2024年11月30日土曜日

Miles Davis / Double Image


 1969年のライブなのに何故かジャケットにはデカデカとMONOの印刷、音質は最悪と思っていましたが、ずっと聴いていると気にならなくなります。1969年 10月27日イタリアのミラノ公演の録音と記載があります。MONOの理由は、発売は1998年で2枚組ブート盤からの格上げの一枚とのことですね。もう一枚のほうは Gemini です。Gemini と同様、プロデューサーの名前がクレジットされておらず、Original Recording by Joker Tonverlag Ag とあるので、この人がライブ会場で録音したものと思われます。また、Gemini でもライブ録音は1969年11月3日パリとではなく、1969年10月27日のローマコンサートであるのが真実のようであると書きましたが、このアルバムでも記載はイタリアのミラノとなっていますので、いやはや何がホントなのかよくわかりません。何しろ元はブート・レグなのでしょうがない。ただ1969年のヨーロッパ・ツアーのどこかであるかは間違いない感じです。
 またアルバムのジャケットの写真は Gemini と同じものが使われていて、警官に取り押さえられる若者が写っています。1969年のライブであることからすると1968年のチェコスロバキアの変革運動「プラハの春」とかをオマージュするものなのか、と発売元の NIPPON CROWN Co. Ltd のディレクターの意図も気になります。


 さて中身ですが Gemini と同様に1曲表示のノンストップです。サイド・メンのみのフリーで始まって、'Round About Midnight ~ Masqualero と書いてあるのですが、フリー部分から 'Round About Midnight に到達するまで9分以上かかり、明確なテーマの演奏ではなく派生したテーマのイメージ、そこからフリーのようなインプロ合戦になり、Masqualero も似たような形での演奏となります。私もフリージャズにも最近耐性が出来てはきたので演奏を聴くこと自体にストレスはありませんが、36分21秒を緊張して聴きとおせるほどの集中力はありませんので、何回か聴いた後で、世の中に出ている情報を頼りに変わり目を確認して、ああそうかと曲を認識できる聴き方しかできません。あと、ベッドで横になりながら流していると最後まで到達する前に寝てしまい、最後まで到達できません。
 フリージャズとは、音階を楽しむよりは、音の持つ熱量を感じるものと私は思っているので、私的にはこんな聴き方で十分かと思います。
 ネットで見ていると、曲ごとに分けて発売すれば良かったのにみたいな意見を見ましたが、そもそも曲が分かれている訳でなくインプロの途中の指標的なもの、もしくは裏テーマみたいなものかと思うので曲ごとに分けてって発想はナンセンスかと思います。またライナーノーツで 成田 正 なる方が「単に曲間が無い連続演奏でなく、しっかりと構成されながらも、きわめて柔軟な展開になっているのだから、そのスリルも完成度も抜群だ」と解説されている部分があります。その場は見ていませんが、マイルスは相変わらずメンバーにゼスチャーで指示はしているんでしょうが、私には再現性のある音楽になるようにマイルスが指示をしていると勘違いしているような書きっぷりに、全く理解できないと読みながら思いました。まあ音楽は、聴き手の感性と理解力、その時によって聴こえ方もかわるものでありますから、それも一つのご意見として・・・・理解しようとは思えないですね。
 演奏以外にも色々な角度から楽しめるものであることは間違いない🎶🎺

trimpet : Miles Davis
tenor sax , soprano sax : Wayne Shorter
keyboad : Chick Corea
bass : Dave Holland
drums : Jack DeJohnette

recorded live in Milan, October 27, 1969.

1. Double Image
Free Improvisation ~ 'Round About Midnight ~ Masqualero



  

2024年11月29日金曜日

秋吉敏子 / DIG

 

 
 いつもの「おでんバー」に行くと、NHKのラジオ番組がジャズ・トゥナイトがかかっていることがあります。番組の案内役は、音楽家の大友良英氏でホントにほれ込んでいるアーチストの音楽をかけている時は、明らかに言葉の勢いと量が違ってまた熱量が半端なく面白く聞かせていただいております。
 その「おでんバー」である日かけていたジャズ・トゥナイト。2021年4月24日放送分では日本人のジャズ・ピアニスト秋吉敏子の特集でした。秋吉敏子は名前は聞いたことがありましたが、大友良英氏の推薦版だけあって中々の濃い内容でありました。1929年の満州生まれのピアニストで、小学校からピアノを習い始め1950年代から活躍されていたピアニストとかの解説はマスターから聞き、かかっていた曲は非常にモダンで繊細なタッチのピアノでスイング感がありながらも随所にクラシックっぽい素養がある知的な演奏であることがインプットされて、後半は日本の民謡とのコラボ作品では日曜の「題名のない音楽会」でよくこういうのあるよねとか言いながら聴いておりました。
 そして、いつも「おでんバー」に行く前に、ジャズの品揃えはほぼ壊滅状態の中古ショップで秋吉敏子を発見してしまいました。先週初めて聞いたところでこれは「縁」であると買わせていただいたのが本アルバム。


 パッケージを開けて聴き始めると、録音は1993年なので晩年の作品にも関わらず流れるような手さばきのピアノで、バンドアンサンブルは正統派を聴いてとれるトランペット、テナーの2本のフロントラインに3リズムの典型的な編成コンボによるビ・バップです。かっこ良いのは素晴らしいのですが、1993年での録音ということは、1923年生まれの彼女が、お幾つであるのかを考えると「時が止まっているんじゃないか」などと、マスターと談笑しながら楽しく聞かせていただきました。しかし2018年のライブを収録したアルバムで、2019年時点で90歳でなお現役活動を続けられていることを知り更に驚きです。このアルバムの1993年なんて驚くに値するものでもなかった訳です。
 タイトル曲のマイルスの DIG は、こなれたピアノソロ以降はトランペットとテナー、ドラムのフォーバースです。スリリングですがどこに飛んで行ってしまうかのようなことはなく安定感抜群。その他、JJジョンソンのバラード Lament 。Lazy Day、Haliquin、Uptown Stroll は秋吉敏子のオリジナルです。インターネット・ラジオで知ってからのご縁ですがこうやって知って感じることができるのも、また楽しいものです。
 Wiki では本名の表記は「龝吉 敏子」と難しい漢字のほうでした。それとライナーノーツには、あえて御年は記載されていなかったですね。娘さんもミュージシャンの「Monday満ちる」も忘れてはいかんです🎶🎹



piano : Toshiko Akiyoshi
bass : Peter Washington
drums : Kenny Washington
tenor sax : Walt Weiskopf
trumpet : Conte Candoli

producer : Tetsuya Iwasaki
recorded at Sound On Sound Recording Inc. on March 22nd, 23rd & 24th 1993.

1. Dig (M.Davis)
2. Lament (J.J.Johnson)
3. Lazy Day (T.Akiyoshi)
4. Haliquin Tears (T.Akiyoshi)
5. Uptown Stroll (T.Akiyoshi)
6. Morning Of The Carnival (L.Bonfa)
7. La Mucura (Cuban Traditional)


2024年11月24日日曜日

Blind Boy Fuller / East Coast Piedmont Style

 

 1991年に Columbia から発売されたアルバムで、1935年にBlind Boy Fuller が Reverend Gary Davis とニューヨークに録音旅行に行った時に4日間で12曲録音したもののうち11曲と、その後4年間で録音したセッション9曲で構成されたアルバムです。
 なので、Blind Gary Davis 名義でありますが、Reverend Gary Davis との共演アルバムでもあり勉強用の音源でもあります。Blind Boy Fuller は、内田十紀夫のブルース教則本で知ったブルースマンで、曲はさんざん聴いてギターでも弾いていましたが、原曲を聴いたのはに出会ったのは、このアルバムが実は初めてです。
 戦前ブルースの多くは、独特の小節構成のため、ストレートに理解しにくい曲が多いので Reverend Gary Davis なんかも、ずっと聴いていると正直かなり飽きがきます。しかしReverend Gary Davis からギターの手ほどきを受けたとのことでなるほどその影響を感じますが、師匠よりもはるかに聴きやすいです。
 人物紹介が前後しますが、ブラインド・ボーイ・フラーは本名はフルトン・アレンで、1907年の生まれ。1925年に14歳の女性と知り合い結婚し、その後に目が悪くなりだして
1929年に視力が失われ失業して生活のために歌い始めたとのこと。
 ギターの音は安っぽくはないけど、普通のアコースティックと音が違います。昔のブルースアルバムによくある、安っぽい鉄弦の使用のせいか?と思っていたら、ジャケット写真にもあるナショナルのスチール・ボディのギターを使用しているとのことでした。
 アルバム・タイトルの「East Coast Piedmont Style」で Piedmont とは、アメリカの南東部バージニア州からノースカロライナ州、ジョージア州にまたがる地域を指しています。
産業は農業が主体で赤土の土壌で割と貧乏な土地柄とのことですが、お国柄(地域柄)のせいか、明るい曲調ではなんか幸せそうな感じがするのが、 East Coast Piedmont Style のようです。デルタ・ブルースと比較して軽く明るいノリの曲が多いようですね。
 気になったのは Rag, Mama, Rag で、The Band に同名の曲が2曲目にあるのですがRobbie Robertson のオリジナルとされていたので、ホントか?と思いながら両方を聴き直してみました。ほぼ同じ名前の違う曲であるもので間違いないようです。あとは10曲目の Sweet Honey Hole は子供の教育に悪いオジサン向けですね。昔のブルースにはよくあるパターンですが、かなり直接的です。あと Big Leg Woman Gets My Pay の My hook's in the water and my cork's on top がよくわかりません。おそらく下品なヤツかとはおみますが、脈絡としては〇春宿でボッタクられた的な感じなのかとは思いますが気になります。
 勉強用のアルバムでもあり20曲は収録曲は、聞き飽きるタイプのCDですので、全曲レビューはやめときます🎶🎸

vocals, guitar : Blind Boy Fuller

1. Rag, Mama, Rag
guitar : Blind Gary Davis
washboard : Bull City Red
2. Baby You Gotta Change Your Mind
guitar: Blind Gary Davis
washboard : Bull City Red
3. My Brown Skin Sugar Plum
4. I'm A Rattlesnakin' Daddy
guitar : unknown
5. I'm Climbin' On Top Of The Hill
guitar : Unknown Artist
6. Baby, I Don't Have To Worry ('Cause That Stuff Is Here)
7. Looking For My Woman
8. Ain't It A Cryin' Shame?
9. Walking My Troubles Away
10. Sweet Honey Hole
washboard : Bull City Red
11. Somebody's Been Playing With That Thing
12. Log Cabin Blues
13. Keep Away From My Woman
14. Cat Man Blues
15. Untrue Blues
washboard : Bull City Red
16. Black And Tan
17. Big Leg Woman Gets My Pay
washboard : Oh Red
18. You've Got Something There
washboard : Oh Red
19. I'm A Stranger Here
harmonica : Sonny Terry
20. Evil Hearted Woman





  

2024年11月23日土曜日

Erroll Garner / Plays Misty

 

 今や世界中の人に愛されるスタンダード Misty の初演が収録されているアルバムです。この曲は Erroll Garner(エロル・ガーナー)によって1954年に作曲されました。飛行機で移動中に唐突に魅力的なメロディが浮かんで、楽譜が書けなかったために、忘れないように反復してホテルにタクシーで急行し、テープ・レコーダーに録音した曲と言われています。曲名は本人ではなく友人から「霧のようにぼんやりとしている」と名付けられたそうで、確かに強力なメロディーでは無いのですが、なんとなく頭に残るのがこの曲の良いところかもしれないです。
 このアルバムの初演では最初の8小節はオクターブでテーマが弾かれ、左手は4拍刻みのコード伴奏。続く8小節では合間にごく簡単なフェイクが挿入され、サビの前でやっとアルペジオが挿入される。サビの後半も基本的にはテーマの演奏でストップ・タイムを使用しながらエンディングとなりアドリブの部分はありません。名演というよりはエロル・ガーナーの記憶に留めるための小作品のような録音ですが、アルバムタイトルであり1曲目に冠されています。
 藤本史昭氏の、ライナーノーツによると、彼は「芸術家としてのジャズピアノ」の評価は眼中になく「ジャズはエンターテイメントである」という信念であったとのことが書いてあり、聞く人が楽しければ良いという観点からすれば Misty は楽曲の素晴らしさだけ伝えられれば曲の形式や評論家に評価されるアドリブなんかはなくても別に構わなかったのかと考えましたが、他の曲もこの時代の録音だけにほぼ全曲が約3分にまとめられております。つまりは Misty はテーマがスローテンポのバラードで長かったのでアドリブを入れる時間がなかった方が正解のような気もします。


 このアルバムを購入してから、初めて封を開けて聴いたのは、やはりいつもの「おでんバー」です。今日はこれを聴こうと思って持っていったら、あまり見慣れないお客さんが4人ほど、おられました。近くのライブ・ハウスでのライブ終了後の打ち上げを終わったメンバーさんたちが盛り上がって、店の曲のリクエストはチャーリー・パーカー大会となっていました。それなりに、こちらも楽しんで聞いていましたが、かなり長い間チャーリー・パーカーだったので、こちらもソロソロ飽きてきたなと思い、持ってきた、このアルバムをかけると静かになって皆さん退散されました。ただ単に購入してきた「Misty」の原曲を聴きたかっただけなんで、実は他意はなかったのですが、他の常連さんには「やり手の撃退手法でしたね」と褒められてしまいました。皆さん飽きてたけどメンバーさんに遠慮して言えなかったようです。
 しかしその後の「おでんバー」常連さんのエロル・ガーナーの評価も、大げさな装飾音の多い表現でアドリブに面白みがないなどの評価で散々ではありました。その時にはジャズを聴きこんだ人の評価はそんなもんかなあと軽く受け止めながら何回か聴きなおしてこれを書いています。ライナーノーツにもあるように、改めて聴くと先ほど書いた3分にまとめらている楽曲が中心なのですから、起承転結のある長いアドリブが入れられるわけもなく、楽曲のテーマを効果的に客に印象付ける要素として、ビハインド・ザ・ビートや、装飾の多用やトレモロ、タイミングをずらす奏法などは基本的にわかりやすくて効果的な手法だったと思っています。したがって常連さんの言われることも納得。あとは好みの問題です。
 さてMistyにばかり光が当てられて、その他の曲はおそらく忘れ去られていることも多いかと思われるこのアルバムを再度聴き直してレビューしてみます。が、Misty さんざんレビューを書きましたが一点。とても録音状態が悪いです。Exactly Like You ブロードウェイ・ミュージカル Lew Leslie's International Revue の曲で、ベニー・グッドマンのRCAの録音で有名になった曲で、同ミュージカルでは On the Sunny Side of the Steet の方が有名なジャズ・スタンダードになっています。Erroll Garner はソツなく3分16秒にまとめていて目立ちませんが悪くない。You Are My Sunshine 中学生の頃に音楽か英語の時間に、この曲を歌って歌詞を暗記した思い出がありますので、思い出のメロディーです。暴力的ではありますがとても明るく饒舌な演奏になっています。What Is This Thing Called Love これも非常にアタックが強い音色です。ギターが入っているのかと思いきやピアノで、4ツを強力に刻んでいます。なるほど特徴的です。Frantonality このアルバムで2曲入っている Erroll Garner のオリジナルのうちの2曲目です。スリム・ゲイラードの演奏で Flat Food Floogie という曲名で聴いたものと同じメロディのテーマです。The Groove Juice Special と言うアルバムやビデオ memphis slim with Paul Jones + Slim Gaillard にも収録されています。歌詞を付け直して、違う曲名にしたのか?当時の大道芸的なミュージシャンでは、こんなコメディ的メロディも受けていたのかとか想像しています。うーんどちらが先なのか?Again バラードで Lionel Newman1948年に20世紀Fox映画の Road House の主題歌として作曲したものです。大袈裟にコードをビロビロとつけているので、うるさい人には下品と言われそうな弾き方ではありますが、わかりやすくて良いのではとも思えます。とにかく左手のコードのつけ方が直線的な人のようです。Where Or When これもピアノのタッチが直線的でゴツゴツとしてわかりやすいですね。コードの4ツ刻みは相変わらずギター的です。Love In Bloom 1934年のコメディ映画 She Loves Me Not の挿入歌とのことですが、非常に楽しい曲です。Erroll Garner のピアノ・タッチにぴったりです。Through A Long And Sleepless Night 繊細な曲は、この人には似合わないかと思いきや、男性的に弾かれても心動かす女性は当時多かったのかと思わせる、このアルバムの流れではジゴロ的に思える曲です。That Old Feeling 一風変わった楽曲で、力強すぎの強力タッチで大満足の〆です。
 他人の評価は気にせず、私的には Misty に満足しています。Through A Long And Sleepless Night 以外は3分以内の昔のレコードの楽曲形式です。でもガレスピの3分連続攻撃の20曲オムニバスは飽きますが、こちらは飽きないよなあとか、結構楽しみながら聴けて再度聴いたら好感度アップです🎶🎹

piano : Erroll Garner
bass : Wyatt Ruther
drums : Eugene ‘Fats’ Smith

recorded 1954

1. Misty (Erroll Garner)
2. Exactly Like You (Jimmy McHugh & Dorothy Fields)
3. You Are My Sunshine (Charles Mitchell, Jimmie Davis)
4. What Is This Thing Called Love (Cole Porter)
5. Frantonality (Erroll Garner)
6. Again (Dorcas Cochran, Lionel Newman)
7. Where Or When (Richard Rodgers & Lorenz Hart)
8. Love In Bloom (Leo Robin, Ralph Rainger)
9. Through A Long And Sleepless Night (Alfred Newman, Mack Gordon)
10. That Old Feeling (Lew Brown, Sammy Fain)

Misty




  

2024年11月22日金曜日

Larkin Poe / Peach

 

 私がこのバンドを知ったのは youTube の動画が最初で、2020年のはじめの頃でした。特に気にいたのは Preachin' Blues で、繰り返し聴いていたところ、12月に新宿タワレコを訪れたところ、なんと Larkin Poe のコーナーが出来ていたので購入となりました。
 この二人は、ジョージア州アトランタ出身で、現在はナッシュビルを活動拠点とする姉妹のブルース・ロック・バンドで、姉妹の名前は
 【Rebecca Lovell】lead vocals, electric guitar, acoustic guitar, mandolin, banjo, violin, piano; drum programming, bass and arrangements

 【Megan Lovell】 harmony vocals, lap steel, Dobro

 いとこの祖父である Edgar Allan Poe に、ちなんでの Larkin Poe のバンド名で、アルバム名の Peach は出身がジョージアの名産のピーチであることからで、アトランタは古くはStanding Peach Tree と呼ばれネイティブ・アメリカンの村もあったそうです。この姉妹の活動履歴は長く、2005年にはブルーグラス系バンド The Lovell Sisters を3姉妹で結成し、いったん解散し、2010年に Larkin Poe として活動再開し、その後5枚のEPと2枚の共同制作盤を出し2013年に RH Music と契約し、初アルバム「KIN」を発表。そして2016年Reskinned、2017年で、この Peach の発売となった訳で、堂々たる演奏からも既にベテランの域を感じます。


 購入したのは日曜で、その帰りには行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」で直ぐに聴きました。ファンの前で酷評はしにくいと思われますが、それなりに評判は良かったハズです。それでは Larkin Poe / Peach を再度聴きながらのレビューです。Come On In My Kitchen トラディショナル・ブルースで作者不明なヤツですね。メーガンのスチールギターが最高ですし、レベッカの迫力ボーカルは最初から心わしづかみにされます。Freedom オリジナル・ナンバーで、アレンジは少しデジタルな部分を入れてます。映画とかで使われそうなドラマチックな曲です。Black Betty そしてトラディショナル・ブルースに戻ります。このリズムは大好きなヤツです。いかつくて惚れてしまカッコ良さ以外に何もありません。Look Away スローでダークなブルース・ロックです。オリジナルでこれも少しデジタルなアレンジで、ここら辺はブルースマンでありながら現代のポップスも聴きながら育った世代なんだなあと思います。Preachin' Blues そして惚れ込んだサン・ハウスのブルースです。ブルース好きのオジサンにも十分響くカッコ良さで、ライブハウスで聴いたらどうにかなっちゃいそうです。Cast 'Em Out ブルーグラスもやってたので、ここら辺のルーツ・ミュージックのような楽曲もすんなりです。録音とミキシングでボーカルの近さが感じられるのも良いですね。Pink & Red これもオリジナルで、現代的なロックのアレンジになっています。なるほどトラディショナルとオリジナルで意識的にアレンジを変えているのですね。今更わかりました。John The Revelator ジョンは預言者というトラディショナルです。ドロドロした呪術的なイメージが沸く曲ですね。Wanted Woman / AC/DC やはりオリジナルでデジタルなアレンジも入れてます。パンクっぽくもありますね。Tom Devil やはり最後はトラディショナル・ブルースでアルバムは締めくくりです。
 新世代のブルースを感じて、ワクワクと心が躍ります。きっと私のようなひと昔世代のことも理解しつつ、感性に合う曲を彼女たちの表現があり僅かな差でありながら同じようなルーツ・ミュージックのバンドを引き離している感があります。youTube で自分たちをセルフプロモしながらの活動も現代的ですね。オジサンの心も動かされました🎶🎸

Rebecca Lovell
vocals, electric guitar, acoustic guitar, baritone guitar, banjo, keyboards, drums : 
Megan Lovell
vocals, lap steel guitar, slide guitar, keyboards

producer : Megan Lovell, Rebecca Lovell

1. Come On In My Kitchen (Traditional)
2. Freedom (Megan Lovell, Rebecca Lovell)
3. Black Betty (Traditional)
4. Look Away (Megan Lovell, Rebecca Lovell)
5. Preachin' Blues (Son House)
6. Cast 'Em Out (Megan Lovell, Rebecca Lovell)
7. Pink & Red (Megan Lovell, Rebecca Lovell)
8. John The Revelator  (Traditional)
9. Wanted Woman AC/DC (Megan Lovell, Rebecca Lovell)
10. Tom Devil  (Traditional)





  

2024年11月16日土曜日

James Cotton Band / Live & On The Move


 もともとは2枚組のアルバムだったものを、CDでは1枚にまとめたライブ録音。19曲で、コットン・ファンにとって、ベスト・ヒットのような曲目構成がうれしいアルバムです。盤によっては Fannie Mae の入っていないものもあるようです。 
 1976年の発売で8枚目となるアルバムで、ギターは Matt Murphyでドラムの Kenny Johnson、ベースの Charles Calmese 、1974年発表のスタジオ録音盤「100% COTTON」と同じメンバーで、このリズム隊から生み出されるファンク・ブルースはなかなか強力。コットンおじさんも36歳の若い時の演奏でエネルギッシュで声も若いです。
 出だしのライブの始まりかたから、いかにもアメリカのエンターテイナーって感じです。盛り上げ方の進行も全てお決まりのパターンのようで、おそらく定番のショーの形式と思われます。


 ライブ会場の Shaboo Inn in Wlllimantic Conn ですが、ボストンから90マイル、ニューヨークから145マイルのアメリカの北西にある New England の1000人規模の大型ライブハウスで、ロックではBoston, Aerosmith, The Cars, Journey, AC/DC ブルースでは、Muddy Waters, BB King, John Lee Hooker, Freddy king, Buddy Guy ジャズでは Miles Davis などもギグっていたようです。1982年の閉店ライブでは、James Cotton もゲストで呼ばれていました。

  


 これも相当、聴きこんできたアルバムですが久しぶりに聴きながらレビューします。Cotton Boggie 定番のブギー・ナンバーです。ブルースハープの裏打ちとリズムが、機関車が走るような感じだと思いながらいつも聴いています。いつ聴いてもスカッと気持ち良い。
One More Mile ジャンプ・ブルースですね。キメもばっちりです。All Walks Of Life
ブルース度高めの一曲。のしのしと歩くようなドラミングが相変わらずかっこいいです。Born In The Missouri スローテンポの古典ブルースで、ピアノが相棒として活躍します。
Flip Flop & Fly これも定番で、早めの明るいブギで楽しいです。Flip Flop & Fly I don't care if I die Don't ever leave me, Don't ever say goodby のサビのコーラスもお客さんもノリノリです。サックスソロの最後は、ハエの羽音を真似たギターのシャカシャカもご愛敬です。Mojo は、Got My Mojo Worlin’ ですね。ハイスピードでバンドがきれいにグルーブしています。Roket88 これも大好きな定番です。この早口ボーカルもカッコイイですね。Goodbye My Lady ここでクールダウンの曲です。哀愁のメロディーで男臭く Goodbye My Lady と歌われたら女性はうっとりするのでしょうか。引いてしまうのでしょうか。これも良い曲ですね。I Don’t Know 定番のキメの連発のブルースです。曲の切れ目でベイ~~ベの最後の「ベ」でドラムとタイミングが合うかどうか、遊んでいるようです。ピッタリは1回ですかね。Caldonia シャッフル・ナンバーでコットンおじさんの裏声を使って母親の声真似、早口マシンガンで観客も大喜びですね。Boggie Thing コットンバンドはこのブギが多くて、気分があがります。Goodmorning Lil’ School Girl 田舎のオジサンが女の子に話しかけている曲でしょうか。子供がスキップしているぐらいのテンポでホノボ系シカゴ・ブルースです。Oh, Baby You Don’t have To Go オーソドックス・タイプのブルースです。ここらへんで Charles Calmese のベースの上手さに気づきます。Help Me 昔のタイプのシカゴ・ブルースです。このテンポで、このリズムでグルーブさせるのは結構、難しいかもしれません。Fannie May 曲の解釈は全く異なりますが、ジャコも大好きだったファンク・ナンバーですね。Hot’ n cold メンバーがボーカルをとってコットンが合いの手を入れる楽しい曲です。ライブって感じがします。Tenny Weeny Bit これはJBな感じの曲でコットンにしては珍しいビートですね。歌の表情のつけ方がさすがです。Blow Wind Blow シカゴ・ブルースの定番曲です。コットンバンドでもよく聴きますがこのライブのこれは出来が良いようで満足。How Long Can A Fool Go Wrong ハイトーンのブルース・ハープが印象的なブルースです。キッチリとブルース・ハープのソロを多めにとってテクニックを見せつける曲ですね。いや、オジサンのハープが堪能できる曲です。
 ジェイムス・コットンのライブは楽しいですが、特にこのライブはノリ良く。しゃべり、よく吠える、そしてメンバーがみなで楽しそうです。バンドとしても脂がのっていてテンション高いので聞いているほうもテンションあがります。 このライブの客になりたかった🎶

vocals, harp : James Cotton
keyboards : Mike "Captain Z" Zaitchik
guitar : Matt Murphy
bass : Charles Calmese
drums : Kenny Johnson
sax : George T. Gregory

producer : Al Dotoli
recorded live at Shaboo Inn in Wlllimantic Conn.

1. Cotton Boogie (James Cotton)
2. One More Mile (James Cotton) 
3. All Walks Of Life (James Cotton )
4. Born In Missouri (Willie Cobbs)
5. Flip Flop & Fly (Charles Calhoun, Lou Willie Turner)
6. Mojo (Booker Ervin)
7. Rockett 88 (Jackie Brenston)
8. Goodbye My Lady (Mark Klingman, N.D. Smart II, Todd Rundgren)
9. I Don't Know (Willie Mabon)
10. Caldonia
11. Boogie ThingAll Walks Of Life (Matt Murphy)
12. Good Morning Lil' School Girl
13. Oh Baby You Don't Have To Go (Jimmy Reed)
14. Help Me (J. Watson)
15. Fannie Mae (Bobby Robinson, Buster Brown)
16. Hot 'N Cold (Allen Toussaint)
17. Teeny Weeny Bit (Ian Whitcomb)
18. Blow Wind Blow (Dub Dickerson)
19. How Long Can A Fool Go Wrong (James Cotton)



Mojo


  

2024年11月15日金曜日

The Hard Bop! / No Room For Squares Ⅳ


 BlueNoteの名盤からの12曲オムニバスです。BN の 価格を下げた過去音源の The BN Works 1500 シリーズのキャンペーン用CDで、第4弾のようです。名前の通りの中身でハード・バップばっかり集めています。そもそもなんですが、ジャズのハード・バップって激しめのジャズってことはわかりますが、どんな違いがあるのか改めて確認してみます。
 戦前の1930年代から1940年代の流行のビッグバンドの形態のジャズは「スイング・ジャズ」と呼ばれベニー・グッドマン、デューク・エリントン、カウント・ベイシー、グレン・ミラーなんかです。スイングジャズは、スウィングのリズムが特徴のダンスミュージックでしたが、大人数の編成であるため、アドリブやソロの要素よりもアンサンブルに重点が置かれていたわけです。
 そしてこの大人数のバンド形態は1940年代あたりから少人数の即興演奏を主体とする「ビバップ (bebop)」へと変化していきます。形式としては決まったテーマを演奏し、コード進行に沿った形でアドリブを順番に行う形式が主で「スイング・ジャズ」は聞く側が楽しむダンス・ミュージックだったのが、ビバップは演奏側が楽しむものとなり技術や芸術性を楽しむものに変化してきました。
 そして1950年代からニューヨークなどで演奏されるビバップはハード・バップと呼ばれる形態の演奏スタイルになっていきます。私たちが所謂ジャズと感じるサウンドのイメージですね。ハード・バップは特にソロ部分のアドリブをよりホットでドライブさせたものでフレーズが重要視されたため、メロディーとして使える(成立する)音を使うためビバップよりも、融通性のないメロディーやフレーズになりやすいらしいです。つまりはアウトなフレーズは邪道だったわけですね。
 さらには、この制限された音の呪縛から使える音の解釈を変えたモード・ジャズに移行していきます。と色々見ながら書きましたのでおそらく本筋は外れていないはずです。ふう
 また1954年のアートブレイキーの「A Night at Birdland Vol. 1」あたりから「ハード・バップ」という言葉が使われだしたようでアフロ・キューバン・ジャズもハードバップに含まれるって書かれます。
 まあ音楽のジャンル分けってのは時に曖昧なので、雰囲気で聴くのでも十分かと思いますが、そこら辺を掘り下げて聴いていくのも、また楽しい聴き方でもあります。このCDはプロモ用のオムニバスなので、特にプロデューサーの選曲の妙とかは感じません。ノッペリしたアルバムで、ああこれ持ってる、とかで楽しむやつですね🎶

1. Sonny Rollins / Wail March
2. Clifford Jordan / Beyond The Blue Horizon
3. Hank Mobley / Mighty Moe & Joe
4. Sonny Clark / Shoutin' On A Riff
5. Bud Powell / Blue Pearl
6. John Coltrane / Locomotion
7. Curtis Fuller / Little Messenger
8. Horace Silver / Safari
9. Lee Morgan / C.T.A.
10. Lou Donaldson / Blues Walk
11. Louis Smith / There Will Never Be Another You
12. Kenny Burrell / Phinupi





  

2024年11月10日日曜日

Take 6


 グループ名がデビューアルバムのタイトルになっている「TAKE6」で発売は1989年。Take6 はアメリカ・アラバマ州のクリスチャン学校で結成されたコーラス・グループで結成当初はなんと学校のトイレで練習をする事が多かったとか。学校生活の中でメンバーチェンジが幾度もなされ1987年に Take6 となったそうです。
 デビューまでゴスペルを重要視したいとのことでレーベルにアタックしていたそうですが、あきらめかけていた時に、メジャーレーベルの Warner Bros(ワーナー・ブラザーズ)のディレクター Jim Ed Norman に目が留まり、メジャーデビューが決まったそうです。ゴスペル・グループとして別のレーベルでデビューしていたら、このようなヒットもなくて私も聞いてはいなかった可能性があります。さすがワーナーブラザーズ。
 ゴスペル要素を強くしながら、R&B色よりもジャズ要素を盛り込んだ上品で丁寧なアレンジが素晴らしいアルバムです。このアルバムを手にした時は、それまでコーラスグループなんて聞かなかったのに直ぐにファンになり、当時車の中で大音量にして聞いて一緒に歌っていたことを思い出します。特におすすめは 「Spread Love」 で奥行きのある広がりのあるコーラスワークとノリが最高です。


 昔から愛聴してきているアルバムで、購入したころは釣りに行くときに車の中で爆音でかけながら一緒に歌っていた記憶があります。相当聴きこんでいますが、最近聴いていなかったので久しぶりに聴いてレビューしてみます。Gold Mine イントロではオーケストラの最初のチューニングのような音がしますが肉声以外は入っていません。ジャズタイプの曲で、But this time I found Gold Mine in you と何か神々しいまでの愛が歌のテーマです。 Spread Love ゴスペルタイプの素晴らしい曲で奥行きがあって大きな愛を感じる大好きな曲です。 If We Ever Needed the Lord Before (We Sure Do Need Him Now) 長いタイトルですが、ライナーノーツの曲名は、 If We Ever だけです。歌詞の内容的には、ほぼ讃美歌で要するにゴスペル曲ですね。Quiet Place, A これはリズムよりも旋律とハーモニーを聴かせる美しい曲で、There is a quiet place Far from the rapid pace Where God can soothe my troubled mind と人類への愛を歌っています。Mary またゴスペルタイプの楽曲です。歌詞の内容は聖書の中のモーセの十戒あたりですね。David and Goliath ダビデとゴリアテの話しですね。これも聖書の中にあったような気がします。物語的な展開でイメージ的にはディズニーアニメの世界観で劇場仕立てです。Get Away Jordan ヨルダンから離れろですか、これも宗教歌です。ヨルダン川を渡って主に会いたいと、ひたすら歌います。5曲目から9曲目までは作曲者が書いていないのは、実際に教会で歌っていた曲で作者不明なののかと思われます。He Never Sleeps 夜も昼も寝ないで見守ってくれているのは当然神ですね。きれいなハーモニーです。Milky-White Way 神にイエスに会いに行かないかい、とひたすら歌います。Let the Words 最後の締めくくりは、Let the words of my mouth bring You praise この言葉があなたを讃える言葉でありますように
 メンバーチェンジも若干あるものの定期的にアルバムをリリースし、現時点では2018年が最後のアルバムリリースとなっています。
 私は小さい頃から教会に行っていました。日本のカトリック教会なのでゴスペルは歌いませんでしたが、フォーク風の歌を讃美歌の代わりに歌うミサなどはありましたので、世界観はなんとなく理解できるのもあって好きなんだと思います。いや何回聴いても音も素晴らしいですが世界観が良いですね🎶

vocals :
Alvin Chea
Cedric Dent
Claude V. McKnight III
David Thomas 
Mark Kibble
Mervyn E. Warren

producer : Claude McKnight, Mark Kibble, Mervyn Warren
executive-producer : Jim Ed Norman

1. Gold Mine (C. McKnight, M. Warren)
2. Spread Love (C. McKnight, M. Kibble, M. Warren)
3. If We Ever Needed the Lord Before (We Sure Do Need Him Now) (Thomas A. Dorsey)
4. Quiet Place, A (R. Carmichael)
5. Mary
6. David and Goliath
7. Get Away Jordan
8. He Never Sleeps
9. Milky-White Way
10. Let the Words (G. Hamilton)