2023年12月16日土曜日

Frankie Goes To Hollywood / Welcom To The Pleasuredome


 このアルバムを聴いた時にはとんでもない才能が現れたと思ってましたし、これだけの音楽性がありながら、まさかの一発屋になってしまうとは思いませんでした。この手のシンセサウンドのロックは当時ニューウェイブって呼ばれてて、私は全く聴いてなかったんですけどこのアルバムは大爆発のヒットだったのでさすがにかなり耳にしていましたので、中古CD屋で見つけたときにあまりの懐かしさに思わず購入してしまいました。
 アート・オブ・ノイズやバグルズ、イエスといったプログレ・バンドをプロデュースしたTrevor Horn(トレバー・ホーン)が、ダンス音楽の世代に向けてプログラミングを取り入れて作った作品です。コンピューターの発達した現代では楽器のできないミュージシャンも多数存在しますが、このアルバム発売当時の1984年はアップルがMacintoshを発表NECはPC9801でMS-DOS、5インチのフロッピーでグラフィックがやっと8色になった時代でした。当然ディスプレイはブラウン管でした。


 音楽界ではサンプラーが発達しはじめた頃で1983年にはイエスが、フェアライトCMIというサンプラーでオーケストラ・ヒットを使用した楽曲「ロンリー・ハート」を発表、1981年にはイエロー・マジック・オーケストラがサンプラーLMD-649を使用したアルバム「テクノデリック」を発売しています。ここらへん調べていると楽しい。


 そんな時代に、テクノロジーの進歩によってサンプリング、打ち込みでここまでの見事な「擬似プログレ」を作れたわけです。その技術的、芸術的に高度なアルバムで、歌詞にSM行為が描写されたり排尿音などが入っているが問題ともなり多くの国で放送禁止となりました。Two Tribes は米ソ冷戦と核戦争の危機について歌われていたりします。このアルバムでは扱われているところがパンク的。ニューウェイブですがプログレ的要素、思想的にはパンクなどが入り混じり革新的でありながら退廃的。、ゲイであることをカミングアウトしたり、話題性が先行したショー的な要素が強かったような気もします。ちなみにスティーブハウなんかも参加してたりします。リラックスのドラムはジョン・ボーナムのサンプリング。


lead vocals : Holly Johnson
backing vocals : Paul Rutherford
guitar : Brian Nash
bass guitar : Mark O'Toole
drums : Peter Gill

additional personnel
keyboards, programming, software : J. J. Jeczalik
keyboards : Andy Richards
percussion : Luís Jardim
keyboards, string arrangement on "The Power of Love" : Anne Dudley 
guitar : Stephen Lipson
acoustic guitar (on "Welcome to the Pleasuredome") : Steve Howe
backing vocals, bass guitar : Trevor Horn

producer : Trevor Horn

1. The World Is My Oyster (Including Well, Snatch Of Fury)
2. Welcome To The Pleasuredome
3. Relax
4. War
5. Two Tribes
6. Including The Last Voice
7. Born To Run
8. Happy Hi
9. Wish(The Lads Were Here)
10. Including The Ballad Of 32
11. Krisco Kisses
12. Black Night White Light
13. The Only Star In Heaven
14. The Power Of Love
15. Bang





  

2023年12月15日金曜日

Herbie Hancock / Inventions & Dimensions

 

 リーダーアルバムは、Takin' Off(1962年)、My Point of View(1963年)Miles Davisに次ぐ1963年の3作目。この年にハンコックは Eric Dolphy と共演し、Miles Davis のグループにも抜擢され 1968年まで在籍する訳ですから、この年からジャズ界のメインストリームを歩き始めた年になります。
 聴かず嫌いだったハンコックを聴き始めたら初期作品の面白さにハマってきたのですが、この時期のハンコックはやはり脂の乗りが良い。後期の演奏やマイルスバンドへの参加でもわかるように守備範囲は広く、ハンコックの好奇心や創造力の広げ方は他の追随を許さないですね。ジャズが革新的な発展を遂げている時期を感じられます。
 メンバーはピアノ、ベース、ドラム、ラテンパーカッションという、管楽器がいなくて、打楽器がふたりという特殊な編成でリズムを大切にするための布陣ですが、演奏自体はマイルスのバンドに繋がるジャズの方向性が感じられて地味に良いアルバムです。


 それでは、レビューです。Succotash は最初からガツンとやってくれます。3拍子のポリリズムに無機的なリフです。現代音音楽を聴いているようでもありアフリカンな音楽を聴いているようでもあり、これは作曲、編曲とも考えぬいて作っているのか?内省的な表現なのか?ピアノ、ベース、ドラムが規則的にバラバラに進行してつじつまが合って、またほどけていく。ガーンときました。Triangle こちらはストレートなジャズですが、ピアノの音使いはモード的で、異次元の世界的な展開で後半のパーカッションがとても好印象。Jack Rabbit は、ラテンのスリリングさを持った後のクラブ・ジャズ、アシッド・ジャズにも通ずる曲です。カバーしているアーティストも多いらしい。Mimosa は、とてもエレガントな曲で、コンガとピアノのマッチングが面白い。Jump Ahead は、ストレートなバップになりますが、非常にスタイリッシュな印象を受けます。そして Mimosa (alternate take) はボーナス・トラックです。
 本アルバムは譜面なしでの録音であったとのことでハービーの頭に浮かんだ主題がそれぞれのメンバーの感性によって色付けされているようで実にユニーク。1963年の録音では先進的過ぎて理解されずらかったかもしれない音のクオリティで、今の時代のアシッド・ジャズ的な香りがプンプンしますが、ハービーは寄り道しただけで、この方向では走り続けなかったようです🎵

piano, all Compositions : Herbie Hancock
bass : Paul Chambers
congas, bongos : Osvaldo 'Chihuahua' Martinez
drums, timbales : Willie Bobo

producer : Alfred Lion

recorded at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey on August 30, 1963

1. Succotash
2. Triangle
3. Jack Rabbit
4. Mimosa
5. A Jump Ahead
6. Mimosa (alternate take)




▶ Mimosa


  

2023年12月10日日曜日

Stan Getz / Stan Getz Plays

 

 私、音楽は無節操に聴くタイプのジャズ好きです。聴かず嫌いは後で聴いた時になんでもっと早く聴きこんでおかなかったのかと思うことがしばしばあるものの、何となくフィーリングが合わない人もいます。Stan Getz はアクが強くない上品でクールなサウンドでテナーサックスの高音域を多用したプレイスタイルです。
 そんなクールな印象ですが、人生はこの頃によくある酒とドラッグによる激しい状況のようです。1942年代の15歳の頃には演奏活動に入り16歳で酒浸りになりヘロインもやるようになる。1954年にはモルヒネ欲しさに、シアトルの薬局で武装強盗未遂事件を起こし逮捕となる言う写真や演奏からは想像もつかないアグレッシブなジャンキーぶりで、この録音が終わるころにはギターの Jimmy Raney は Getz の麻薬中毒に嫌気がさしてバンドを脱退したとのことです。このアルバムは、そんな状態の悪い時期の 1952年と1954年の3回の録音を一つのアルバムにまとめたものですが実にソフトで自然でアドリブとスイング感はとても良いバランスです。(良いことは認めまうが、今のところ私にはそれほど響いてはいません。何年後かに聴くと良さがわかるパターンのような気がします)


 このアルバムは、オリジナルは、Clef Records から発売の2枚の10inchLP MGC 137 and MGC 143 の2枚が収録されたもので、それに1988年の再販で Verve Records から発売の MGV 8200、MGN 1034 が加わってできたアルバムのようです。と言うことはオムニバスの形式とは思いますが、単体でも有名なようです。
 それではレビューです。Stella By Starlight は、素晴らしいメロディーですが流れるような感じで演奏は良いけど印象には残りづらいような気がします。教科書っぽいかな。Time On My Hands も、嫌みの無い演奏です。これも上手いんだけど主張は少ないですね。サックス奏者には良いのかな。’Tis Autumn は、まさに秋の様相です。Jimmy Raney ギターも軽くて素晴らしい。これは良いですね。前の2曲に比べると高音の使い方が良いんでしょう。The Way You Look Tonight では、アップテンポになります。少し熱めスイングなのでここら辺は好きな感じ。Lover Come Back To Me もアップテンポの2連続です。3分程度の小曲ですがこれもフレーズの洪水のような演奏が〇。Body & Soul は、何か完成されたものを感じます。早くなくても良いじゃないですか。Stars Fell On Alabama もバラードで高音使いが上手いです。細かなフレーズを詰め込んでくるのは32分音符攻めと言われているようでこの時代の特徴のようです。You Turned The Tables On Me これも甘いですねバラードです。延々と短い曲が続きますが短いのであっというまに流れていきます。Thanks For The Memory も落ち着いた曲です。なんとなくわかってきました。ここら辺が好きな人はこの嫌みの無い聞き流せるパターンがたまらない人達ですね。Hymn Of The Orient ここでアップテンポに戻ります。昔のダンスホールでかかっていたと思われる楽し気な曲でギターソロ短め、ピアノソロ短めは3分以内の制約ではしょうがない。These Foolish Things で、またバラードです。家でレコードを楽しんでいた時代には、このぐらいのライトな感じが丁度良いのかもしれません。How Deep Is The Ocean アップテンポではありますが少し哀愁漂います。Nobody Else But Me も短いが良い曲ではあります。Down By The Sycamore Tree これも良い曲なんですけど、短い曲の連発は疲れますね。I Hadn't Anyone Till You と
With The Wind And The Rain In Your Hair は、さすがにおまけっぽい感じで練習曲のような気もしてきました。
 非常に評価が高いアルバムなのでファンとしては16曲も聴けるのは嬉しいのでしょう。しかしファン出なかったら前半は楽しかったのですが、結構聴ききるにはキツい感じでした。曲順などの構成も含め プロデューサーの Norman Granz も惰性で作ったのかなあと思ってしまいますが・・・🎵

tenor sax : Stan Getz
bass : Bill Crow (1 to 12), Bob Whitlock (13 to 16)
drums : Frank Isola (1 to 12), Max Roach (13 to 16)
guitar : Jimmy Raney (1 to 12)
piano : Duke Jordan (1 to 12), Jimmy Rowles (13 to 16)

producer : Norman Granz
 
Selections 1-8 recorded  in New York City, December 12, 1952
Selections 9-12 recorded in New York City, December 29, 1952
Selections 13-16 recorded in Los Angeles, CA., January 14, 1954 

1. Stella By Starlight
2. Time On My Hands
3. 'Tis Autumn
4. The Way You Look Tonight
5. Lover Come Back To Me
6. Body And Soul
7. Stars Fell On Alabama
8. You Turned The Tables On Me
9. Thanks For The Memory
10. Hymn Of The Orient
11. These Foolish Things (Remind Me Of You)
12. How Deep Is The Ocean
13. Nobody Else But Me
14. Down By The Sycamore Tree
15. I Hadn't Anyone Till You
16. With The Wind And The Rain In Your Hair





  

2023年12月9日土曜日

Bryan Adams / On A Day Like Today


 1998年に発表された通算の8枚目アルバムです。当時ブライアンが活動の基盤を置いていたのはカナダではなくイギリスとなっていた時で、このアルバムもイギリスでは11位となったものの、アメリカでは103位と売り上げは低迷でした。しかし飛ばしすぎない落ち着いた印象で、普段着のロックが気持ち良い作品となっています。


 ブライアンが音楽的な思考を改造したら今までの「売れる音楽」ではなくなってしまったという感じがします。人間誰しも変化していくものでありますから、それでしょうがないじゃないかと思いながら聴いています。ブライアン自体、これからあまりヒットには恵まれず、2015年からは、2年に一回ぐらいのマイペースなアルバム制作の間隔になっているようです。
 なにはともあれ、ヒット・メーカーとしての役割はもう卒業で、その時に感じる感性で音楽活動を続けるという姿勢に変更したとも思える音作りのアルバムでもあります。

 Bryan Adams の近況を見てみようと思って調べていたらオフィシャルHPは非常にシンプルなつくりで音楽性と一致した感じでした。でも少し見にくいかな 

Universal Music Japan のページはさすがに見やすい


guitar, bass, piano, vocals:Bryan Adams
keyboards : Phil Western, Robbie Buchanan
organ piano : Dave Pickell, Vince Jones
guitar , bass : Keith Scott
bass:Dave Taylor
drums:Mickey Curry
percussion : Danny Cummings

producer : Bob Rock (1 to 3, 5 to 9, 11, 12, 14), Bryan Adams

recorded at the Warehouse Studio Vancouver, Canada and by the Warehouse Studio Mobile Unit Ocho Rios, Jamaica June - August 1998

1. How Do Ya Feel Tonight
2. C'mon C'mon C'mon
3. Getaway
4. On A Day Like Today
5. Fearless
6. I'm A Liar
7. Cloud Number Nine
8. When You're Gone
9. Inside Out
10. If I Had You
11. Before The Night Is Over
12. I Don't Wanna Live Forever
13. Where Angels Fear To Tread
14. Lie To Me





  

2023年12月8日金曜日

Booker Ervin / The Song Book

 

 The Song Book は、ジャズのスタンダード集のこと。1964年録音の、ワン・ホーン・カルテットによるスタンダード集。タフ・テナーと呼ばれ「お下品」と評されることもある独特な力強いサックスと Flanagan の優美なピアノが Ervin に惑わされることも無く絶妙なコントラストでジャズらしいダイナミックさ、Richard Davisのベースはズンズンと気持ちよくリズム隊の出来は見事。また、Alan Dawsonのドラミングに関する評価の高さがあちらこちらに散見されるのでそれにも着目して聴いてみたい。Booker Ervin の作品は、私は That's It! しか持っていませんので楽しみなところです。


 それでは全編スタンダードで固めた6曲構成をレビューです。The Lamp Is Low は、強いビートでぐんぐん迫るベースに、小気味よい Flanagan のピアノも長めのソロに大満足、最高にスウィングする Dawson の太鼓は確かに素晴らしい。息をもつかさないスピード感あふれる曲展開です。ドラムの録音状態はかなり良いので細かな表情がよくわかるうえにドラム・ソロが素晴らし過ぎました。最後はフェイドアウトなのかフェイドアウト風なのか?これも面白い。Come Sunday は、アダルトなエリントンの楽曲。しっとりとした演奏で1曲目との対比がグッときます。All The Things You Are 有名なところが出てきました。誰もが耳になじんでいる曲こそ、どのような展開なのか注目ですが、しっかりとこのアルバムの親方の Ervin が奇をてらうことなく実に楽しい進行でバンドを引っ張っていきます。曲中にダレてしまいそうなところで、音使いを変えたりしてスイングするところもお洒落な感じです。ドラミングも超スタンダードに少しづつ変化を与えてくれているかと思ったらフェイド・アウトです。どうやら先ほども風」では無かったようです。Just Friends も、スタンダードなだけに息のぴったりあったスムースな演奏が聴いていて気持ち良い。Yesterdays も言わずもがなの名曲。最近この曲を聴くことが多いような気がしますが、この演奏は結構心に残る感じがします。テナー独特のエロっぽさがありますが、それほど大袈裟なわけでもなくサラッと吹いています。ブットいサックスの後の Flanagan のピアノ・ソロの美しさが際立ちます。どこまでも聴いていたいですが曲には終わりがあるものしょうがない。Our Love Is Here To Stay で最後になりますが、サラッと終わる感じですね。ライブ・ハウスで聴いていて最後に締めくくる感じです。
 ドラムの素晴らしさはわかりましたが皆さん褒め過ぎじゃないのか?トータルで聴きごたえが評価したい。最初にガツンと持ってきて、落として、中盤はお馴染み曲でリラックスして聴いてもらい。最後はハッピーなスイングで仕上げといった構成で非常によくできたアルバムでした🎵

tenor sax : Booker Ervin
piano : Tommy Flanagan
bass : Richard Davis
drums : Alan Dawson

producer, design, photography : Don Schlitten

recorded on February 27, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

1. The Lamp Is Low
2. Come Sunday
3. All The Things You Are
4. Just Friends
5. Yesterdays
6. Our Love Is Here To Stay





  

2023年12月3日日曜日

Kurt Rosenwinkel / Deep Song


 Kurt Rosenwinkel の私の入門は intuit だったんで正統派バップ系ジャズ・ギタリストだと思っていました。しかし実はこのアルバムやScott Kinsey との実験作品みたいなものもあります。Do It 1992 では抽象的な不思議系のフレーズのギタリストでした。
 過去の私ではあまり好んで聞かないタイプのギター・ジャズでしたが今の私では余裕でこのサウンドが楽しめます。知らない音楽を聴くのは楽しいことですが聴くにいたるまでに時間はかかります。聴かないことには良さはわからないのでジャズ誌とかで絶賛されていて気になるものは購入することが多いのは私の良いクセだと思っております。
 最近はフリージャズでもノイズでも受け入れられるように耐性がついてきたので、久しぶりにこのアルバムを聴いても、この程度の抽象的なタイプの音楽では以前の私が感じていたほどの違和感はありません。他にも今まで聞いてこなかったメセニーとかのギター音楽も最近は興味を持って聴けるようになってきたり全く聴いている自分の感性が変わってきていることに改めて自分でも驚きます。


 と思って曲の印象はと言えば、1、2曲目のThe Cloister、Brooklyn Sometimesは不思議系、3、4曲目のThe Cross、If I Should Lose Youは不思議な感じはするものの意外と正統派のジャズ。5曲目の Synthetics 7曲目 Cake はサックスが前面に出たブレッカー風のテーマのアップテンポな楽曲、6曲目の Use Of Light や8曲目の Deep Song などはバラード風で聞かせてくれます。パーツとしては各楽器はジャズしてて、全体的には組み合わせると異次元からやって来たかのようなサウンドに変わるという構造が楽しめる内容。不思議世界ではあるものの、いかにもジャズギターらしい濃密な音色で幅広いスケールの使い方をしています。
 ユニークなフレーズのクセ者ギタリストであることは間違いなく、このアルバムのクォリティーは高いかもしれなく世の中ではこれを傑作というのかもしれません。何回か聴いて耳になれてくるとじっくりと味が出てきます。
 ライナーノーツによるとこの不思議さはアメリカ人であるが、ノルウェー人の血が流れていることに関係があるのでは?とか、小学校の頃にAC/DC、ラッシュにあこがれてギターを始めたとか、やはり最初の入り口はこんな人でもハードロック!だった。

guitar : Kurt Rosenwinkel
bass : Larry Grenadier
drums : Ali Jackson 
piano : Brad Mehldau
tenor Sax : Joshua Redman

producer : Kurt Rosenwinkel

1. The Cloister
2. Brooklyn Sometimes
3. The Cross
4. If I Should Lose You
5. Synthetics
6. Use Of Light
7. Cake
8. Deep Song
9. Gesture [Lester]
10. The Next Step




  

2023年12月2日土曜日

Bootsy Collins / What's Bootsy Doin'?


 マイケルとかにもよくある80年代末の機械的な打ち込み系のシャカシャカ、ペラペラな音のクセに肉感的な粘っこいグルーヴ。やはりこの人奇才ではあるのが見えてしまうアルバムです。どう考えてもテクノ系の音楽も聴きながらリズムマシン使いながら遊んでいたら出来てしまった音が良かったんで、さらにおちゃらけて見たというような余裕が感じられます。実際、彼はP-FUNKで、総帥 George Clinton の軍団メンバーとして働き、坂本隆一、Talking Heads の Jerry Harrison と活動をしていた時期もあり、おちゃらける素養は十分にあったようです。
 メンバーはバッキング・ボーカルでは、総帥である George Clinton、ラップでは Moma Collins (ブーツィーのお母さん?)、ホーン部隊には Maceo Parker も参加の楽しそうな内容です。Bootzilla、Bootzilla、Boot-Tron などの名前は恐らく Bootsy 本人。


 作品はエレクトリックでスペイシー、エフェクティブな打ち込みとサンプリング。好んで聴くサウンドでは無いのですが、Bootsy であると私にとっても別格に聞こえてきます。
 それでは、レビューです。 Party On Plastic (What's Bootsy Doin'?) は、イントロの力強いラップの掛け合いが迫力ありリズムがあって素晴らしく、様々な曲が絡み合い、これもあれも聴いたことがあるといった内容が素晴らしい。デジタルにつなげながら違う曲にしてしまうDJ的な手法もありのデジタルばかりと思ったらスラップ・ベースもカッコ良い。 Subliminal Seduction (Funk Me Dirty) 思いっきりデジタルなテクノ・ポップになるが当時としては新しいんでしょう。ボーカルの姉さんも迫力。スキではない曲調なんですがBootsy なら採点は甘くなります。Leakin' 思いっきりサンプリングとプログラミングで、エレクトロ・ポップの嫌いなところ満載の典型ですね。これも作り手が良いのでセンス良しで許します。Shock-It-To-Me ヤクにやられて絶叫しているようなオジサンの声から入りセクシーなお姉さんの歌声とラップのドッキングにヘビーメタルなギターがソロだけ入ります。繰り返されるサビは、またどっかの曲のパクリですが合ってます。1st One 2 The Egg Wins (The Human Race) 軍隊のラッパ風のキーボードに軽快なラップ。卵巣に最初に到達したヤツの勝ちって意味らしい。Love Song は、ストリングのキレイな感じからは始まるデジタル・ポップ。思いっきりセクシー風に歌いあげる男性ボーカルに何かコミカルな要素も感じる曲の作りとしては本格的な曲。(Iwannabee) Kissin' U ラブソング的なところが続きます。プリンスの曲でこんなのあったような気がします。-ing The 'Luv Gun' 曲名だけ見て Kiss の要素が無いかどうか聞いていたけど、さすがにそれは無かった。Yo-Moma-Loves Ya は、ソフトロック路線でコード進行とメロディー的には Police の Every Breath You Take ですね。曲名からすると人間愛の曲なのでしょう。赤ちゃんの泣き声も聞こえます。Save What's Mine For Me は、夜の星空を原っぱで眺めるイメージのイントロから始まるミドルテンポのポップス。最後はまじめなラブ・ソングで締めくくるようです。
 派手でデジタルなだけの印象があったアルバムですが久しぶりに聴き直すと、もしかしたら深みのあるアルバムかも知れないと思い始めています。遊びが好きな人種なのでおちゃらけの中に何か大事なもの少しだけ入れているのかもしれませんね🎵

bass : Bootsy, Bootzilla, Casper (7), The Player (3)
lead vocals : Bootsy, Gary Mudbone Cooper
vocals (computer talk) : Boot-Tron
rap : Mico Wave, Moma Collins, Pretty Fatt
backing Vocals : Anita Walker, Bernard Fowler, Bernie Worrell, Carolyn Stanford, Cynthia Girty, Eddie Martinez, George Clinton, Mallia Franklin, Nicky Skopelitis, Robert "P-Nut" Johnson, Taka Boom, Tony Feldman, Vicky Vee
keyboards , programmed by : Bootsy, Mico Wave, Trey 'Goldfish' Stone, Wes Boatman
sampler : Bootsy
guitar : Bootsy, Catfish, Ron 'Attitude' Jennings, Stevie 'No Wonder' Salas
drum programming : Bootsy, Mico Wave
drums : Bootsy, Bootzilla
horns (Still 'Horny Horns') : Fred Wesley, Maceo Parker, Kush Griffin, Rick Gardner

producer : Bootsy Collins

1. Party On Plastic (What's Bootsy Doin'?)
2. Subliminal Seduction (Funk Me Dirty)
3. Leakin'
4. Shock-It-To-Me
5. 1st One 2 The Egg Wins (The Human Race)
6. Love Song
7. (Iwannabee) Kissin' U
8. -ing The 'Luv Gun'
9. Yo-Moma-Loves Ya
10. Save What's Mine For Me



  

2023年12月1日金曜日

Michael Brecker / Tales From The Hudson

 

 1996年、4作目のストレートなアコースティック・ジャズで、ウインド・シンセも使わず生テナーでの取り組みです。但し3曲目でギター・シンセを Pat Metheny が使っています。全体的には、ハードバップ全盛期のジャズが熱かった50年代から60年代のストレートな作風でハードバップの進化系として Michael の魂のこもったブロウに満足の一枚です。ただ違うのは96年録音のクリアで現代的な録音の音質で聴きやすく入りやすい。
 イメージ的には無機質な感情を押し殺したサックスのイメージが彼にはあるがこのアルバムに関してはさにあらず。熱い演奏が楽しめます。


 かなり売れたアルバムで、アメリカの ビルボード では、ジャズ・アルバム・チャートで 2位、第39回グラミー賞では、最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞を受賞し、収録曲 Cabin Fever は最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・ソロ賞を受賞です。
 そんなアルバムをレビューです。Slings And Arrows アップテンポで全開の迫力。Jack DeJohnette のドラムの音のリアル感が凄いですね。Midnight Voyage ピアノの Joey Calderazzo作の哀愁路線の渋いミディアムの4ビート。Michael Brecker のサックスも無機質どころか有機的に他のメンバーと絡み合い渋みのある演奏。Song For Bilbao は、Pat Metheny 作のラテンノリで McCoy Tyner の重厚なピアノと良くマッチしています。ギター・シンセが入っているのと楽曲の作りこみにより、この曲はフュージョンテイスト。Beau Rivage は、Michael Brecker の作ではありますが、曲調は Pat Metheny っぽい大地を感じる大きなものを感じます。African Skies は曲名のとおりアフリカを感じるリズムと力強いテーマが魅力。Introduction To Naked Soul スローで短い1分13秒の不思議な音の世界の次の曲の序章。Naked Soul は、で厳かに静かにジャズの世界に突入しますが浮遊感のある曲と主張の強い Michael Brecker のテナーの音色でグッと引きしまります。Willie T. では、渋めのミディアムな4ビートとなり、不思議の世界から現実に戻ってくる感じで安定感のある演奏が心地よい。Cabin Fever は最後に最も熱い演奏を持ってきたようで心憎い。一番良かったかなあ。
 ハドソン川の物語のネーミングは、レコーディング・スタジオの Power Station がハドソン川の近くに立っていたのでしょうか? とにかくコンテンポラリー・ジャズの巨匠「Michael Brecker」が真剣にジャズ・フォーマットを追求したアルバムとして、これは聴きごたえのある名作でしょう🎵
 
tenor sax : Michael Brecker
piano : Joey Calderazzo (1, 2, 4, 6 to 9), McCoy Tyner ( 3, 5)
guitar : Pat Metheny
guitar synthesizer : Pat Metheny (3)
bass : Dave Holland
drums : Jack DeJohnette
percussion : Don Alias (3, 5)

producer : George Whitty, Michael Brecker

recorded and mixed at the Power Station, NYC.

1. Slings And Arrows
2. Midnight Voyage
3. Song For Bilbao
4. Beau Rivage
5. African Skies
6. Introduction To Naked Soul
7. Naked Soul
8. Willie T.
9. Cabin Fever