2024年9月5日木曜日

ハーレムの熱い日々 BLACK IS BEAUTIFUL 吉田ルイ


 この本は音楽本という訳では無かったのですが、それまで音楽を聴くだけであった私が、音楽の時代背景も考えながら聴くようになったきっかけの名著です。

 吉田ルイ子さんは北海道生まれのフォトジャーナリストで、この本はニューヨークのハーレムに10年住んだ時の記録です。1962年に渡米され1971年に帰国されるまで、ちょうど60年代をアメリカ黒人ゲットーで過ごした記録です。1963年ケネディ暗殺、1964年ハーレムの暴動、1965年マルコムX暗殺、1966年ブラックパンサー設立、1968年マーチンルーサーキング牧師暗殺、1969年ウッドストック・・・すごい時期にハーレムに出入りされていました。
 また、1972年に帰国して写真展「ハーレム Black is beautiful」を開催して、この本も「ハーレムの熱い日々」も出版されました。私はそれを2019年に古本屋で見つけて読んでみたわけです。別に音楽論を語るわけでもなく人種差別に対する政治的なメッセージがあるわけでもないルポルタージュなのですが、さらりとカメラ目線と自身の目線で人間をとらえています。

 私自身はこの本を読むまでこれらの出来事を何となく知っていましたが興味を持つことも無かったのですが、リアルにこの時期にハーレムに女性一人で住まわれて感じたことを読んでから、音楽との時代の密接なかかわりに興味が出て音楽に隠されているメッセージも知りたいと思うようになりました。
 ちなみに過ごされた「ゲットー」とは、黒人やヒスパニックの密集居住地のことで、この場合ハーレムに事を指します。ダニー・ハザウェイで歌にもなってますね「ザ・ゲットー」
 ブラックパンサーは余り知らなかったのですが、黒人が居住するゲットーを警察官から自衛するために結成された政党のことで、毛沢東主義にかなり強く影響を受けており、これがハーレムの人の本を読むきっかけになったことあるとか、日本のゲットーとも連絡を取っていたこともここで少し詳しくなりました。(この本を読むまで毛沢東主義も良く理解していませんでしたから)
 そして音楽的なつながりでも興味深いことも書かれています。
「ウェインショーターはハーレムに住んでいて著者と知り合いでお子様の名前はミヤ子ちゃん」「住んでいればチャーリーミンガスに普通に会える」「アートブレイキーは売れてからも、金持ちのパーティーで演奏しニグロとして差別的な扱い、しかしこれは本人も容認していた」

 私の愛好する音楽は、ジャズ、ブルース、ソウル、ファンクなど黒人ミュージシャンの演奏するものが大半を占めます。しかしその黒人ミュージシャンの音楽が発展してきた中には哀しい事実も歴史にはあります。

BLACK IS BEAUTIFUL
このタイトルを見るといつも思い浮かべるのは、Esperanza Spalding(かなり好きです)のBLACK GOLD です。最後にBLACKのみんなを指さす彼女に泣けてきて、この本の中で描かれているハーレムの生活オーバーラップします。

 この本を読んでから、人種問題に関する本などを読む機会も増えました。同じ人種問題のルポではありますが白人のグレース・ハルセルの書いた「黒い性・白い性 Black / White SEX」なんかもセックスの角度から歴史観点からの宗教、黒人から見た白人、白人から見た黒人、などが書かれており興味深くはありましたが、かなり難解でした。これももう一回読んでみるかな。

  2024年5月31日に吉田ルイさんは永眠されました。89歳で胆管がんだったそうです。


  

2024年9月1日日曜日

Santana / Black Magic Woman - Recorded Live In Montreal, New York City


 ラテン・ロックの代名詞のような人ですね。そしてこのギターを聴けば Carlos Santana と誰でもわかるクセの強さで似たような人があまりいない唯一の存在でもあります。ギターを弾く人間としてやはりサンタナは凄い人です。
 Santana はバンド名で、メキシコ出身の Carlos Santana をリーダーとして1966年サンフランシスコで結成された Santana Blues Band (サンタナ・ブルース・バンド) が前身で、その後 Santanaと改名して1969年にコロムビア・レコードと契約してウッドストック・フェスティバルに出演したことで一躍有名になり同月のデビュー・アルバム Santana が大ヒットした訳です。本作のタイトルであり、代表曲とも言える Black Magic Woman は1970年の2ndアルバム Abraxas (天の守護神)に収録されていました。


 私はジャンルレスの何でも音楽を聴く人ではありますがラテン・ロックはあまり聴いてきてはいません。ラテン自体は学生時代の友人がサルサなどをやっている人間が多い影響で聴くのですが、ラテンロックになるとちょっと別物になってくるかと思います。ただ私自体はギター演奏が趣味でありますので、ラテン・バンドで通用するギターには興味はあります。ただサルサ・バンドなどでギターが入る演奏に出くわしたことがないので、今改めてサンタナの8ビートとラテンのリズムを組み合わせた楽曲や、独特の節回しは面白いです。
 このアルバム買ってから気づいていたんですが、ジャケット写真がペラペラの紙一枚で前に買ったスティングのライブ盤と似ている感じでいかにもブートレグ?かな🎶

1. Black Magic Women
2. Gypsy Queen
3. Oye Como Va
4. Hold On
5. Evil Ways
6. No One To Depend On
7. Winning
8. Spirits Dancing In The Flesh
9. Soul Sacrifice



▶ Winning


  

2024年8月31日土曜日

Relaxin' With Miles Davis Quintet

 

 「マラソン・セッション・シリーズ」を揃えようと思いはじめ購入した最後のCDです。マイルスは、Prestige Records からColumbia Recordsへの移籍にあたり1956年5月11日と10月26日の2回のセッションをおこない、そこから Prestige は合わせて4枚のアルバムを作成し1枚づつ発売し、日本では「マラソン・セッション」と呼ばれています。順を追うと57年Cookin'」58年「Relaxin'」60年Workin'」61年「Steamin'」 なので順番には購入ではなかったです。ちなみに Relaxin' に収録の曲は全て2回目の10月26日の録音となっていて、慣れてきたせいもあってか軽快で聴きやすい楽曲が多く演奏されています。セッションの中でも人気があると言われる Cookin' 収録曲の演奏もこの10月セッションとなっています。



 さてRelaxin' ですが、他のアルバムにはないスタジオ内の会話が収録された箇所があります。 そこから伝わる“リラックス”した雰囲気が特徴がアルバム名の元となっているとか、噂はありますが本当かどうかは不明とされています。音量を上げないとわかりませんが確かに If I Were A Bell の前でボソボソ言っていて、私には聞き取れませんでしたが「演奏してみて曲名が何かはあとで言うよ」と言っているらしいです。するとイントロは Red Garland がピアノで学校のチャイムのメロディーを弾き、そこから始まります。全てワンテイクでの一発勝負の録音ということですが、テーマも含めたすべてが即興とは思えないので特定のメンバーにだけ言っているんだとは思いますがどうなんでしょう。続いて You're My Everything ではイントロをシングルトーンで弾き始めた Red Garland をMiles がヒュッと口笛を吹いて止める。 Miles が「ブロック・コードで弾いて」と言うと Red Garland がガツンとピアノを弾き始める。 これはかなりクールな瞬間です。 Woody'n Youでは演奏終了後に「OK?」どうやら誰かがダメ出しをしたようで直ぐに「Why?」。 その後で「・・Beer・・」だけ聞こえるのですがビールの栓抜きはどこだ? とコルトレーンが言っているとのこと。 確かに最後までリラックスした録音のようです。
 演奏的には Oleo が一番のお気に入りで、Miles が出だしを誘導するとリハーサルっぽくピアノとベースが入ってきてドラムは様子を見るように休む。コルトレーンのソロで煽られるようにドラムが入ってくる。 ここでぐっと来てからドラムが何回も休んでベースの Chambers だけがリズムを刻んで Miles や Coltrane、Garland と絡んでいく流れはスリリングでとても心地良いですね。
  このアルバム聞き直しながら細部の確認していたら楽しくなってきましたので、再度4作全部を聴けば発見が、またあるかもしれません🎶

trumpet : Miles Davis
tenor sax : John Coltrane
piano : Red Garland
bass : Paul Chambers
drum : Philly Joe Jones

Record Company – Prestige Records Inc.
Recorded At – Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey
Recorded on May 11, 1956 and October 23, 1956

1. If I Were A Bell (Frank Loesser)
2. You're My Everything (Harry Warren, Joe Young, Mort Dixon)
3. I Could Write A Book (Rodgers & Hart)
4. Oleo (Sonny Rollins)
5. It Could Happen To You (Jimmy Van Heusen And Johnny Burke)
6. Woody'n You (Dizzy Gillespie)


Oleo



  

2024年8月30日金曜日

Yousuke Onuma / Jam Ka Deux


 小沼ようすけ氏の「Jam Ka 第2章」となるアルバムで、お恥ずかしながら Deuxをデラックスと何度見ても勘違いし改めて再認識しました、正しくは「ジャム・カ・ドゥ」つまりDeux=twoなので第2章となります。
 カリブ海に浮かぶフランスの海外県、グアドゥループ島の民族音楽 “GWO-KA(グオッカ)” のリズムと現代的なジャズを融合させた音楽がクレオール・ジャズ。この “GWO-KA(グオッカ)” に使われるのが、’KA'(グオッカ・パーカッション)というカリブの民族楽器で、Jam を掛け合わせてネーミングして小沼ようすけがプロジェクトして2010年に作られたアルバム「Jam Ka」 そこから熟成させてきたプロジェクト作品が、今回の2016年の 「Jam Ka Deux」となります。Jam Ka Deux、グアドループ、kaという楽器などについて、詳しくは下記 youTube で解説があります。


 このアルバムから自分のレーベル「Flyway Label」を創設


 それではレビユーしていきます。Moai's Tihai リズム的には GWO-KA を取り入れて、楽曲としてはフュージョンのような作品です。少しオーバードライブを聞かせた音色で鋭角的なギター。Flowing 波間を漂っているような揺れるサウンドで、これもフュージョンのようでもあります。Terre このアルバムの音の特徴がよく出てきています。ギターと並行してはカラっとして発音がしっかりとペタペタしている Ka が主役であるように主張しています。
The Elements エレピのイントロが美しい曲で、ジャズ的な面が強くだされた楽曲です。小沼氏の指弾きによるギターが特徴的に和音部分などで表れています。Ka Interlude "Ka" によるパーカッション・ソロで、Ti' Punch に続きます。リズムは6拍子でしょうか。ベースはスラップでリズムと合わさってリズミカルではあるがトリッキーな感じ。それに乗っかって小沼氏のギターが様々な展開をしていきます。続いて Duo Ka は、Ka とオープンチューニングでしょうか、シタールっぽい生ギターによるデュオです。おそらく、ほとんどがアドリブと思いますが息の合った展開が素晴らしい。Dlo Pann は、指弾きによるギターの繊細なタッチで、縦横無尽なギターが展開され、後半ではオーバードライブのかかったギターをかぶせてきてます。 Fellows は小沼氏のソロ・ギターに合わせて、まずは Ka が合わせてきて、ハーモニカの Joe Powers が入ってくるセッション的な曲で、終わりなく延々と演奏を続けるのではないかと思わせてくれます。エンディングはどうするのかと思いきやききっちりと終わりました。 Gradation Part 3 : Heartbeat パート3ですから、パート1、2もあるはず。ライブではやっているのでしょうか。グラデーションというタイトル通り、一つの音が様々に変化するノイズ的な曲で、かなり実験的です。Pourquoi は、フランス語の詩の朗読に曲をつけたのでしょうか。フランス語はさっぱりわかりませんので調べてみると Pourquoi は「なぜ」「だから」の接続詞とあります。とにかくこのアルバムいろんな実験をしています。 Beyond The Sea 緊張感ある曲が続きましたが普通の曲がやってきました。ホッとします。Songe Mwen 締めは Ka をフューチャーしたパットメセニーのような楽曲です。アフリカンなスキャットのボーカルが良い感じで、後半は歌詞も入っていると思います。シャンソン的な響きも感じます。
 いろんな実験をしているアルバムで、少しマニアックな感じもしますので小沼ようすけ入門には適していないと思われます。

guitar : Yosuke Onuma
bass : Reggie Washington
drums, ka & vocal : Arnaud Doimen
ka : Olivier Juste
ka : Sonny Troupé  (ka on 4, 9 & 12)
piano & Fender Rhodes : Gregory  Privat (piano & Fender Rhodes on 1, 2, 4 &12)
guitar : Hervé Samb (guitar on 9)
harmonica : Joe Powers  (harmonica on 9)
poetry reading : Simone Schwarz-bart (poetry reading on 11)
poetry reading : Jacques Schwarz-bart  (produce,guitar on 13)

producer : Jacques Schwarz-Bart

recorded at  Studio Sextan, Paris May on 8'th 16'th & 17'th 2016

1. Moai's Tihai
2. Flowing
3. Terre
4. The Elements / feat. Grégory Privat & Sonny Troupé
5. Ka Interlude
6. Ti' Punch
7. Duo Ka
8. Dlo Pann
9. Fellows / feat. Hervé Samb & Joe Powers
10. Gradation Part 3 : Heartbeat
11. Pourquoi / feat. Simone Schwarz-bart
12. Beyond The Sea / feat. Grégory Privat & Sonny Troupé
13. Songe Mwen






  

2024年8月27日火曜日

The Isley Brothers / 3+3


 名作が多すぎて何が何やらわからないアーティスト The Isley Brothers の1973年の18枚目のアルバムで、タイトルは3+3。ギター Ernie Isley、ベース Marvin Isley、ピアノ Chris Jasper が正式にメンバーに加わり、オリジナル・メンバーの O'Kelly Isley、Rudolph Isley、Roland Isley のボーカルと合わせて「3+3」体制となり、バンドとしてもターニング・ポイントとなったアルバムです。


 さて、お買い得シリーズの最後のアルバムのレビューをしていきます。That Lady はオリジナルですが、カーティス意識したんだなという曲です。ただ違うのは Ernie のギターソロが長尺のジミヘンギターを弾きまくるのでここら辺はPーFUNK がですね。大好きなパターンですよ。Don't Let Me Be Lonely Tonight 原曲は、James Taylor です。原曲も R&B的な要素も感じられるのですが、ここではゴリゴリのスイート・ソウルです。始まって2曲でもう大好きを感じます。If You Were There シュガーベイブの「Down Town」の元ネタとしても日本では有名で、クラビのこのパターンの使い方は日本人として Down Town を思い出し、歌メロを聞いては Down Town を思い出してしまいます。外国の方にはわかりずらい感じだと思います。しかし、ひとつ気になるのはドラムのドンドコ、ドンドコ。これはインパクトありますが、センス無いと思うんですが何か?You Walk Your Way は何か懐かしいメロディーのソウルナンバー。歌のメロディーのつなげ方もブツブツと曲の中で途切れないようになっていて変拍子的な響きがあります。そしてあの、Listen To The Music は、誰もが知っている Doobie Brothers のあの曲です。ドゥービーのブラス・ロックも良いですが、このファンク・アレンジも、かなり良いですね。オリジナルと比較して私的には同等レベルに好きかも。What It Comes Down To ああモータウンだと思うリズムですが、少し違いますね。ギターの単音リフの音がぶっとくて奇妙な感じもしますがインパクトあります。そして曲に似つかわしくない激しめに歪ませたギターソロが最後に挿入ですが、早弾きではないので変わった曲としては私的にアリ。Sunshine (Go Away Today) ギラギラした太陽に目がくらみ頭がいかれちまったようなサイケな出だしですが、その後はしっかり普通にファンクしてます。もっとイカレテほしかった。Summer Breeze オリジナルは Seals & Crofts で今回初めて聞きましたが、普通に暗めのアメリカン・ロックですが、Isley 気合を入れて違った曲に変貌させています。これは Isley に私は軍配を上げます。オリジナルでは The Highways Of My Life が最後の曲になります。これもイントロ長めで、インストかと思いきや歌が始まります。ソフトなロック路線ですがこれも良曲。
 全曲ハズレなしではないですが、どの曲も個性にあふれた曲になっていてインパクトは十分なアルバムとなっています。カバーでは、白人系の曲が中心になっているのは何か意味合いがあるのかも気になります🎶

お買い得シリーズは60年台から
70年初期の黄金期に入るまでが集められてます

The Brothers: Isley 1969
Get Into Something 1970
Giving It Back 1971
Brother Brother Brother 1972
 3+3 1973

piano (acoustic, electric), clavinet, synthesizer (moog), tambourine : Chris Jasper
organ : Truman Thomas
guitar, percussion (tom-toms), maracas : Ernie Isley
bass : Marvin Isley
drums : George Moreland
congas : Rocky

producer : O'Kelly Isley, Ronald Isley, Rudolph Isley

original sound recording is owned by T-Neck Records Inc.
recorded at Record Plant West, Los Angeles

1. That Lady (The Isley Brothers)
piano : Chris Jasper
organ : Truman Thomas
bass : Marvin Isley
electric guitar : Ernie Isley
congas : Rocky
drums : George Moreland
electric guitar : Ernie Isley
2. Don't Let Me Be Lonely Tonight (James Taylor)
piano, electric guitar : Chris Jasper
guitar (6-string), acoustic guitar : Ernie Isley
bass : Marvin Isley
drums : George Moreland
3. If You Were There (The Isley Brothers)
piano, clavinet, electric piano : Chris Jasper
organ : Truman Thomas
electric guitar : Ernie Isley
bass : Marvin Isley
drums : George Moreland
4. You Walk Your Way (The Isley Brothers)
piano, electric piano : Chris Jasper
organ : Truman Thomas
electric guitar : Ernie Isley
bass : Marvin Isley
5. Listen To The Music (Tom Johnston)
electric piano, clavinet : Chris Jasper
organ : Truman Thomas
acoustic guitar (6-string), electric guitar : Ernie Isley
bass : Marvin Isley
drums : George Moreland
6. What It Comes Down To (The Isley Brothers)
clavinet, electric piano, piano : Chris Jasper
orgas, tom tom : George Moreland
electrn : Truman Thomas
bass : Marvin Isley
drumic guitar, maracas, tom tom : Ernie Isley
7. Sunshine (Go Away Today) (Jonathan Edwards)
synthesizer (moog), clavinet, electric piano : Chris Jasper
electric guitar : Ernie Isley
bass : Marvin Isley
drums : George Moreland
8. Summer Breeze (Seals & Crofts)
synthesizer (moog), piano, electric piano : Chris Jasper
acoustic guitar (6-string), electric piano : Ernie Isley
bass : Marvin Isley
9. The Highways Of My Life (The Isley Brothers)
piano, electric piano, synthesizer (moog) : Chris Jasper
twelve-string guitar (12-string acoustic guitar) : Ernie Isley
bass : Marvin Isley
10. That Lady(Live)





  

2024年8月26日月曜日

The Isley Brothers / Brother Brother Brother


 1972年作のメロー、ポップな路線のアルバム。フォーキー・ソウル路線は前作を継承しつつニューソウル的なアレンジが施されていて、さらにはハイトーンからピンと引き締めるボーカルワーク、メロディ、ハモリのつけ方なども円熟味が増してきています。またファミリー以外のミュージシャンも定着したようでこの面からも、バンドサウンドは変化してきているのかと思い、セールス的にも米チャート[29位(R&B5位)]の成功でした。アルバム自体の楽曲は、カバー4曲、オリジナル5曲で、カバーのうち3曲が Carole King 作品となっていてというのがアルバム全体の色合いを大きく左右しているとも思われ、ここら辺になってくると私的にも楽しく聞ける感じです。


 それではレビューしていきましょう。Brother, Brother 1曲目は、Carole King のカバーでオリジナルはこのアルバムの前年の1971年に発売。もともとのオリジナルもエレピとパーカッションのソウルで清々しい感じで心地よいですが、Isleys のカバーではインプレッションズのような黒さがにじみ出てきてます。Put a Little Love in Your Heart は、Randy Myers、Jackie DeShannon作の Jackie DeShannon の1968年のヒットのカバー。オリジナルの白人系ソウルよりも、1曲目と違った意味で黒くなってて心地よい。Chicago っぽくもあるかな。Sweet Season は再び  Carole King のカバー。Carole King のオリジナルは、ソウルだけどカントリー風に軽く流しているのに対し、Isleys のカバーは熱い。Keep On Walkin'は前曲の続きとしてメドレーとして足されています。Work to Do は Isley のオリジナル。3rdシングルとして全米R&Bチャート第11位となっていて、キャッチーなピアノ・リフでノリとしては Steely Dan への布石のような感じの曲です。フリーソウルの人気曲として多くの人にカバーされたりサンプリングされています。Pop That Thang は、SLY 的なファンクとなり、やっと来たかねって感じの2ndシングル、全米R&Bチャート第3位です。リズム部隊も Ronald のボーカルも良い感じです。Lay Away は1stシングル、全米R&Bチャート第6位と売れた曲ですね。モータウン的なリズムの使い方が当時の流行りだったのかなあと想像します。Ernie のギターがジミヘンとお友達であったことがわかるソロも好感ですが、短くてもったいない。It's Too Late スローテンポのブルースですね。Carole King のカバーとのことで、チェックしてみます。オリジナルのほうがソウルっぽいですが、あっさりとした曲調がとても好印象です。これは Carole King の方が好みです。でも10分31秒の長さでカバーするところをみるとBrothers も、かなりのお気に入りだったに違いありません。Love Put Me on the Corner は、メロー・ソウル風バラードでイントロ長めなのでインスト?と思った頃に Ronald のロー・ボイスが入ってきますが、これまた聞く人の心を打つ名作かな。
 きっちり大物感の存在を誇示するアルバムで聴きなおして評価ひとつアップです🎶

シリーズ4枚目

lead and background vocals : Ronald Isley (except 9)
background vocals, lead vocal : O'Kelly Isley, Jr. (9)
background vocals : Rudolph Isley
piano, keyboards : Chris Jasper
organ : Truman Thomas
guitars : Ernie Isley
bass : Marvin Isley
drums, percussion : George Moreland
congs : Karl Potter
 
1. Brother, Brother (Carole King)
2. Put a Little Love in Your Heart (Randy Myers, Jackie DeShannon)
3. Sweet Seasons (Carole King, Toni Stern)
4. Keep on Walkin' (The Isley Brothers)
5. Work to Do (The Isley Brothers)
6. Pop That Thang (Herman Kelly, Clyde Otis, Ronald Isley, O'Kelly Isley, Rudolph Isley)
7. Lay Away (The Isley Brothers)
8. It's Too Late (Carole King, Toni Stern)
9. Love Put Me on the Corner (Chris Jasper)





  

2024年8月25日日曜日

The Isley Brothers / Givin' It Back


 全曲カバー曲でまとめられたアルバムで、ピーター・バラカン氏によれば、このアルバムはソウル/ファンクのグループとしてのアイズレー・ブラザーズが、ロック畑に「お返しする」という趣旨のもの。確かにアルバムタイトルの Givin' It Back は曲としてはアルバムに入っていません。ジャケ写も The Brothers Isley では、新興宗教のような赤い服でしたがアコギを抱えてフォーク・グループ風になっているのは、また何かイメージが違うような気がしますが(まだこっちのほうが良い)


 この頃は年に一枚のペースでアルバム作成していたので、商業的に売れることを意識していたのか、カーティス・メイ・フィールドあたりも意識しているような歌い方をしているのかと思っていましたが。改めて聴きながら時代背景を考えれば、当時ベトナム戦争で暗澹としたアメリカ社会を批判するような、メッセージ性の強い曲が選曲されていることからも、ルーツに感謝しながら当時のアメリカに対して物申すといった意味も強いような気がします。白人アーチストの曲が多いのも敢えて白人・黒人の垣根を超える意図もあったのかもしれません。
 Ohio/Machine Gun は、ジミヘンを意識したアーニーのギターとロナルドの力の入ったボーカルが印象的。Fire And Rain はアーシーなソウルでありながら、途中からフォーキーになる意外性の展開が凄い。ボブ・ディラン Lay Lady Lay は力を抜いてカントリー・ソウル。Spill The Wine ではラテンを取り入れながらも、しっかりアイズレー・サウンドに昇華しているラテン・ソウル。そしてこのアルバムでは一番アイズレーらしいファンクナンバー Nothing To Do But Today になって、このアルバムのコンセプトっぽくない曲調なのですが、何か安心感があります。そして私も大好きなビル・ウィザーズの Cold Bologna は、歌い方アレンジはマンマですね。このパターンのギターも歌いまわしも大好きと思って聞いていて参加アーチスト書いてたら Bill Withers 本人の参加でした(もう一回聴こう)ラストは2曲目のスティーヴン・スティルスのカバー Love The One You're With で、アレサ、ミーターズもカバーしている名曲で締めくくりです。異色作ではありますが良かったです。聴き直して満足🎵

お買い得5枚組ですが
時代を追って一気にアーティストの変化が聞き比べられるので面白い


lead and backing vocals : Ronald Isley 
backing vocals : O'Kelly Isley Jr. and Rudolph Isley
lead guitar  rhythm guitar, drums : Ernie Isley (1-5, 7)
bass guitar : Marvin Isley
piano : Chris Jasper
lead guitar, rhythm guitar : Chester Woodard (1-5, 7)
lead guitar : Bill Withers (6)
organ : Milton Westley
flute : John Mosley
drums, percussion : George Moreland
congas : Gary Jones (1-6)
congas : Buck Clarke (7)

1. Ohio / Machine Gun (Neil Young / Jimi Hendrix)
2. Fire And Rain (James Taylor)
3. Lay Lady Lay (Bob Dylan)
4. Spill The Wine (Eric Burdon & War)
5. Nothing To Do But Today (Stephen Stills)
6. Cold Bologna (Bill Withers)
7. Love The One You're With (Stephen Stills)






  

2024年8月24日土曜日

The Isley brothers / Get Into Something


 Motownを離れてレーベル T-Neck を立ち上げての3枚目の1970年アルバムです。魔法の絨毯らしき敷物に乗って飛び立とうとしてロナルドが両腕を水平に広げているジャケットは、いざ飛び立たん!なのでしょうが、誰の発案なのか若干趣味を疑ってしまいます。内容としては前2作の路線をさらに大胆に推し進めたファンク・アルバムでジャケットの滑稽さとは一味違って良かった感じです。ただ良い内容ではありますが、セールス的にはいまいちだったらしい。ジャケットのせいかもあるのでしょうか。これ持ってレコード屋のレジに行くのは恥ずかしいかなあ。


 さてこのアルバム、ボーカル・グループからファンク路線に完全に踏み切っています。Get Into Something は激しくファンクしていて、このアルバムの象徴のような曲でギター、ピアノ、ベース、ドラムとインスト・パートが一体となった激しいグルーブです。続く Freedom はシャッフル調のリズムでグルーヴするソウル的な曲。Take Inventory はミドルテンポの落ち着いたファンクでコーラスが曲を盛り上げています。Keep On Doin' はJB's の The Grunt と同じですがレコーディングはこちらの方が先のようです。Girls Will Be Girls はエンターテイメント色が濃いコミック的な感じがしますが、しっかりとした歌いまわしは本物。I Need You So はスローなバラードでアレンジがピアノとストリングスのアレンジで聴かせてくれます。If He Can You Can でサイケなファズギターのファンクに戻り、またもやバラード I Got To Find Me One です。ここら辺がアルバムとして凄く考えられているなと感じます。Beautiful はファルセットが美しい牧歌的な曲となり、ラストの Bless Your Heart は、大好きなパターンの粘っこいファンクナンバーで締めくくりです。アーニーのジミヘン風、ファズ・ギターや、メロー・ソウル的なところも取り入れたジャケットの見た目よりホント良質なファンクが詰まったアルバムです🎵

lead vocals and backing vocals : Ronald Isley
backing vocals : O'Kelly Isley Jr. and Rudolph Isley
bass guitar : Ernie Isley

guitars : Charles "Skip" Pitts
organ : Truman Thomas
keyboards : Everett Collins
drums : George Moreland

written by : O'Kelly Isley (1 to 6, 8 to 10), Ronald Isley (1 to 6, 8 to 10), Rudolph Isley (1 to 6, 8 to 10)

producer : O'Kelly Isley, Ronald Isley, Rudolph Isley

1. Get Into Something
2. Freedom
3. Take Inventory
4. Keep On Doin'
5. Girls Will Be Girls
6. I Need You So
7. If He Can You Can (J. Brantly)
8. I Got To Find Me One
9. Beautiful
10. Bless Your Heart

お買い得シリーズ2枚目