2024年5月24日金曜日

Louis Armstrong / Plays WC Handy

 

 この手のCDは、聴いてみたらコンピと言うことが多いのですが、これはチャンとした録音です。1954年7月に米コロンビアのディレクター George Avakian が、デッカから、このメンバーを借り受けてシカゴで吹込みを行ったとのこと。Louis Armstrong にとっても、1人の作品を一時にまとめて録音するのは初めてであり「ブルースの父」と言われたWC Handyのものであるだけに十分な準備を行ってレコーディングに臨んだとのことです。


 WC Handy は、1873年生まれで、この録音の4年後の1958年でした。元々はクラシック音楽の訓練を受けたミュージシャンで、ブルースマンでは無く、彼のダンス・バンドが提供していたのは、黒人の富裕層向けの品のいい音楽だったそうです。しかし1903年にナイフでスライドを弾くブルースマンに魅せられ、ブルースを楽譜出版したのがMemphis Blues で   St. Louis Blues、Beale Street Blues、Yellow Dog Blues を発表して大儲けしたそうです。ブルースだけど始まりはシート・ミュージックだった訳で、ここら辺が知的な感じです。この録音時に81歳だった WC Handy は視力を失って病床にいたとのことですが感激で涙を浮かべていたそうです。


 古い録音のコンピでは3分程度の曲が20曲ほど羅列されることも多いので聴いている途中で飽きてしまうことが多いのですが、これは行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」でも、飽きがこない録音と評判が良かったアルバムです。
 それではレビューです。初っ端は St. Louis Blues から始まります。第1部は Velma Middleton が歌い、Louis がトランペットで短く間奏を入れてから、自身がユーモラスに歌います。Louis 自身も何度かレコーディングしているのを聴いたことがありますが、これは名レコーディングなのではないでしょうか。Yellow Dog Blues これも Handy のヒット曲。Yellow Dog は黄色い犬では無く、ミシシッピー・デルタとその奥地をつなぐヤズー・デルタ鉄道の別名とのこと。ボーカルは Louis 一人でとっている軽めのブルースです。クラリネットがあると柔らかく聞こえます。最後は情感たっぷりのトランペットソロに満足です。 Loveless Love は、どこかで聴いたことがあります。それもそのはず原曲は古い民謡の Careless Love で Velma、Louis が交代で歌っています。私も原曲をどこで知ったのか覚えていませんが、おそらく小学生とかの時のような気がします。懐かしいですね。Aunt Hagar's Blues ゆったりめのテンポで丁寧な演奏です。ボーカルは無しかなと思わせる長めのトランペットソロから Louis の歌です。改めてトランぺッターは歌好きで上手い人が多い。Long Gone これも聴いたことがあります。恐らくSlim Gaillard あたりがやっていたのをどこかで見たのかと思います。コミカルで和気あいあい。大好きです。The Memphis Blues 超有名ブルースが来ました。 WC Handy 作品の中でもブルースの名前が付く最初の作品とのこと。1909年に市長選に使われた Mr. Kramp が、原曲とのことで試聴の名前は Edward Crump 後に伝説の市長となる方のようです。拝見したところ丸メガネの真面目そうな白人でした。Beale Street Blues メンフィス市街のビール市街が舞台で、この盛り場の情景が歌われています。情感を込めて歌われています。歌詞は確認していませんが昔の酔っ払いが歌う酒や女がテーマで無いことと予想しています。Ole Miss Blues これはメンフィスとニューオリンズを結ぶ、当時の高速鉄道が舞台とのこと。これはインストのジャズ・ブルースとなっています。ニューオリンズ・ジャズの雰囲気が時代を反映しています。Chantez Les Bas 題名はフランス語のようです。ルイジアナがフランスの植民地であった時代にクリオール(黒人とフランス人の混血)が多フランス語訛りのクリオール語が使われていたことが由来とのこと。クラリネットの Barney Bigard もクリオールとのこと。Hesitating Blues これも古くからの民謡とのミックスらしいですが、聞き覚えは私にはありません。純然としたブルースに聞こえます。Atlanta Blues これも前半は囚人の民謡とのこと。民謡とは、おそらくオールド・タイプのフォーク・ブルースかと思います。ここでは Louis のスキャットがチラリ。テープ操作による初めての試みとのことで貴重な録音なのでしょうか。
 もう一回聴き直しても飽きない録音でした。それどころかライナーノーツ等を見ながらの曲の背景などを確かめながらの聴いていると賢くなったような気がします。ベトナム戦争や人種差別の社会的な背景を強く思うところもありますが、悲劇ではない古き良きブルースとアメリカの歴史が、ここに在るようです🎵

trumpet, vocals : Louis Armstrong
trombone : Trummy Young
clarinet : Barney Bigard
piano : Billy Kyle
double bass : Arvell Shaw
drums : Barrett Deems
vocals : Velma Middleton

recorded in 7-12-1954 (3,4,5,7,8,10),  7-13-1954 (1,6,11), 7-14-1954 (2,9)

producer : George Avakian

1. St. Louis Blues (Handy)
2. Yellow Dog Blues (Handy)
3. Loveless Love (Handy) 
4. Aunt Hagar's Blues (Brymn, Handy)
5. Long Gone (From The Bowlin' Green) (Handy, Chris Smith)
6. The Memphis Blues (Or Mister Crump) (Handy, George A. Norton) 
7. Beale Street Blues (Handy) 
8. Ole Miss Blues (Handy) 
9. Chantez Les Bas (Sing 'Em Low) (Handy) 
10. Hesitating Blues (Handy) 
11. Atlanta Blues (Make Me One Pallet on Your Floor) (Dave Elman, Handy) 





  

2024年5月19日日曜日

Special Others / Have A Nice Day


 古本屋の中古CDコーナーで見つけた時には全く知らないバンドで、試しに買ってみて聴いたら良い味が出てたんですね。ジャケ買いではありません。まぐれ当たりのアルバムです。2006年デビューで日本武道館もやってて、未だ現役続行中のバンドで、元気があってパッションがいいですよね。
 一発当ててやろうではなく、おそらく音楽やりたくて好きな音を出してたらこうなったんだなって雰囲気があり、ジャムバンドってやつですか。ヤジオはこういうのも割と好みで、ライブは行かないかもしれないけど応援します。宣伝します。バンドは未だ続いているようでHPも紹介しときます。


 4人が出会ったのは高校1年生で、全員が軽音楽部に所属し、授業が終わって集まっては、弾き語りや歌謡曲のコピーをしていたそうで、その「放課後がずっと続いてる」とのことでうらやましい限り。


 ポップスやロックのようでありながら、盛り上げ方はジャズ的なところもありますが、これ見よがしなテクニック・バリバリのソロで盛り上げることも無いため、一聴して演奏技術が凄いと思わせるようなものでもありません。またインスト・バンドではあるけど肉声を楽器のように使っていたりもします。おそらく一つのテーマを決めてから、いかに自分たちが気持ちよくなれるかを重視している結果なんでしょうが、ちょうどよい具合に私のような感性のものにも訴えかけてくれます。とは言えあまりこっち系は聞かないんで他に日本の若いバンドにこういったサウンドづくりをするんでしょうか。メロディー的には、はるか昔に私が名古屋に勤務していた頃に知り合った 24 Two Four というバンド(歌もの)がジャンルは違うけどこんな感じのサウンドだったような記憶があります。
 どの曲が好きというよりはアルバムの雰囲気が良い感じなので通してアルバムを聴くことをお勧めします。楽曲名に全て大文字のものと大文字と小文字入りのものがありますが何か意味があるんでしょう🎵

drums : 宮原"TOYIN"良太
bass : 又吉"SEGUN"優也
guitar : 柳下"DAYO"武史
keyboads : 芹澤"REMI"優真

recorded at Victor Aoyama Studio March 6-10 June 19-22 August 1-5 2012
produced by Special Others

1. ROOT
2. ORION
3. Raindrops
4. ORGAN BASS
5. Hawaiian Secret Beat
6. barrel
7. Dance Festival
8. Provence
9. Have a Nice Day
    +
DVD ものすごい規模の全米ツアー!?


ORION



  

2024年5月18日土曜日

Eric Clapton / Clapton


 想像ですが「レコード会社と契約もあるし、どうせつくるなら自分が好きな音楽をやりたくって、いつものメンツに声かけたら皆が参加したいってことになったぜ」って感じでしょうか。流行りのロックよりブルース色を押し出し、Clapton の趣味を強く感じる作品となっています。全15曲のうち Clapton の作曲は Run Back to Your Side のみで他は全てカバーとなっています。私も知っている大物は、Sheryl Crow、Derek Trucks、J. J. Cale、Allen Toussaint、Wynton Marsalis などですがレコーディング・メンバーの多さにはビックリです。予定の調整も大変だろうしギャラだけでも物凄い金額となったことと思われますので、売れるのが確定のロックスターでありポップスターの地位を確立したアーチストでなければ出来ないプロジェクトですね。


 それでは、レビューしていきましょう。Travelin' Alone 1952年の Lil' Son Jackson のワンコードのブルースですがロック調にして最初は重いのを持ってきてます。Rocking Chair 1956年の Hoagy Carmichael のカバーで、ゆったりとしたカントリー・ブルースです。ここら辺は Clapton の得意技ですね。この手のブルースはどれも似たような曲と思う人も多いかと思いますが、丁寧に作ると違いが明確に出てきます。River Runs Deep は、生きてるミュージシャンの中で Clapton が最も多くカバーしたと思われるタルサ・サウンドでスタイルは laid back と呼ばれている J.J. Cale の楽曲です。この録音の2010年は存命ですが、2013年に心臓発作で他界され追悼アルバム The Breeze An Appreciation Of JJ Cale  を Clapton は録音しています。ちなみにタルサはオクラホマ州の地方の名前。Judgement Day これも1956年の Snooky Pryor のブルース。最後の審判などと物騒な曲名ですが最後の審判が下る日は皆で騒いじゃおう的な明るいロックンロール・タイプのブルース。How Deep Is the Ocean 1932年の Irving Berlin のポップスのカバーです。この作曲家の作品はジャズでも見ますね。この曲はバックにストリングスが入ってます。The London Session Orchestra ってなってますが、録音はアメリカですから呼び寄せたのか?オケだけはイギリスなのか?どうでも良いですが、ふと気になりました。My Very Good Friend the Milkman は、1934年の Harold Spina 作品。My very good friend the milkman says That I've been losing too much sleep He doesn't like the hours I keep He suggests that you should marry me Ah, turn it loose! と曲調と同様に、牛飼いの少年の物語の歌で、最後はハッピーエンドになっているのが演奏だけでわかりました。Can't Hold Out Much Longer は、硬派なブルース作曲者の Walter Jacobs=Little Walter ですから。That's No Way to Get Along 1930年の Robert Wilkins 戦前ブルースですがデレク&ドミノス風のアレンジが新し曲になっています。Clapton のスライドがワンポイントだけですがカッコ良いんですね。さすがツボを押さえてます。Everything Will Be Alright そして J.J. Cale の曲ですがアーバンな感じのブルースにしています。ですが曲は  J.J. Cale 節があります。Diamonds Made from Rain は、この曲の為の書下ろしですね。Doyle Bramhall II, Nikka Costa, Justin Stanley の切ない曲です。When Somebody Thinks You're Wonderful は、またもや1936年に逆戻り Harry M. Woods のカバーです。それにしても Clapton は、こういった昔の楽曲の焼き直しが上手い。ブルースを残しつつ、ある程度現代手法のポップに味付け。Hard Times Blues 1935年のシカゴブルース Lane Hardin のカバーです。このブルースは当時のブルースでよくあるリフ・パターンを、そのまま使っているのがこだわりでしょうか。古いブルースを聴いてたり、やってみようとすると、なんだこれは?ってヤツです。 Run Back to Your Side ここでオリジナルになりますが、セッション用のブルースですね。そして最後は Autumn Leaves で、昔のロック雑誌に「これがクラプトンの枯葉だ」的に書かれたスコアが掲載されていましたが、私には場末の酒場のカラオケに聞こえてしまいます。ポップス歌手としても通用するところを見せたかったと言うよりはホントにやってみたかったんだと思われますがボーカル無しにするとかでも良かったんでは無いかと思う次第です。
 軽く聴いてきたのですが、じっくり聴き直すと中々の重量感があるアルバムで、楽しかったです🎵

Eric Clapton : vocals, guitar, mandolin (12)
Doyle Bramhall II : guitar (1, 4, 7, 10, 12, 13, 15), vocal arrangement (4), hi-hat (7), guitar solo (8, 12), percussion (8), vocals (10)
Derek Trucks : slide guitar (2), guitar (3)
J. J. Cale : guitar (3, 8), vocals (3, 8, 9)
Greg Leisz : pedal steel guitar (3)
Walt Richmond : Hammond organ (1), acoustic piano (2, 4-15), Wurlitzer electric piano (3), keyboards (14)
James Poyser : Hammond organ (3, 8)
Allen Toussaint : acoustic piano (6, 11)
Steve Riley : accordion (8)
Paul Carrack : Hammond organ (9)
Sereca Henderson : organ (10)
Willie Weeks : bass guitar (1, 4, 8, 9, 10, 13), double bass (2, 3, 5, 7, 12, 14, 15)
Chris Severan : double bass (6, 11)
Jim Keltner : drums (1, 4, 5, 7, 8, 10, 12, 13), percussion (1, 8, 12, 13)
Abe Laboriel Jr. : drums (2, 14)
Jeremy Stacey : drums (3, 10)
Justin Stanley : drums (3), additional percussion (8), horn arrangements (10)
Herman Labeaux : drums (6, 11)
Cayetano "Tanio" Hingle : bass drum (6, 11), cymbal (6, 11), clarinet (8)
Jason Moeller : drums (15)
David Guy : horn arrangements (3)
Neal Sugarman : tenor saxophone (3)
Leon Michaels : trumpet (3)
Thomas Brenneck : horns (3)
Kim Wilson : harmonica (4, 7, 15)
Wynton Marsalis : trumpet (5, 6, 11)
Troy Andrews : trombone (6, 11), trumpet (6, 11), bass drum (8)
Matt Pyreem : tuba (6, 11)
Michael White : clarinet (6, 11)
Clarenee Slaughter : baritone saxophone (8)
Bruce Brackman : sousaphone (8)
Edward Lee : tenor saxophone (8)
Tim Callagan : trombone (8), trumpet (8)
Dan Ostreicher : horns (8)
Sherrell Chenier Mouton : washboard (8)
Tim Izo Orindgreff : saxophone (9, 10)
Elizabeth Lea : trombone (9, 10)
Printz Board : trumpet (9, 10)
Nick Ingman : string arrangements (1-9, 11-14), conductor
Patrick Warren : string arrangements (10)
The London Session Orchestra : strings (3, 5, 9, 10, 14)
Perry Montague-Mason : concertmaster
Nikka Costa : backing vocals (2, 10, 13)
Terry Evans : backing vocals (4, 8)
Willie Green, Jr. : backing vocals (4, 8)
Arnold McCuller : backing vocals (4, 8)
Lynn Mabry : backing vocals (10, 13)
Debra Parsons : backing vocals (10, 13)
Sheryl Crow : vocals (10)
Arnold Kłymkiw : vocals (15)

producers : Eric Clapton, Doyle Bramhall II , Justin Stanley (10).

Los Angeles Sessions recorded at Ocean Way Recording, Hollywood
New Orleans Sessions recorded at Piety Street Studios, New Orleans

1. Travelin' Alone (Lil' Son Jackson)
2. Rocking Chair (Hoagy Carmichael) 
3. River Runs Deep (J.J. Cale)
4. Judgement Day (Snooky Pryor) 
5. How Deep Is the Ocean (Irving Berlin) 
6. My Very Good Friend the Milkman (Lyrics: Johnny Burke, Music: Harold Spina) 
7. Can't Hold Out Much Longer (Walter Jacobs) 
8. That's No Way to Get Along (Robert Wilkins) 
9. Everything Will Be Alright (J.J. Cale) 
10. Diamonds Made from Rain (Doyle Bramhall II, Nikka Costa, Justin Stanley) 
11. When Somebody Thinks You're Wonderful (Harry M. Woods) 
12. Hard Times Blues (Lane Hardin) 
13. Run Back to Your Side (Bramhall, Eric Clapton)
14. Autumn Leaves (Joseph Kosma, Johnny Mercer, Jacques Prévert) 





  

2024年5月12日日曜日

John Mellencamp / Human Wheels


 デビュー当時は、John Cougar(ジョンクーガー)でしたが、1983年に John Cougar Mellencamp(ジョン・クーガー・メレンキャンプ)と改名。そして1991年にJohn Mellencamp(ジョン・メレンキャンプ)になったのですが、この最後の名前が本名とのこと。Wikiを見てたら2018年、女優のメグ・ライアンとの婚約と書いてありますが結婚とは書いてありません。
 John Cougar Mellencamp の頃は、80年代のアメリカン・ロックの代表のイメージで、ブライアン・アダムスの兄貴分のような少しガサガサしたストレートなロックをやっている印象でした。しかしこのアルバムでは全く変わってしまってライトでリズムがデジタルっぽい。悪くはないけど昔のアメリカンロック的なイメージでいてほしかったでは無かったのが残念。

 アルバムの中身としても、これは何やらカラッとはしていない、重めのア曲が多くタイトル トラック Human Wheels は、メレンキャンプの友人であるジョージ グリーンの祖父の死に際し、メレンキャンプが墓の場所で贈った詩から作った曲。また When Jesus Left Birmingham 「イエスがバーミンガムを去ったとき」なんて曲名が1曲目からかなり重めです。また、アコーディオンなどの担当の John Cascella は、このアルバムのレコーディングの途中で亡くなってしまったので、アルバムは彼に捧げられてもいるとのことで、それも重めな原因でもあるのでしょうか。
 しかし、この John Mellencamp の12枚目となるこのアルバム。ビルボードで最高7位のヒット。シングル What If I Came Knocking は ヒットチャートで2週間トップにはなったとのことで結構売れていたようです🎵

vocals : John Mellencamp
accordion, organ, backing vocals, whistle (Penny), melodica : John Cascella
violin, mandolin, whistle (Penny), zither, backing vocals : Lisa Germano
backing vocals, accordion, maracas : Pat Peterson
organ, guitar, harmonica, synthesizer : Malcolm Burn
guitar(6), keyboards, bass(1 to 7, 9, 10), backing vocals: Toby Myers
electric guitar, acoustic guitar, baritone guitar, mandolin, bass : David Grissom
electric guitar, acoustic guitar, dobro, dulcimer, backing vocals : Mike Wanchic
drums, bongos, djembe, congas, maracas, claves, shaker, tambourine, rainstick, guiro, percussion (Metal) : Kenny Aronoff

producer : David Leonard, John Mellencamp, Malcolm Burn, Michael Wanchic
recorded and mixed at: Belmont Mall, Belmont, Indiana

John Cascella played on about half of this record before his death.
This record is dedicated to John Cascella. April 29, 1947 - November 14, 1992

1. When Jesus Left Birmingham
2.  Junior
3.  Human Wheels
4.  Beige To Beige
5.  Case 795 (The Family)
6.  Suzanne And The Jewels
7.  Sweet Evening Breeze
8.  What If I Came Knocking
9.  French Shoes
10. To The River





  

2024年5月11日土曜日

Hank Jones / 'Bop Redux

 


 ドアップの顔写真が指名手配犯のポスターのように見えてしまうジャケットで、あまり芸術的センスは意識していない感じですが、Charlie Parker、Thelonious Monk の人気曲を収録した「Bop」なアルバム。Redux は日本語で戻ってきたって意味なので「帰ってきたバップ野郎」みたいなネーミングでしょうか。
 Hank、Thad 、Elvin の Jones3兄弟の長男である Hank Jones は落ち着いたピアニストの印象です。3兄弟の演奏は聴きているものの、リーダーアルバムの購入はしていないのでこれが初です。ちなみに所有のものの中で参加アルバムは Zoot Sims and Bob Brookmeyer / Tonite's Music Today + WhooeeeWes Mongomery / Road SongBillie Holiday / Last RecordingCannonball Adderley / Somethin' ElsePaul Chambers / Bass On Top など
 

 それではレビューです。最初は Charlie Parker の Yardbird Suite で、分かりやすいフレーズで正調、品行方正な仕上がり。この曲を聴いていると、裏にA列車 の進行を感じてしまいます。一度思い始めると止まりません。次も Parker の人気ナンバー。Confirmation こちらについても非常に正調でアドリブの起承転結をしっかり構成しながら全体を組み立てていることが良くわかる模範的な演奏かと思います。3曲目は Monk です。Ruby, My Dear。モンクっぽいフレージングなんか全くしないところが、いかにも頑固オヤジな演奏です。Relaxin' with Lee は再び Parker。景気よく機嫌よく演奏されているのかと思われる基本に忠実な進行でベースソロや、4バースは定番のパターン。次いでは Bloomdido B♭のブルースでこれも Parker。Relaxin' with Lee と、この曲は Monk、Jones の両人が参加した Bird and Days で演奏されていた曲とのこと。購入リストに入れておく必要ありますね。そして Round Midnight は、言わずもがなの Monk です。私も大好きなスタンダードでメロディ0が、とてもロマンティックなところが大好きです。Jones は、ここも淡々と弾くのでクラシックみたいな感じさえします。Moose the Mooche は、Parker に戻ります。Parker の曲は盛り上げ役的に使っているのか。ここでは上げてきます。このアルバムで一番スリリングな演奏になるような感じがします。最後は Monk の Monk's Mood となります。原曲とは違った趣の曲にしています。モンクらしさは全く入れていないのが頑固とも思えますが、モンクの中で描いた元曲は本来はこういった感じで Monk が演奏するときに頭の中で変換して、あの演奏にしていたのかと思える美しい曲になっています。
 古臭さは感じるものの、その中に古き良き美しさもあるかと思う一枚でした。正調ピアノ・トリオを聴きたければ、これはお勧め🎵

piano : Hank Jones
bass : George Duvivier
drums : Ben Riley

producer : Fred Seibert

recorded at CI Recording, NYC January 18 & 19, 1977

1. Yardbird Suite
2. Confirmation
3. Ruby, My Dear
4. Relaxin' With Lee
5. Bloomdido
6. 'Round Midnight
7. Moose The Mooche
8. Monk's Mood





  

2024年5月10日金曜日

The Dave Brubeck Quartet / Time Out

 

 Take Five は、大学でジャズ研に入った初期段階で知ったジャズの入門曲。Dave Brubeck を深く聴いたことは無いけれど、その存在はあまりに有名です。中古CD屋で見つけた時には、これがあの Take Five の収録アルバムなら、そりゃあ聴いとかないといかんなと購入したはずです。購入したまま、しばらく寝かせておいて最近聴いたアルバムとなります。
 いきつけの音が好きの集う「おでんバー」に持って行くと、懐かしいの声が上がりますが、中身を皆さん覚えているかと言うと、やはり Take Five しか記憶にないようで「あれ、こんなアルバムだったっけ」と新鮮だったようです。メンバーもベースの Eugene Wright は初耳ですが、ドラムは Joe Morrello、サックスは Paul Desmond と私にとっても新鮮です。


 と言うことで、レビューです。Blue Rondo A La Turk 邦題でトルコ風ロンドです。ロンドって何か小学生の音楽の時間とかで聞いたことあるような気がしますが、覚えていませんので調べてみると「異なる旋律を挟みながら、同じ旋律(ロンド主題)を何度も繰り返す形式」とのこと、なるほど出だしは9/8拍子のクラシック風のテーマがトルコ風、アドリブは4拍子のロンド形式なのでトルコ風ロンド。これを書くために改めて気づきました。仕掛けてきてます。Strange Meadow Lark まるでピアノソロ曲だなと思っているとイントロが長かっただけでした。ここでも仕掛けてきてますね。Take Five 作曲は Paul Desmond なんですね。Dave Brubeck かと思っていました。4/5拍子を使っているので Take Five です。何故この曲が出来たのか調べてみると「ブルーベックが、米国務省主催のユーラシア大陸ツアー中に、トルコでブルガリア音楽の影響を受けたストリートミュージシャングループが演奏するトルコの伝統的な民謡が、西洋の音楽には珍しい9/8拍子で演奏されるのを見たときである。地元のオーケストラの音楽家からこの形式を学んだ後、ブルーベックはジャズの4/4の通常のリズムから外れて、海外で経験した、よりエキゾチックなスタイルで実験的アルバムを作成することとなった」なるほど Blue Rondo A La Turk も含めて、トルコ音楽の影響を受けて作成されたわけですか。Three To Get Ready 軽やかなワルツ・ナンバーです。ジャズですが Dave Brubeck はクラシックに造詣が深いような感じがしますね。Kathy's Waltz Dave Brubeck の娘の名前が由来の曲で難しいところは無い。可愛らしい曲になっています。Everybody's Jumpin' ジャンプするようなコードの左手連打が曲の由来なのでしょう。連打ですが上品です。Pick Up Sticks 6/4拍子の曲となっています。アルバムの中で最もグルービーでジャズ・コンボらしく聞こえる曲ですが、さりげなく、これも仕掛けていますね。
 アルバムを真剣に聴き直すまでは、Take Five だけが突出しているのかと思っていましたが、実は様々なリズム的な仕掛けが施されているアルバムでした🎵

piano : Dave Brubeck
bass : Eugene Wright
drums : Joe Morrello
alto sax : Paul Desmond

producer : Teo Macero
written by  D. Brubeck (1, 2, 4 to 7), P. Desmond (3)

artwork : Sheil Fujita

1. Blue Rondo A La Turk
2. Strange Meadow Lark
3. Take Five
4. Three To Get Ready
5. Kathy's Waltz
6. Everybody's Jumpin'
7. Pick Up Sticks





  

2024年5月5日日曜日

Alice Clark

 

 株式会社ウルトラ・ヴァイブの販売している「Solid Jazz Giants」シリーズは、まだ聞いていない往年の名盤が安く販売されているので結構愛用足ています。その値段(980円+税)の価格破壊は大歓迎です。そんなシリーズを見ていたら帯に「最強のフリーソウル名盤」の文字を発見で購入してみました。
 直球の感想は、聴いてビックリ、なんで今まで知らなかったのか?と思うほどの名盤でした。何回か聞き直しながらこれを書いていますが、まず最初に感じるのは「素直で澄んだ歌声」「聞く人に訴えかけてくるボーカル」でしたが何回か聴いているうちに「若くて瑞々しい歌声」と感じ、鍛えられて技巧に発達する手前の原石を感じます。当然いきなり上手くなってのレコーディングはあり得ないので、下積みの経験があってそこで鍛えられていることは間違いないのですが若々しくてストレートな歌に色々なことを思わせてくれます。
 ファースト・インプレッションが強烈すぎたのですが、発売された年を見てみると1972年とあります。レーベルは Mainstream Records でジャズやジャズ・ファンク、クロスオーバー作品を多く輩出しているレーベルとのこと。このボーカルを聴いていると比較したくなるのはアレサ・フランクリンで、アレサのデビューは1967年で1972年には既にスーパーが付くスターになっています。男性ボーカルで Donny Hathaway を見てみると、こちらは1970年がデビューアルバム、1972年にはロバータ・フラッグとのアルバムを発売しています。やはりソウルの全盛期であり、この時期には次の才能を発掘しようと多くの録音が行われた時期。アメリカのソウル界の層の厚さがうかがえるとともに、アレサもデビューはコロンビアでしたが売れなくてアトランティックに移籍してから売れたことを思うと、第2のアレサえを狙いにいってその才能は申し分なかったのにレーベルのプロモーション次第で売れる売れないが分かれるところだったとも思えます。
 これだけ現代で評判が良くて、演奏も素晴らしいアルバムにも関わらず演奏メンバーについては詳細なクレジットが無いのも有名。私の今聴いているCDはジャケット裏面しかないので、 Orchstra arranged and Conducted BY Ernie Wilkins , Produced By Bob Shad しか書いてあるのが確認できませんが、ライナー・ノーツでは、ギターは Ted Dunbar(トニーウィリアムスのライフタイムでも活躍したギタリスト)インタビューにより、ソウル系のセッション・ドラマーの Bernard Purdie、ベースは Bob Bushnell  (ルイ・アームストロングなどの作品に参加)、Cornell Dupuree , Gordon Edwards のスタッフメンバー参加していたとか、このベースは Chuck Rainey だろう(聴いてわからんのか)的な論争まで巻き起こっている模様で、どれがホントかは全くわかりません。Cornell Dupuree はそれっぽくもあるような気もしますが・・


 いつもの音楽好きの集う「おでんバー」でも評判が良かったこのアルバムのレビューです。1曲目の I Keep It Hid は Supremes, Linda Ronstadt もカバーの名曲。ソウルなシンプルなイントロから、歌い始める歌声にドキッとします。若い声でありながら丁寧な歌いっぷりです。Looking At Life は、John Kander, Fred Ebb の作曲で、イギリスのボーカリスト Petula Clar のカバーのスロー目のソウル・ナンバー。曲も良いが一生懸命に歌い上げる少女っぽい声に迫力のシャウトが魅力。Don't Wonder Why は、Stevie Wonder の 1970年のNo.1 R&Bヒット Signed, Sealed, Delivered I’m Yours への収録曲。いかにもモータウンの曲ですが、これも歌声に非常にマッチしています。と同時にバックの演奏の厚みも心地よい。カバーで、ここまでボーカリストの印象をクッキリつけてくるのは選曲の良さも感じます。Maybe This Time (From The Motion Picture "Cabaret") は John Kander, Fred Ebb の作曲で、Liza Minnelliの持ち歌で、映画「Cabaret" キャバレー」でも有名な曲です。歌いこんでいますね。少し哀愁のあるメロディーを繰り返しながら少しづつ畳みかけてくる名曲。Never Did I Stop Loving You は Juanita Fleming によるオリジナルと書いてありますが、Charms Of The Arms Of Love、3曲目の Don't Wonder Why の3曲が Sunny のヒットで知られる Bobby Hebb の作曲でもあるらしい。なんかごちゃごちゃしてます。It Takes Too Long To Learn To Live Alone は、Eydie Gormé、Peggy Lee などにも歌われている。Hard Hard Promises は、Bobby Hebb の作曲であるが本人の録音は無いとのことでこのアルバムが初録音。Hey Girl は言わずもがなの選曲( これも含めてDonny Hathaway バージョンが私は一番好きは変わりませんが )
 いやいや改めて楽しすぎる。すっかり愛聴盤になってしまいました。改めて、このアルバムだけしか録音が無いのはもったいない🎵

1. I Keep It Hid
2. Looking At Life
3. Don't Wonder Why
4. Maybe This Time (From The Motion Picture "Cabaret")
5. Never Did I Stop Loving You
6. Charms Of The Arms Of Love
7. Don't You Care
8. It Takes Too Long To Learn To Live Alone
9. Hard Hard Promises
10. Hey Girl


  

2024年5月4日土曜日

Eric Johnson & Mike Stern / Eclectic


 Eric Johnson (エリック・ジョンソン)はビッグネームということだけ知っていて、ほぼ聞いたことが無いのでビッグネームを私が語るのもおかしいですが、ロック界とフュージョン界のビッグネームの二人が共演するとこんな感じになる。
 新譜で購入したものでMike Stern (マイク・スターン)も私の好きなギタリストの一人。手癖の塊りのような人なので、何をやっても、ああスターンが弾いてると素人が聞いてもわかるぐらいの同一のチョーキング・フレーズと必殺のクロマチック・フレーズは頑固オヤジみたいな感じで好きです。
 今回の共演のきっかけは、2009年のスターンのアルバムの Big Neighborhood にエリックが参加したことにより意気投合してアルバム録音に発展したとのことで、プロデュースはエリックでオースチンにある彼の Saucer Sound Recording Studio でレコーディングされています。楽曲は 1,2,4,7,9,11 がスターン、3,6,10 がエリックの曲です。Red House は Jimi Hendrix のカバーとなっています。ゲストにはChristopher Cross (クリスト・ファークロス)が Wishing Well に、スターンの嫁さん Leni Stern (レニ・スターン)なんかも参加してます。Leni Stern はドイツ出身のギタリストですがポール・モチアン、ビル・フリゼルとバンドを組むほどの方で ngoni ンゴニというアフリカのマリの伝統弦楽器とボーカルで Big Foot、Wherever You Go の2曲に参加。
 発売にあたってマイク・スターンのインタビューが、タワーレコードのミュージック・レビュー・サイト「Mikiki」に掲載されています。スターンはジャズ系のギタリストですが、ロック、ブルース、モータウン系などがもともとのルーツ、ジョンソンはジャズがルーツではないけれど Wes Montgomery が一番好きなギタリストとのことでお互いの共通点も多かったとのことです。

 
 
 それではレビューです。Roll With It は、Mike Stern のいつものフレーズがイントロ、ボーカルは、ブルース、ゴスペル系のシンガー・ソング・ライターの Malford Milligan です。ロックですが楽曲は Mike Stern の提供。Remember は、フュージョン系の楽曲でボーカル無し。もちろん楽曲は Mike Stern によるものですが、曲のベースはコルトレーンのImpressions で、Mike Stern は弾きまくりが目立ち Eric Johnson がどこで参加しているのかはよくわかりませんでした。Benny Man's Blues は、楽曲が Eric Johnson となっているので、このギターは最初は Eric Johnson から始まります。ジャズっぽいフレーズですがアクは少な目で後半からクロマッチックなフレーズで Mike Stern が参加してきます。「アップテンポのブルースを必要としている時に古き良きベニーグッドマンの雰囲気を持っていこの作風を思いついた。そんなこともあってこのタイトルになった」そうです。Wishing Well は、ライナーノーツを見なくても Mike Stern の楽曲とわかります。テーマのフレーズは確実に Mike Stern のアルバムで聴いたことがあるヤツですが、同じ曲名では見つけられなかったのでどの曲が元かは今回は探しません。曲の進行は似ていますが、アレンジは変わっています。Big Foot (With Intro) の ngoni, vocals は Leni Stern でシタールは Eric Johnson のイントロ、そこからベースの Chris Maresh の楽曲の Big Foot へ移行していきます。楽曲は ひとつのフレーズを繰り返しながら発展させていく、Bitches Brew的手法です。Tidal はジャズの流儀に従った Eric Johnson の楽曲でスローなジャズロック。3分半過ぎたあたりから、Eric Johnson のモンゴメリー的なフレーズがあり少しサービス感を感じますが、Mike Stern に、そんなサービスは微塵も感じません。You Never Know は、またしてもMike Stern の楽曲で、この曲のリフモどこかで聴いたことあります。探しません。Dry Ice は、Bill Maddox の作曲となっています。元曲は探しきれませんでしたがBill Maddox は2010年に亡くなっているドラマーでした。ここらへんで、他人の曲を入れるのは良い感じです。楽曲も激しめのフュージョンなので雰囲気変わりますしメンバーも暴れまっくて楽しそうです。Sometimes では Mike Stern の楽曲に戻りますが、やっとどこかで聴いた風ではなくなったのにホッとします。Hullabaloo はロック・フュージョンでギターのギラギラする音が快い楽曲、作は勿論 Eric Johnson でライブで絶対盛り上がるタイプですね。Wherever You Go (With Intro)  またもや ngoni, vocals は Leni Stern でシタールは Eric Johnson のイントロ、曲に入ると安定の Mike Stern のフレーズ。最後まで頑固おやじのようなギターですね。最後は Red House でJiimi Hendrix のギタリストであれば共通言語のブルースで締めくくりです。両人がボーカルをとっています

guitar, synthesizer, piano, vocals : Eric Johnson
guitar, vocals : Mike Stern
electric bass, acoustic Bass : Chris Maresh
drums, percussion : Anton Fig

produced by : Eric Johnson

recorded at Saucer Sound Recording Studio, Austin, Texas

1. Roll With It
vocals : Malford Milligan
2. Remember
percussion : Wayne Salzmann II
3. Benny Man's Blues
4. Wishing Well
percussion : James Fenner
vocal bridge : Christopher Cross
vocal verse : Mike Stern
5. Big Foot (With Intro)
ngoni, vocals : Leni Stern
6. Tidal
7. You Never Know
8. Dry Ice
9. Sometimes
10. Hullabaloo
sax : John Mills
trombone : Mike Mordecai
trumpet : Andrew Johnson
11. Wherever You Go (With Intro)
ngoni, vocals : Leni Stern
12. Red House
harmonica : Guy Forsyth
vocals : Eric Johnson, Mike Stern


▶ Dry Ice