2023年12月8日金曜日

Booker Ervin / The Song Book

 

 The Song Book は、ジャズのスタンダード集のこと。1964年録音の、ワン・ホーン・カルテットによるスタンダード集。タフ・テナーと呼ばれ「お下品」と評されることもある独特な力強いサックスと Flanagan の優美なピアノが Ervin に惑わされることも無く絶妙なコントラストでジャズらしいダイナミックさ、Richard Davisのベースはズンズンと気持ちよくリズム隊の出来は見事。また、Alan Dawsonのドラミングに関する評価の高さがあちらこちらに散見されるのでそれにも着目して聴いてみたい。Booker Ervin の作品は、私は That's It! しか持っていませんので楽しみなところです。


 それでは全編スタンダードで固めた6曲構成をレビューです。The Lamp Is Low は、強いビートでぐんぐん迫るベースに、小気味よい Flanagan のピアノも長めのソロに大満足、最高にスウィングする Dawson の太鼓は確かに素晴らしい。息をもつかさないスピード感あふれる曲展開です。ドラムの録音状態はかなり良いので細かな表情がよくわかるうえにドラム・ソロが素晴らし過ぎました。最後はフェイドアウトなのかフェイドアウト風なのか?これも面白い。Come Sunday は、アダルトなエリントンの楽曲。しっとりとした演奏で1曲目との対比がグッときます。All The Things You Are 有名なところが出てきました。誰もが耳になじんでいる曲こそ、どのような展開なのか注目ですが、しっかりとこのアルバムの親方の Ervin が奇をてらうことなく実に楽しい進行でバンドを引っ張っていきます。曲中にダレてしまいそうなところで、音使いを変えたりしてスイングするところもお洒落な感じです。ドラミングも超スタンダードに少しづつ変化を与えてくれているかと思ったらフェイド・アウトです。どうやら先ほども風」では無かったようです。Just Friends も、スタンダードなだけに息のぴったりあったスムースな演奏が聴いていて気持ち良い。Yesterdays も言わずもがなの名曲。最近この曲を聴くことが多いような気がしますが、この演奏は結構心に残る感じがします。テナー独特のエロっぽさがありますが、それほど大袈裟なわけでもなくサラッと吹いています。ブットいサックスの後の Flanagan のピアノ・ソロの美しさが際立ちます。どこまでも聴いていたいですが曲には終わりがあるものしょうがない。Our Love Is Here To Stay で最後になりますが、サラッと終わる感じですね。ライブ・ハウスで聴いていて最後に締めくくる感じです。
 ドラムの素晴らしさはわかりましたが皆さん褒め過ぎじゃないのか?トータルで聴きごたえが評価したい。最初にガツンと持ってきて、落として、中盤はお馴染み曲でリラックスして聴いてもらい。最後はハッピーなスイングで仕上げといった構成で非常によくできたアルバムでした🎵

tenor sax : Booker Ervin
piano : Tommy Flanagan
bass : Richard Davis
drums : Alan Dawson

producer, design, photography : Don Schlitten

recorded on February 27, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

1. The Lamp Is Low
2. Come Sunday
3. All The Things You Are
4. Just Friends
5. Yesterdays
6. Our Love Is Here To Stay





  

2023年12月3日日曜日

Kurt Rosenwinkel / Deep Song


 Kurt Rosenwinkel の私の入門は intuit だったんで正統派バップ系ジャズ・ギタリストだと思っていました。しかし実はこのアルバムやScott Kinsey との実験作品みたいなものもあります。Do It 1992 では抽象的な不思議系のフレーズのギタリストでした。
 過去の私ではあまり好んで聞かないタイプのギター・ジャズでしたが今の私では余裕でこのサウンドが楽しめます。知らない音楽を聴くのは楽しいことですが聴くにいたるまでに時間はかかります。聴かないことには良さはわからないのでジャズ誌とかで絶賛されていて気になるものは購入することが多いのは私の良いクセだと思っております。
 最近はフリージャズでもノイズでも受け入れられるように耐性がついてきたので、久しぶりにこのアルバムを聴いても、この程度の抽象的なタイプの音楽では以前の私が感じていたほどの違和感はありません。他にも今まで聞いてこなかったメセニーとかのギター音楽も最近は興味を持って聴けるようになってきたり全く聴いている自分の感性が変わってきていることに改めて自分でも驚きます。


 と思って曲の印象はと言えば、1、2曲目のThe Cloister、Brooklyn Sometimesは不思議系、3、4曲目のThe Cross、If I Should Lose Youは不思議な感じはするものの意外と正統派のジャズ。5曲目の Synthetics 7曲目 Cake はサックスが前面に出たブレッカー風のテーマのアップテンポな楽曲、6曲目の Use Of Light や8曲目の Deep Song などはバラード風で聞かせてくれます。パーツとしては各楽器はジャズしてて、全体的には組み合わせると異次元からやって来たかのようなサウンドに変わるという構造が楽しめる内容。不思議世界ではあるものの、いかにもジャズギターらしい濃密な音色で幅広いスケールの使い方をしています。
 ユニークなフレーズのクセ者ギタリストであることは間違いなく、このアルバムのクォリティーは高いかもしれなく世の中ではこれを傑作というのかもしれません。何回か聴いて耳になれてくるとじっくりと味が出てきます。
 ライナーノーツによるとこの不思議さはアメリカ人であるが、ノルウェー人の血が流れていることに関係があるのでは?とか、小学校の頃にAC/DC、ラッシュにあこがれてギターを始めたとか、やはり最初の入り口はこんな人でもハードロック!だった。

guitar : Kurt Rosenwinkel
bass : Larry Grenadier
drums : Ali Jackson 
piano : Brad Mehldau
tenor Sax : Joshua Redman

producer : Kurt Rosenwinkel

1. The Cloister
2. Brooklyn Sometimes
3. The Cross
4. If I Should Lose You
5. Synthetics
6. Use Of Light
7. Cake
8. Deep Song
9. Gesture [Lester]
10. The Next Step




  

2023年12月2日土曜日

Bootsy Collins / What's Bootsy Doin'?


 マイケルとかにもよくある80年代末の機械的な打ち込み系のシャカシャカ、ペラペラな音のクセに肉感的な粘っこいグルーヴ。やはりこの人奇才ではあるのが見えてしまうアルバムです。どう考えてもテクノ系の音楽も聴きながらリズムマシン使いながら遊んでいたら出来てしまった音が良かったんで、さらにおちゃらけて見たというような余裕が感じられます。実際、彼はP-FUNKで、総帥 George Clinton の軍団メンバーとして働き、坂本隆一、Talking Heads の Jerry Harrison と活動をしていた時期もあり、おちゃらける素養は十分にあったようです。
 メンバーはバッキング・ボーカルでは、総帥である George Clinton、ラップでは Moma Collins (ブーツィーのお母さん?)、ホーン部隊には Maceo Parker も参加の楽しそうな内容です。Bootzilla、Bootzilla、Boot-Tron などの名前は恐らく Bootsy 本人。


 作品はエレクトリックでスペイシー、エフェクティブな打ち込みとサンプリング。好んで聴くサウンドでは無いのですが、Bootsy であると私にとっても別格に聞こえてきます。
 それでは、レビューです。 Party On Plastic (What's Bootsy Doin'?) は、イントロの力強いラップの掛け合いが迫力ありリズムがあって素晴らしく、様々な曲が絡み合い、これもあれも聴いたことがあるといった内容が素晴らしい。デジタルにつなげながら違う曲にしてしまうDJ的な手法もありのデジタルばかりと思ったらスラップ・ベースもカッコ良い。 Subliminal Seduction (Funk Me Dirty) 思いっきりデジタルなテクノ・ポップになるが当時としては新しいんでしょう。ボーカルの姉さんも迫力。スキではない曲調なんですがBootsy なら採点は甘くなります。Leakin' 思いっきりサンプリングとプログラミングで、エレクトロ・ポップの嫌いなところ満載の典型ですね。これも作り手が良いのでセンス良しで許します。Shock-It-To-Me ヤクにやられて絶叫しているようなオジサンの声から入りセクシーなお姉さんの歌声とラップのドッキングにヘビーメタルなギターがソロだけ入ります。繰り返されるサビは、またどっかの曲のパクリですが合ってます。1st One 2 The Egg Wins (The Human Race) 軍隊のラッパ風のキーボードに軽快なラップ。卵巣に最初に到達したヤツの勝ちって意味らしい。Love Song は、ストリングのキレイな感じからは始まるデジタル・ポップ。思いっきりセクシー風に歌いあげる男性ボーカルに何かコミカルな要素も感じる曲の作りとしては本格的な曲。(Iwannabee) Kissin' U ラブソング的なところが続きます。プリンスの曲でこんなのあったような気がします。-ing The 'Luv Gun' 曲名だけ見て Kiss の要素が無いかどうか聞いていたけど、さすがにそれは無かった。Yo-Moma-Loves Ya は、ソフトロック路線でコード進行とメロディー的には Police の Every Breath You Take ですね。曲名からすると人間愛の曲なのでしょう。赤ちゃんの泣き声も聞こえます。Save What's Mine For Me は、夜の星空を原っぱで眺めるイメージのイントロから始まるミドルテンポのポップス。最後はまじめなラブ・ソングで締めくくるようです。
 派手でデジタルなだけの印象があったアルバムですが久しぶりに聴き直すと、もしかしたら深みのあるアルバムかも知れないと思い始めています。遊びが好きな人種なのでおちゃらけの中に何か大事なもの少しだけ入れているのかもしれませんね🎵

bass : Bootsy, Bootzilla, Casper (7), The Player (3)
lead vocals : Bootsy, Gary Mudbone Cooper
vocals (computer talk) : Boot-Tron
rap : Mico Wave, Moma Collins, Pretty Fatt
backing Vocals : Anita Walker, Bernard Fowler, Bernie Worrell, Carolyn Stanford, Cynthia Girty, Eddie Martinez, George Clinton, Mallia Franklin, Nicky Skopelitis, Robert "P-Nut" Johnson, Taka Boom, Tony Feldman, Vicky Vee
keyboards , programmed by : Bootsy, Mico Wave, Trey 'Goldfish' Stone, Wes Boatman
sampler : Bootsy
guitar : Bootsy, Catfish, Ron 'Attitude' Jennings, Stevie 'No Wonder' Salas
drum programming : Bootsy, Mico Wave
drums : Bootsy, Bootzilla
horns (Still 'Horny Horns') : Fred Wesley, Maceo Parker, Kush Griffin, Rick Gardner

producer : Bootsy Collins

1. Party On Plastic (What's Bootsy Doin'?)
2. Subliminal Seduction (Funk Me Dirty)
3. Leakin'
4. Shock-It-To-Me
5. 1st One 2 The Egg Wins (The Human Race)
6. Love Song
7. (Iwannabee) Kissin' U
8. -ing The 'Luv Gun'
9. Yo-Moma-Loves Ya
10. Save What's Mine For Me



  

2023年12月1日金曜日

Michael Brecker / Tales From The Hudson

 

 1996年、4作目のストレートなアコースティック・ジャズで、ウインド・シンセも使わず生テナーでの取り組みです。但し3曲目でギター・シンセを Pat Metheny が使っています。全体的には、ハードバップ全盛期のジャズが熱かった50年代から60年代のストレートな作風でハードバップの進化系として Michael の魂のこもったブロウに満足の一枚です。ただ違うのは96年録音のクリアで現代的な録音の音質で聴きやすく入りやすい。
 イメージ的には無機質な感情を押し殺したサックスのイメージが彼にはあるがこのアルバムに関してはさにあらず。熱い演奏が楽しめます。


 かなり売れたアルバムで、アメリカの ビルボード では、ジャズ・アルバム・チャートで 2位、第39回グラミー賞では、最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞を受賞し、収録曲 Cabin Fever は最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・ソロ賞を受賞です。
 そんなアルバムをレビューです。Slings And Arrows アップテンポで全開の迫力。Jack DeJohnette のドラムの音のリアル感が凄いですね。Midnight Voyage ピアノの Joey Calderazzo作の哀愁路線の渋いミディアムの4ビート。Michael Brecker のサックスも無機質どころか有機的に他のメンバーと絡み合い渋みのある演奏。Song For Bilbao は、Pat Metheny 作のラテンノリで McCoy Tyner の重厚なピアノと良くマッチしています。ギター・シンセが入っているのと楽曲の作りこみにより、この曲はフュージョンテイスト。Beau Rivage は、Michael Brecker の作ではありますが、曲調は Pat Metheny っぽい大地を感じる大きなものを感じます。African Skies は曲名のとおりアフリカを感じるリズムと力強いテーマが魅力。Introduction To Naked Soul スローで短い1分13秒の不思議な音の世界の次の曲の序章。Naked Soul は、で厳かに静かにジャズの世界に突入しますが浮遊感のある曲と主張の強い Michael Brecker のテナーの音色でグッと引きしまります。Willie T. では、渋めのミディアムな4ビートとなり、不思議の世界から現実に戻ってくる感じで安定感のある演奏が心地よい。Cabin Fever は最後に最も熱い演奏を持ってきたようで心憎い。一番良かったかなあ。
 ハドソン川の物語のネーミングは、レコーディング・スタジオの Power Station がハドソン川の近くに立っていたのでしょうか? とにかくコンテンポラリー・ジャズの巨匠「Michael Brecker」が真剣にジャズ・フォーマットを追求したアルバムとして、これは聴きごたえのある名作でしょう🎵
 
tenor sax : Michael Brecker
piano : Joey Calderazzo (1, 2, 4, 6 to 9), McCoy Tyner ( 3, 5)
guitar : Pat Metheny
guitar synthesizer : Pat Metheny (3)
bass : Dave Holland
drums : Jack DeJohnette
percussion : Don Alias (3, 5)

producer : George Whitty, Michael Brecker

recorded and mixed at the Power Station, NYC.

1. Slings And Arrows
2. Midnight Voyage
3. Song For Bilbao
4. Beau Rivage
5. African Skies
6. Introduction To Naked Soul
7. Naked Soul
8. Willie T.
9. Cabin Fever





  

2023年11月26日日曜日

Herbie Hancock / Fat Albert Rotunda

 

 ハービーが29歳になる1969年にリリースされた8thアルバム。元々はテレビアニメのサントラとして作られていた楽曲です。当時、Hey, Hey, Hey, It's Fat Albert と呼ばれるテレビアニメの音楽を担当していて、その楽曲を大人向きにアレンジし収録しています。当時のハンコックの作品群とは内容がかけ離れていたので、ファンの間でも評価が分かれる作品とのこと。またハンコックが Blue Note から離れてメジャーの Warner Bros との契約3枚分の最初の1枚でありセールスを意識する必要があったことも、このアルバムの制作の契機でもあるようです。Warner Bros からは Mwandishi、Crossings を発表し、Columbia へ移籍し、あの Head Hunters を発表することなります。


 さて、行きつけの「おでんバー」で聴いた時にも賛否(好み)が半々だったように思われるこの作品をレビューしていきます。冒頭は Wiggle Waggle ですが、中近東音楽を思わせるイントロから、ジャズよりのジャズ・ファンクが始まります。テーマの後は各自のソロが繰り広げられセッション的な感じです。テーマに入ると物語性が強いメロディーがあるような気もします。Fat Mama いかにもファンク風のネーミング。出だしはアフリカンな雰囲気で、その雰囲気を持ってソウルっぽい感じのリフとブラスの入れ方の楽曲です。2曲を聴いてきて、ハンコックのイメージである知的ファンクよりはブラック色がでている感じがして好きな感じかもしれません。Tell Me A Bedtime Story 後に Quincy Jones などにもカバーされるブルース形式でモードな今ではちょっとしたスタンダードのような楽曲。ジャズです。Oh! Oh! Here He Comes そしてジャズ・ファンクに戻ります。Jessica では、リリカルなピアノと、柔らかいやらかいホーンの作り出す世界。曲名はハンコックのその頃生まれた娘さんの名前。Fat Albert Rotunda アニメの主人公の名前の曲ですね。明るめで軽快なジャズファンクです。つくりはやや単純。Lil' Brother は、弟って意味ですかね。やんちゃな雰囲気があるジャズファンクです。テーマ曲よりこっちの方が好きかも
 ファンキーなR&Bに寄せた曲が多数存在しているのが魅力的で、電化フュージョンに完全に移行する前の作品であるところが良い感じです🎵

piano, electric piano, conductor, producer : Herbie Hancock
electric guitar : Billy Butler (1,7), Eric Gale (1,7)
electric bass : Jerry Jemmott (1,7)
double bass, bass : Buster Williams
drums : Albert "Tootie" Heath, Bernard Purdie (1,7)
alto flute, tenor sax : Joe Henderson
alto sax, tenor sax : Joe Farrell (1,7)
baritone sax : Arthur Clarke (1,7)
trombone : Benny Powell (1,7), Garnett Brown
trumpet : Ernie Royal (1,7), Joe Newman (1,7)
trumpet, flugelhorn : Johnny Coles

recorded at : Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey

1. Wiggle Waggle
2. Fat Mama
3. Tell Me A Bedtime Story
4. Oh! Oh! Here He Comes
5. Jessica
6. Fat Albert Rotunda
7. Lil' Brother





  

2023年11月25日土曜日

The Eric Byrd Trio / Triunity


 これは The Eric Byrd Trio の自主制作版の2004年の作品を限定復刻プレスしたアルバムです。2013年発売でジャケットはオリジナルと変わっているようです。人気テナー奏者 Paul Carr(ポール・カー)もゲスト参加したマイナー・ピアノ・トリオの名盤で、現在では廃盤となっているようです。
 「Eric Byrd」はピアニスト兼ボーカリストでプロ歴は30年以上。自身のリーダーアルバムは少ないものの、Wynton Marsali、Chick Corea、Mike Stern、Randy Brecker などの著名なミュージシャンとの共演もある方でした。私の所有音源としては、今のところ 21st Century Swing Live と、この一枚です。また、このトリオは音楽史、ジャズ、そして霊歌/ゴスペル、ブルース、ジャズの関係についてクリニックを頻繁に行って音楽教育への取り組みを行い南アメリカ、中央アメリカ、カリブ海をツアーする米国国務省ケネディセンターのジャズアンバサダーやゴスペル楽団の指揮者を務めたりしています。が、マイナー系な人のようなのでメジャー系レーベルからの発売は少ない人のようです。


 さて、レビューです。Sunday Mo'nin' Chu'ch 日曜日の朝の教会と言う名の通り、爽やかな朝にミサに行くのがぎりぎりなので少し小走りで教会へ行くシーンが思い浮かびます。ベースソロは日曜日にしか会えない教会の友達と少々小難しい話でもしているかのようなところでしょうか。Get Happy は Harold Arlen 作曲 Ted Koehler 作詞のスタンダード。Judy Garland の1950年の映画 Summer Stock で使われて有名になった曲だそうです。歌無しで流れるようなジャズフォーマット。Just For a Thrill は、Eric Byrd のボーカルが聴けるバラード、ソウル感があるボーカルで良いですね。うんカッコ良い。Love Letter to Lima は、自身の作品でボサ・ノバのリズムのとても穏やかな曲です。何でもない日常感があって良いです。Nanami これも自身のオリジナル。曲名は日本の女性の名前のようですが・・激しめの情熱的な曲ですね。 Come Back to Me は、Alan Jay Lerner の古めかしいスタンダードで、Eric Byrd のボーカルが聴けます。何か楽しい人のようでこの人のライブは楽しそうだと想像できます。Lullaby For Jason Miles も自身のオリジナル。こちらはジャズフォーマットのピアノ曲ですが、スタンダードや歌物と違った音の響きの美しさが聴いて取れます。曲の並び順もバランス良しです。Wrap Your Troubles in Dreams ゴスペル調の楽曲で、弓弾きベースがユーモラスで、ピアノは余計なことをせずに楽しんで弾いているのが伝わります。これも良い曲だ。I Thought About You 1939年の Jimmy Van Heusen のスタンダード、王道スイングが気持ち良い。We Are One 自身のオリジナルでアフリカンなドラミングから始まり、そちら系のソプラノ、子供たちのコーラスが入ってくるワールド・ミュージックでほのぼのします。いきなりの曲調の変換ですが違和感なく、続けて聴けます。I Love You Lord ピアノ独奏のバラードでLaurie Klein 作曲とあります。 2分と短いですが浸みます。Roll With My Baby Sam Sweet のオールド・スタンダードで踊れるやつです。嫌みの無いソウルフルなボーカルがこれも心地よい。
 基本スウィングとビバップのオールド・スタイルで、古典的なピアノジャズあり、ボーカルものありあり、小学生のコーラスありで、さらにソウルやゴスペル的なフィーリングは嫌みがなくて音楽は楽しいもんだなって思えるアルバムです🎵

piano,vocals : Eric Byrd
bass : Bhagwan Khalsa
drums : Alphonso Young, Jr.  
GUEST
sax : Paul Carr 

1. Sunday Mo'nin' Chu'ch
2. Get Happy
3. Just For a Thrill
4. Love Letter to Lima
5. Nanami
6. Come Back to Me
7. Lullaby For Jason Miles
8. Wrap Your Troubles in Dreams
9. I Thought About You
10. We Are One
11. I Love You Lord
12. Roll With My Baby





  

2023年11月24日金曜日

James Cotton / Baby, Don't You Tear My Clothes


 2017年3月16日に亡くなりました御大 James Cotton(ジェイムス・コットン)の最後のアルバム。喉頭ガン手術を受けてから、歌えなくなってしまったためブルースハープだけ吹いておられます。とびっきりのジャケットの笑顔がまぶしいです。
 マディ・ウォーターズのバンドにリトル・ウォルターの後任として正式参加は1957年。マディのバンドには在籍1966年まで、そして1967年 Cut You Loose! (Vanguard)でソロデビュー。以降コンスタントにアルバムを作り続けて本作まで多分合計20枚。
 James Cotton を最初に聴いたのは、大学時代でブルースと言えば BBキング、マディ・ウォーターズだと思っていた私に ブルース・ハープのカ訪ッコよさ、シカゴ・ブルースという伝統芸、ジャンプ・ブルースという熱いブルースを教えてくれた、私にとってブルースを深く掘り下げてくれたの先生のような人で、訃報を聴いた時にはお疲れさまでしたと手を合わせたのを覚えています。


 このアルバムで、御大はもう歌えないのでボーカルものは ゲストによる客演です。御大のブルース・ハープも超ロングトーンやブレスなしの大技とかもなく、ゆったりとしたプレイで最後を飾っています。タイトル曲 Baby, Don't You Tear My Clothes は Lightnin' Hopkins(ライトニン・ホプキンス)の曲です。ボーカルは Bobby Rush。この人もファンク・タイプのブルースを歌う人で、ビル・クリントンが大統領に就任したとき、彼は James Joseph Brown と一緒に、ホワイトハウスでも演奏、2007年には中国で初めてのブルース・マンとして公演し、このアルバムの発売と同じ2017年に自己のアルバムでグラミー賞を受賞の人です。他、Dave Alvin が歌う Stealin', Stealin' , Doc And Merle Watson の弾き語り How Long Blues はコットンとハープでほのぼの、最後の Friends のハープを聴くとコットンのブルース人生がこれで終了したのかと感無量のハープ演奏です。

harmonica : James Cotton
piano : David Maxwell
guitar : Derek O'Brien
bass : Noel Neal
drums : Per Hanson

producer : Randy Labbe

1. Coach's Better Days
2. Baby, Don't You Tear My Clothes / vocals : Bobby Rush
3. When You Got a Good Friend / vocals, piano : Marcia Ball
4. Stealin', Stealin'  / harmony vocals, tambourine : Chris Gaffney vocals, guitar : Dave Alvin
5. Key to the Highway / vocals : Odetta
6. I Almost Lost My Mind
7. Rainin' in My Heart / vocals, accordion : C.J. Chenier
8. Bring It on Home to Me / vocals : Jim Lauderdale
9. Muleskinner Blues / vocals, guitar : Peter Rowan
10. How Long Blues / vocals, guitar : Doc And Merle Watson
11. Mississippi Blues / vocals, guitar : Rory Block
12. Blues for Jacklyn
13. Friends



▶ Friends


  

2023年11月19日日曜日

Sonny Rollins / Saxophone Colossus

 

 1956年に Prestige Records から発表した26歳の時のアルバムで、これまでに既に9枚のリーダーアルバムを発売していますが発売直後から英米のメディアで絶賛された出世作とと言われ、ロリンズの代表作としても有名です。録音メンバーも Tommy Flanagan、Max Roach、Doug Watkinsという最強ののリズム・セクションで、Max Roach の自由自在なドラミング、1962年で若くして逝ってしまう Doug Watkins の入魂のベース・プレイもこの作品の価値をさらに高めています。この作品の St. Thomas をコピーしたサックス・プレイヤーも非常に多いのではないでしょうか。


 いつもの音楽好きの集う「おでんバー」で聴いた時も、おお懐かしい。悪い訳がなかろう。20年ぶりに聴くんじゃないか。皆さんウキウキで聴きました。往々にして昔聴いたアルバムは久しぶりに聴くとこんなんだたっけ?と期待外れの(記憶の美化)なことが多いのですが、朗々としたサックス、見事な曲想と演奏で、改めて聴いても非常に気持ちがいいアルバムでした。そして実に酒を飲みながら聴くと心地よく飲めるアルバムでもあります。
 それではレビューです。St. Thomas これは、ロリンズのオリジナルでカリプソのリズムの明るい曲で、タイトルの由来はもちろん、セント・トーマス島。ロリンズの母方がヴァージン諸島出身ということもあって歌っていた、イングランド民謡 The Lincolnshire Poacher が元となっていて、ロリンズも幼い頃からカリプソに親しんできたようです。私も大学のジャズ研に入って初めてスモール・コンボを組んだ時の練習曲の一つでした。難しいことは何もない曲ですがリズムに慣れないとダサくなりがちで聴いているお客がつまらないことになりがちでした。You Don't Know What Love Is は、1941年に Gene de Paul が作曲した美しいバラード曲。深い暖かみのあるロリンズのサウンドを楽しめます。また、控えめではありますが Tommy Flanagan のソロもツボを押さえた渋いピアノが素晴らしい。Strode Rode は、ムーディーなメロディーが特徴のロリンズによるオリジナル。ソロ部分でサックス&ベースのみとなってから、ピアノが入ってくるスリリングな演奏に注目です。Moritat は、ミュージカルの「三文オペラ」の挿入歌をアレンジしたもので別名「Mack the Knife」「The Ballad of Mack the Knife」オリジナルはKurt Weill の1928年作曲。アダルトで陽気な曲となっています。Blue Seven でラストですが、これもロリンズのオリジナル。非常に渋い曲で Doug Watkins の弾くベース・ラインに合わせてロリンズの長いソロが展開され、Tommy Flanagan のピアノがコロコロと気持ち良いです。派手じゃないのがさりげなくてこれまた良い感じです。そして技術を見せびらかすのではなく音を聴かせる Max Roach のソロも素晴らしい。
 木製のカウンターでくつろぎながら聴くと安い酒もゴージャスになる。何回聴いても聴き飽きない、心地よく聴けるアルバムの一つですね🎵

bass : Doug Watkins
drums : Max Roach
piano : Tommy Flanagan
tenor sax : Sonny Rollins

recorded by – Van Gelder
recorded at Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey

1. St. Thomas
2. You Don't Know What Love Is
3. Strode Rode
4. Moritat
5. Blue Seven


▶ Moritat



  

2023年11月18日土曜日

John Scofield / Time On My Hand


 Blue Note 移籍の第一弾でアルバム・タイトルは Time On My Hand、邦題は「ギタリストの肖像」です。何か聞いたことあるネーミングです。「ジャコ・パストリアスの肖像」(Jaco Pastorius) は、1976年に発売された ジャコ・パストリアスのソロ・デビュー・アルバムで、このアルバムは1989年で10年以上前のアルバムです。何か共通点は無いのかと探ってみましたが特に何も見つかりませんでした。time on one's hands = 持て余した時間が俺にはある おそらく日本版の発売前に案を持ち寄って、会議で決定するものとあると思われますが、どのような過程で「ギタリストの肖像」になるのか、非常に興味があります。
 John Scofield は、この後1991年に発売される Grace Under Pressure しか持っていないので、活動遍歴を実際に耳で聴いているわけではないのですが「ジャズフォーマットにやや戻ったジョンスコ」と書かれているので、そうなんでしょう。


 それでは聴いて参りましょう。Wabash Ⅲ はギターとサックスの楽しいユニゾンが聴ける曲となっております。バリバリのジャズ・フォーマットです。ジョン・スコのギターは、粘りっこいオーバー・ドライブ・サウンドで、音使いも独特でギタリストよりも違う楽器のように感じます。管楽器に近い感じがしますが管楽器の音使いでもないですね。Since You Asked は、また変則的に攻めてきますが、何かエレガントな仕上がり。So Sue Me は、どこかで聴いたことがあるメロディーが出てきますが誰だかわからない。ああイライラする。何かの曲との合体ですね。Let's Say We Did は静かにきますので、ハード系の曲と交互に最初は出してきます。決して聴き手を盛り上げていこうとする構成では無いですね。Flower Power も曲名のごとしエレガントですが、ジョンスコのずらしたフレーズが曲と絡みあいながら、うねるように流れていきます。決してきれいなだけの花では無いですね。Stranger To The Light で、やっとリズムが細かく動きます。これはかなり抽象的な感じがして、私のジョンスコのイメージはこんな感じです。Nocturnal Mission は、軽くてフリーでエレガントで幻想的。Farmacology で、普通のジャズフォーマットに戻ってきました。いや普通のように聞こえるフォーマットに戻ってきました。ネオバップで、うねるうねる=気持ち良い。Time And Tide は、また不思議っぽい感じの曲です。この曲のコピーバンドやってたらどこをやっているのか見失うのが必至ですね。Be Here Now 元はしっかりしたテーマとかあるのを無理やり縮めてゴタゴタニした感じの曲で、これも変態系の曲ですね。Fat Lip これのモチーフはわかりました。Cissy Strut です。ああ嬉しい。
 かなり久しぶりに聞いたんですが、ピアノレスなので独特の自由観があり、うねるギターと歪んだ音、ジョンスコらしい曲よりジャズ・フォーマットの曲に共感を覚えます🎵

guitar : John Scofield
soprano sax, tenor sax: Joe Lovano
bass : Charlie Haden 
drums : Jack Dejohnette

producer : John Scofield, Peter Erskine

recorded at Power Station NYC November 19-21 1989

1. Wabash Ⅲ 
2. Since You Asked 
3. So Sue Me
4. Let's Say We Did
5. Flower Power
6. Stranger To The Light 
7. Nocturnal Mission
8. Farmacology
9. Time And Tide
10. Be Here Now
11. Fat Lip