最近になって Pat Metheny を聴くようになってきたので、よく解っていませんが、行きつけの音楽好きが集う「おでんバー」に、これを持って行ったところ、皆さん口を揃えて「名盤だよね」とのこと。パット・ファンと言わずともパットを聴く人にとって傑作と言われる存在のようです。どうやらブラジルがテーマの作品であり、ボーカリーズ・スタイルと言われる声を楽器として使う言葉の無いボーカルとパット独特の浮遊感により五感に訴えるアルバムとなっています。また、Acoustic, Electric, の Guitar, Guitar Synthesizer を効果的に駆使しているのも、単なるギタリストを超越したアーティストだと実感します。今まで聴いてこなかったのは、その超越したアーティスト的な部分が理解できるのもの響いてくるものが無かったからで、聴くようになったと言っても崇拝するほど好きなジャンルではありません。ただ凄いということは十分認識できる内容で、1988年度グラミー賞ベスト・ジャズ・フュージョン・パフォーマンス賞受賞も納得。その後、ジャズ・フュージョンにブラジリアン要素が加わり Last Train Home は後にTVアニメ「ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース」に使用されています。
そんな名作をレビューしてみます。1曲目は、Minuano (Six Eight) 浮遊感のあるアルペジオのイントロ、ボイスが更に浮遊感のあるメロディを奏でながらシンフォニックな展開。途中からドラムが加わり効きだしてからギター・シンセとボイスとのユニゾンの透明感が素晴らしい。Minuanoとは南部ブラジルの冬の激しい季節風のこと。風が吹き抜ける空気感実にうまく表現されています。 So May It Secretly Begin この曲もメロディ・ラインが素晴らしい。ギターはアコースティックとエレキで引き分けているようです。曲名からすると冬の激しい季節風が過ぎた後に春の芽生えが秘かに進行している様を表現しているのでしょうか。Last Train Home は、ギターシンセでのフワッとした音色が郷愁を誘うメロディーで歌いドラムの細かいリズムが列車の走るリズムに聞こえてきます。ライナーノーツにカントリー・フレイバーな曲って書いてありますが田舎って意味のカントリーなら理解できますがが私には音楽的にはカントリーには聞こえません。海外での批評を間違って訳してしまったのですかね。(It's Just) Talk では、ブラジリアンな雰囲気が出てきています。Lyle Mays のピアノ・ソロも抜群です。自然の描写からブラジルの人混みに入ってきた感じでしょうか。陽気にしゃべる人たちを外から見つめている感じです。Third Wind は、アップ・テンポで激しめのリズムになり、疾走感や曲の展開も凝っていて聴き応えがあります。ジャズとミナス音楽とアフロ・ラテンなリズムとが三位一体で、ここでも風がテーマですね。ブレイク後のパーカッション・ソロとギターソロとボイスのユニゾンはカッコイイですね。このユニゾン・ソロは楽譜に書かれているのでしょうか。アドリブで反応しているとすれば凄いことです。Distance は、遠くから森を見つめていることを表現している感じのする風景画のような曲です。ラストは In Her Family で、ピアノの Lyle Mays の表現力に魅了されます。曲名からすると女性に家族が出来て小さな幸せを嚙みしめているかのような感じです。家族は当然赤ちゃんでお母さんの腕の中で幸せそうに寝ているかのようです。
こういった甘くて切なくて、郷愁をかきたててくれるような路線は昔の私には退屈であり理解できない路線でありましたが、今は歳をとり、こうやって音楽を聴いて色々感じることができるようになったのは改めて自分でもビックリです🎵
acoustic guitar, electric guitar, guitar synthesizer : Pat Metheny
composed by, arranged by : Lyle Mays, Pat Metheny
piano, keyboards, co-producer : Lyle Mays
bass (acoustic & electric) : Steve Rodby
drums : Paul Wertico
percussion, voice : Armando Marcal
voice : David Blamires, Mark Ledford
producer : Pat Metheny
recorded march/April 1987 at Power Station, NYC
1. Minuano (Six Eight)
2. So May It Secretly Begin
3. Last Train Home
4. (It's Just) Talk
5. Third Wind
6. Distance
7. In Her Family