2022年1月6日木曜日

Bud Powell / The Amazing Bud Powell, Vol. 1

 

 Bud Powell (バド・パウエル) の BlueNote(BLP5003)1951年リリース。1949年8月9日と1951年5月1日録音の2回に分けて録音され1955年には収録曲を変更して12インチLP盤(BLP1503)がリリースされています。今回のアルバムは後発の(BLP1503)をCD化したバージョンです。Un Poco Loco のTakeが3パターン続けて収録されていて It Could Happen To You は(BLP5003)とは異なるTakeが収録、A Night In Tunisia については、異なるTakeと合わせて2曲、Dance Of The Infidels、52nd St. Theme、Wail、Parisian Thoroughfare は(BLP5003)には無い追加曲、(BLP5003)にあったYou Go To My Head は消えています。そして曲順も全く異なるものとなっているので(BLP5003)は持っていませんが、かなり印象の異なるアルバムになっていると想像されます。そしてこのアルバムのタイトルに Vol. 1 がついている通り Vol.2 を1953年の session録音で発表しているので、おそらく最初の録音後に続くアルバムを録音する企画が持ち上がり、Vol. 1, 2 のタイトルにして楽曲や構成を組みなおしての録音となったものと推測されます。


 ピアノ・スタイルは右手の高速なシングルトーンと、左手はコードプレーで頻繁なコードチェンジに徹する形です。パウエルの最盛期は1940年代後半から50年代初頭にかけてと言われておりこれはその時期の作品で、他をあまり聞いていないのでわかりませんがこのアルバムでは終始「唸りっぱなし」でこの人も「唸るピアニスト」であったようです。音楽にのってくると唸る人は多いですがこの人は常に唸りっぱなしなのが特徴的ですね。50年代中期以降は麻薬やアルコールなどの中毒に苦しみ、精神障害となっています。
 また特徴的なのは、Un Poco Loco が冒頭から続けて3Take入っていることでしょうか。一聴して難易度の高い曲ですので、納得がいくまでに時間がかかったようです。1Take目はピアノソロも少し迷走していて途中で曲は突然終わります。2Take目はカウベルの入れるタイミングを変えていますが、音質が少し耳障りです。ピアノソロも未だ手探りしているようなところも見られ、ドラムソロに入るタイミングもブレイクなのかなんなのかよくわからない感じ。そして3Take目になるとカウベルの音量が下がり録音のバランスも良くなり流れるように曲の完成度も高くなっています。このような完成に至るまでの録音を続けて収録ってのもかなり珍しい。似たように未完成でも入れてしまった曲はこのアルバムにもう1曲あります。最後の Parisian Thoroughfare は、ベースソロか?と思ったところで話し声がして録音がぶった切れています。演奏を中断してしまったのか?それとも・・演奏は素晴らしいことはもちろん、こういったところも興味深い録音です。

piano : Bud Powell
bass : Curly Russell (1 to 3, 6 to 8, 12), Tommy Potter (4, 5, 9 to 11)
drums : Max Roach (1 to 3, 6 to 8, 12), Roy Haynes (4, 5, 9 to 11)
tenor sax : Sonny Rollins (4, 5, 9, 11)
trumpet : Fats Navarro (4, 5, 9, 11)

producer : Alfred Lion

recorded on August 9, 1949 (tracks 4, 5, 9 to 11) and on May 1, 1951 (tracks 1 to 3, 6, 7, 8, 12).

1. Un Poco Loco (1st Take)
2. Un Poco Loco (2nd Take)
3. Un Poco Loco
4. Dance Of The Infidels
5. 52nd St. Theme
6. It Could Happen To You (Alternate Master)
7. A Night In Tunisia
8. A Night In Tunisia (Alternate Master)
9. Wail
10. Ornithology
11. Bouncing With Bud
12. Parisian Thoroughfare





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2022年1月4日火曜日

Josh Dion Band / Anthems For The Long Distance


 タワレコで試聴していたら、見知らぬバンドがあるので聞いてみると「疾走感」「開放感」「古き良きアメリカン・ルーツ・ロック」にガツンとやられ、直ぐに「買いだ!」と購入させていただいた一枚です。購入した後で youTube を見たら、リーダーのJosh Dion (ジョッシュ・ディオン) のドラムの叩き方が独特でエネルギッシュで、これもかなり印象に残りました。


 Josh Dion (ジョッシュ・ディオン)は、ドラマーでリーダー、そしてソング・ライティングもこなします。ルーツロックだけでなくポップス的な要素がじんわりにじみ出ているところが素晴らしく、最近この手のバンドに興味が薄れている私の心にも響きました。
 サザンロックな Makin My Livin は、楽曲も優れていますが、印象的なイントロのギターから始まり、これをモチーフにしたシングルノートのリフとして曲全体に使われているところにバンドって良いなあって感じの音作りになっていて大好きです。次の推しは3曲目の Walkin On Stilts で郷愁漂うノスタルジックなメロディーとシンプルな楽曲構成が好感。Feel もアップテンポで跳ねるようなポップさがにじみ出るロック。Hold Fast は、繊細な音で楽曲が構成されていてホッとさせられる。Take The Time はカラッとしたギターのイントロ、話しかけるような曲メロで良い。
 ちょっぴり切なさを感じ、繊細に音をメンバーが埋めていって、ジワジワと貯めてから感情を盛り上げるアレンジで時にシャウトしながらパワフル。
 このバンドを聴いていると、とにかくバンドって素晴らしい。仲間と音楽をやれると楽しいんだぜ。なんてことが感じられます。ロックバンドも、もう一回やってもいいかなって気になります🎵


drums, lead vocals : Josh Dion
lead vocals : Sara Versprille
piano, keyboards, vocals : Pat Firth
guitar, vocals : Daniel Hindman
bass, vocals : Brian Killeen

recorded by Justin Colletti at Monsterland Studios in Brooklyn, NY
Tranks (1-9)
recorded and mixed by Peter Denenberg at Acme Studios in Mamaroneck,NY(10)

1. Makin My Livin
2. Line Em Up
3. Walkin On Stilts
4. Porch
5. Feel
6. Pilot
7. Heartache
8. Hold Fast
9. Take The Time
10. As We




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2022年1月3日月曜日

Jaco Pastorius / Live In Italy


 死後3年の1991年に発売された1986年のイタリア・ローマでのライブ未発表音源。録音はジャコの亡くなるヤク1年前です。メンバーはJaco Pastorius (ジャコ・パストリアス)、Bireli Lagrene (ビレリ・ラグレーン)、Thomas Böröcz (トマス・ボロッチ) のトリオでの演奏。


 ビレリはジャズではなく、ロック・フュージョン系ギタリストになりきってのプレイでディストーションの効いた音色で、1曲目の Improvisation No.1 / Teen Town では ディープ・パープルの Smoke On The Water のリフが出てくるなどの(凡人がマネするとケガする)サービスもあります。選曲も2曲目はボブマーレイの I Shot the Sheriff ラストはジャズ・スタンダードの Satin Doll も出てきて非常に面白い。ビレリの Smoke On The Waterのフレーズのサービスかと思っていたら、一挙にジャコのベースが飛び出してきてジャコの世界になる。そのあたりが他のジャコのライヴ・アルバムと違っていて非常に面白い。



 時期的にはジャコが麻薬治療で入退院の時期で、ここらへんの録音のジャコの演奏には調子の良し悪しに非常にばらつきがあります。このアルバムは比較的ジャコのベースも粒立ち良いことから演奏コンディションは良く、躁の状態の時の演奏で荒い演奏だと思います。このヨーロッパ・ツアー時にスタジオ録音したのはビレリ名義の Stuttgart Aria です。アルバムとしてはこちらの方がチャンとしているかな🎵

bass : Jaco Pastorius
guitar : Bireli Lagrene
drums : Thomas Böröcz

producer : Jan Jankeje

recorded March 1986 in Italy

1. Improvisation, No. 1/Teen Town
2. I Shot the Sheriff
3. Continuum
4. Fannie Mae
5. Black Market
6. Satin Doll





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2022年1月2日日曜日

ZZ Top / Fandango!


 私の ZZ TOP の入り口は Eliminator や Afterburner のようなドラム・プログラミングしたデジタルサウンド+ブルース・ロックのようなイメージでした。しかしこれを聞けばイメージは変わります。また長い髭がトレードマークでもありますが、よく見るとこのジャケットでは髭が短い!のです。

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 本作はスリーピースの ZZ TOP が激しくブギーなリズムの4作目の初期作品で、冒頭の3曲はライヴ音源、残り6曲はスタジオ録音の新曲という変則的な内容となっています。私は入り口がデジタルだったんで、Billy Gibbons (ビリー・ギボンズ)はこんな激しいギターも弾くんだと感心させられました。冒頭の Thunderbird の3連ブギーで気持ち良くなって、プレスリーのカバーの監獄ロック Jailhouse Rock での重低音のギターと、南部の泥臭いロックでテンションを上げられたところでメドレーで更に煽られます。そこからスタジオ録音で Nasty Dogs And Funky Kings でクールダウン。そこからブギーな Balinese , Tush と続いていきます。何回聴いてもノレます。ノリノリです。個人的には彼らの最高傑作と大推薦盤です。昔のZZ TOPの方が断然好き!!という方もこれを聴いたら増えるに違いない。
一人録音してみたので聞いてみる方どうぞ



Lead Guitar, Slide Guitar, Harmonica, Vocals : Billy Gibbons
bass vocal : Dusty Hill
drums : Frank Beard

Live Recorded At The Warehouse, New Orleans Captured As It Came Down

1. Thunderbird
2. Jailhouse Rock
3. Backdoor Medley
 (Backdoor Love Affair)
 (Mellow Down Easy)
 (Backdoor Love Affair No. 2)
 (Long Distance Boogie)
4. Nasty Dogs And Funky Kings
5. Blue Jean Blues
6. Balinese
7. Mexican Blackbird
8. Heard It On The X
9. Tush





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2022年1月1日土曜日

Russell Malone / Black Butterfly


 「モダン・ジャズ・ギターの王道」と称されている Russell Malone (ラッセル・マロン)です。なんといってもこの人のギターの特徴は「粒が丸く太い音」で、これぞジャズとばかりのハード・ボイルドなギターだと思います。
 最初の曲 Jingles は、ウェスの曲でCDで聴いているのに再生の回転数を間違えた?とも思えるぐらいの超高速です。ただでさえ粒が丸いギターの音が、正確無比にブロロロ・・とインパクトは抜群です。1曲目にこれを持ってきて聴く人への掴みはの効果は抜群でした。2曲目 With Kenny In Mind は、やはり Kenny は ケニー・バレル のことでウェス・ケニーの巨匠二人はラッセル・マローンのアイドルのようです。そしてタイトル曲の Black Butterfly はエリントン・ナンバー、とても落ち着いていてエレガントなメロディーでしっとり。アルバムのタイトルにもなっていますが。テーマをとても大切に弾いています。また、おそらくヘビーな太さのギター弦だとは思うのですが、チョーキングを多用してブルージーに弾いているのも、この手のジャズ・ギターでは珍しいんではないでしょうか。I Say A Little Prayer For Youなんかも良いです。


 1988年にジミー・スミスのバンドで2年演奏してからハリー・コニック・ジュニアのビッグバンドのメンバー1992年に初リーダー作発表し、これが1993年発表の2作目です。とにかく丁寧に作られていて安心感があって何よりわかりやすい、心地良い、お勧めですね。

guitar : Russell Malone
bass : Paul Keller
drums : Peter Siers
piano : Gary Motley
vibraphone : Steve Nelson

producer : Tracey Freeman

1. Jingles
2. With Kenny In Mind
3. Dee's Song
4. Cedar Tree
5. After Her Bath
6. I Say A Little Prayer For You
7. Black Butterfly
8. All Through The Night
9. The Other Man's Grass Is Always Greener
10. Gaslight
11. Sno' Peas





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2021年12月30日木曜日

Sly And The Family Stone / Ain't But the One Way


 Sly Stone ‎名義でその後 I'm Back! Family & Friendsは出ていますが、このアルバムが Sly And The Family Stone 名義での1983年のラストアルバムです。麻薬中毒治療など問題を抱えていたため、前作1979年の Back on the Right Track から4年ぶりのことでした。
 ロックとブラックミュージックの融合、クールファンクの確立など様々な音楽的革命を起こしてきた彼らですが、ポップなナンバーが多く軽薄な感じもあり、デッドストックの再編成とか、賛否両論あり従来のファンからは敬遠されている向きも見られます。L.O.V.I.N.U. などディスコなども意識した感じの曲や、スライらしい Ha Ha Hee Hee あたりもあるし、ファンクとポップ、ディスコを詰め込んだ High, Y'all。結構いけてる We Can Do It。そしてキンクスの You Really Got Me なんかも収録されていたりします。私的には寄せ集めだろうが何だろうが結構好きなアルバムです。・・が当時は販売不振だったとのこと。


 Sly & The Family Stone (スライ&ザ・ファミリー・ストーン) は、特に1967年から1975年にかけてサンフランシスコを本拠地として活動。リーダーは Sly Stone (スライ・ストーン) でテキサス州生まれ、地元のコミュニティカレッジで音楽理論を学び、卒業後の1963年にDJとしてサンフランシスコのラジオ局に入局し、ジャファーソン・エアプレインなどのレコードをプロデュースたり自身のシングルも発売したが鳴かず飛ばず。1966年に前身の スライ&ザ・ストーナーズ というバンドを結成し、同時に フレディ&ザ・ストーン・ソウルズ というバンドも結成し、この二つのバンドが合体し Sly & The Family Stone が完成したのです。デビューシングル I Ain't Got Nobody はヒットしたのですが次いで録音したアルバムはまたも不発。その後エピックに移籍し、ポップ路線の要求に、渋々ながら出したシングルが1968年 Dance to the Music は大ヒットし、ここから快進撃は始まります。
 しかし同時にスライ・ストーンは麻薬中毒にも侵され、銃を振り回し何度となく逮捕起訴されたり、コンサートで大幅な遅刻とキャンセルを繰り返しバンドは分解状態となりこのアルバムで活動停止となってしまう訳です。ということでラリー・グラハムは、これを契機にグラハム・セントラル・ステーションを結成し成功することにもなり明暗はここらへんで別れたようです。
その後と言えば、現在もご存命ではあるが、マネージャー氏との契約争いで収入無く白いキャンピングカー暮らしであるとのこと。これだけ時代をにぎわした人が、ホームレスとは何ともやるせない。

1. L.O.V.I.N.U.
2. One Way
3. Ha Ha Hee Hee
4. Hobo Ken
5. Who In The Funk Do You Think You Are
6. You Really Got Me
7. Sylvester
8. We Can Do It
9. High, Y'all

▶ One Way




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2021年12月29日水曜日

Dexter Gordon Quartet / Live At The Amsterdam Paradiso

 

 1969年オランダの Amsterdam にあるライブ・ハウス Paradiso (パラディソ) でのライブ録音。このライブハウスは元々はプロテスタントの教会で1968年にコンサートホールに改修されたものです。この場所での演奏は初めてでヨーロッパのミュージシャンをバックにしてのピアノトリオの演奏も初であったとのこと。
 Dexter Gordon (デクスター・ゴードン)は、1923年生まれでスイング時代のジャズシンガーの Billy Eckstine のバンドに在籍し、1945年からニューヨークに進出した。バド・パウエル、マックス・ローチ、アート・ブレイキーなどとの共演し、1950年代は薬物中毒のため活動が低迷していました。そして1960年代初頭から1976年にかけて渡欧し、フランスやデンマークを拠点に活動した時期の録音です。


 この夜のライブには1000人の観客が詰めかけたとのことだがオープニング、ゴードンの挨拶に観客の反応が無いのは録音状態からなのか、寒すぎたのか?とも勘ぐってしまいますが貫録たっぷりのテナーを聴かせてくれる Fried Bananas が始まります。ずっしりとした音色でこれぞジャズと黙々としたテナーを感じます。続く What's New はスロー・バラードで歌心のあるサックスで、語り掛けるようなサックスの音色が気持ち良いです。Good Bait はゆったりとしたテンポの曲で、今までかしこまって聴いていたこちら側の気持ちにも少し余裕を与えてくれます。ここで1枚目は終わります。この晩の演奏は3セットだったのことで、続く2枚目はまた違うセットの録音となるとのこと。実は最初にこのアルバムをかけたのは、ちゃんとしたオーディオセットで聴けるいつもの「おでんバー」だったのですが、かしこまって聴いていたら1枚目の途中で少し窮屈な気持ちになってしまい、このまま2枚はきついかな?と思ってしまい2枚目はほぼ聴いていなかったんですが、1セット目よりエンジンがかかってきて演奏は熱くなってきていること Willow Weep For Me、Scrapple From The Apple などの耳覚えのあるスタンダードの演奏に拍手や騒ぎ出す客も出てきて、はるかに楽しく聴くことができました。
 正直最初はのっぺりしすぎていて、聴くのがつらいかなと思っていたのが印象良く聴けた1枚です。これぞジャズの一つの形かと思います。
 ちなみのにプロデューサーの Hans Dulfer はキャンディ・ダルファーのお父さん。

tenor sax : Dexter Gordon
bass : Jacques Schols
drums : Han Bennink
piano : Cees Slinger

producer : Hans Dulfer, Joop Visser

recorded at Paradiso, Amsterdam, February 5, 1969.

【Disc1】
1. Introduction By Dexter Gordon
2. Fried Bananas
3. What's New
4. Good Bait

【Disc2】
1. Rhythm-A-Ning
2. Willow Weep For Me
3. Junior
4. Scrapple From The Apple
5. Closing Announcement





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