1961年録音のシカゴからドナルドが連れてきた Herbie Hancock とのブルーノートでの初セッションがこのアルバム。録音は1961年だがリリースされたのは1979年でブルーノートのテープ・ライブラリーの中で長い間、寝かせてあったもので発掘してプレミアがついた録音としてレコード発売されたのは日本であるとのこと。
1958年にDonald Byrd は Blue Note とリーダー契約を結び、同年に Pepper Adams と協力関係を結び、4月にはファイブ・スポットでデビューライブを行います。このライブはRiver Side から Pepper Adams 名義でレコード化されています。同年の夏から秋にかけてバードがリーダーとなりベースの Doug Watkins とともにヨーロッパを巡演しています。ヨーロッパから帰国後にはそのバンドで今度はバード名義で Off To The Race を吹き込んでいます。その後もペッパーとは協力関係が続き、1961年までにバード名義で Blue Note に5枚、ベツレヘムに1枚、ペッパー名義ではワーウィックに1枚のアルバムが残されています。
このセッションでの曲目は変化にとんだレパートリーが入っています。I'm An Old Cowhand は高速のバップで、リーダーのバードが吹きまくり、その後のペッパーのアグレッシブなバリトンのソロは迫力があります。ハンコックのピアノは録音レベルが低めで目立たないのですがソロ・パートではこれまた流れるような展開を見せています。でもハンコックらしいかと言えばそれは疑問符なところではありますが競い合うかのような演奏が魅力的。You're Next は落ち着いた楽曲で、アダムスのねっとりしたソロでやっとピアノのハンコックのソロがゆっくりと聴ける1曲目との緩急の差がにくい選曲。そして Chant はデューク・ピアスンのゆったりしたリズムの曲でバード、アダムス、ハンコックの順でのソロが続き、各々の持ち味の音が堪能できる曲となっています。この曲は後の Blue Note の1963年作 A New Perspective でスキャットコーラスを付けたアレンジで脚光を浴びることになります。That's All はこの当時ボビー・ダーリンのカバーが有名になっていたスタンダードで、本作では非常にダンサブルなアレンジ。アダムスのバリトン・ソロはかなり強力です。この低中音のソロの後のバードのソロの清々しさの対比もこのコンビの相性の良さを感じます。Great God はダンサブルなテーマが時代を感じる曲で、デューク・エリントンのSophisticated Lady は定番の名曲ですが、バードはリーダーでの録音にも関わらずお休みというのも面白い。Adams のリクエストの吹込みだったんでしょうか?
このアルバムから10年後には、バードとハンコックは全く違う世界に乗り込んでいっているとは想像できないですね。
trumpet : Donald Byrd (1 to 5)
piano : Herbie Hancock
bass : Doug Watkins
drums : Teddy Robinson
baritone sax : Pepper Adams
producer : Alfred Lion
recorded by : Rudy Van Gelder
Recorded on April 17, 1961.