味付けするとこうなりますってカッコいい仕上がりです。当然ドラムは、Chris Laytonとなります。Cissy Strut は Meters の名曲ですね。様々な人のカバーを聴いてきましたが、オズ・ノイのバージョンが一番斬新で素晴らしいですね。このバージョンは私もギターでコピーしました。ライブハウスでやった同窓会で、この曲を合わせてくれと2日ぐらい前に音源を渡しましたことがあるんですが、このバージョンはベース、ドラムのリズム隊はきっちり聴きこんでくれてないとズレまくります。 Light Blue は、モンクの楽曲です。今までのようなエッジが効いたサウンドではなくゆったりとした曲になっています。ストラトを使って、おそらくスライドも使って幻想的な曲調にしています。Steroids いかにもオズ・ノイ的な曲でこれはエッジが効いているほうです。二つの曲を合体させたような作りで、微妙にリズムとメロディーをずらせたりと細かな細工が施されている曲で合わせるメンバーが凄いですね。Two Centers は、シンプルなコード進行と単純な曲に思わせておいて、段々とモリモリに仕掛けが始まる雰囲気を作っておいて、その先に中々いかないというジレッったい作風です。そう思ってしまう聴き手の人はだいぶオズ・ノイの世界に入り込んでしまっている人でしょう。Trinkle Tinkle 最後はモンクで締めくくりです。エフェクトを幾つ使ってるんだと思う音のギターで始まり、スイングでロックするようなリズムですね。ギターのテイストは Stevie Ray Vaughan です。レイボーンはジャズ・ブルースも名手でしたことを思いだします。
 ギターを弾く人であれば、あっけにとられるアイデアとテクニックのオズ・ノイがブルースを意識すればこうなるって言う完璧な作りこみの作品🎵

guitar : Oz Noy (all), Eric Johnson (3)
organ : Jerry Z (1, 2, 7, 8) John Medeski (1,5)  Reese Wynans (3,4,6)
piano : Allen Toussaint (2)
bass : Roscoe Beck (3, 4, 6, 9) Will Lee (1, 2, 5, 7, 8)
drums : Anton Fig (3, 5)  Chris Layton (4,6,9) Vinnie Colaiuta (1,2,7,8) 
tambourine : Ralph MacDonald (5)

producer : Oz Noy

recorded @ The Carriage House Studios, Stamford CT Nov. 5 & Dec. 12, 2010
recorded @ Saucer Sound, Austin TX Dec. 18 & 19, 2010

1. Twisted Blues
2. Oh Really?
3. You Are The State
4. Whole Tone Blues
5. Cissy Strut
6. Light Blue
7. Steroids
8. Two Centers
9. Trinkle Tinkle





  

2023年10月6日金曜日

John Scofield / Grace Under Pressure


 John Scofield(ジョンスコ)名義ではありますが、Bill Frisell(ビル・フリゼール)とのツイン・ギター作品です。ジョンスコは相変わらずのエキセントリックなプレイで、ビル・フリゼールも思いっきり主役を食わんとする存在感のあるプレイ。この二人は、全く違った個性であるため聴き分けは簡単。これは、どっちのギターかなんて聞きながら迷うことは無く聴きながら二人の姿が思い浮かぶのも、わかりやすくて良いところ。



 このアルバムを購入した当初はストレートなギター・ジャズやフュージョンを聴くことが多かったのでこのアルバムを「普通の人がやったらノイズです」なんてレビューをしていました頃もありましたので昔の私には難解なギターだったのでしょう。が、今の私が聴けばそんなことは無くアウトな音使いが非常に心地よいジャズ・プレイだと感じます。
 このアルバムでの、わかりやすいジャズ曲は Grace Under Pressure、You Bet、Twang あたり。特にYou Bet は明るいジャズで最も二人のギターの対比もよくわかって良いです。難解ではありますが、お気に入りは Scenes From A Marriage で、浮遊感のあるインプロのやり取りで、各自がどこに着地するのかわからなくなりますが、メンバーの皆さん追いついてきて最終的にはフリージャズの様相に転じます。最近の私は、全く理解できなかったフリージャズも聴けるような耳と頭になってきたので、ここら辺なら違和感なくすんなりと楽しんで聴くことが出来ます。ホーン部隊には Randy Breckerも参加していますが、かなり軽い味付け的な使用で激しいソロなどはありません。
 伝統的なジャズ手法から、自由な演奏にと2人のギタリストの個性がうまく混ざり合わさった作品と感じます🎵
 
guitar : John Scofield 
guitar : Bill Frisell 
bass : Charlie Haden
drums : Joey Baron 
flugelhorn : Randy Brecker(3, 5, 6, 8, 10)
french horn : John Clark(3, 5, 6, 8, 10)
trombone : Jim Pugh(3, 5, 6, 8, 10)

producer : Steve Swallow

recorded and mixed in December 1991 at Power Station, NYC.

1. You Bet
2. Grace Under Pressure
3. Honest I Do
4. Scenes From A Marriage
5. Twang
6. Pat Me
7. Pretty Out
8. Bill Me
9. Same Axe
10. Unique New York

▶ You Bet


▶ Twang


  

2023年10月1日日曜日

Ella Fitzgerald / Like Someone In Love

 

 1930年代から数十年に亘り、ツアーとレコーディングに明け暮れ、揺るぎない人気と地位を築いていたエラ・フィッツジェラルドの1957年作品。1955年にDecca Records を離れ Norman Granz が興したレコード会社 Verve Records に所属しています。エラがいちばん沢山のレコードを吹き込んだのは、この Verve Records で、Cole Porter、Rodgers & Hart、Duke Ellingtonなどの作曲家シリーズ、Ella In Berlin のようなライブ録音など多彩な作品を残しています。スインギーな歌が得意な印象がありますが、このアルバムのような静かでエモーショナルなバラードも素晴らしいものがあります。また Frank DeVol のアレンジも素晴らしく、単調になりがちなアルバムをエラの良さを引き出すことで聴きごたえのあるアルバムに仕上げていることと思います。


 本アルバムは、再販盤が数多く出ていて、それにはボーナストラックが肺いているようですが、私の購入のこの盤はオリジナルのまま。上記のジャケ写は別の後発CDで録音の翌年の写真のようです。高級そうなボートに乗っていますね。
 さてレビューです。There's a Lull in My Life は Mack Gordon 作曲 Harry Revel 作詞の1937年映画 Wake Up And Live の挿入歌で、伸びやかなボーカルにうっとりとし、Stan Getz が途中で出てくると、おっ出てきたなと思って直ぐにいなくなる。いい感じの始まりです。More Than You Know は、スタンダードで良く知られた歌で、Edward Eliscu, Billy Rose の作詞 Vincent Youmans の作曲で1929年出版(ということはシートミュージックですか)ミュージカル Great Day に使われたナンバー。エラの豊かな表現力がとにかく素晴らしい。包み込むように歌い上げられると幸せな気持ちになれます。What Will I Tell My Heart?  は、Jack Lawrence 作詞 Peter Tinturin 作曲。似たような展開の佳曲です。田舎のゆったりとした家でゆっくり本でも読みながら、このアルバムを聴いていたら長生きできそうです。I Never Had A Chance  は Irving Berlin 作曲で、それほど有名な曲ではないようです。Close Your Eyes は Bernice Petkere の作詞・作曲 で1933年出版だからこれもシート・ミュージックですかね。でもこれは良く聴くスタンダードの恋の歌。今までの肩ひじ張らない曲であったのに対し、少し力が入ってます。We'll Be Together Again は Carl T. Fischer, Frankie Laine による歌曲でバックのオーケストラの演奏も緩急つけて、盛り上げにかかって来る感じあります。Then I'll Be Tired Of You は Yip Harburg 作詞 Arthur Schwartz 作曲のナンバーで可愛らしい曲ですね。伸びやかなトーンで歌いあげてくれます。Like Someone in Love は Johnny Burke 作詞 Jimmy Van Heusen 作曲のタイトル曲。コンセプト的にも合致して出来も良かったのだろうが、アルバム全部良い曲なので特にこれが良いということも感じはしません。映画のエンディング?いやオープニングっぽいかな。Midnight Sun は Sonny Burke, Lionel Hampton 作曲 でインストでしたが、Johnny Mercer が54年に作詞して歌曲として出版のこれもシート・ミュージックですか。良く練られたメロディーラインの流れるような美しさが感じられる曲です。I Thought About You  作詞 Mercer 作曲 Van Heusen の有名スタンダード。似たようなラブ・バラードが続くような気もしますが、実に伸びやかに歌っていただけるので飽きは来ません。You're Blasé  はOrd Hamilton 作曲 Bruce Sievier 作詞、少し曲の表情が変わってお気楽に明るく聴ける感じです。邦題は「冷たいお方」Night Wind  邦題は「夜の嵐」Lew Pollack, Bob Rothberg による歌曲で少し粋な感じですね。What's New? は Johnny Burke 作詞 Bob Haggart 作曲で、1938年にトランぺッター Billy Butterfield に書いたラブ・ソングで「何か変わったことはない?私たちの恋はどうなったの?私はあなたのことを変わらず愛してます」可愛らしいようなドキドキする怖い歌です。Hurry Home は Buddy Bernier, Bob Emmerich, Joseph Meyer による作詞作曲。前の曲との関連性を考えると「早く帰ってこい」は何か意味があるのでしょうか。曲は好いですよ。How Long Has This Been Going On?  は George Gershwin, Ira Gershwin の作詞作曲でオールド・スタンダードで、歌い方に凄く表情があります。
 アルバムとして大きな抑揚はありませんがエラの40歳の歌唱は、歌の上手さ、表情と歌手としては絶好調な感じです。



vocals : Ella Fitzgerald
arranger, conductor : Frank DeVol
sax : Stan Getz

producer : Norman Granz

tracks 1-11 recorded October 15, 1957 in Hollywood, Los Angeles
tracks 12-15 recorded October 28, 1957 in Hollywood, Los Angeles

1. There's a Lull in My Life (Mack Gordon, Harry Revel) 
2. More Than You Know (Edward Eliscu, Billy Rose, Vincent Youmans)
3. What Will I Tell My Heart? (Irving Gordon, Jack Lawrence, Peter Tinturin) 
4. I Never Had A Chance (Irving Berlin)
5. Close Your Eyes” (Bernice Petkere)
6. We'll Be Together Again (Carl T. Fischer, Frankie Laine) 
7. Then I'll Be Tired Of You (Yip Harburg, Arthur Schwartz) 
8. Like Someone in Love (Johnny Burke, Jimmy Van Heusen)
9. Midnight Sun (Sonny Burke, Lionel Hampton, Johnny Mercer)
10. I Thought About You (Mercer, Van Heusen) 
11. You're Blasé (Ord Hamilton, Bruce Sievier)
12. Night Wind (Lew Pollack, Bob Rothberg)
13. What's New? (Johnny Burke, Bob Haggart)
14. Hurry Home (Buddy Bernier, Bob Emmerich, Joseph Meyer)
15. How Long Has This Been Going On? (George Gershwin, Ira Gershwin)




  

2023年9月30日土曜日

Buddy Guy Junior Wells & Junior Mance / Buddy And The Juniors


 ポップスの女性歌手のアルバムか?とも思ってしまうジャケットの中の赤ちゃん3人は、Buddy GuyJunior WellsJunior Mance ですね。この可愛らしいジャケットなのに、中身は泥臭いブルースです。シカゴを代表するブルースマン Buddy Guy、Junior Wells は、ありうる組み合わせですが、ジャズピアニストの Junior Mance が参加とは貴重なアコースティック・ブルース・セッションです。随分昔から持っていたアルバムなのですが、今回聴くまであの Junior Mance とは気づいていませんでしたので、聴き直しは心して聴こうと思います。プロデューサーである Michael Cuscuna は、ライナーノーツに、このレコーディングについて興奮気味に記述してある気がします。そりゃあ Buddy Guy、Junior Wells は当然セッションはあるでしょうが Junior Mance との共演なんて凄いことですから当然でしょう。


 さて、レビューです。オープニングは Talkin' 'Bout Women Obviously ギターとブルースハープの弾き語りブルースです。年代物のアコースティック・ブルースは枯れたギターの音がする場合が多いですが、Buddy のアコギはとてもリッチな音がします。Riffin' も古典的なパターンのブルースで、これもピアノレス。Buddy Blues から Mance のピアノが登場ですが特にジャズっぽいフレーズとかはありません。Hoochie Coochie Man では、ピアノの存在感が増します。リズム隊はいないのに、そうとう躍動感ある演奏になっているのは、しっかりとしたピアノのリードがあってこそと思われます。Five Long Years では、メンバーの演奏も随分と打ち解けた感じの演奏になっています。古典的なパターンに合わせて各自のアドリブが生き生きとしています。Rock Me Mama では、Mance はお休みです。ボーカルは、Wells となって迫力あってカッコ良い。Ain't No Need は、Mance 復活でサビの手前のブレイクでは、Mance がギターと合わせてブレイクしていないのですが、3コーラス目だけは同じブレイクをしているので、ここら辺は、ぶっつけ本番のご愛敬といったところでしょうか。
 数年ぶりに聴きましたが、実に張りがあってドスの効いたアコースティック・ブルースは、今までよりも好印象です。素晴らしいアルバムです🎵

harmonica, vocals : Junior Wells
acoustic guitar, vocals : Buddy Guy
piano : Junior Mance

producer : Michael Cuscuna

recorded at Vanguard Studios, New York City on Dec. 18, 1969

1. Talkin' 'Bout Women Obviously
2. Riffin'
3. Buddy Blues
4. Hoochie Coochie Man
5. Five Long Years
6. Rock Me Mama
7. Ain't No Need




  

2023年9月29日金曜日

David Sanborn


 Taking Off に続くサンボーン2枚目は自身の名前がアルバム名。邦題は「メロー・サンボーン」となっています。サウンド的には、それほどメローではなくファンク、ソウル系が色濃い作品となっています。発売は当然、Warner Records で、プロデューサーは レコーディング・エンジニア、ミュージシャン、作曲家の Phil Ramone で、どちらかと言えばポップス、ロック、ブルース系の方のようです。私のサンボーン遍歴はマーカス色が濃くなって洗練されたサウンドになっていた頃の Straight to The Heart で始まり、次いで A Change Of Heart から始まっているので、このソウル色の強い、このアルバムは結構新鮮に聴けました。マーカスはいませんが Hiram Bullock は、このアルバムから参加しています。注意して聴いていましたが、この頃は未だ自己主張は少な目で、あのクリーントーンのギターの音ではありません。名曲「Smile」はボーカル入りで、このアルバムが原点というのも忘れてはいけない点ですね。サンボーンと言えば色男のイメージですが、ジャケットの裏写真は指名手配犯のような目つきの悪さです。


 さて、レビューです。レトロ・ファンクのようなサウンドで始まるのは Indio です。改めて聴き直すとファズを少し効かせたバッキング・ギターから、サビでの裏の取り方がトリッキーなカッティング・ギターなどハイラムは中々手の込んだギターを主張控えめにやっています。サンボーンのサックスはこの頃から完成されたサウンドと構成ですが少し黒さが濃いでしょうか。そして、あの名曲 Smile です。作曲者は C. Perkinson と言う方の作品で、元曲を探してみましたが残念ながら見つかりません。Mamacita は、歌物でもおかしくない完全にファンクです。昔風のエレピがカッコイイですね。Herbs は年代物の感じがするワウを効かせたギターが印象的。サックスとはもる女性のバッキング・ボーカルも昔風。力強いドラムとベースに合わせて歌うサンボーンのサックスも心地よし。Concrete Boogie も、ミドルテンポのソウル・パターン。アルトの音でしゃくるような音でのサンボーンのサックスはソロを吹きまくらなくても魅力的です。I Do It For Your Love ここで Richard Tee が登場です。短めの2分51秒は、サンボーンとのデュオのバラードとなっておりノリノリ・ナンバーでは無いところがやってくれますね。Sophisticated Squaw は、ファンク・ナンバーに戻ります。最後の 7th Ave とこの曲は、ドラムの Victor Lewis の作曲となっています。7th Ave では最後のギターソロがハイラムらしからぬテクニカルで軽めの音で珍しい。
 大好きなサンボーンの軌跡の一枚であり、黒さを前面に出した作風は良しです🎵
 
sax, flute : David Sanborn
keyboards : Rosalinda DeLeon (1-5,7-8)、Richard Tee (6)
guitar : Hiram Bullock
bass : Herb Bushler
drums : Victor Lewis
percussion : Jumma Santos

produced by Phil Ramone

This album is dedicated to Jonathan Sanborn.
Recorded at A&R Studios, N.Y.C.

1. Indio
2. Smile
3. Mamacita
4. Herbs
5. Concrete Boogie
6. I Do It For Your Love
7. Sophisticated Squaw
8. 7th Ave.

Indio

Smile



  

2023年9月24日日曜日

Bud Powell / Inner Fires

 

 1924年生まれのビバップ・スタイルのピアノの第一人者。同時代のピアニストのモンクとは深く親交があって音楽理論はモンクから学んだと言われていますがプレイは対照的に違います。この時代なので、この人もヤクとアルコールには手を出していたようですが、きっかけは不遇な状況であったようで、1947年ハーレムのバーで喧嘩をして、ビンで顔面を殴られたが彼の論理が意味不明で一貫していなかたとされ、州立病院に入院させられ電気ショック療法を受けさせられ1948年10月には退院しているが人種差別と主張していたらしい。それがもととなったのか、1950年代中期以降は麻薬、アルコール中毒に苦しみ精神障害を負っています。しかし不調期でも録音においても、「クレオパトラの夢」(Cleopatra's Dream)などの名演を遺しているのがこういった昔のプレイヤーの凄いところ。
 この録音は1953年ワシントンの Club Kavakos という小さなクラブでのセッションの録音でパウエルの精神状態がよかった時の録音のようです。プロデューサーの Bill Potts はジャズ・アレンジャーで、個人的にこの録音をコレクションしていたものが、30年後の1983年に発売されたものとのこと。なるほど音質はかなり悪いのはそのせい。


 さて、レビューに参ります。出だしは I Want To Be Happy パウエルが得意とするアップ・テンポなナンバーで、ピアノ8小節のイントロから始まり、ミンガスとの6コーラスを分け合ったソロで快調な滑り出し。Somebody Loves Me ガーシュインの楽曲でアップテンポのアレンジ、1コーラス目はテーマをなぞったアドリブ、そして完全なアドリブとミンガスの掛け合いです。録音が悪くて音がこもりがちなのでミンガスの音をもう少し鮮明に聴きたい。Nice Work If You Can Get It これもガーシュインの曲ですがアップテンポになってます。生き生きとしてガツンとしたピアノソロで調子の良さが伺えます。Salt Peanuts は、ガレスピの曲ですね。歌が入れば、ソルピーナ、ソルピーナって聞こえるヤツです。速さが命ですね。Conception は、George Shearing の作品で次の Lullabye Of Birdland と続けていますね。9曲目にも録音されていますがこちらは1分49秒です。潔いこのまとめ方も良しですね。Little Willie Leaps ここでマイルスの楽曲の登場です。コロコロと転がるようなピアノの音が気持ち良い。Hallelujah! これも高速で凄みがあります。Lullabye Of Birdland (Alternate Master) こちらは2分43秒の少し長め。Sure Thing は、ミュージカル五大作曲家の一人として有名で「煙が目にしみる」の Jerome Kern 作品です。やっとミドルテンポの曲が出てきます。Woody 'N' You は、ガレスピの曲ですね。最後まで硬質で体育会系なバドでした。最後インタビューは1963年の1月15日と5月6日のものでこのアルバムとリアルタイムではありません。多分フランス語での解説と陽気に歌うバドは舌が回らずにやばい感じがします。ただ「最近聴いたグッド・ミュージックは?」に対し「チャーリー・ミンガス、秋吉敏子」と答えていたり、アル・ヘイグは完璧なピアニストだと褒めています。マニアな記録ですね。
 録音状態は、いまいちですがパドの力強いピアノタッチが存分に味わえます。ひたすら速さと力強さを強調する暴走族のような演奏でした。これはこれで有りですね🎵

piano : Bud Powell
bass : Charlie Mingus
drums : Roy Haynes

producer : Bill Potts

recorded At Club Kavakos - Washington D.C., April 5, 1953

1. I Want To Be Happy
2. Somebody Loves Me
3. Nice Work If You Can Get It
4. Salt Peanuts
5. Conception
6. Lullabye Of Birdland
7. Little Willie Leaps
8. Hallelujah!
9. Lullabye Of Birdland (Alternate Master)
10. Sure Thing
11. Woody 'N' You
12. Bud Powell Interviews





  

2023年9月23日土曜日

渡辺香津美 / To Chi Ka


 1980年リリースで、渡辺香津美が若くて、黄色で統一したジャケットはインパクト抜群。テクニカルなギターとポップに味付けされたフュージョン・サウンドで大ヒットしました。レコーディング・メンバーも海外の売れっ子ミュージシャンばかりで、世界的なギタリスト渡辺香津美の人脈の広さを感じます。録音は1980年3月4日から26日のニューヨーク。サポートメンバーとしてYMOの最初の世界ツアー参加していた「YELLOW MAGIC ORCHESTRA TRANS ATLANTIC TOUR」が1979年10月16日にロンドンで始まり、1979年11月6日にニューヨークで終了後のレコーディングです。そして、このアルバム発表後の1980年夏には、レコーディングに参加したMike Mainieri、Marcus Miller、Warren Bernhardt に Omar Hakim のバンドで日本国内の「トチカ・ツアー」が敢行されています。さらに2010年の東京JAZZでは、渡辺香津美 TOCHIKA2010 featuring TOCHIKA ALL STARS として、30年ぶりの同メンバーによる演奏が行われています。ちなみにアルバム・タイトルは、愛犬であった北海道犬の「図知華(トチカ)」に由来とのこと。


 さて、懐かしのアルバムのレビューです。このオープニングは上がります。 Liquid Fingers とてもノリの良いファンキー・フュージョンで、これぞ世界に通用するカッコよさではないでしょうか。Black Canal は、ずっしりとしたドラム、ベースに低音の単音リフから、段々と湧き上がってくるフレーズで、Michael Brecker はこの曲にはいないけど、それ系の曲です。当時の流行りのサウンドなんで Marcus Miller の味でもあるかもしれないですね。そしてタイトル曲は To Chi Ka ですが、柔らかなオベーションによるギター演奏で、Mike Mainieri のビブラホンも優しい、いかにも渡辺香津美らしい楽曲です。Cokumo Island は、向井滋春のフュージョン時代にあったようなラテンも感じる音使いが懐かしい。そして Unicorn は、売れましたね。これは若い頃の渡辺香津美の代表曲です。テーマも印象的ですがエキゾチックなスケールとアウトしたフレーズも織り交ぜながら縦横無尽のギターソロが魅力です。いやいや尖ってます。Don't Be Silly も良い曲です。雰囲気はまさに Don't Be Silly バカ言うなよって感じの砕けた感じが心地よい曲です。Sayonara は、Tony Levin のフレット・ベースがしんみりと響いてくる曲です。Manhattan Flu Dance は、渡辺香津美のこの時の得意なパターンですね。世界の渡辺香津美が強力メンバーで作り上げた若き日の傑作です🎵

guitar, guitar synthesizer : 渡辺香津美
rhythm guitar : Joe Caro (1,2,5,6)
keyboards : Kenny Kirkland (Keyboards 1,2,5,6/acoustic piano 2)
oberhiem, keyboards : Warren Bernhardt (Oberhiem 2,4,5,6,7 / keyboards 4,7,8)
bass : Marcus Miller (1,2,5,6)
bass : Tony Levin (fretless 4,7 / bass 8)
drums : Steve Jordan (1,2,5,6)
drums : Peter Erskin (4,7,8)
vibes : Mike Mainieri (3,5)
percussions : Sammy Figueroa (4,7)
tenor sax : Michael Brecker (4,8)

producer : Mike Mainieri

recorded & mixed by Doug Epstine at Media Sound, New York City, March 4-26, 1980

1. Liquid Fingers
2. Black Canal
3. To Chi Ka
4. Cokumo Island
5. Unicorn
6. Don't Be Silly
7. Sayonara
8. Manhattan Flu Dance

▶ 
Liquid Fingers


▶ Unicorn