indigo jam unit は、2005年結成、これがそのデビューアルバム。クラシック、ジャズ、ファンク、ラテンのミックスされたインストで、ぶっといウッドベースとヒップなドラムにジャズなピアノが基本のラウドなジャズ・サウンド。レコーディングは全て一発録音、クリック無しのリアルを追求するカッコ良すぎる快作は、クラブ・ジャズ好きに、とってもお勧めです。以降、夏にレコーディング、冬にリリース、年明け全国ツアーというスケジュールを10年間続けてきて2016年で活動を休止しています。
1曲目のGiant Swingはプロレスの技「giant swing」とジャズを掛け合わせたネーミングだとか、ベースのリフの上下運動がかなり気持ち良くて私の音楽のツボにピッタリはまってしまいます。かと思えばSnowの透明感のあるアレンジが出てきて、ラテンのTeardrop、しっとりメローでエリック・サティーがモチーフのようなThe Empty Screen.と、グイグイいくのがイメージですが、色々な表情を持つ全てが indigo jam unit 🎶
さて、このCDに入っている一人目の巨匠は、ミシシッピ・ジョンハートは本名「John Smith Hurt」で"Mississippi" はセールス用のギミックです。ブルースシンガーにありがちな、ダミ声ではなく、少し鼻にかかった柔らかな声で穏やかで和みますカントリー・ブルースの教本では、必ず出てくる人です。オールドタイムやフォークに近く、タイム感と楽曲の構造は現代のブルースとは完全に違って理解しにくいのですが、スリー・フィンガーのギターの弾き方などは繊細で教則本に載る譜面では現代人が理解しやすいようにアレンジされているものが多いです。収録は13曲ありますが、1928年2月14日①②、1928年12月21日③~⑥、1928年12月28日⑦~⑬の3回の録音で当時ミシシッピ州アバロンに住んでいた彼にメンフィスにきてもらって録音していたのが、ホームシックと大都会のカルチャーショックで行き来しての録音となったとのこと。有名になったのはずっと後の1963年で農民をやりながらギターを弾いていた彼を発見し、ニューポート・フォーク・フェスティバルへ出演してもらったのが、きっかけとのこと。都会の水が合わなかったのか再発見の3年後の1966年11月に心臓発作で亡くなってしまっています。
もう一人の巨匠は、リチャード・ラビット・ブラウン「Richard "Rabbit" Brown」
当然 "Rabbit"はギミックです。ダミ声までいかないが少ししゃがれた歌声のニューオリンズのストリートミュージシャンで、生涯で6曲しか録音されていないうちの5曲がこのアルバムに入っていて、James Alley Blues は、ボブ・ディランがカバーしています。楽曲は全体的に現代のブルースに近づいていますので、ミシシッピ・ジョンハートよりはるかに理解しやすいと思います。I’m Not Jealous のギターの低音源をバチバチ音を鳴らす スナッピングは印象的でした。Sinking Of The Titanic は、あのタイタニック号の沈没を歌っています。勇ましい歌い口で、歌で物語を語るような感じです。
最後の巨匠、ハンボーン・ウィリー・ニューバーン「Hambone Willie Newbern」は、このアルバムで初めて知りましたが、酒のみの雰囲気が漂ったいい声してます。テネシー州ブラウンスヴィルの住人で、スリーピー・ジョン・エステスは彼からギターを教わったと言われていますが、詳しいことは余り知られていません。ギターワークは一番現代ブルースに近いロバート・ジョンソンタイプで「Roll and Tumble Blues」は「Rollin' and Tumblin'」の原曲とどこかに書いてありました。確かにそのものだと思います。ロバートジョンソンもクセが強めのソングスターですから、はるかにニューバーンの方が聴きやすいです。1929年にアトランタでたった6曲を残したものが全てここに収録されています。
1970年代のシカゴのアフロ・ファンクで、発売は Kingdom Of Chad Records。かなりアンダー・グラウンドなサウンドで、Sun Ra、Art Ensemble Of Chicago などのスピリッツを内包しているとの評もありますが少し違うんですよね。ドロドロのサウンドはアーシーでコズミックさも感じます。レコードなんかは amazon で $4,500 ですから2024年5月現在のレートで、なんと 688,500円 と高額取引。今はレア過ぎて出品もありませんので円安の今では恐ろしい金額になってしまうに違いありません。もちろん私はリイシューのCDの購入でしたからリーズナブル。入手が中古か新品かは覚えていません。2025年2月現在¥4,500でした。高くねえか?DiskUnionでは、リイシューLPは\2,750、タワレコでは、LP¥5,190 CD\2,990でしたが両方ともソールド・アウトでした。
リイシュー版の発売は、レアものの再発/発掘を手がけるシカゴのレーベルの NUMERO が立ち上げた紙ジャケ専門レーベル「アスタリクス」とのこと。アスタリクスの表記は恐らく「4*」(ライナーノーツの裏側にありました)愛聴盤ではありますが、今回調べて見て初めて知りました。
メンバーは6人でベースの Ron Harris は、Ramsey Lewis の Salongo に参加していましたが、他のメンバーの活動は結構マイナーな感じです。
それでは全曲レビューです。Introduction は、スタートからスピリチュアルな幕開け。はるか昔、最初に聴いた時には退屈な感じがした気がしますが、何十回も聴いていると、このドラマチックで大袈裟な構成とオドロオドロしいボーカルが大好きになってきます。またエンディングのベースが怪しさを醸し出すところも最高です。そしてイントロのギターのアルペジオが、普通過ぎて怪しい。Writin' On The Wall も、イントロに続き怪しさ満載の朗読ボーカルとトランス状態になっているかのような叫び。管楽器はトランペットとトロンボーンですが誰が吹いているのかフルートがホラーっぽい。行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」の常連の一人には、このエネルギー最高ですねの誉め言葉頂きました。He Keeps You あたりからは、普通にファンクの演奏ですがボーカルが野太い声で、更にどこかがアフリカンな響き。ここらへんでベースの Ron Harris の変態なベースラインとバカ馬なテクニックと正確なリズム感が気になってきます。We Ain't Free では、グルービーなリズムになってきて普通にファンクもするのかと妙に感心していると、いきなりのベースとドラムとパーカッションのアフリカンの長い間奏とフリーのようなソロに脳がやられてから最後はテクニック剝き出しのソロ合戦とサイケな展開にノックアウトです。If I Had My Way は は Sly とかが好きな人には受け入れやすい楽曲になります。ギターのカッティングとホーン部隊の上手さにも注目です。I'm What You Need では、メロー・ソウルの始まりにコマーシャルな部分を感じながら、ボーカルの野太いバリトン・ボイスが怪しさを加えながらファルセットのボーカルがポップさを加えコーラスがチャンと上手い所が怖いです。Money Won't Save You ここまで聴いてくると、この曲が一番普通に聞こえるので何かつまらなく思えてくるようになれば、相当このアルバムを聴きこんでいる証拠でしょう。私には、もはや普通過ぎて刺激が足りません。Now And Den きっとNow and Then なんですかね。普通ではありますがカオスを含んだスピリチュアルなソウル風ファンクです。
さてバラード主体のボーカルとハーモニーが特徴のこのアルバム。全曲レビューしてみます。 I (Who Have Nothing) まずは、Roberta Flack が切り出し、サビは二人のデュオ、Donny Hathaway の独唱から二人の掛け合い、情感たっぷりに腹の底から湧き出てくるような感情をの表現で、やり過ぎなのではと思うぐらいの力が入った1曲です。ハーモニーも素晴らしいですが伸ばすフレーズで、二人のビブラートの長さもシンクロしているのは今回聴いて気付きました。二人のバンドはギター Eric Gale、ベース Chuck Rainey、ドラム Bernard Purdie の当時の業界では、ありとあらゆる現場で活躍していた三人です。You've Got A Friend は、Carole King の名曲で James Taylor もヒットさせた名曲。ただこの曲に限っては Donny Hathaway の Live! に収録されているバージョン が一番好きかもしれません。ギターは、David Sanborn でもお馴染みの David Spinozza が弾いています。ストローク・プレイですが、埋もれずに密かに存在感のあるプレイです。Baby I Love You は、Aretha Franklin も取り上げた名曲。ここではカントリー風のアレンジで、サビの I Love You のリフレインは、こちらの方が印象強くアイデアの勝利。Be Real Black For Me アメリカの公民権運動を象徴する歌詞をラブ・ソングにしている曲ですね。曲調的には、いかにも Donny Hathaway の色が強いでしょうか。 You've Lost That Loving Feeling は、ブルーアイド・ソウルの The Righteous Brothers のヒット曲ですが Donny Hathaway の色が強いような気がします。 For All We Know は、Roberta Flack のピアノをバックに Donny Hathaway が歌うスタンダードで、Nat King Cole、Billie Holiday で歌われているものとは全く違う解釈です。近い解釈では Nina Simone も発見しクラシックの素養がある人の解釈としては近いものがあるかもしれません。ここまでシリアスな楽曲の展開ですが Where Is The Love で、ポピュラーな感じになり、ホッとします。これは、かなりヒットした曲で、この二人のバージョンが印象的です。Come Ye Disconsolate はゴスペルで、このアルバムのボーカル曲のラストにこの曲を持ってきたことは、様々な音楽性がある二人の、また共通の音楽の大事なルーツでもあることを示していることかと思います。そして最後は二人のピアノのデュオの Mood です。Donny Hathaway のエレピの揺れと、Roberta Flack のクラシカルなピアノのプレイは、二人の音楽の相性の良さを見せてくれます。
もう今の若い世代は、Billy Joel を知らない人も多いのではないかと思いますが、Piano Man、The Stranger、The Stranger、My Life ぐらいは聴いたことはあるんじゃないかと思います。1973年の Piano Man での再デビューから、直ぐに全盛期で10年以上にわたってよくも、まあこれだけヒット曲を出せたもんだというヒットメイカーで、アルバムは持っていないけど曲はかなり知ってるミュージシャンなんて、そうはいません。
先ほど1973年で再デビューと書いていたのは1971年 Cold Spring Harbor は、Family Productions なるレーベルから発売されたが、録音されたテープの再生速度を上げられてレコードが発売されてしまい、別人んお歌声になりヒットもしなかったのですが、Columbia Recods と契約し、Piano Man を発売したからで再デビューと言うよりは、メジャーデビューかもしれません。そこからの An Innocent Man までのアルバムは下記の通り
Piano Man(1973)歌詞に登場するキャラクター達は実在の人物で、タダ酒を回してくれるバーテンダーはビリーのマネージャー、酔っ払いを上手にあしらっているウエイトレスは当時の妻エリザベスだ。そして、酒で孤独を紛らわせる客をピアノ演奏で気分よくさせているのは、もちろんビリー自身。歌詞の中で 「こんなところで何やっているんだ?」 と客に鼓舞されているように、ビリーの音楽的才能は誰の耳にも明らかで、ほどなくコロムビア・レコードから声がかかったことでビリーは約6か月間のピアノ・マン生活を卒業するとともに、そこでつぶさに観察した市井(しせい) の人々の様子をこの曲に永遠に刻みつけた。
3拍子のワルツの名曲です。
Just The Way You Are (1977) この曲のミュージック・ビデオは、大ブレイク直前の1977年秋に撮影されたもので、カーリーヘアにギョロっとした大きな目で熱唱する若々しいビリーの姿を見ることができる。そのルックスは、ちょうど同時期に大ヒットしていた映画 『ロッキー』 の主人公を彷彿とさせた。この曲の日本盤シングルのジャケットでは、ボクシング・グローブを背負った写真が使われていて、ますますロッキーを連想させたが、実際にビリーはボクシング経験者。アマチュアながら22勝4敗の好成績を残している。一見、‘バラード・シンガー’ というソフトな印象が強いビリーだが、生粋のニューヨーク育ちだけあって、ハードな側面を持ち合わせており、背景を知れば知るほど、奥深いミュージシャンだ。
Monk が Bud Powell のヘロンイン所持を庇ってキャバレーカードを没収されたのが1951年、その後NYエリアでの演奏活動が出来ずにいたが、マネージャーの Harry Colomby と ニカ夫人の尽力で1957年に奪回し、NYでの活動を再開し、Coltrane と1957年7月18日から12月26日までマンハッタンの Five Spot で活動することになります。その1958年のニューヨークの Five Spot Cafe でのライブ録音がこのアルバム。同じショーの録音が Thelonious in Action として発売されています(残念ながら持ってません)。また、恐ろしく音の悪い未発表音源の The Thelonious Monk Quartet Featuring John Coltrane / Live at the Five Spot Discovery! (1957) も後に発売されています。この時代それほど当たり前に、このクラスのジャズ・アーチストのライブが身近に聞けたということで、これだけ凄い演奏なのに酒を飲んで騒いでいる客がいます。私もこんなライブ聞きながら騒ぎながら酔っ払ってみたいです。
なお、ジャケットはイタリアの画家 Giorgio De Chirico(キリコ)の作品です。後のシュルレアリスムに大きな影響を与えた画家だそうです。「口頭、記述、その他のあらゆる方法によって、思考の真の動きを表現しようとする純粋な心的オートマティスム。理性による監視をすべて排除し、美的・道徳的なすべての先入見から離れた、思考の書き取りを定義し、シュルレアリスムはジークムント・フロイトの精神分析とカール・マルクスの革命思想を思想的基盤とし、無意識の探求・表出による人間の全体性の回復を目指した」という難解な定義と歴史があるようですが、日本では1930年以降はブルトンが提唱した無意識の探求という本来の目的から離れ、「現実離れした奇抜で幻想的な芸術」という意味で「シュール」という日本独自の概念・表現が生まれることになったそうです。
1957年に Five Spot へ復帰したメンバーは、サックスが John Coltrane、ベースがAhmed Abdul-Malik ドラムが Shadow Wilson この1958年では サックスが Johnny Griffin へ、ドラムが Roy Haynes へと変わっています。
1957年のセッションでは John Coltrane の奔放さがあるため、モンクがリズムキープに回り気味のバランスだったような気がしますが、本アルバムでは Johnny Griffin のテナーとピアノの掛け合いの具合がちょうどよい気がします。録音によってモンク臭さの度合いが違うと思うのですが、これはモンク臭さがかなり出ていると思います。
全曲レビューです。「Nutty」モンクの先導でテーマが始まるモンクらしい音が詰まっています。グリフィンのソロが始まったときは、モンクがリズムをきっちりと入れて伴走し、佳境になると、今度は音量も抑えめのコードを少し抑えるだけにしてドラムとベースに先導役を任せる。そこからピアノソロでは 自分の色を出しまくりながら、きっちりとスイング。 「Blues Five Spot」ブルース・セッションになります。聴きどころは Johnny Griffin を一人だけ置き去りの長めのソロかと思います。ソロの後の客のやる気のない拍手は少し残念。ベースソロまで行くと客の手拍子が少し聞こえます。ソロ回しの後のテーマに戻ると、モンクが最初だけ、エコーのようにフレーズを重ね、以降もやるのかなと期待していると通常運転の面白い仕掛けもあります。「Let's Cool One」これも他愛もないメロディーのテーマですが、モンクだと直ぐにわかる楽曲。優しい響きのコード進行に身を任せての、各自の伸びやかなソロが楽しいです。モンクも Johnny Griffin のソロで楽し気に弾きながら歌っているのが聞こえます。そしてまた Johnny Griffin を一人だけ置き去りのソロですが、2曲目より更に長い超ロングソロで、今度は客の拍手はヤンヤになってきて良い雰囲気。当然続くモンクのソロもノリノリになるのは当然です。最後の〆の息もピッタリ。In Walked Bud このBud Powell のことでしょうか。珍しくモンク節ではない正調スイングのモンク曲です。Bud Powell は、50年代中期以降は麻薬やアルコールなどの中毒に苦しみ、精神障害(統合失調症を負ていたので、その励ましの曲かと思われます。Just A Gigol 本アルバムの中で唯一のモンク以外の作曲者の曲となりますが、しっかりモンク節を入れているピアノ・ソロです。ライブでしんみりするところですね。短いながらも味わい深い演奏です。「Misterioso」 非常に簡単な旋律でありながら、幾何学模様のように音が散りばめられている、印象が強烈なタイトル曲「Misterioso」あまりに印象的すぎて一度聴いたら忘れられないヤツです。この曲の Johnny Griffin も吹きすぎず、引っ込み過ぎず、非常に良い味を出してます。モンクのソロ中の休み時間は非常に長いですが、Johnny Griffin のソロに聞き入っているのでしょう。合間合間でウーと掛け声を入れてくるところがあります。モンクも、その後雄弁に語るかのような長尺のピアノ・ソロで、なるほどテーマ曲にした貫録の演奏です。「 'Round Midnight 」モンクの代表曲の一つで、モンクの曲の中でも後進のミュージシャンに演奏されて愛されている曲です。モンクは終始ご満悦で、ずっと唸り声が聞こえます。代表曲ではありますが、所謂モンク節は少な目なのにモンクの演奏とわかるのが、また本家。「Evidence」これはモンク節の権化のような楽曲で、メロディもそうなんですが、コードをタイミングが他の曲では節目節目にモンクが入ってくるのですが、この曲はずっとモンクで、この入れ方で更にスイング感が増しているような気もする魔法の旋律です。セミの鳴き声のようなモンクの唸り声はもう一つのBGM。