最近聴き始めた Mal Waldron の1988年の録音です。Mal Waldronは、32歳の1957年から Billie Holiday(ビリー・ホリデイ)の伴奏者となり、1959年7月に彼女が他界するまでその役を務め、その Billie Holiday の死去の5か月前に制作した Left Alone は、ビリーが作詞し、マルが作曲しています。(ボーカル曲ですがビリー自身の歌は残っていません)Mal Waldron 自身は彼女への追悼として Left Alone を1959年に録音しています。そんなLeft Alone のイメージからの脱却を図ろうという意図も見られる88年の作品と解説されています。タイトルの “Lady Day” とはホリデイのこと。
この録音は1988年マルが62歳の録音で、この時、西ドイツのミュンヘン在住、世界中でイベントやフェスへの出演依頼が舞い込み多忙の時期であったとのこと。レビューしていきます。Yesterdays 作曲はJerome Kern のスタンダード。イントロは Paulo Cardoso のベースに、ドラムの John Betsch が加わって1コーラスしてから Mal Waldron が加わってきますが、こんな弾き方だっけの、思いっきり叩きつけるようなピアノにビックリの出だしです。この曲もこんなドラマチックっだったけ?の迫力の演奏。No More Tears マルの今は無きビリーに捧げるオリジナル。哀愁を帯びたメロディーのワルツです。ここでも強弱の中では強が多く感じます。ボタっとしたベースラインも、このアクが強いピアノに負けじと低音で支えます。Melancholy Waltz これもマルの新しい書き下ろし作品。ワルツが2曲続きます。哀愁のある音をはっきりと発音しながらの男っぽい演奏です。Solitude は1934年エリントンの作品です。やはり曲調は変わって少しポップさが加わります。Love Me or Leave Me は、1928年のポピュラーミュージックの作曲家 Walter Donaldson 作品。やや早めの4ビートです。低音で半音が行ったり来たりする進行が面白い曲です。愛するか別れてくれのタイトルの曲で、非常に情熱的ですが、弾く人によって、もっとエレガントになる曲だとは予想できます。All Night Through は、バラードで、これもマルによる新曲です。ビリーの死に接して夜を明かした曲とのことで虚無感に駆られながら思い出に浸っている心境が表現されているのでしょう。As Time Goes By 1931年 Herman Hupfeld 作曲のブロードウェイ・ミュージカル「Everybody's Welcome」のために作詞・作曲した曲ですが、映画「カサブランカ」のテーマ曲で取り上げられ有名になった曲です。マルにかかればこれも重厚なバラードになります。Smoke Gets in Your Eyes 後半はスタンダード目白押しです。マル独特のピアノタッチと原曲と変えた和声の響きが新しいです。シンプルでありながら情熱がこもった作品になっています。Alone Together これもジャズ・メンが好んで取り上げるスタンダード。重厚な感じの出だしですが、これも後半になると和声の響きが曲に重要な意味を持たせてきているような気がします。
非常に力強くて、わかりやすいのが魅力的な作品です🎵
piano : Mal Waldron
bass : Paulo Cardoso
drums : John Betsch
producer : Makoto Kimata
recorded in München, West Germany on November 1, 2 & 3, 1988.
1. Yesterdays
2. No More Tears
3. Melancholy Waltz
4. Solitude
5. Love Me or Leave Me
6. All Night Through
7. As Time Goes By
8. Smoke Gets in Your Eyes
9. Alone Together
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