2025年5月2日金曜日

Murcus Miller / The Sun Don't Lie


 1993年の作品で、中古購入ではなく発売と同時に購入した1993年のアルバム。この頃は関西在住で、David Sanbornのファンだったこともあり Murcus Miller, Hiram Bullock のソロも買い集めていた時期です。その後のソロも買い集めていますが、非常に多作な人なので、この作品を全て揃えているわけではありませんが、このアルバムを超えるものには出会っていないので、私的には、この作品が Murcus ソロの最高傑作かと思います。
 私の所持する Murcus ソロは、Suddenly (1983), The Sun Don't Lie (1993), Tales (1995), Live & More (1997), Renaissance (2012), Afrodeezia (2015) となっています。


 Murcus Miller は1959年のニューヨークに生まれ。父親のいとこであるジャズピアニストのWynton Kelly は父親の従妹、また父親の仕事は教会のオルガン奏者であったこともあり、小さい頃はクラリネットを手にして、ジャズやクラシック音楽に没頭。13歳の時、TVで見た The Jackson 5 をきっかけにエレクトリックベースを手にしてポップスやR&Bを始め、15歳から、プロ・ミュージシャンとして活動を開始し、1979年にはスタジオ・ミュージシャンとして活躍するようになり、Grover Washington Jr / Winelight (1982)Donald Fagen / The Nightfly (1982)The Brecker Brothers / Detente (1980)渡辺香津美 / TO CHI KA (1980)、 渡辺貞夫 / Orange Express (1981) などに参加し、1981年には、Miles Davis / The Man With the Horn (1981)に抜擢されています。こうやって書き出してみると、Murcus のベースを相当聴いています。
 それでは改めて全曲聴きながらレビューしていきます。「Panther」 イントロは、Chick Corea の Spain を連想するスパニッシュな印象のテーマをベース・オンリーで始め、そこらからドラムと2番目のギターソロ以外は、全てマーカスによる多重録音で作られているベースを前面に押し出したフュージョン作品です。「Steveland」は、David Sanborn、Wayne Shorter の二人をサックスに起用する豪華布陣をバックに、ベースでライトハンドとスラップでメロディー楽器として使用すしています。Jonathan Butler のアコギが渋く最後の David Sanborn のソロはいつものヤツで、安心のマーカス・サウンド。「Rampage」は、Miles Davis のマーカスをはじめとする若手を起用したファンク・アルバム Amandla の録音の未発表曲です、親分 Miles Davis が参加しています。「The Sun Don't Lie」アルバムのテーマ曲になります。フレットレス・ベースを使ったテーマがとジャコを意識したような指弾きのベース、マーカス得意のスラップと曲の流れによって奏法を変えています。Andy Narell のスチールドラムが、またジャコを指揮している感じですが、テーマのメロディーが良いです。
 「Scoop」は ギラギラしたスラップとキャッチーなテーマがとてもカッコ良い曲で、Kenny Garrett のソロが、またイケてますしノリノリでフレーズで遊びまくるマーカスが素晴らしい。この曲の作り方はサンボーン系です。「Mr.Pastorius」はタイトルでわかるように、ジャコの追悼曲となっていて、ベースのみのソロ曲です。ジャコ的なフレーズよりスパニッシュとクラシックの融合みたいな曲でした。「Funny」ボーカル曲をインストにしたような曲で(いや最後にはボーカルが入ってくるので厳密にはインストではありませんね)テーマを吹く楽器はミュート・トランペットかと思っていたらソプラノ・サックスとなっているようです。「Moons」これもジャコをかなり意識したような曲となっています。 「Teen Town」 ジャコ・パストリアスの追悼で取り上げていているようで、スティール・ドラムで Andy Narell、ギターの Hiram Bullock の参加も嬉しいところ。「Juju」は、いかにも Murcus Miller らしく、David Sanborn かと思いきや アルトサックスは Everette Harp でした。ファンキーフュージョン全盛期の音がそのまま。「The King Is Gone」のキングは言うまでもなくMiles 事で、メンバーもマイルスゆかりの面々の追悼です。さらに「Round Midnight」がきますが、これは、日本版のみのボーナス・トラックですがかなりの良い出来かと思い、日本盤のみはもったいない。
 こんな感じの作品を作り続けてくれれば・・ソロ作品をもっと買い集めても良いんですが
と改めて思う次第であります🎶

producer : Marcus Miller
recorded by : Brian A. Sperber*, Bruce Miller, Leslie Ann Jones, Marcus Miller, Peter Doell, Ray Bardani, Ray Blair, Ron McQuaig, Vittorio Zammarano, Yan Memmi
Recorded at Camel Island, New Jersey / Power Station, Right Track Recording, East Hill Studios and Soundtrack, New York / Capitol Recording Studios, Hollywood / Mankind, Encino / Battery Studios, London
Mixed at Soundtrack, Axis Studios and Right Track Recording, New York / Schnee Studios and Summa Recording Studios, Los Angeles
Mastered at Masterdisk, New York

1. Panther / Marcus Miller
bass guitar, keyboards, drum programming, bass carinet, rhythm guitar, guitar (1st half of solo) : Marcus Miller
lead guitar (2nd half of solo) : Dean Brown
drums : Poogie Bell
programmed by (sound) : Jason Miles
2. Steveland / Marcus Miller
bass guitar, keyboards, programmed by (percussion), bass clarinet : Marcus Miller
guitar : Jonathan Butler
drums : Lenny White
percussion : Don Alias
percussion (additional) : Paulinho Da Costa
alto sax : David Sanborn
tenor sax : Wayne Shorter
programmed y (sound) : Jason Miles
3. Rampage / Marcus 
bass guitar, keyboards, rhythm guitar, drum programming : Marcus Miller
guitar : Vernon Reid
drums : William Calhoun
trumpet : Miles Davis
trumpet (additional) : Sal 
programmed y (sound) : Jason Miles
4. The Sun Don't Lie / Marcus Miller
bass guitar, keyboards : Marcus Miller
piano : Joe Sample
drums : Michael White
percussion : Paulinho Da Costa
steel drums : Andy Narell
programmed by (sound) : Eric Persing
5.Scoop / Marcus Miller
bass guitar, keyboards, drum programming, programmed by (percussion), bass clarinet : Marcus Miller
rhythm guitar : Paul Jackson, Jr.
sampler (vocal) : Maurice White
alto sax : Kenny Garrett
6. Mr. Pastorius / Marcus Miller
bass guitar : Marcus Miller
7. Funny (All She Needs Is Love) / Marcus Miller, Boz Scaggs
bass guitar, keyboards, rhythm guitar, bass clarinet, vocals : Marcus Miller
lead guitar : Dean Brown
drums : Poogie Bell
percussion : Steve Thornton
soprano sax : Everette Harp
programmed y (sound, additional) : Jason Miles
pogrammed by (sound) : Eric Persing
8. Moons / Marcus Miller
bass guitar, keyboards, drum programming, programmed y (percussion), bass clarinet : Marcus Miller
9. Teen Town / Jaco Pastorius
bass guitar, bass clarinet : Marcus Miller
keyboards : Philippe Saisse
guitar : Hiram Bullock
drums (fill: snare drum, bass drum, cymbals) : Omar Hakim
drums (main beat: high hat, sidestick, bass drum) : Steve Ferrone
percussion : Paulinho Da Costa
congas : Don Alias
steel drums : Andy Narell
10. Juju / Murcus Miller
bass guitar, keyboards, programmed by (percussion), guitar : Marcus Miller
keyboards (additional) : Christian Wicht
drums : Poogie Bell
drums (fills) : Michael White
performer (funky countoff) : Jonathan "Juice" Miller, Julian "Juju" Miller
alto sax : Everette Harp
tenor sax : Kirk Whalum
programmed by (sound, additional) : Philippe Saisse
programmed by (sound) : Eric Persing
11. The King Is Gone (For Miles)
bass clarinet, bass guitar, keyboards : Marcus Miller
drums : Tony Williams
soprano sax, tenor sax : Wayne Shorter
programmed by (sound) : Eric Persing
12. Round Midnight / Berni Hanighen, Cootie Williams, Thelonius Monk
bass clarinet, bass guitar : Marcus Miller
piano : Joe Sample
drums : Tony Williams
keyboards : Philippe Saisse
tenor sax : Everette Harp
trumpet : Tom Browne
vocals : Lalah Hathaway

▶  Panther

▶ Moons

▶ Juju


  

2025年5月1日木曜日

The Yardbirds / Gold


 The Yardbirds のバンド名は、Charles Parker のあだ名が由来となっているなんて知ってました?ロックとジャズと音楽性も音も全く違いますが、Charles Parker はモダンジャズの創生者の一人で「ジャズ・ジャイアンツ」とも呼ばれていますから、新たなロックの創生者になるなんて願いも込められていたのか、メンバーの誰かが Charles Parker 好きだったのか? ドラッグととアルコールで破滅的な生涯を送った Charles Parker にロックっぽさを感じたのか? また、Yardbirds という単語自体は「囚人」「雑務を割り当てられる軍隊入隊者」という意味を持っています。
 バンド自体の創設は1962年で、当初のメンバーは、ボーカル・ハープの Keith Relf、ドラムの Jim McCarty、ベースの Paul Samwell、リズムギターの Chris Dreja、リードギターの Tony 'Top' Topham で結成されています。アルバム・デビューは Five Live Yardbirds(1964年)でした。メンバーの入れ替わりは激しくギタリストは、Eric Clapton、Jeff Beck、Jimmy Pageと入れ替わりながらヒットを飛ばすこととなるのはご周知のとおり。


メンバーの変遷は下記の通りで、1966年は、Jeff BeckとJimmy Pageの二人の在籍だったんですね
【1962-1963年】
vocal : Keith Relf
drums : Jim McCarty
bass : Paul Samwell-Smith
rhythm guitar , bass : Chris Dreja
guitar : Tony 'Top' Topham
【1963-1965年】
vocal : Keith Relf
drums : Jim McCarty
bass : Paul Samwell-Smith
rhythm guitar, bass : Chris Dreja
guitar : Eric Clapton
【1965-1966年】
vocal : Keith Relf
drums : Jim McCarty
bass : Paul Samwell-Smith
rhythm guitar , bass : Chris Dreja
guitar : Jeff Beck
【1966年】
vocal : Keith Relf
drums : Jim McCarty
bass : Chris Dreja
guitar bass : Jeff Beck
guitar : Jimmy Page
【1966-1968年】
vocal : Keith Relf
drums : Jim McCarty
bass : Chris Dreja
guitar : Jimmy Page
 曲順は必ずしも録音年代順ではないようですが、「For Your Love」「Heartful Of Soul」は、Beatles, Monkeys の影響があるような楽曲で、「Shapes Of Things」については、The Who 系、「Still I'm Sad」 は、グレゴリオ聖歌から拝借したメロディらしい。「Evil Hearted You」は、Monkeys系ですが、The Doors も感じる曲。「Good Morning Little Schoolgirl 」「A Certain Girl」も同様に Monkeys系ですがですが軽め。「Got To Hurry」硬派系ブルースになります。Clapton の歪ませたギターがやっと出てきます。「Ain't Got You」これは、Beatles風ですが、Clapton + Beck のギターソロだけギンギンです。「Jeff's Blues」単純なブルース曲名の通り Jeff Beck を楽しむための楽曲です。この頃は未だ Beck のギターの主張は少な目。「I Wish You Would」日本のGSの原型みたいな楽曲ですが、段々と現代ロックに近づいてきた感あります。「I'm A Man」ブルースの基礎的な楽曲で、きっちりとブルース・ロックの形態に進化し、リズムも音も分厚くなってきます。「Stroll On」?? Train Kept A Rolling じゃないですか。映画 Blow-Up に出演してこの曲を演奏することになってが、曲の使用許可が出ずに 歌詞を書き換えて違う曲にして使ったとのこと。 Jeff Beck, Jimmy Page のツインギターで有名なヤツですね。「Train Kept A Rolling」Chris Dreja と Jeff Beck がギターで Jimmy Page のバージョンとかもあるらしいけど、これはどれなんだろう。楽曲としての完成度はどうなんだろうと思うのですが、ロックファンなら、この曲を聴くと胸騒ぎがする人も多いと思います。私もそうです。
 現代ロックの創成期の記録みたいな盤ですね。ペラペラな紙が入ってるだけの安っぽいCDですが、愛聴盤です🎶

1. For Your Love / Graham Gouldman
2. Heartful Of Soul / Graham Gouldman
3. Shapes Of Things / Bob Relf, Jim McCarty, Samwell Smith
4. Still I'm Sad / Jim McCarty, Samwell-Smith
5. Evil Hearted You / Graham Gouldman
6. Good Morning Little Schoolgirl / Bob Love, Don Level 1965
7. A Certain Girl / Naomi Neville
8. Got To Hurry / Oscar Rasputin
9. Ain't Got You / Calvin Carter
10. Jeff's Blues / Jeff Beck
11. I Wish You Would / Billy Boy Arnold
12. I'm A Man / Ellas McDaniel
13. Stroll On / Unknown
14. Train Kept A Rolling / Howie Kay, Lois Mann, Tiny Bradshaw





  

2025年4月30日水曜日

James Cotton / Living The Blues


 1994年リリースの James Cotton 御大が、良好な状態で発声で録音した最後のアルバムとなります。この後 Deep In The Blues (1995) で御大の歌声は、だいぶ苦しそうになり1996年のブルース・カーニバル出演時自身で歌われていて、その後での喉頭がんで手術となります。1997年来日時はボーカリストを連れてきていたようです。歌は歌えなくなってもブルース・ハープで音楽を私たちに届けていただいた御大は、2017年3月16日、米テキサス州オースティンにあるセント・デイビッズ・メディカル・センターにて肺炎のため死去されています。


 さて、健在な喉の最後の録音ですが、何しろファンなんで全曲が良いです。このアルバムでは、ドラム、ギター、オルガン、ピアノとのデュオ演奏が、多数収録されているのが特徴です。声の調子も良くは無いのでメモリアル的な意味もあるのでしょうか?
 1. 13.  Mississippi Freight Train - ドラム 、3.Pacific Blues - ギター、6. Hucklebuck、9. Black Knights - オルガン、11. Cotton in the Kitchen - ピアノ
 どれが、どんなのかは、全曲レビューします。「Mississippi Freight Train」アルバムのイントロとエンディングに、 使われています。ドラムのブラッシングで、汽車が走るリズムを、ブルース・ハープで汽笛を表現しています。エンディングの Part 2 ではイントロよりもアドリブが多くしてファン・サービスしています。このパターンは、Cotton Boogie、Rockett 88、The Creeper などにも使われる「汽車ポッポ・サウンド」で、御大の得意技ですね。「You Didn't Think About That」御大の声はだいぶ苦しそうではありますが、迫力があって大好きでした。オルガンの Lucky Peterson も良いのですが、ギターの Larry McCray の粘っこいオーバー・ドライブが深くかかった短いギターソロも素敵です。ドラムの Brian Jones も御大のブルース・ハープ・ソロを煽る煽る。バンドとしてのサウンドはかなり完成されています。「Pacific Blues」ギターのJoe  Louis Walker とのデュオでボーカル・レスのインストですが、アコースティック・ギターのバッキングが、とても心地よいです。簡単そうですが、こんなギター弾けないんですよね。「Take a Message」 ギターは二人 John Primer, Larry McCray で、歯切れの良いドラムがグイグイと曲を引っ張ります。この Brian Jones は Junior Wells、Magic Slim なんかのレコーディングに参加しているブルース系のドラマーでした。「Hungry Country Girl」Otis Spann の楽曲で、ボーカル無しのハーモニカメインのインストです。なんてことはない典型的なコード進行のブルース・セッションなのですが味わい深い。John Primer のギターリフも珍しいことはやってないですが印象に濃いパターンです。「Hucklebuck」 Lucky Peterson のオルガンとのデュオの珍しい組み合わせのインスト。ペダル・ベースがあるので、トリオのようなもんですが二人でこのノリの良さは脱帽です。「One Little Piece of Shade」ボーカルは、ピアノの Dr. John がとっているジャジーな響きのブルースです。御大はハープでしっかり聞かせていますが、やっぱり喉の調子が悪かったのもあるのでしょうか。「Living the Blues」御大の声をふり絞って歌うタイトル曲で、バンドの息はピッタリの完成されたサウンドです。心なしか御大のボーカルパートは短めの録音ですね。「Black Knights」 Lucky Peterson のオルガンとのデュオの2曲目です。御大のハープを吹くときのウプっウプって音が鮮明に聴こえて、それが妙に迫力を感じます。オルガンとハープの音色は近いものもあるかもしれませんね。「Mississippi Saxophone 」激しめのジャンプ・ブルースで迫力あります。楽曲は Hawks ってバンドのギタリスト Dave Steen で、本アルバムでは2曲目。白人ですがバリバリのド・ブルースです。「Cotton in the Kitchen」本アルバムで大活躍のピアニスト Dr. John とのデュオです。Lucky Peterson のオルガンとは全く違うデラックス感があります。 「Certified」曲は、白人系ブルースバンドの Fish Heads & Rice あたりの楽曲でしょうか。このバンドの誰かが曲を持ち込んでいるんですかね。
 御大の声が気になる一枚ですが、素晴らしいメンバーでの録音と良好な録音状態で、聴いて楽しい完成された一枚です。バンドサウンドも良いですが、デュオ作品に特に味わいがあります🎶

producer : John Snyder
recorded March and June, 1993 at Chicago Recording Corporation, Chicago, Illinois; July, 1993 at Kiva Recording Studio, Memphis Tennessee; September, 1993 at Soundtrack, New York City and January, 1994 at Russian Hill Recording, San Francisco, California.

1. Mississippi Freight Train / James Cotton
harmonica : James Cotton
drums : Brian Jones
2. You Didn't Think About That / Dave Steen
vocals, harmonica : James Cotton
organ : Lucky Peterson
guitar : Larry McCray
bass : Johnny B. Gayden
drums : Brian Jones
3. Pacific Blues / Joe Louis Walker
harmonica : James Cotton
guitar : Joe Louis Walker
4. Take a Message / Dave Steen
vocals, harmonica : James Cotton
organ : Lucky Peterson
guitar : John Primer, Larry McCray
bass : Johnny B. Gayden
drums : Brian Jones
5. Hungry Country Girl / Otis Spann
harmonica : James Cotton
piano : Dr. John
guitar : John Primer
bass : Johnny B. Gayden
drums : Brian Jones
6. Hucklebuck / Andy Gibson, Roy Alfred
harmonica : James Cotton
organ : Lucky Peterson
7. One Little Piece of Shade / Dave Steen
harmonica : James Cotton
piano, vocals : Dr. John
bass : Johnny B. Gayden
drums : Brian Jones
8. Living the Blues / Gary Nicholson
vocals, harmonica : James Cotton
piano : Dr. John
guitar : John Primer, Larry McCray
bass : Johnny B. Gayden
drums : Brian Jones
9. Black Knights / Ferdinand "Fats" Washington
harmonica : James Cotton
organ : Lucky Peterson
10. Mississippi Saxophone / Dave Steen
vocals, harmonica : James Cotton
piano : Dr. John
guitar : Larry McCray
bass : Johnny B. Gayden
drums : Brian Jones
11. Cotton in the Kitchen / James Cotton
harmonica : James Cotton
piano : Dr. John
12. Certified /  David James, Gary Taley, Stuart Brower, Walter Fergeson
vocals, harmonica : James Cotton
piano : Lucky Peterson
guitar : John Primer, Larry McCray
bass : Johnny B. Gayden
drums : Brian Jones
13. Mississippi Freight Train - Part 2 / James Cotton
harmonica : James Cotton
drums : Brian Jones





  

2025年4月29日火曜日

John Coltrane / Coltrane's Sound


 こちらは1964年 Atlantic Records からの発売。1960年10月に録音した演奏の一部を収録したアルバムです。1960年10月21日、24日と26日に行われた録音セッションは Coltrane のレギュラーカルテットの初のレコーディングでしたが、多数の曲を録音していて、このとき録音された演奏の一部は、Coltrane Jazz (1961)My Favorite Things (1961) 、Coltrane Plays The Blues (1962) に収録。そしてその録音を使用した最後には Coltrane's Sound (1964) の発売となるのが、このセッションの録音を使ったアルバムの発表の流れです。


 邦題は、1曲目「The Night Has A Thousand Eyes」の直訳で、この訳をした時には、この曲がこのアルバムの中心であると考えたのでしょう。しかし個人的には8:39の長尺で延々とコルトレーンが吹き続けマッコイタイナーも、延々と弾き続け力の入った「Equinox」のほうが中心でもよいのではないかとも思えます。ソロ部分で派手さは無いですが力強く、修行でもしているかのような精神的な強さを感じます。「Central Park West」は、リリカルで優しげなコルトレーン作のソプラノ・バラードで、モーダルな旋律ですが、どこかで聴いたことあります。Giant Steps を遅くしてコードの順番を入れ替えればこの曲になるような気がするのは私だけ?でしょうか。「Liberia」は Coltrane の曲になりますが、曲調は深いものがあり、この後の活動の展開はこういたものから派生してくるものかと深く聴き行ってしまいます。「Body & Soul」有名スタンダードを独自の解釈で演奏されていますが、これはそれほど極端な解釈ではないようです。「Equinox」は、時間や季節の分岐点の意味でエキノコックスではありません。熱演であるのは前述のとおり。 「Satellite」については、ネタ元は How high the moon らしいですが、これは一聴ではわかりづらい感じです。
 過去録音のせいか Nesuhi Ertegun はこのアルバムではプロデューサー表記ではなく、とうとう supervised by になっています。前衛的なジャケットは、写真家・画家として活躍していた Marvin Israel で、前作からも Coltrane は、Atlantic とはケンカ別れっぽい気がしますがここら辺のお金のかけ方は趣味が良いです🎶🎷

soprano sax (2), tenor sax : John Coltrane 
bass : Steve Davis
drums : Elvin Jones
piano : McCoy Tyner

supervised by : Nesuhi Ertegun
recorded October 24 and 26, 1960 at Atlantic Studios, New York City.
photography : Marvin Israel

1. The Night Has A Thousand Eyes  / Ben Weisman, Dotty Wayne, Marilyn Garrett
2. Central Park West / John Coltrane
3. Liberia / John Coltrane
4. Body And Soul / Edward Heyman, Frank Eyton, Johnny Green, Robert Sour
5. Equinox / John Coltrane
6. Satellite / John Coltrane



▶ Equinox


  

2025年4月28日月曜日

John Coltrane / Coltrane Plays The Blues

 
 こちらは1962年 Atlantic Records からの発売。1960年10月に録音した演奏の一部を収録したアルバムです。1960年10月21日、24日と26日に行われた録音セッションは Coltrane のレギュラーカルテットの初のレコーディングでしたが、多数の曲を録音していて、このとき録音された演奏の一部は、Coltrane Jazz (1961)My Favorite Things (1961) に収録されており、現在続けて聴いてレビューしてきています。そして最後には Coltrane's Sound (1964) の発売となるのが、このセッションの録音を使ったアルバムの発表の流れです。このアルバムのブルースに関してwikiに、詳しい掲載がありました。
ブルースは一般にAAB形式で構成され、Bの部分のコード進行はV→IV→I(いわゆる541ブルース)、またジャズにおけるブルースではBの部分のコード進行としてII→V→I(キーがCならばDm7→G7→C7、いわゆる251ブルース)となることが多い。本アルバムの前半のタイトルが"Blues To"で始まる曲はいわゆる従来型の541ブルースか251ブルースである。これに対してアルバムの後半のタイトルが"Mr."で始まる曲はAAB形式ではあるものの、541や251のような形式ではなく自由な形式が採用されている。こういったブルースに乗って行われるコルトレーンのソロも、十分に間(休符)をとってモーダルに歌い上げており、かつて特徴としたシーツ・オブ・サウンドは完全になりを潜めている。・・・なるほど
 なお、Atlantic Records からは、Giant Steps のリリースを皮切りに、1960年10月の録音を中心に5枚のアルバムをリリースし、Impulse! へと移籍します。英語版の wiki には、このアルバムの曲は Coltrane の意見や承諾なしに Impulse! への移籍が決定してから Atlantic Records が勝手に発売したと書いてあります。つまりはケンカ別れなんですかね。プロデューサーは、一連のアルバムは Nesuhi Ertegun となっています。


 Coltrane は演奏をしただけで、この作品の監修には関わっていないのは、意外でしたが、コンセプトが非常に明快であり、演奏も Coltrane 初心者に聴きやすいのは、プロデューサーの Nesuhi Ertegun が優秀な人物であったことと思われます。先にも書きましたが、"Blues To"で始まる曲はいわゆる従来型の541ブルースか251ブルース、"Mr."で始まる曲はAAB形式ではあるものの、541や251のような形式ではなく自由な形式、A面 "Blues To"、B面 "Mr." です。
 それでは全曲レビューしていきます。「Blues To Elvin」このアルバムの中でこの曲だけが Elvin Jones 作曲で、イントロは McCoy Tyner のブルージーなピアノで、サックスがテーマの標準構成。音数を詰め込まないのが Coltrane風ではないと思ってしまうのは、これまで聴いてきて耳が毒されているからか。「Blues To Bechet」Coltrane 作曲のブルースでベシェとは、ソプラノサックスの先駆的奏者 Sidney Bechet のことであり、Coltrane はこのアルバムではこの2曲目だけソプラノを吹いています。1953年が最後の録音で、1959年に62歳にパリで亡くなっていますので、共演はしていないものと思われます。「Blues To You」ユーが誰なのかはわかりませんが、やはりブルーナンバーはメンバー全員がリラックスできるのか、スイング感が非常に心地よい演奏です。「Mr. Day」 B面に変わって、自由形式のブルースになります。と言っても漫然と聴いている分には形式なんて気になりません。イントロは、まずはベースから次にドラムが入り、サックスのテーマが入ってくるとパッと花が咲きます。テーマのメロディは非常に単純で直ぐにソロに移ります。跳ねるようなリズムで Coltrane が吹きまくるパターンですが無理やり音を入れてくるのではなく、気分のまままに気持ちよい程度のしつこさでした。McCoy Tyner のピアノも余り考えずに自由に弾いている感じが好感です。「Mr. Syms」ゆったりとしたテンポでジャズって感じが楽しめる曲になっています。最初の McCoy Tyner のピアノのソロがバックの演奏のスイング感に、微妙にずらして入れるスイングなテンポが合わさると違う波が重なり合って二つの波にユラユラするようなところが良かったです。「Mr. Knight」 ハードバップのスタイルで、スウィンギーなナンバーで、ベースのイントロでテンポを形作ってピアノがコードで形を作って、Coltrane が曲にメロディーを放り込んできます。ソロに入る前の動機づけのような単純なテーマで流れに乗ったフレージングをの音を楽しむような作りになっています。その後でじっくりと料理するような McCoy Tyner のピアノが、また素晴らしい。
 ジャズのブルースは、かしこまった演奏も多いですが、こちらはお気楽なセッションが多く、かと言ってカジュアル過ぎず、聴きながら作業するのにも良い感じで繰り返し聴いても飽きない名盤です🎶🎷

soprano sax (2), tenor Sax : John Coltrane
bass : Steve Davis
drums : Elvin Jones
piano : McCoy Tyner

producer : Nesuhi Ertegun
Recorded October 24, 1960.

1. Blues To Elvin / Elvin Jones
2. Blues To Bechet / John Coltrane
3. Blues To You / John Coltrane
4. Mr. Day / John Coltrane
5. Mr. Syms / John Coltrane
6. Mr. Knight / John Coltrane


▶ Mr. Day



  

2025年4月27日日曜日

John Coltrane / My Favorite Things


 Coltrane 続きで書いて3枚目になりますのは、実は廉価版の5枚組を昔購入したものを聴いているからです。つまり未だ続きあります。1959年にアトランティック・レコードに移籍し、Giant Steps を録音し、大きな名声を得ます。これを機に1960年に Miles Davis のバンドを離れたころからバンド・リーダーとしての活動を優先させ、1960年10月に大がかりなレコーディング・セッションを行い、その一部は本作で1961年の発売、残りは1964年 Coltrane's Sound に収録されています。


 この録音でコルトレーンは、ソプラノ・サックスを使用しています。コルトレーンは、Don Cherry とのセッション The Avant-Garde(1960)などで、ソプラノ・サックスを使い、本作でも大々的に取り入れています。このアルバムのタイトル曲 My Favorite Things は、ミュージカル Sound Of Music の劇中で使われた超スタンダードですが、Coltrane の晩年のフリースタイルとなるまではコンサートの定番曲として演奏されています。
 と言うことで全曲レビューしていきます。「My Favorite Things」先にも書いてしまいしたが、このアルバムではソプラノ・サックスという楽器を使用しているのが特徴で、この曲では、個性的な吹き方で演奏していて、最初の Coltrane ソロは、怪しい音色とメロディですが、ピアノソロでは淡々と美しいジャズになり、また Coltrane がソロをとると途端に怪しい曲に変化します。最後はかなりフリーキーに変化していくのも面白い。ちなみに録音された時点では、Sound Of Music はまだ封切られていなかったようなので、この3拍子の曲に注目した Coltrane の目の付け所も素晴らしい。「Everytime We Say Goodbye」この曲は Cole Porter 作曲のスタンダードで、1曲目よりも正調な演奏です。ここでも Coltrane は、ソプラノを使用しているので、非常にタッチが軽いです。使っているソプラノは Miles からのプレゼントとのこと。「Summertime」ビニールLPであれば、ここで盤がひっくり返ります。ひっくり返したところで太い音のテナーに音が変わり、かなり饒舌な語り口になります。この曲は、ゆっくり目で演奏されることが多いイメージですが、速めにしてテーマも少し簡略化して曲全体のイメージを作り替えています。「But Not For Me」次もガーシュイン作品で、テナーで吹きまくりの曲になっています。また楽しげな雰囲気のこの曲はコンサートのラスト曲のような感じにも聞こえ、アルバムを締めくくりとしては良い雰囲気です。
 表と裏の表情を変える作戦は、とてもよい印象で、暴走しようとする Coltrane を McCoy Tynerが裏から上手く支えているのが好印象でした🎶🎷

soprano sax (1,2), tenor sax (3,4) : John Coltrane
piano : McCoy Tyner
bass : Steve Davis
drums : Elvin Jones

producer : Nesuhi Ertegun
recorded at Atlantic Studios, New York, NY
track 1 on October 21, 1960
track 3 on October 24, 1960
tracks 2 & 4 on October 26, 1960

1. My Favorite Things / Richard Rodgers, Oscar Hammerstein
2. Everytime We Say Goodbye  / Cole Porter
3. Summertime / Du Bose Heyward, George Gershwin
4. But Not For Me / George Gershwin, Ira Gershwin





  

2025年4月26日土曜日

John Coltrane / Coltrane Jazz


 このアルバムは、コルトレーンがジャズ史に残る名盤を連発始めた時期の1959年から60年にかけて行なわれた3セッションからのテイクで Atlantic Records から1961年に発売されています。コルトレーンがジャズ史に残る名盤を連発始めた時期の1959年から60年にかけて行なわれた3セッションからのテイクで構成され、Giant Steps (1960) と同時期に録音されたトラックと、彼の黄金のカルテット結成前夜の演奏が収められ、彼の演奏スタイルの変遷を理解する上で重要な一枚であり、モダン・ジャズの発展においても欠かせないアルバムとされています。
  Giant Steps (1960) をソロで録音はしたものの、親分マイルスから声がかかり、Coltraneは マイルス・コンボに一時戻ることになります。その気心が知れたメンバーでコルトレーンは彼らとスタジオに入り、できたのが本アルバムと言われています。


 前作 Giant Steps (1960) 同様に本作も自作曲が中心です。俺のジャズを聴けと言わんばかりの勇ましいタイトルですが、前作よりリラックスしてのジャム・セッションのように聴こえます。それでは全曲レビューします。「Little old lady」一発目は、St. Thomas のような雰囲気の楽しい楽曲で、堅苦しさや緊張感は全くなし。「Village blues」この曲だけセッションメンバーが違ってピアノは McCoy Tyner、ベース Steve Davis、ドラムは Elvin Jones です。1曲目とは違うタイプのブルースです。テンポゆっくりなだけで聴く方も心穏やか、Coltrane は、音を探るようにロングトーンのソロ、ピアノ・ソロもゆったりと優しく、最後に Coltrane は、最後のテーマの後、静かに消えるようにいなくなり終了。「My shinning hour」になって、やっとアップテンポ来ました。やはり早めのテンポだと Coltrane のやる気が違います。音数は多いですがリラックスしている感じで Paul Chambers、Jimmy Cobb のリズム隊の良さも出ています。「Fifth house」は少し捻った曲になっています。アッチコッチと飛んでいくようなテーマのサックスに演奏がバラバラになるかのように聴こえながらも、戻ってきたり離れて行ったりと不思議な心象を聴き手に与えますが、やっているメンバーも戸惑っているのかエンディングが上手く着地していないかのように聴こえます。「Harmonic」は、モンク的な楽曲です。そう思うと Fifth house もモンクに対抗した雰囲気づくりを模索した楽曲のようにも思えます。Coltrane が身をよじるように変則なタイミングで音を入れようとソロを始めるが、結局はいつもの Coltrane 節に決着するのがニヤリ。コードの流れとソロの音程のタイミングを微妙にずらしたような Wynton Kelly のピアノ・ソロが、またニヤリ。「Like Sonny」軽いタッチの曲で、非常に正調。親友であり影響を受けた Sonny Rollins に敬意を表して書かれた曲で、「この曲は、コルトレーンのスタイルや音楽性の発展において重要な役割を果たしています」などと書かれているものを見かけますが、そうかなあ。「I'll Wait And Pray」これは Coltrane も音を模索する素振り無く、良く演奏して曲を熟知しているような吹き方で、いつもの Coltrane節が無いのが、逆に不思議に聴こえます。ラストは「Some Other Blues」のブルースで、これは、ノッペリと音数多めに いつもの Coltrane節 なのが安心感あります。
 「Giant Steps」「My Favorite Things」あたりと比較すると地味ですが、暗くしたジャズ喫茶でデカい音で、ゆったりとした気持ちで聞きたいアルバム🎶

① November 24, 1959 ②December 2, 1959
tenor sax : John Coltrane
piano : Wynton Kelly
bass : Paul Chambers
drums : Jimmy Cobb
③ October 21, 1960 ("Village Blues")
tenor sax : John Coltrane
piano : McCoy Tyner
bass : Steve Davis
drums : Elvin Jones

Recorded at Atlantic Studios, New York City

1. Little Old Lady (Hoagy Carmichael, Stanley Adams) ①
2. Village Blues (John Coltrane) ③
3. My Shining Hour (Harold Arlen, Johnny Mercer) ②
4. Fifth House (John Coltrane) ②
5. Harmonique (John Coltrane) ②
6. Like Sonny (John Coltrane) ②
7. I'll Wait And Pray (George Treadwell, Jerry Valentine) ①
8. Some Other Blues (John Coltrane) ②





  

2025年4月25日金曜日

John Coltrane / Giant Steps


 ジャズファンを自称する方は、ほぼ持っているマスト・アイテムかと思います。1958年に、Coltrane は Monk のバンドを脱退し、Miles Band に再加入します。そして1959年には、Miles のモード奏法の金字塔 Kind of Blue の収録に参加。Atlantic Records に移籍。1月にMilt Jackson と共同名義で Bags & Trane を収録し、4月~12月にかけて本アルバム Giant Steps が録音されています。Miles の Kind of Blue 影響なのか、曲目は全てオリジナルで固め、Kind of Blue の録音メンバーからは、Naima だけ、ピアノの Wyn Kelly ドラム Jimmy Cobb が参加、ベースのPaul Chambers は全曲を弾き、ピアノは Tommy Flanagan が Naima 以外は全曲弾いています。また、全7曲中、4曲が身近な人間をテーマにしていることも特徴です。


 それでは全曲レビューしていきます。「Giant Steps」複雑に変化するコード進行(1コーラス16小節中に長3度という珍しい転調を10回行う)♩=240を超えるハイテンポと、最初から大曲が投入されます。Coltrane の音数の多いサックスが、とんでもないプレイですが忘れてはいけないのが、Tommy Flanagan の不名誉事件で、ハイテンポでの音数に Tommy Flanagan はついていけず、ピアノ・ソロでは途中からコードを押さえるだけになってしまい、コルトレーンが被せるようにサックス・ソロを入れてきます。このリベンジで録音したと言われていますが Coltrane 敬意かと私は思いのが Tommy Flanagan / Giant Steps (In Memory Of John Coltrane) (1982) です。「Cousin Mary」これは、従姉妹に捧げた曲で、Cookin With The Miles Davis Quintet (1957) に収録の Blues By Five を改作したもので、原曲よりも少し荒々しくなっているように感じます。「Countdown」Art Taylor の長めドラムソロから始まり、Coltrane の乱入がカッコ良いです。それからの Tommy Flanagan の参加は、Giant Steps 同様に苦しそうなのは今回聴いて思いました。ベースが最後に入ると生き生きしてきます。と思う間もなく駆け抜けるように終了。メンバーには結構きつかった曲かも知れません。「Spiral」今までが激しいだけに、少し休憩みたいな感じです。ただ演奏には緊張があるような気がします。「Syeeda's Song Flute」自分の娘が遊びで吹いていたフレーズを取り入れた曲で、曲調はユーモラスなのですが、これでもかと Coltrane がぶつけてくる音の洪水には圧倒されます。Tommy Flanagan のソロが単音部分でも詰まっているところもあり、あれほどの名手が、この時は相当に緊張されていたんだと改めて発見で、Tommy Flanagan にとっては試練のセッションだったんだと感じます。「 Naima」は、瞑想するような曲調で、詰め込まれていな音符の一つ一つを聴かせるバラード。こういった対比が聴くものを更に引きづりこまわれるのが、アルバムとして聴く楽しみが生まれます。Wynton Kelly のピアノもシンプルで余計な音を省いたピアノに凄みを感じます。後に発売される reissue されたアルバムでは Cedar Walton が弾いたバージョンも収録されています。そして最後は「Mr. P. C.」は 録音中のメンバーである Paul Chambers の為に書かれた曲で、このアルバムへの貢献度の高さを示している曲でもあります。ベースをランニングさせながら、バンドを引っ張っていく本人のベースも、やはりカッコ良いものがあります。曲としても何より覚えやすくて印象的なテーマで楽曲としての出来も良いし大好きな曲の一つです。
 改めて聴き直すと発見がありました。名アルバムではありますが当時としては難しいチャレンジであったことが伺える内容で、楽しんで聴くと言うよりは Coltrane と他メンバーの本気を聞き取れたような気がします🎶🎷

tenor sax : John Coltrane
piano : Tommy Flanagan (1 to 5, 7) , Wynton Kelly (6)
bass : Paul Chambers
drums : Art Taylor (1 to 5, 7), Jimmy Cobb (6)

producer : Nesuhi Ertegun
recorded at Atlantic Studios, New York, NY.
1 to 5, 7 were recorded on May 4, 1959.
6 was recorded on December 2, 1959.
all composed by John Coltrane

1. Giant Steps
2. Cousin Mary
3. Countdown
4. Spiral
5. Syeeda's Song Flute
6. Naima
7. Mr. P. C.


▶ Naima



  

2025年4月24日木曜日

Chick Corea & Herbie Hancock / An Evening with Chick Corea And Herbie Hancock

 


 最近聴いている音源には Herbie Hancock が多いですが、Chick Corea については、Electric Band系が多いかと思っていたら、Miles 作品が多いでしょうか。この両者の共通点として直ぐに思い浮かぶのは、若い時は思いっきりアコースティック・ジャズのミュージシャンであったのが、ある時思いっきりエレクトリックに傾倒し、またアコースティックに戻ってきているところです。このアルバム購入は2025年に入ってからで、特に目的としてのこう購入でなく、たまたま中古屋で見かけたから。私には興味津々ですが、行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」では、余り好まれて聴かれることの無い二人です。しかし先に家で封を開けて聴いたところ素晴らしい。敢えて、皆様の先入観を変えるために持って行きました。が、人の先入観はなかなか変えることが出来ないもの、悪評ではないものの、無反応に近い。うーん、これは残念。しかし音楽は自分で聴いて、どう感じるかです。他人の評価に惑わされることがあるものの、自分が良いと感じることが心の栄養に大事なものです。


 Chick Corea と Herbie Hancock、共演と言えば Miles Davis / In A Silent Way (1969)Live Evil (1971) などが有名ですが、ライナーノーツには、二人の繋がりが、もっと原点にあると掲載されています。Chick のデビュー・アルバムは1962年7月にニューヨークで録音されたラテン音楽のバンド、Mongo Santamaría の「GoMonGo!」で、この頃 Herbie は Donald Byrd のバンドにいて、土曜日だけ Mongo Santamaría のバンドで演奏していたそうです。そして、当時未完成だった Herbie のオリジナル「Watermelon Man」を Mongo Santamaría が取り上げて大ヒットとなり、Herbie 初のリーダー・アルバム Takin' Off (1962) でも収録され大ヒットし、様々なミュージシャンにカバーされたり完全オマージュの別名の曲が演奏されるなんてことも起きています。共演こそしていないものの両者の Mongo Santamaría への参加、そして「Watermelon Man」へと点と点がつながってくると言う、エピソードは謎解きのようでワクワクしますが、ここでは残念ながら演奏されていません。


 このアルバム 1978年2月ライブ録音。6曲中3曲がChick、1曲がHerbie、1曲がChick  & Herbie、そしてバルトークのピアノ曲で、ライナーノーツの英語版では、このアルバムは、二重奏 (Duets) であるが、勝負・決闘 (Duels) ではないと書かれ、Duets には「二人だけの対話」の意味がある。対話ではあるが「対決」はあり、インプロビゼーションの最もピュアーかつスリリングな局面が凝縮されているとも書かれています。このライナーツのライターの 久保田 高司 氏の研究心、書きっぷりは中々マニアで読み応えありました。ステレオで注意深く聴きたい方は、右が Chick、左が Herbie です。
 それでは、全曲レビューしていきます。「Homecoming」Chick Corea の作曲です。格調高きクラシックのようであり、フュージョンのようでありながらの実はジャズ・インプロであるのが凄い。2台のピアノを名手が演奏するので、広がりがある美しい展開、打楽器のようなピアノの使い方などテクニックやピアノを知り尽くしたアイデアも堪能できます。拍手の大きさ、笑い声などからも顧客サービスたっぷりのパフォーマンスもあるようで、おそらくピアノの鍵盤前から離れてのピアノの弦の中に手を突っ込んでのパーフォーマンスをしながら、手を挟まれるギャグなんかもやっているように音から推測できます。映像で見てみたい気もしますが、見なくても想像できる録音です。「Ostinato」はバルトークの「Mikrokosmos」よりと書いてあります。他の演奏を聴いたことが無いので、この演奏の凄さはわかりませんが、1曲目で耳馴れしてくると、オーケストラでも聴いているかのような立体感のある演奏に聞こえますが3分だけの超ショートであさめています。「The Hook」は Chick と Herbie の共作となっています。こちらは最初からインプロ感のある演奏で、ウネウネとお互いの感情を探りながら変化していきます。特に印書に残るのは、ギターのピッキング単音のような響きのリフを延々としてる部分で鍵盤を叩いているだけなのだろうか?それとも、ホントにピッキングでもしているのだろうか?気になります。11分過ぎのミュート気味の音はピアノの弦の上に何かをのっけて鍵盤を叩いての音だろうか?とか、それを過ぎると二人の単音連打による打楽器的なアプローチ。かなり独創的です。「Bouquet」 Herbie が Chick を紹介しての Chick の独奏。こちらについてはガチガチの遊びとお笑い要素無し。Herbie の紹介部分があるから1曲目の Homecoming と実質的には同じぐらいですが、最長の19分22秒の演奏です。途中何かラテンの曲からの引用もあることだけは解りますが、何の曲かはわからないのが悔しいところ。「Maiden Voyage」そして Herbie の名曲の登場です。Maiden Voyage (1965) では、Freddie Hubbard のトランペットが印象的なジャズ曲でしたが、ピアノのデュオでやると透明感のある曲に変わります。イントロから始まるコードリフだけで客はヤンヤです。ファンは大興奮ですね。ピアノだけのプレイですが、ここにきて私も頭がハッと覚めます。「La Fiesta」Chick 作曲のスパニッシュかラテンと思いきやイントロからはラテンの雰囲気は微塵も無し。でも途中のソロからスパニッシュになり、おそらく Chick の演奏に合わせてスパニッシュにあるリズムの手拍子?っぽいヤツを Herbie が合いの手を入れて雰囲気が盛り上がります。
 なにしろ、名手の二人であり息もぴったり、アイデア満載のファンサービスたっぷり。ありがたいけど退屈なアルバムではありません🎶🎹 

piano (steinway) : Chick Corea, Herbie Hancock

producer : Chick Corea, David Rubinson
recorded live at Masonic Auditorium, San Francisco; Dorothy Chandler Pavilion, Los Angeles; & Hill Auditorium, Ann Arbor; February, 1978.

1. Homecoming / Chick Corea
2. Ostinato (From Mikrokosmos For Two Pianos, Four Hands) / Bela. Bartok
3. The Hook / Chick Corea, Herbie Hancock
4. Bouquet / Chick Corea
5. Maiden Voyage / Herbie Hancock
6. La Fiesta / Chick Corea