2023年4月16日日曜日

Sonny Clark / Cool Struttin'

 

 Sonny Clark は1931年生まれのピアニストで1963年に1月13日、ヘロインの過剰摂取により31歳で亡くなっています。地味なスタイルのせいか本国アメリカでは全く売れず知名度がないのに日本では人気のピアニストとのこと。また他の説では、麻薬常習者のためキャバレーカードが発行されずジャズ・クラブでの演奏が出来なかったため知名度が無かったという説もあります。しかしサイドマンとしては、1954年1月、Billy Holiday のケルン公演、 Lee Morgan / Candy(1958)、や Dexter Gordon / Go! 等にも参加しています。
 本作は、New York Times 紙は「いつまでも残るハードバップのクラシック (enduring hard-bop classic) と評されているとのことで、少々古臭い曲調ではあります。Cool Struttin'は(気取って歩く)の意味で、Francis Wolff という人が撮っておられますジャケットのセンスは非常に良いと思います。日本のジャズ喫茶史上最も多くプレイされたアルバムの一枚でとも言われております。確かに、いかにもわかりやすいインパクトのある1曲目はジャズ喫茶でかかれば、心して聴く構えが出来る曲でアルバムをセレクトする側としては重宝するものであったことが予想されと思っていたら、ジャズ喫茶「メグ」のオーナー寺島靖国氏の著書「ジャズの聴き方に法則はない」には、真逆の記述がありました。Art Blakey / Moanin'、Mal Waldron / Left Alone なんかは1日にリクエストが何回もかかり「ヒット・パレード」物と称して差別待遇をして当時は「さっきかかった」「盤に傷がついた」などと称して断っていたことがあるとのこと。なるほどヒットし過ぎるとそうなのかと納得し、何かに似ていると思ったら Moanin' の印象と似ているのかと納得。


 本盤は参加メンバーも有名どころが揃っています。Sonny Clark(p)、Art Farmer(tp)、Jackie McLean(as)、Paul Chambers(b)、Philly Joe Jones(ds)が参加しているところを確認しレビューです。
 オープニングはタイトルトラックの Cool Struttin' で、ジャケットの女性がカッカッと気取って歩いている様かと思うと古臭いと思われるテーマもクールに聴こえてくる。時代が時代なら違った聴こえかたをしたに違いありません。ソロでは Art Farmer がいかにもブルースな演奏をして Jackie McLean がブイブイ言わせ、弓ベースのソロもまとまっています。Clark はリーダーで目立ちすぎるということも無く程よいアンサンブル。次は、Cool Struttin' と同じく Clark のオリジナル・ナンバーの Blue Minor。ブルージーで親しみやすいメロディーでありながら途中のテーマ部分のラテン・アレンジも魅力的で、McLeanとFarmer は伸びやかにソロを撮っています。1曲目より Clark は存在感があり粋がった感じのピアノがとても良い。Sippin’ At Bells は、小気味よいドラムソロのイントロと管2本のポップで印象的なテーマ。聴く人が聞くとバド・パウエルの影響があるらしいスタイルらしいが私には未だそこを聴きとる力はなく、ただただ軽やかな推進力のあるスイング感が好き。そして Deep Night で仕上げです。My Funny Valentine の作者として有名な Lorenz Hart / Richard Rodgers の作品で、非常にかっこよい曲で Clark のピアノ がとても粋な感じにキマっています。
 全体的にアルバム全体の曲の構成、長さ、王道で潔い演奏は、聴きやすく黒く煮詰めた珈琲と薄暗い空間が良く似合うアルバムですね🎵

piano : Sonny Clark
bass : Paul Chambers
drums : "Philly" Joe Jones
alto sax : Jackie McLean
trumpet : Art Farmer

producer : Alfred Lion
recorded by : Rudy Van Gelder

recorded on January 5, 1958. Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey

1. Cool Struttin'
2. Blue Minor
3. Sippin' At Bells
4. Deep Night





  

2023年4月15日土曜日

Billie Holiday / Last Recording

 

 Billie Holiday は「レディ・デイ」の呼称で知られ、Sarah Vaughan、Ella Fitzgerald ドと並ぶ、女性ジャズ・ヴォーカリスト御三家です。その生涯は人種差別や薬物依存症、アルコール依存症との闘いであり、乱れた生活にもかかわらず名声を勝ち得た彼女はジャニス・ジョプリンをはじめとする多くのミュージシャンに影響を与えました。1915年4月7日、メリーランド州ボルチモアに生まれ、1959年7月15日、ニューヨーク州メトロポリタン病院で44歳の短い人生を終えますが、(本当かどうかは分からないが)10歳でレイプされ、14歳でブロードウェイの娼婦となったが、、禁酒法時代のハーレムの真ん中で、非合法のナイトクラブに出入りするようになり有名なジャズクラブ「ポッズ&ジェリーズ」でも歌い始めるようになったことをきっかけに歌手生活に入り、ジャズ史上最高のシンガーといわれた方です。


 Billie Holiday については、所有しているアルバムは Billie's Blues だけで聴きこんでいる訳では無いのですが、このアルバム、44歳とは思えない晩年を感じさせる枯れた歌声であるのに哀しさも感じます。実際、このレコーディング時には、周囲は彼女がもう長くはないことに気づいていて、何とか最後の歌声を録音しようと彼女にもちかけ、しぶる彼女は「私の好きな連中を集めてくれれば」と、Hank Jones(p)、Milt Hinton(b)、Billy Byers (tb)、Osie Johnson(ds)、Joe Wilder(tp)、Harry Edison(tp)を指名してこの最後の仕事を弾く受けたとのことです。
 ビリーの声はともかく、Ray Ellis And His Orchestra のアレンジ、演奏は最高のデキであると思います。ビリーの声を優しく包むように控えめにいたわるようです。でも録音を聴いた時に全盛期のそれではない。彼女にとってはこのアルバムが最後とわかっていた訳ではないのですが、自分の嗄れた声を聴きビリーの目には涙があふれていたそうです。
 さて哀しい話ではありましたが、最後のアルバムを聴いていきましょう。All of You は、ビリー独特のしゃくりあげた歌い方ですが、やはり音程のキープが苦しそうで歳を感じてしまいます。Sometimes I'm Happy は、若い頃に一緒に活動していたレスターの名演で知られ。この録音の10日後にレスターがこの世を去っている不思議な因縁があります。ビリーは安心しきった感じで幸せそうな歌声です。You Took Advantage Of Me はローズマリー・クルーニーの代表曲で、ビリーは軽く歌い流していますが、ゆったりと椅子に座って話かけるような歌いかたでリラックスを感じます。When It's Sleepy Time Down South  はサッチモの名称で知られる曲です。この曲に関しては深く歌い上げているのが印象的で歌とともにオーケストラの包み込むようなアレンジも改めてハッとします。There'll Be Some Changes Made は20年代の古いスタンダードでブルージーな曲です。メンバーもゆったりとした演奏でサックスとトロンボーンソロになり未だ未だ続くところでフェードアウトしています。Deed I Do も古いスタンダードで曲で2分17秒であっさり。Don't Worry' Bout Me は、このアルバムを最もよく表す曲名で、この頃の彼女の心境と上手く一致した歌詞となっています。そして All The Day、Just One More Change、It's Not For Me To Say、I'll Never Smile Again とバラードが続き、最後は Baby Won't You Please Come Home はビックス・バイダーベックの時代から演奏されているジャズスタンダードの名曲。
 これらの吹き込みの10日後、レスターが亡くなり彼の葬儀で歌うことも許されず、同年の1959年7月17日に亡くなっています🎵

vocals : Billie Holidayt
orchestra : Ray Ellis And His Orchestra
arranged by, conductor : Ray Ellis
piano : Hank Jones
guitar : Barry Galbraith (1 to 7, 12), Kenny Burrell (8 to 11)
bass : Joe Benjamin (8 to 11), Milt Hinton (1 to 7, 12)
drums : Osie Johnson
alto sax : Gene Quill (2 to 4, 7)
tenor sax : Al Cohn (1, 5, 6, 12)
tenor sax, alto sax, bass clarinet : Romeo Penque (8 to 11)
bass sax : Danny Bank (1, 5, 6, 12)
trombone : Billy Byers (1, 5, 6, 12), Jimmy Cleveland (2 to 4, 7 to 11)
trumpet : Harry Edison (1 to 7, 12), Joe Wilder (1, 5, 6, 12)
harp : Janet Putnam (2 to 4, 7, 8 to 11)

tracks 8, 9, 10, 11 : recorded: NYC, March 3, 1959
tracks 2, 3, 4, 7 : recorded: NYC, March 4, 1959
tracks 1, 5, 6, 12 : recorded: NYC, March 11, 1959

1. All Of You
2. Sometimes I'm Happy
3 You Took Advantage Of Me
4 When It's Sleepy Time Down South
5 There'll Be Some Changes Made
6 'Deed I Do
7 Don't Worry' Bout Me
8 All The Way
9 Just One More Change
10 It's Not For Me To Say
11 I'll Never Smile Again
12 Baby Won't You Please Come Home





  

2023年4月14日金曜日

The Incredible Jazz Guitar Of Wes Montgomery


 Wes Montgomery (ウェス・モンゴメリー) が Riverside に残した1960年のスタジオ録音の Full House と並ぶ歴史的名作。「Incredible」 とは「とんでもない」の意で、本アルバムにはオクターブ奏法で複雑なフレーズもバリバリと弾きまくる技が展開されています。
 おそらくギターを弾かない人には理解しずらいと思うんですが、ギターでオクターブの音を出すということは、2本の弦を鳴らさなければならず、2本の弦にオクターブは隣接していないので実質3本の弦を使うことになります。そうなると使用できるポジションも限られてくるので素早く上下させないと弾けませんので、素早く音が飛ぶフレーズでの上下運動はかなり面倒なことになります。オクターブの音は単音と比べて聴く人に強く耳に残る音になります。普通の人は弾きやすいフレーズを選んだりすると思いますが、ウェスは弾きやすい弾きにくいは関係なくオクターブで弾きまくっています。ウェスのこのオクターブ奏法をどうして始めたのか? もともとオクターブで演奏していたわけではなく1950年代中盤に地元インディアナ・ポリスで、ジョニー・ザ・クライング・トンプソンというブルースマンのバンドに参加していたところ彼のプレイのフレーズを全て覚えてしまいユニゾン、ハーモニーを付けて演奏していて、これが評判が良くオクターブの上下のユニゾンでプレイするようになる。ある日、ジョニーの弦が演奏中に切れてしまうアクシデントがあり咄嗟にオクターブでのプレイを始めたのが始まりとのこと。咄嗟ということですが、それなりに練習していなけりゃできないことでしょうけどね。
 さらに有名な奏法としてはウェスはピックを使わずに右手の親指のみで弦をはじきます。1948年~1950年までLionel Hampton楽団に所属したのですが、ウェスは家族と暮らしたいために退団し故郷のインディアナポリスに戻ります。奥さんと7人の子供たちを養うために朝の7時~15時まで工場で働き、夜9時~深夜2時ごろまでジャズ・クラブで演奏し家族が寝ている夜しか練習できなかったので、こっそりと音を小さくする必要があったために親指でそっと弾くようになったとのこと。
 多くのジャズを学ぶギタリスト達にお手本とされているギタリストではありますが、フレーズのコピーをすることはできても、本質的にその特徴的な奏法や音をマネすることは非常に困難なことであるとも言える過去現在とも唯一無二のギタリストであります。


 本作はそのウェスの作品の中でも重要作にあたると思われます。冒頭の Airegin からシングル・ノートの素早いフレーズとオクターブを取り混ぜた演奏です。最も技巧的な曲で、「Incredible」「とんでもない」と言うアルバム名からも、これを印象付けたいということで、この曲を頭に持ってきたのかと思われます。また名盤請負人といわれる Tommy Flanagan のピアノ・プレイもこの曲でのプレイが一番激しいアプローを魅せます。Tommy Flanagan は一方では Polka Dots And Moonbeams では、ゆったりとしたプレイと響きの素晴らしいを見せてくれます。Four On Sixはウェス自作の曲でテーマ部分や展開もギタリスト向けの今なお多くの演奏家に演奏され続けている名曲であります。ギターだけでなく Percy Heath のひたすらテンポよくウォーキングし続けるベースはソロ部分でもそのまま続けられ、こんなベースソロもカッコよいではありませんか、と言いたいです。ドラムの Albert "Tootie" Heath は、Percy Heath の兄弟であるとのこと。メンバーも素晴らしく息があっており、かつウェスの特質が盛り込まれ魅力を堪能できる快作です🎵

guitar : Wes Montgomery
piano : Tommy Flanagan
bass : Percy Heath
drums : Albert "Tootie" Heath

Producer : Orrin Keepnews
Recorded in New York, January 26 & 28, 1960.

1. Airegin
2. D-Natural Blues
3. Polka Dots And Moonbeams
4. Four On Six
5. West Coast Blues
6. In Your Own Sweet Way
7. Mister Walker
8. Gone With The Wind

▶ Airegin




  

2023年4月9日日曜日

Miles Davis / Filles De Kilimanjaro

 
 
 マイルスは、Miles In The Sky でエレクトリック化していくのですが、Miles In The Sky の録音は1968年1月5月。Miles In The Sky からハンコック、ロン・カーターが参加し、レコーディングでは限定的にエレクトリック・ピアノ、エレクトリック・ベースを使っており Miles In The Sky 録音以降のライブではアコースティック楽器を使いレパートリーは従来と同じだったそうです。そしてこのアルバムは、その直後の1968年6月19・20・21日の録音で、ハンコックはエレクトリック・ピアノ、ロン・カーターはエレクトリック・ベースを取り入れることとなります。その録音がギル・エバンスとの共作 3. Petits Machins (Little Stuff) で、2. Tout De Suite、4. Filles De Kilimanjaro はマイルスの単独作となります。
 作曲の側面でマイルスの流れを見ると、マイルスはメンバーに演奏、楽曲提供させながら成長を促していく方針をとり、マイルスの作曲は E.S.P. では4曲、Miles Smiles では1曲、Nefertitiではゼロになっていたのが、このアルバムでは作曲はなんと全てマイルスになっています。なお、このアルバムでも重要な役割を果たすメンバーのウェイン・ショーターが2023年3月2日89歳でロサンゼルスで亡くなりましたので、マイルス・バンドへの加入後のアルバムを列記しておきます。E. S. P. 、Miles Smiles、Sorcerer、Nefertiti、Miles In The Sky 、Filles De Kilimanjaro、In A Silent Way。
 ものすごく面倒なアルバム作成の背景を書いてしまいました。面倒なことを考えずに音を聴けば良いと思っていたものの、この作業が最近楽しくなってきているのが、段々と歳をとってきた証拠ですね。


 一聴すると地味に聞こえる本アルバムではありますが、アルバム制作の背景、メンバーを知ってから聴くと、ファンクとエレクトリックに照準を合わせ始めた作品として中々濃いアルバムに聞こえてきます。
 さて、そろそろレビューします。Frelon Brun 最初に聴いた時には印象が薄かったのですが、確かにロック、ファンクに近づく作品として聴くと、かなりロック的なトニー・ウイリアムスのドラムから始まり、ファンク的ではありますが手探りで状態のように聞こえるアコースティックベースとピアノにマイルスが切り込んでいく、ショーターも切り込んでいくが何か勝手が違うように聞こえる。ピアノも色々なフレーズを試してファンクの色を出しながら自分なりの正解を探しているように聞こえる。それでもまとまってしますのが凄いなるほどの出だし。Tout De Suite では、音数少な目になるがグッとバンドの音のまとまりが出てきたように感じます。ドラムはジャズよりで、ベースは余計なことはしない。リズムではなく低音の単発で曲を支えているため他のメンバーの自由度が増しているように聴こえます。ピアノはハンコックに交代でチックコリアよりメロディアスになって曲に柔らかさを与えているように感じます。Petits Machins (Little Stuff) は楽器はエレクトリックであるけどアコースティックな響きに戻ってきました。いや曲が進めばそうでもないか。エレクトリックな楽器の音の粒立ちの良さをうまく使ったピアノに変わってきているのかな。Filles De Kilimanjaro はタイトル曲で確かに地味だけど曲としてまとまっています。単調で動かないベースラインはマイルスの指示なんだろうけど狙いすぎも感じます。 Mademoiselle  Mabry (Miss Mabry) こちらは雰囲気のある曲でビロードに包まれているようなゴージャスな感じがします。マイルスも気持ちが入っているし、ショーターのサックスも曲を良くとらえている感じがします。Tout De Suite (alternate) は、ボーナストラック。
 先にも書きましたが地味だけどクインテットで進めていたアプローチにエレクトリックを導入した経緯の知識を得てから聴くのと、素の状態で聴くのは大違いの印象の完成度のあるアルバムでした。

trumpet, leader (directions in music) : Miles Davis
electric piano : Chick Corea (1, 5), Herbie Hancock  (2-4, 6)
electric bass : Dave Holland (1, 5), 
acoustic bass : Ron Carter (2-4, 6)
drums : Tony Williams
tenor sax : Wayne Shorter

producer : Teo Macero

written by M. Davis
 
Track 1, 5, 6 recorded 9/24/68, New York
Track 2 recorded 6/20/68, New York
Track 3 recorded 6/19/68, New York
Track 4 recorded 6/21/68, New York

1. Frelon Brun
2. Tout De Suite
3. Petits Machins (Little Stuff)
4. Filles De Kilimanjaro
5. Mademoiselle Mabry (Miss Mabry)
6. Tout De Suite (alternate)




  

2023年4月8日土曜日

Freddie Hubbard / Live At Fat Tuesday's

 

 少年時代にインディアナでウェス・モンゴメリーと親交があったとのことで、ウェスは1948年の7月から1950年の1月までライオネル・ハンプトンの楽団に参加、ハバードは1958年にニューヨーク進出してから音楽キャリアは始まる。その後はアート・ブレイキー・アンド・ザ・ジャズ・メッセンジャーズに参加しハード・バップの印象が強いのだが、コールマンの Free Jazz 、エリック・ドルフィーの Out to Lunch、ジョン・コルトレーンの Ascension など初期のフリー・ジャズの古典にも参加しています。私がここまでたどり着くのはもうちょっと先かもしれません。1970年代のハービー・ハンコックのV.S.O.P.クインテットに参加し、スムースジャズにも対応していたトランぺッターですがファンク方面には行っていないようです。若い頃は、ヨーロッパ旅行の折に雪山で気分がよくなり、ドラッグを食いまくった挙句トランペットを吹こうとしたところマウスピースが唇に張りつき、ペッターの命ともいえるそれを完全にぶっ壊し引退へ追い込まれたとかいう話もある結構やんちゃな人でもある。そんなことで晩年ハバードは健康状態の悪化、唇の病気で音楽活動から離れた時期もあったが、1990年ごろから復帰し2008年12月29日、心臓発作により70歳で亡くなっています。このアルバムの収録は1991年ですから復帰の時期ということで、唇の調子はおそらく良くない状態のようです。


 聴く人が聞くと Freddie Hubbard(フレディ)のコンディションは良くないので、音色や音域もキツそうでフレージングも良くないとのことで、そこらへんに集中して聴いても最初はよくわからなかったです。そう思って聴くとバンド・メンバーが強力にサポートし、フレディは控えめにトランペットを添えるだけのような演奏です。ですがバンドとしては非常に充実した演奏内容なので、そう思って聴かないとわからないですね。
 アルバム名は Live At Fat Tuesday's の通り、Fat Tuesday's と言うライブ・ハウスでの演奏が2日分2枚に渡って収録されています。Take It To The Ozone は、テーマに続くJavon Jackson(ジャヴォン・ジャクソン)のソロがブリっとしてカッコ良いし、Christian McBride(マクブライド)のベースも決まっている、Benny Green(グリーン)のピアノは力強くかっこよすぎる。Tony Reedus(リーダス)のへげしいドラミングがバンドを燃え上がらせる。そのカチッとしたサウンドの中でフレディのトランペットに注目して聴くと確かに音程の甘さなどは否めないような気がする。フレディの楽曲だが OZONE の曲名は、こんなアグレッシブなイメージではないけどまさか小曽根?なのだろうか。なんてことも思いながら聴いていますがバンド・アンサンブルとしては最高の最初の1曲。かなり心が掴まれます。Egad は Christian McBride の楽曲提供です。何かの頭文字が楽曲名と推測できますが何だろうか?曲は激しめではありますが最初から全開ではありません。ピアノのグリーンの力強い左手は魅力的です。フレディは1曲目よりは長めのソロ展開で頑張っておられますが、往年のがちっとした存在感は無いかもしれない。Phoebe's Samba は Benny Green の作曲のサンバです。イメージ変わってライトなサウンドに。テーマの後にフレディのソロですが、ここは調子が良さそうなソロ展開です。But Beautiful は美しいバラードのスタンダード。小休止のようにリラックスした感じです。結構好きかも。そして One Of A Kind で1枚目のディスクは終了。フレディの楽曲となります。ユニゾンのテーマが気持ち良くソロの出だしはピアノのグリーのリズミカルで激しい展開。そしてハバードのソロ。これまでで一番よく音が出ているかも知れない。そしてテーマに戻りドラムソロは観客が盛り上がりまくりです。ハードバップは良いなあと1枚目は終わります。そして2枚目は楽曲は全てハバードの作曲、C.O.R.E で凛々しくアバンギャルドに立ち上がります。特にテナーの Javon Jackson の突き抜け方が気持ち良いし、左手の力強い Benny Green のピアノがこれまた気持ち良い。フレディのトランペットも気持ちよく高音が突き抜けています。Destiny's Children は、重厚感のある曲で8ビートのドラムにカッコ良いテーマをサックスとトランペットのユニゾン。もぞもぞと地底をはい回るようなベースラインも良い。少しづつ定期的にアウトするのもゾクゾクします。First Light でラスト。最後はフリーのソロをフレディが延々と続けながら、ポップなピアノ・リフではじまます。曲とコード進行はワンパターンで単純ですが各人の技量で聴き飽きることがない19分となっています。
 サイドの素晴らしさだけでも聴く価値はありの一枚です🎵

trumpet, flugelhorn : Freddie Hubbard
piano : Benny Green
bass : Christian McBride
drums : Tony Reedus
tenor sax : Javon Jackson

producer : Joe Delia

recorded live at Fat Tuesday's, New York City, December 6 & 7, 1991.

【Disc 1】
1.Take It To The Ozone
2. Egad
3. Phoebe's Samba
4. But Beautiful
5. One Of A Kind

【Disc 2】
1. C.O.R.E
2. Destiny's Children
3. First Light



▶ C.O.R.E


  

2023年4月7日金曜日

Djani & The Public Works / Rocking You


 さわかやサウンドのレゲエです。若かりしころ関西在住時代に寝屋川のレゲエ野音に毎年行っていました。しかしレゲエなんて音楽は、ほぼこの野音の時ぐらいでしか聞かないので毎年野音の谷に勉強のために購入していた一枚です。
 というところで、最近レゲエと称する音楽は私の若い時と比べて随分変化していて、リズムを強調したクラブ仕様の音楽が最近のレゲエとなっているようです。私の知っているレゲエと言えば代表格はボブマーリーで、独特のリズムが主体となっていたり、ボブ・マーレイは政治的な背景が曲の中に合ってメッセージ性の強い音楽でしたが、寝屋川のレゲエ・フェスに出演していたのは、割と軽めのポップ色が強いレゲエ・アーチストで、ビッグマウンテンマキシプリーストインナーサークル 等が主役でした。ライトに聞けるレゲエで酒飲んで踊りまくるには良かったのですが、アクが少ない分印象には残りにくかったような気がします。私はアクの強い音楽のほうが中毒性があって好きかもしれません。

 

 このレビューをする前に曲名とか背景を調べるんですけど、このグループは残念なことに見事にネット上からも痕跡が消えています。ある意味レア盤?なのでしょうか。

1. Rocking You Baby
2. Too Late To Turn Back Now
3. Walking In The Rain
4. Revolutionary Conscious
5. A'int No Sunshine
6. Love In Jah
7. Ragamuffin Don't Play
8. Real McKoy
9. Love's Desire(HIp Hop Version)
10. Sweet Taboo
11. Breezin'


youTubeでも、これしかヒットしない
ある意味珍しいほど世の中から抹殺されているようで・・
それほどサウンド的にも悪くはないんですけどね


  

2023年4月2日日曜日

Keith Jarrett / Death And The Flower

 

 いつもの「おでんバー」では、マスターが定期的に Keith Jarrett(キース・ジャレット)や 明田川荘之 を連日かけまくっている時がある。店の口開けに行くとマスターが一人ノリノリで、これ一昨日もきいてたなと思うのです。別にモンクはありませんし私が余り聴かないタイプのピアニストだったので興味深く聴かせていただいておりました。すると人間不思議なもので、耳馴れすると心地よくなってきます。と言うことでキースのアルバムは未開封、未聴のものが何枚かあります。ケルン・コンサートも未開封です。


 で、そのうちの一枚 Death And The Flower 「生と死の幻想」を聴くことしました。持っていって、ビニールを爪で破いているとマスターは、これレコードもあるよ、とのことですが確かこの時は他のお客も多かったので、聴き比べはしていません。
 まずはタイトルも強烈ですが、ジャケ写のバラがハードボイルド的で骨太な中身を想像しました。邦題(曲名)に関しては直訳で「死と花」だけでインパクトのある題材が「生と死の幻想」となっているのは、かなりの落差があります。その元となっているのは、ジャケットの中に掲載されている、キースの詩であることは明白ですがどうでしょうか。「We live between birth and  Death    ・・・ 私たちは生(誕生)と死の間を生きている/あるいはそのように自分自身を納得させている/本当は自らの生の絶え間ない瞬間に、生まれつつあると同時に、死につつもあるのだ/私たちはもっと花のように努めるべきである/彼らにとっては毎日が生の体験であり、死の体験であるから/それだけに私たちは花のように生きるための覚悟を持たなければならないだろう」生まれたから死はやがて訪れる。生まれたから花のようにパッと咲いて後は散るのみ。いや花が咲いたら種が出来て生を遺すことが出来はず。でもこのジャケットのバラは切り花だから子孫は残せない。なんてことを思いながらアルバムを再度聴いていきます。
 バンドの構成は、ピアノ、テナーサックス、ベース、ドラム、パーカッション。知っているのはベースの Charlie haden、ドラムの Paul Motian ぐらいです。Charlie haden 以外は全員がパーカッションも演奏しています。タイトル曲の Death And The Flower アフリカンな雰囲気のパーカッションで始まり、大地の中に一人立って風景をながめているかのようなイントロはこれから何かが起こるぞと言う想像を掻き立てる。そしてヘイデンのエキゾチックな音階のベースになり、ゆっくりと進行する。?ベースはオーバーダビングしているようです。曲は何も無いように見える風景からゆっくりと植物が成長していくような展開です。デューイ・レッドマンのだるそうなサックスもムーディ(フリージャズ系の方のようです)全員がヒートアップした演奏になだれ込む後半は少しポップな雰囲気にもなったりしながら綺麗に花が散るようなラストはドラマチックな展開でベタに良いです。22分の大作。Prayer は、クラシックのような静かなピアノの出だしが美しく自然の中で植物が芽吹いて、ゆらゆら揺れ動いているような曲で移動できない植物はユラユラと揺れながら何かを祈っているような感じがします。キースとチャーリーのデュオで、テーマに自然に寄り添いながら即興される美しい旋律は心地よい。最後に Great Bird はパーカッシブなサウンドに、デューイ・レッドマンのサックスが溶け込みまた一つの風景が展開されます。ソプラノ・サックスはキースがオーバーダブで吹きこんでいます。適度なフリー加減が素敵で芸術は爆発だ的なフリーでない美しきアドリブを盛り込んだ演奏がまた心地よい。
 キースは最近聴き始めた感じですが、本作は独特のオリジナリティを感じる大作で心して聴いた方が楽しめるアルバムですね🎵
 今、改めて思いましたが、大作なのにこのアルバムではキースの唸り声は無いなあ。

piano, soprano sax, drum (osi drum), percussion, flute (wood), composed by : Keith Jarrett
tenor sax, percussion : Dewey Redman
bass : Charlie Haden
drums, percussion : Paul Motian
percussion : Guilherme Franco

producer : Ed Michel

recorded October 9 and 10, 1974, at Generation Sound Studios, New York City.

1.Death And The Flower
2.Prayer
3.Great Bird


▶ Prayer



  

2023年4月1日土曜日

Miles Davis / Gemini

 

 1969年のライブなのに、何故かジャケットにはデカデカとMONOの印刷。恥ずかしながら、このレビューを書くまで気づいていませんでした。プロデューサーの名前がクレジットされておらず、Original Recording by Joker Tonverlag Ag とあるので、この人がライブ会場で録音したものか?と、どうやらブートものらしいです。しかし発売元は NIPPON CROWN Co. Ltd なのでブートが正式盤に昇格したものっぽい。ググってみると実はこのライブ録音は1969年11月3日パリではなく、1969年10月27日のローマコンサートであるとかも発見しました。ブート・レグなので、そこらへんは盤への印刷が間違っていることは十分にありうることかと想像はできます。


 そして購入して、しばらく家で温めてから、いつもの「おでんバー」で初聴きとなります。Bitches BrewAgharta なんかは、時折爆音でかける店なので遠慮なしにかけさせて頂きました。何しろ1曲表示45分なので、どんなものか興味津々です。ファンクものかと思っていたら、フリージャズ的な感じで自由な音の流れの中をマイルスや他のメンバーが徘徊しながらその場に応じて演奏していき、フリージャズ、4ビート、8ビートなど多彩な変化を魅せます。この手の音楽は、聴き手の体調や聴くタイミングで印象が変わることが多いとは思いますが、この時には音のエネルギーの発散具合が微妙にかみ合わず、不完全燃焼のような気持ちになってしまいました。マスターは、聴き終わると「なんだろうな、少し暗めだね」とのシンプルな表現でした。すると横で黙って聴いていた常連さんの一人が「いやこれは気に入ったな。貸してくだせえ」とのこと。快く貸出です。返却時もベタ褒めでした。なので再度聴き直してみると、初回に聴いた時よりも中盤の盛り上がりがなど初回の印象よりもエネルギッシュで悪くない感じがするので人間の感性は不思議なものです。
 アルバムタイトルの Gemini とはふたご座のこと、またアルバムのジャケットの中には警官に取り押さえられる若者が写っています。1969年のライブであることからすると1968年のチェコスロバキアの変革運動「プラハの春」とかをオマージュするものなのだろうか?ジャケットは数種あるようで、ブートなのでマイルスの意図はここにはないはずですが、制作者の意図も気になります。ライナー・ノーツは一応日本語でついているものの、マイルスの音楽史感についてしか書かれていないのでよくわからないので、どこかで見つけたらこのレビューに書き足そうと思います🎵

trumpet : Miles Davis 
tenor/soprano sax : Wayne Shorter
electric piano : Chick Corea
bass : Dave Holland 
drums : Jack Dejohnette

recorded live in Paris, Novenber 3, 1969

1. Gemini
Bitches Brew ~ Miles Runs The Voodoo Down ~ Agitation ~ I Fall In Love Too Easil ~ Sanctuary 

Gemini



  

2023年3月31日金曜日

James Brown / Live At The Apolo


 James Brown (JB) の1962年アポロ・シアターでのライブ。ここで、既にあのエンターテイメントが確立されていることがわかる名盤です。ポップ・チャートの2位まで上昇し66週にわたって同チャートのトップ10位圏内に留まり、JBのアルバムの中でもポップ・チャートで最も好成績だった作品です。それほどコレクターな訳ではありませんが、JBの作品はと段々とリズムとパフォーマンス重視となってきているような気がしますが、この作品は非常にソウルを感じるJB29歳の作品です。おそらく今の日本ではJBは硬派なオヤジがウイスキー片手に楽しむような音楽となっているのに、この音源ではJBはアイドルだったのかと思うほどにアポロ・シアターが女子の悲鳴で溢れていて当時の人気っぷりがわかります。私のJBのイメージは脂ぎった汗かきのオジサンのイメージですが、当時の若き日のJBの写真では確かに当時は脂ぎっている感じではなくカッコいいですね。


 さて、このアルバムですが、オープニング・ファンファーレでMCによる“煽り”は Are You Ready For Star Time!! そこから観客もハイテンションです。そして傑作「I'll Go Crazy」で幕開けし、シャウトしながら客を更に煽ります。「Try Me」は、後の演奏より昔のソウルという感じで中々好感。そして客のギャルたちのギャーという叫び声で熱狂がわかります。「Think」も、高速でたたみかけクラッピング入り(これは後入れかな)「I Don't Mind」ではしんみりと歌い上げ観客のボルテージを下げときます。でも、きっとサビのシャウトで失神しそうな女の子はいるに違いありません。そして「Lost Someone」のイントロでは、延々とループするテーマで、JBのシャウトで徐々に観客の熱が帯びていき、上げて下げて歌ではじっくりと聴かせる最高の演出、「Please Please Please , You've Got The Power」のメドレー、Please Please Please は既に7年前にR&Bチャートのトップ5の名曲です。そして Night Train でクロージングですが、いかにもショーの終わりを感じさせるダンサブルな曲。とにもかくにもこのアルバムではステージの演奏の他、観客席の熱狂ぶりも録音されていて、聴くものもそのステージが想像できる名盤です🎵

lead vocals : James Brown
baritone/bass vocals (and keyboards on "Lost Someone") : Bobby Byrd
first tenor vocals : Bobby Bennett
second tenor vocals : Lloyd Stallworth
【Famous Flames】
music director, trumpet : Lewis Hamlin
bass : Hubert Perry
drums : Clayton Fillyau
guitar, road manager : Les Buie
organ, MC : Lucas "Fats" Gonder
tenor sax : Clifford MacMillan, St. Clair Pinckney
tenor sax, baritone sax : Al "Brisco" Clark
alto saxophone : William Burgess
trombone : Dickie Wells
trumpet : Roscoe Patrick, Teddy Washington

1. Opening Fanfare
2. I'll Go Crazy
3. Try Me
4. Instrumental Bridge1
5. Think
6. Instrumental Bridge2
7. I Don't Mind
8. Instrumental Bridge3
9. Lost Someone Pt.1 
10. Medley(Please Please Please , You've Got The Power)
11. Night Train


▶ Think