2025年1月23日木曜日

Lee Konitz with Warne Marsh

 

 1940年代、流行りはチャーリーパーカーの時期に Lennie Tristano(レニー・トリスターノ)、Lee Konitz(リー・コニッツ)、Warne Marsh(ウォーン・マーシュ)らは別の方向を目指して、ビバップとは対比的なクール・ジャズと呼ばれることになる方向へ進みました。コニッツはレギュラー・グループを持たずアルト・サックス1本で世界中を回り、初めて会う相手との即興演奏でステージを作ることを好みました。1927年生まれでクロード・ソーンヒル楽団の一員として1947年にレコーディング・デビューして以来70年にわたって活躍されています。マイルス・デイビスの名盤 Birth Of The Cool にもメンバーとして参加していて、この作品のメンバーで現存する最後のひとりとしても知られていたのですが、2020年4月15日に新型コロナウイルス感染症の肺炎により亡くなられています。
 改めて私の手持ちの音源を調べてみると、セッションでは渋めのアルバムに参加しておられます。Dave Brubeck / All The Things We Are、 Miles Davis / Birth Of The Cool、 Kenny Burrell / Guitar Forms、リーダー名義では、Lee Konitz with The Bert Van Den Brink Trio / Dia Logues、Lee Konitz Hein Van De Geyn / Meeting Again 

 

 このアルバムは4曲目の Donna Lee までがスタンダード、後半の4曲がオリジナルで、このアルバムではサックスはとても良く歌っていて、まるでしゃべっているかのように饒舌です。コニッツがアルトで語りかけるとウォーン・マーシュがテナーが答える。おしゃべりをしたり、笑ったり、歌ったりの掛け合いです。この二人のほかにオスカー・ペティフォードのベースも跳ねるように演奏しながらも、重みのあるベースで、周りに緊張感を与えています。クールな雰囲気づくりに対比的に影響を与えていることも印象的なところです。このアルバムの醍醐味はオリジナルのB面だとは思いますが、スタンダードのTopsy, Donna Lee も聞き逃せない。ここらへんのスタンダードを聴いて心を落ち着けてから、B面にいくから全部合わせての作品かなあ。特有のクールなムードで差別的な意味なく古き良き白人ジャズの世界ですね🎶

alto sax : Lee Konitz
tenor sax : Warne Marsh
piano : Ronnie Ball (7), Sal Mosca (2, 4 to 6, 8)
bass : Oscar Pettiford
drums : Kenny Clarke
guitar : Billy Bauer

producer : Nesuhi Ertegun
recorded June 14, 1955

1. Topsy (Edgar Battle; Eddie Durham)
2. There Will Never Be Another You (Harry Warren)
3. I Can't Get Started (Vernon Duke)
4. Donna Lee (Charlie Parker)
5. Two Not One (Lennie Tristano)
6. Don't Squawk (Oscar Pettiford)
7. Ronnie's Line (Ronnie Ball)
8. Background Music (Warne Marsh)

Topsy




  

2025年1月22日水曜日

Funkadelic / One Nation Under A Groove


 1978年のファンカデリック名義の通算10作目。キーボードの Walter 'Junie' Morrison の曲が主体となり、後期ファンカデリックの始まりとなったアルバム。ギターがメインのブラック・ロック的要素から、かなりファンクの要素が強くなってきています。


 このアルバムでは Eddie Hazel は参加していません。と言うのもエディは1974年にスチュワーデスに対する暴行および薬物不法所持にて1年間の懲役を受け、その間に Funkadelic はギタリストとして Garry Shider, Michael Hampton を迎えおり、1975年のアルバム Let's Take It to the Stage に彼のリードギタリストの座は無く、本アルバムからエディーの名前はファンカデリックから消えることになるのです。


 そして、今回のアルバムでは全編に渡り Michael "Kidd Funkadelic" Hampton が長尺の超絶ギターを炸裂させています。とは言ってもソング・ライティングの主導は先にも書いたキーボードの Walter 'Junie' Morrison となっていますので、アルバム・タイトル曲の One Nation Under A Groove の骨格はシンセで組み立てられることとなっており、従来のファンカデリックとは少し異なった毛色となっているのです。そしてファンクの旗のもとに結束を誓う、ゆったりとした曲調から後半ベース、ギター、キーボードの応酬の Groovallegiance。Who Says A Funk Band Can't Play Rock?! では、ロックだってもともとは黒人が生み出したもんだぜ!とばかりにマイカルのロック魂が主張しています。Promentalshitbackwashpsychosis Enema Squad (The Doo Doo Chasers) は何が言いたいんだかさっぱりわからないが、クスリでもやっているかのような幻想的な曲調が、いかにもファンカデリックらしい。Into You は低音のRay Davis(レイ)がリード・ボーカルをとり変態加減が絶妙。Cholly (Funk Getting Ready To Roll!) は、ブーツィーのベースととバーニーのキーボードが素晴らしい働きをしている。Lunchmeataphobia (Think! It Ain't Illegal Yet!) は、激しいディストーションのかかったギターが攻めてくるロックで昼飯を食べながらこんな音楽は聴いていられないと思います。そして、またファンカデリック的幻想曲の P.E. Squad / Doo Doo Chasers が入り、ここら辺の曲の並べ方なんかはいい加減なようで結構計算されていると感心します。そして最後はお馴染みの Maggot Brain のライブ盤です。
 「One Nation Under A Groove」訳せば、「グルーヴ体制の元、国は一つ」全米R&Bアルバム・チャートNo.1も貫録の、こんなアルバムは流行ってはいかんと思いつつ、こんなアルバムが大好きです🎵

vocals : Cordell Mosson, Dawn Silva, Debbie Wright, Garry Shider, George Clinton, Greg Thomas , Jeanette Washington, Junie Morrison, Lynn Mabry, Mallia Franklin, Ray Davis, Ron Ford
keyboards, synthesizer : Bernie Worrell, Junie Morrison
guitar : Garry Shider, Michael Hampton
banjo : Bobby Lewis
bass : Bootsy Collins, Cordell Mosson, Rodney Curtis
drums, percussion : Bootsy Collins, Jerome Brailey, Larry Fratangelo, Tyrone Lampkin

producer vocals : George Clinton

1. One Nation Under A Groove
2. Groovallegiance
3. Who Says A Funk Band Can't Play Rock?! (Hampton)
4. Promentalshitbackwashpsychosis Enema Squad (The Doo Doo Chasers) (Brown)
5. Into You (Worrell, Collins)
6. Cholly (Funk Getting Ready To Roll!) (Collins)
7. Lunchmeataphobia (Think! It Ain't Illegal Yet!) ()
8. P.E. Squad / Doo Doo Chasers
9. Maggot Brain (Hazel)





  

2025年1月21日火曜日

Herb Ellis / Six Classic Albums


 特にファンではなかったんですが、youtube の動画でご老体になられながらも達者な指さばきを拝見して気になったので、タワレコを見ていたら当時いろいろなアーチストのシリーズがあった「Six Classic Albums」を購入してみました。このシリーズお得ではあるんですが、たまに聴いて見ようってきが起きなくて持っているだけで満足してしまう傾向があるように思います。そんなこともあり、ローテーションで聴きながらこのブログでレビューを書いているので、今回は、Herb Ellis / Six Classic Albums です。
 
 The Great Guitars: Barney Kessel, Charlie Byrd and Herb Ellis この映像を見て、なんてグレイトな爺さんなんだ!と思っていました。


 Herb Ellis は、1921年テキサス州ダラス生まれのギタリストで、1943年頃から Glen Gray And The Casa Loma Orchestra、Jimmy Dorsey's Orchestra に参加してキャリアをスタートしています。その後は Oscar Peterson Torio (1953-1958) Ella Fitzgerald (1957-1962) などで活動され、2010年に自宅でアルツハイマー病のため88歳で亡くなられています。
 本CDに収録は6枚
Ellis In Wonderland 1956

 リーダーとしてのデビューアルバムで piano : Oscar Peterson bass :  Ray Brown と3管体制。張りのあるギターの音で明るいスイング曲が気持ち良いアルバム

I love John Frigo…he swings 1957

 ジャズバイオリンの Johnny Frigo のデビューアルバムに Herb Ellis が参加のアルバム。曲目は多彩で、正調なジャズ、印象派のような楽曲曲や、があり、フリーゴは Big Me – Little Me で、バイオリンとベースの両方を演奏して、います。Herb Ellis は控えめですが柔らかな感じのギターソロでうまくこのアルバムにフィットさせています。

Nothing but the blues 1957

 得意とするブルース・ナンバーのアルバムで、当時オスカー・ピーターソン・トリオに在籍していたエリスとレイ・ブラウンの絶妙なコンビネーション、あまりブルースと縁のなさそうなスタン・ゲッツも乗りに乗ったプレイの展開

Herb Ellis meets Jimmy Giuffre 1959

 テナーサックスの Jimmy Giuffre とともに制作したアルバムで、温かみのある演奏で、優しい雰囲気に包まれています。寒い時期に暖かい珈琲でものみながら、聴いてほっこりしたいです。
Thank you Charlie Christian 1960

 タイトル通りチャーリークリスチャンに捧げたアルバム。ですが、10曲中8曲がハーブエリスのオリジナル曲で構成で Charlie Christian の曲が、収録されているわけでは無いようですが演奏の中身は濃いですね。ギター・ジャズ好きとしては中々良かったです。

for Musicans only 1956

 Dizzy Gillespie, Stan Getz, Sonny Stitt が集結したビ・バップ作品です。フロントラインはうねる複雑なソロを展開しますが、ベーシストの Ray Brown は、ソロの背後で曲をしっかりと支えた評価も高い作品です。


【DISC1】
(Ellis In Wonderland 1956)
guitar : Herb Ellis
trumpe : Harry "Sweets" Edison
alto sax : Charlie Mariano
baritone sax, tenor sax, clarinet : Jimmy Giuffre
piano : Oscar Peterson
double bass : Ray Brown
drum : Alvin Stoller
1. Sweetheart Blues
2. Somebody Loves Me
3. It Could Happen To You
4. Pogo
5. Detour Ahead
6. Ellis In Wonderland
7. Have You Met Miss Jones?
8. A Simple Tune

(I love John Frigo…he swings 1957)
violin, double bass : Johnny Frigo
trumpet : Cy Touff
piano, celesta : Dick Marx
guitar : Herb Ellis
double bass : Ray Brown
drums : Norm Jeffries
9. What A Diff’Rence A
10. Polka Dots And
11. Blow Fiddle Blow
12. Blue Orchids
13. Gone With The Wind
14. Squeeze Me
15. You Stepped Out Of A
16. Moonlight In Vermont
17. If Love Is Good To Me
18. Big Me – Little Me

【DISC2】
(Nothing but the blues 1957)
1. Pap’S Blues  
2. Big Reds Boogie Woogie  
3. Tin Roof Blues  
4. Soft Winds  
5. Royal Garden Blues  
6. Patti Cake  
7. Blues For Janet  
8. Blues For Junior 

(Herb Ellis meets Jimmy Giuffre 1959)
9. Goose Grease  
10. When Your Lover Has Gone  
11. Remember  
12. Patricia
13. A Country Boy
14. You Know
15. My Old Flame
16. People Will Say We're In Love

【DISC3】
(Herb Ellis meets Jimmy Giuffre 1959)
1. A Country Boy
2. You Know
3. My Old Flame
4. People Will Say We're In Love

(Thank you Charlie Christian 1960)
5. Pickley Wickley
6. I Told You I Loved You Now get out
7. Cook One
8. Karin
9. Cherry Kijafa
10. Thank You,Charlie 
11. Alexander’S Ragtime
12. Lemon Twist
13. Everything’S Pat
14. Workin’ With The Truth

【DISC4】
(for Musicans only 1956)
1. Bebop  
2. Dark Eyes  
3. Wee (Allen’S Alley)  
4. Lover Come Back To Me

▶ Ellis In Wonderland




  

2025年1月20日月曜日

Art Blakey & The Jazz Messangers / Live at Bubbas '80

 

 Art Blakey and Jazz messengers は1954~1955年にかけてピアノのホレス・シルヴァーと結成されました。Moanin'(1958) が代名詞のバンドで、ジャズ史に名前を刻む多くのミュージシャンを輩出しましたが、そのアートブレイキーでも低迷期があり1970年代後半ぐらいから低迷期に突入し暗黒時代と呼ばれています。
 そして低迷期の脱出に、若き18歳のWynton Marsalis(ウィントン・マルサリス)の加入が一役買います。マルサリスのメッセンジャーズ入団は、1980年6月のボトムラインでのライブからで、このライブ録音はその半年後の 1980年10月11日フロリダ での録音。このライブを経てのスタジオ初録音は Album of the Year (1981年4月12日パリでの録音) 。ライナーノーツによると、この録音は1981年83年85年の3回にわたって、マルサリス名義でフーズ・フーと言うレーベルから発売されていて、それを一つのアルバムにまとめての再販となったものであるとのこと。
 もともとのマルサリス発売のアルバムには曲名やクレジットに誤りがあったらしいですが、このアルバムでもまずは重大な間違いを発見しました。アルバム・ジャケットをよく見ると「Messengers」が「Messangers」のになっています。再発盤であり関わった人も少ないのかもしれないですし、ジャケットの絵とかデザインもやる気は感じられず、まあご愛嬌でしょうか(CD自体にもMessangers の印字です)このレビューを書いていなければ私も気づかなかったとは思いますが、音楽業界の文字誤植は結構多いですが、私の勤める業界では誤植はご法度。かなり厳しくて製品名が間違っていたりしたら即回収、即改版ですね。

 

 と間違いを発見したところでアルバムですが、新しさは感じます。派手なメッセンジャーズの演奏が更に大袈裟な表現になっているようです。ブレーキー親分なんて関係ないといったようなマルサリスのトランペットの加入により、バンドの音の表情がはっきりしている感じがします。親分も懐が深くメンバーのネオ・ハードバップな解釈、新しい響きとアプローチに対してドラムはその新しい響きに反応しています。前半は様子見のような感じもしますが後半では完全に見切ってバンドをリードし鼓舞しているところはさすがです。また十八番である Moanin' の新しいアプローチが施されているところも新生メッセンジャーズの意気込みが感じられますが、ベースソロの前の親分のミスっぽいブレイクには少しニヤリですね。そして Charles Fambrough の輪郭がはっきりとしたブルンとした音色とベースラインも好みです。全体的にはロックにも似たような力強さを感じてとても良いアルバムですが、好みは分かれるかと思います。ブレイキーに限って言えば、初期のブレイキー親分の「どうだこの野郎!」的な演奏の方が好みかもしれません。(聴きこむと変わってくることもよくあるし、1年後には好みが変化することもあるので今のところはですが)🎶🥁

drums : Art Blakey
alto sax : Bobby Watson
tenor sax : Billy Pierce
trumpet : Wynton Marsalis
piano : Jimmy Williams
bass : Charles Fambrough

recorded in Fort Lauderdale, Florida, Bubba's Jazz Restaurant, October 11, 1980.

【Disc1】
1. Angel Eyes
2. Bitter Dose
3. Wheel Within A Wheel
4. Gipsy
5. Moanin'
6. Au Privave
7. Free For All

【Disc2】
1. One By One
2. My Funny Valentine
3. 'Round About Midnight
4. ETA
5. Time Will Tell
6. Soulful Mister Timmons
7. Blakey's Theme



▶ ETA


  

2025年1月19日日曜日

The Suicide Machines / Battle Hymns


 全曲3分以内、ほぼ2分以内の22曲収録の超ショートなマシンガン的なスタイル。1996年の1st Destruction By Definition に次ぐ2枚目のアルバムです。今聴いている音楽はジャズ系が多いのですが、若かりし頃は攻撃的なロックも聴いていましたし、実はスカ・パンクも大好きだったりして、少々それ系のアルバムも所有しています。Smash Mouth / Fush Yu MangKemuri / Little PlaymateKemuri / Alive the tracks from the last tour ”our PMA 1995-2007”Ska Ska Club / Twelve Ways To Go
 

 なんで、このようなショートになったのかは、英語版 Wiki に書いてありました。アルバムの制作費28万ドルで、残ったお金を自分たちの懐に入れるためだと。すごいですね。当時のレートで3,300マンの予算を全額渡して好きに使えよってやり方のようです。もう一つは大物アーチストとツアー入れ過ぎて、大急ぎで録音したとのことも要因であるようです。つまりは、曲のアイデアを楽曲として膨らませる余裕がなかったんでしょう。


 Hymns とは「賛美歌」のことですので、アルバム名は「戦いの賛歌」でしょうか。まさに戦いのような激しい楽曲で、1st Destruction By Definition よりも速くて重い楽曲になっているようでカッコよいです。ただし全部スカが入っているかと言えば、そうではないのが進化なのかどうなのか、これ以降のアルバムを聴いたときにスカ要素がなくなっててビックリしたことも記憶にあります。
 1曲づつのレビューは、これもコメントしにくいので割愛します
【スカ系】 Someone, Give, Black & White World, High Society, Confused, Step One, Face Another Day, What You Say, Empty Room, Sides, 
【速めパンク系】 Hating Hate, Hope, Numbers, Pins and Needles, DDT, In the End, Speak No Evil, Independence Parade, Sympathy, Strike, 
【効果音系】 Punck, Jah
【お気に入り】 Give, High Society, Face Another Day, Empty Room, Independence Parade, Strike
 スカ系と速めパンク系は、ほぼ交互に入れているようですが、やっぱりスカ系の方に多め軍配があがってしまいます🎶

vocals : Jason Navarro
guitar, backing vocals : Dan Lukacinsky
bass, backing vocals : Royce Nunley
drums : Derek Grant

producer : Julian Raymond

1. Someone
2. Hating Hate
3. Give
4. Hope
5. Black & White World
6. Numbers
7. High Society
8. Pins and Needles
9. Confused
10. DDT
11. Punck
12. Step One
13. In the End
14. Face Another Day
15. What You Say
16. Speak No Evil
17. Empty Room
18. Independence Parade
19. Sympathy
20. Strike
21. Sides
22. Jah
▶ Give




  

2025年1月18日土曜日

Bill Evans with Jerermy Steig / What's New

 

 何となく手にしたBill Evans (ビル・エバンス)とフルートの Jerermy Steig(ジェレミー・スタイグ)のセッションですが、いつものエバンスと違います。繊細でリリカルな演奏が信条のエバンスが熱めの演奏を繰り広げています。Portrait In Jazz のような動の作品も聴いてきたのでびっくりする訳でもありませんが、こんな作品を聴いた時に何かを発見したようで楽しい気分になります。
 こんな演奏になった起爆剤は、ジェレミー・スタイグのフルートで思いっきり呼気を吹き付けて尺八のようなこすれ具合により結構アグレッシブな印象を受けます。フルートの音色とともに楽器から大量に漏れていく呼気の音、大きな息継ぎの呼吸音のインパクトは大きく、フレーズもロングトーンは少なく勢いで押す紋切り型です。呼応するビル・エバンスもこの音に対応するべくパッションが溢れるフレーズになりタッチも力強くなってきてテンポもきっちりとした拍になっています。きっとジャズに一家言あるオジサンと聴いてたら、これがジャズの面白いとこなんだと言われるんでしょうが、私の行きつけの音楽好きが多めのバーはビル・エバンス否定派が多いので、多分これは持っていきません(いや敢えてこれなら否定派に聴かせても良いかなという感じはしますが)
  ちなみにスタイグが、なぜこのような吹き方になったかというと1962年に交通事故に遭い顔面右側不随、片耳が聞こえなくなったため特殊なマウスピースを使用することが原因とのこと。エバンスがスタイグに出会ったのは1964年フロリダのデイトナビーチで演奏していたと言います。つまり結構大きい後遺症だったはずなのに2年でリハビリしてミュージシャンとして働いていたということで、考えてみればこれも凄いこと。てっきり、やり手プロデューサーのヘレン・キーンの仕掛けかと思いましたが、1968年にスタイグのアパートがビレッジ・バンガード、トップ・オブ・ザ・ゲートに近かったことからエバンス・トリオとのセッションに加わったのが縁とのことでした。調べていたらフルートとアートのオフィシャルサイト「His Flute Music and Art」を発見し多才な方だったのが伺えます。


 印象に残る1曲目の Straight No Chaser はソロ部分に入ったフルートの辻斬りのような斬新さに心を奪われながら軽快なドラムとゴメスのソロも見事で緊張感溢れる演奏。ドラムのブラシ捌きは、聴いていて実に気持ちのよい演奏です。!Lover Man については落ち着いた曲だけにフルートのエモーショナルな部分が際立ちます。Autumn Leaves ではアップテンポにしている珍しい演奏で、エディ・ゴメスのソロが注目。そして Spartacus Love Theme 美しい進行とメロディの繰り返しの曲です。パッション溢れる曲が多いアルバムの中で一番動きの少ない楽曲なのに何か熱いものを感じさせてくれます。フルートも何か太いものを感じます。そのほか、聴いていてハッとするのは最後の So What でのフルートを吹きながら聞こえる声、呻き声(うめき声)かと思っていたら、最高潮に達したところでかなりハッキリとした声でフルートとはハモっています。ピアニストでは唸る方多いですが、フルートでもあるとは・・・ものすごい気迫が感じられましたね🎶🎹

piano : Bill Evans
flute : Leremy Steig
bass : Eddy Gomez
drums : Marty Morell

producer : Helen Keane
recorded at Webster Hall, N.Y.C.,on Jan.30, Feb. 3,4,5, and Mar.11,1969

1. Straight No Chaser (Thelonious Monk)
2. Lover Man (David, Sherman, Ramirez)
3. What's New (Haggart, Burke)
4. Autumn Leaves (Prevert, Mercer, Kosma)
5. Time Out For Chris (Evans)
6. Spartacus Love Theme (North)
7. So What (Hall, Davis)





  

2025年1月17日金曜日

Three Dog Night / Best Hits


 1968年デビューし1976年の解散までに21枚のシングルを発売。そのうち20曲が全米トップ40入りというスーパーグループです。その後1981年に再結成し、2002年が最後のアルバム発売となりました。バンド名を知らない人も多いと思いますが、この音を耳にしている人は多いはずです。私が小学生の頃までの活動であったため、曲は知っていたんですが、どのようなバンドかは詳しくは知りませんでした。てっきり黒人グループだと思っていましたが、このアルバムで白人系のバンドであると知りました。(唱法はサザン・ソウル系に分類されるらしいです)バンド名は「アボリジニが寒さの厳しい夜に3匹の犬と寝る」という風習にちなんでいるそうです。
 バンドは3人の男性ボーカルと4人の演奏者という構成で、曲によってリード・ボーカルが変わり、ヒット曲はすべて有能なソングライターの隠れた名曲をリメイクする極めて特異な独特のスタイルでした。


 あまりに曲数が多いので、全曲レビューはやめときます。
 Joy to the World はあまりにも有名。彼ら最大のヒットで6週連続全米No. 1 に輝き750万枚ものビッグ・セールス。作者の Hoyt Axton は、Heart Break Hotel をプレスリーと共作した Mae Boren Axton の実息。熱唱の Chuck Negron が非常に熱く、オルガンの響きも心地よいソウル調のロックです。昔聴いた時から忘れない一発で耳に残る名録音。
 Old Fashioned Love Song これは、日本でバカ売れになった曲で、全米では第4位のミリオン・セラーなので、ラジオで聴いて知ってました。 Chuck Negron は、前曲とは違ってしっとりと歌い込んでいます。郷愁を帯びた味のある楽曲の作者は Paul Williams。自身でも71年12月に便乗リリースし、そこそこ売れたらしい。
 Black and White、昔ラジオで聴いて大好きになった曲。彼らにとって5枚目のミリオン・セラーで3曲目の全米No1ヒット。パブリック・スクールにおける人種差別を禁止するというアメリカ最高裁の決定を称えるべく、アール・ロビンスンが55年にディビッド・アーキンと共に書きおろした作品で、Sammy Davis Jr も取り上げたけれどヒットに結びつかず、レゲエにリメイクしてヒットしたものです。
  オムニバスですが、曲順は年代順ではなくプロデューサーが考えられての構成のようで、意図はわかりませんが、ただの羅列でないところに好感の持てるベストになっています。作曲者と発表年にビルボードの最高順位を記載しました🎶

vocals : Chuck Negron , Cory Wells , Danny Hutton , Floyd Sneed 
bass : Joe Schermie
drums : Floyd Sneed
guitar : Mike Allsup
keyboards : Jimmy Greenspoon

1. Joy to the World
 (Hoyt Axton) / 1971年 10thシングル (全米第1位)
2. Easy to Be Hard 
(Galt MacDermot, Gerome Ragni, James Rado) / 1969 4thシングル(全米第4位)
3. Family of Man 
(Jack Conrad, Paul Williams) / 1972 13thシングル(全米第12位)
4. Sure As I'm Sittin' Here 
(John Hiatt) / 1974 20thシングル(全米第16位)
5. Old Fashioned Love Song
 (Paul Williams) / 1971 12thシングル(全米第4位)
6. Mama Told Me (Not to Come)
 (Randy Newman) / 1970 7thシングル (全米第1位)
7. Try a Little Tenderness 
(Harry Woods, James Campbell, Reginald Connelly) / 1968 2ndシングル(全米第29位)
8. Shambala
 (Daniel Moore) / 1973 17thシングル(全米第3位)
9. Let Me Serenade You 
(John Finley) / 1973  18thシングル(全米第17位)
10. Never Been to Spain 
(Hoyt Axton) / 1971 13thシングル(全米第5位)
11. Black and White
 (David Arkin, Earl Robinson) / 1972 15thシングル (全米第1位)
12. Liar 
(Russ Ballard) / 1971年 11thシングル(全米第7位)
13. Out in the Country 
(Paul Williams, Roger Nichols) / 1970 8thシングル(全米第15位)
14. Show Must Go on 
(David Courtney, Leo Sayer) / 1971 19thシングル(全米第4位)
15. Eli's Coming
 (Laura Nyro) / 1969 5thシングル(全米第10位)
16. One Man Band 
(Billy Fox, January Tyme, Tommy Kay) / 1970 9thシングル(全米第19位)
17. One
 (Harry Nilsson) / 1969 3rdシングル(全米第3位)
18. Celebrate 
(Alan Gordon, Garry Bonner) / 1970 6thシングル(全米第15位)