最近タバコの吸いすぎか歳のせいかウイスキーをロックで飲むとムセてしまうことが多いのと、1時間以内に駆け付け3杯して気持ちよくなりすぎることも多いのでチェイサーは頼んでいます。したがって最近私は「Straight, With Chaser」だなあ、と思いつつレモン酎ハイ飲みながらアルバム聴きなおしながらこれを書いています。
改めて「Straight No Chaser」という曲をおさらいすると、モンクが1951年に作曲した、Eb majorのシンプルな12小節ブルースです。初演は1951年のブルーノート・セッションとのことです。モンク自身もこの曲の様々な録音を残していますが、なんといってもマイルスが出した1958年 Milestones が有名で、これ以降多くのミュージシャンが演奏してスタンダードとなった名曲です。1989年にはクリント・イーストウッド製作総指揮で、セロニアス・モンクの生涯と音楽のドキュメンタリー「Straight, No Chaser」のタイトルにもなっています。このアルバムでも円熟期のモンク・カルテットでの十八番となっている演奏で余裕で息がぴったりと合っている演奏です。チャーリー・ラウズのソロの途中でモンクは伴奏をやめてしまいラウズは延々とソロを続けざるを得なくなる趣向も面白いですし、その後のモンクのソロも曲を熟知しているからこその実験のように音を確かめながら展開していくソロも好きな展開です。
そしてこのアルバムでの話題と言えば、16分の Japanese folk song「荒城の月」ですね。これについては誠かどうかはわかりませんが、モンクが来日公演を行った際に、あるジャズ喫茶のオーナーからアンティークなオルゴールをプレゼントされ、そのオルゴールの曲を気に入って、帰りの飛行機の中でずっと聴いていたのが「荒城の月」でそのオーナーがアメリカにモンクの演奏を聴きに行った時に演奏してくれたのがオルゴールの曲「荒城の月」だったそうです。日本人なら皆さん知っている滝廉太郎の唱歌で、印象的なメロディは確かに名曲で、日本の曲がこうして取り上げられるのは誇らしいことではありますが、小学生時代に強制的に歌わされていたこのメロディーは好きで歌っていたというよりは、音楽の授業の時間が苦手だった私には、強制的に覚えさせられ歌わされていたイメージの方が強く残り手放しで凄いですねえとかこれは名演ですねとか思いながら聴くテーマではないかなあと感じてしまいます。
他モンクらしくはない音づかいで映画音楽のような可愛らしくロマンチックな演奏のエリントン・ナンバー I didn't know about you がメロディーとリズムも良いです。ボーナストラックの讃美歌の独奏 This is my story this is my song とかも嬉しいですね。
ドラマーの Idris Muhammad(イドリス・ムハンマド)1974年のリリースの作品です。ニューオリンズ生まれで、ジャズファン系のセッションドラマーで、共演者は演奏/編曲/指揮が Bob James、テナー・ソプラノサックスが Grover Washington, Jr.、トランペットとフリューゲルが Randy Brecker、ほかベース Gary King、ギターJoe Beck。アメリカ合衆国ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれのドラマーで、本人の名前「レオ・モリス」でイスラム教への改宗で「イドリス・ムハンマド」となったとのこと。
イスラム系の格好に髭がアップのジャケットですから中近東系のマニアな展開になることかと期待しながらかけ始めるとムード歌謡に近いベタなテーマのフュージョンで始まります。別に意味でマニアな展開になりそうかなあと思わずニヤリとしながら聴いておりました。しかし2曲目に突入すると繊細な感じの爽やかなフュージョン。そして4曲中の3曲目に突入すると静かなフュージョン曲でグローバー・ワシントン・Jrが甘めのソプラノ・サックスに硬質な音のギターカッティングも1970年代中盤に流行っていたサウンド。最初に期待していたマニアな展開はなく最初のテーマ曲の Power Of Soul がアクが強いぐらいでした。アメリカ系フュージョンを期待すると少し肩透かしで、B級ジャズ・ファンクを期待すると少し物足りない感じがするかもしれません。家で聴く前に行きつけの「おでんバー」で聴いたのですが皆様ジャケットを見てマニアックな内容を期待していたようです。聴き終わった後には皆さま「音楽に髭は生えていなかった」「ターバンの雰囲気も無かったね」などなど、どうしてもジャケットと中身のギャップばかりが気になる一枚となってしまった。お勧めはサンプリングにも使われた Loran's Dance ですが、ゆったりとしたフュージョン曲であばれるランディとかは居ませんのであしからず。
私の中では割と喰わず嫌いをしてしまっているパット・メセニーですが、中古屋で見かけてデビュー盤 Bright Size Life 以来の2枚目購入してみました。何故メセニーを聴かなかったかと言えば、私の若い頃は、ギターフュージョンをかなり聴いていたのですが基準は聴くというよりはギターをコピーできるか?マネできるか?がだったからで、メセニーの音を聴いたりビデオを見てこれは太刀打ちできないしマネもできないと思ってしまったからです。社会人になるまでは、ジャズ研での参考とする音源以外は、ほぼギターレスの音楽は聴いていなかったからです。今はギターレスの音楽の方を多く聴いているので時代は変わるものです。本作はギターのメセニーの1992年に発表したグラミー賞作品ですが、この時点ではこのアート感を楽しめる音楽感は私にはありませんでしたね。
さてこのアルバム、ジャケットのデザインそのままの音楽で、絵画を見ているようなアルバムのトータルで聴かせる壮大なアート作品。それは最初のAbove The Treetops から始まりますが、カンボジアの子供たちの声をサンプリングしてメセニーがフォーキーなギターで被せてくると神々しい気分で既にジャズ界からは離脱です。(これはカンボジアの霊歌「Buong Suong」がベースとのこと)。Facing West は雄大な空にはばたくようなイメージに持って行って、Cathedral In A Suitcase では壮大な自然に包まれて、Finding And Believing では中近東へ旅をする。クライマックスは The Truth Will Always Be で静かなイントロから壮大なオーケストレーション。後半にうなるギターシンセに展開します。ちなみに、As A Flower Blossoms は短いながらも矢野顕子との共作で道に咲く小さまな花を矢野顕子節で表現している。
このライブも本人が歌うのではなく Babyface が自身が提供した曲などをそのアーティストと共演することがコンセプトのようで、このライブの1曲目は Change The World で、調べてみると、クラプトンの元のアルバムではこの曲のExecutive Producer は Robbie Robertson で、Producer は Babyface (作曲は全く違う人でTommy Sims, Gordon Kennedy, and Wayne Kirkpatrick となっています)なるほどそれで、クラプトンが頭から出てくるわけです。実はこのライブではもっとクラプトンは演奏しているらしいのですが、大人の事情でカットされてしまいBabyface プロデュースの Change The World だけがアルバムに収録されているとのことで(いつかこういった音源は発売されるんでしょうね)
いったい何時間のショーなのかはわかりませんが、Shanice Wilson、Stevie Wonder、K-Ci & JoJo, Kevon Edmonds, Melvin Edmonds、Beverly Crowderなどの多彩なアーチストの素晴らしいパフォーマンス。End Of The Road のサビは極上で、胸が熱くなります。数あるMTVアンプラグド・シリーズの中でも、屈指の名盤として挙げられる名作でしょう。(大人の事情は私が生きてるうちに解除されるのかなあ)