2022年3月2日水曜日

The Oscar Peterson Trio + The Singers Unlimited / In Tune

 

 Oscar Peterson Trio をバックに The Singers Unlimited が抜群のコーラスで共演する作品です。と書きだしを書いたんですが、聴きこんでいくと The Singers Unlimited にほれ込んだ Oscar Peterson が、その魅力を最大限に引き出した作品と感じてきました。The Singers Unlimited のデビュー作品でもあり、これを聴いた後で1972年の本作とほぼ同時に吹き込まれた作品 A Capella は直ぐに購入してしまいました。
 総合的には、ジャズの範疇にはありますがインスピレーション重視ではなく The Singers Unlimited のコーラスを楽曲にどのように取り入れたら気持ち良いか、または、そのコーラスに対してどんなピアノ・フレーズを合わせたら良いかを計算して作られているかのようで、計算された音楽の美学を感じます。
 さてその The Singers Unlimited は、1967年に元ハイ・ローズのメンバーの Gene Puerling (ジーン・ピュアリング) が Don Shelton (ドン・シェルトン) とともにシカゴで結成したグループで、Oscar Peterson (オスカー・ピーターソン) の薦めによりドイツのMPSレーベルと契約し、本アルバムでデビューを果たし、1981年までの間に15枚のアルバムを残しています。とここまでは A Capella で紹介しています。


 Oscar Peterson との出会いは、デビュー前にアカペラで吹込みデモ・テープを制作した Beatles の Fool On The Hill が友人を通じて入手し聴くことになり、多重録音を駆使したその録音を聴いて、Oscar Peterson がMPSに紹介して自分が伴奏を買って出たそうです。ライブとかではなく自らの地道な売り出し活動が成功したようですね。
 さて本アルバムは Oscar Peterson は当然のことながら、ベースの Jiri Mraz、ドラムの Louis Hayes も実にツボを得たプレイで、他のアルバムとは一味違うプレイのようです。
 アルバムは、私ぐらいの世代には非常に耳覚えのある Sesame Street から始まり、懐かしさとその小粋な演奏に冒頭で完全にノック・アウトされてしまいす。It Never Entered My Mind は1940年のミュージカル Higher and Higher のために書かれた Lorenz Hart/Richard Rodgers作によるバラード。セサミの余韻から、この美しいハーモニーが心に響きます。Children's Game は Antonio Carlos Jobim のカヴァーで、原曲はボッサとのことですがここではワルツで聴かせてくれます。4分の時間がすごく短く感じてしまいます。最後のコーラスの絡み合いながら始まる早くて流れるようなピアノ・ソロ部分が聴きどころの一つ。The Gentle Rain は、これまたブラジル音楽の巨匠、黒いオルフェで知られる Luiz Bonfa の作品のカバー。ボサのリズムでしっとりとしたコーラスとなっています。A Child Is Born は、Thad Jonesのカバーで、歌詞が付いていないためワード・レスのコーラスを付けて幻想的な曲になっています。The Shadow of Your Smile については、アカデミー賞歌曲賞も受賞した映画「いそしぎ」の主題歌のカバーで、これはこのアルバムにぴったりの暖かくリッチな響きが魅力の仕上がり。Catherine は、Patrick Williams作品で原曲に歌詞はついているのですが、ここもワード・レスのコーラス。Oscar Peterson のピアノが冴えわたりセサミと同じくらいのインパクトがあります。Once Upon a Summertime については、Michel Legrandのスタンダードで洗練されたアレンジ、正統派でアンニュイなムード。Here's That Rainy Day はミュージカル Carnival in Flanders のために書かれたスタンダード。ハミングコーラスとピアノの絡み方が実に気持ちよく、後半のピアノソロもカッコ良いです。選曲もスタンダードを一味違った味付けで愉しませてくれて、曲自体も実によく粒が揃っていながらも一枚のアルバムとして飽きさせない。完璧なアルバム一つでしょう🎵

piano : Oscar Peterson
bass : Jiri Mraz
drums : Louis Hayes
vocals : Bonni Herman, Don Shelton, Len Dresslar

producer : Hans Georg Brunner-Schwer

recorded at MPS Studios, Villingen, July 1971.

1. Sesame Street
2. Never Entered My Mind
3. Children's Game
4. The Gentle Rain
5. A Child Is Born 3:44
6. The Shadow Of Your Smile
7. Catherine
8. Once Upon A Summertime
9. Here's That Rainy Day






muu music webzine

  

2022年3月1日火曜日

Heavy Metal Horns / Horns In The House

 

 バンド名を見て、これを避けて通ることはできないと購入したアルバムです。ただジャケットのイラストはブラス・バンドにありがちなイラストだなあとは思っていました。購入して少し家に寝かせてからの、いつもの「おでんバー」にて試聴です。この日はいつもよりも人数多めで、ソウルが好きだと言っていた若者もいたので3枚持ち込んだのですが、これを最初にかけてみました。
 聴きながらライナーノーツを見ていたら日本人「塚本光」のトロンボーン奏者がいます。この人聴いたことあるんですか?と隣で飲んでいた若者ではない音楽好きの方から質問ありましたが、当然ジャケ買いなので知る由もありません。メンバーには以前聴いてかなり気に入ったハード系・重量級・ファンクバンド Boston Horns のサックスの Henley Douglas とトランペットの Garret Savluk が参加していたバンドで、Boston Horns の前身にあたるバンドとのこと。Boston Horns は1999年に結成でこのアルバムは1994年のアルバムです)


 さてこのアルバム最初の曲、半国のカバー Hang Up Your Hng Ups の出だしはスラップのベースで昔聴いていた日本のフュージョンバンド Space Circus のごときイントロで始まり、マーカスのようなアレンジのようなフュージョン系ファンクや、ブレッカーブラザーズとかも入っているかなあと聴いている皆さん「良いじゃないですか」と上々の反応で私も次の曲に期待してしまいます。続く Horns In The House は、T.O.P.的であり、ブラス・バンド的なノリもあるボーカルものでこれも良しですが、1曲目より若干ゆるめで楽しいセッションのような雰囲気。3曲目 Caught In The Middle については、ディストーションがガンガン聴いたロックリフのギターから始まるファンク・ロックとなりますが、聴いているほうは少しだれてきて、聞き流しながら酒を飲んでいるような感じです。そしてバラード Meant To Be については、全く違うロック・バンドの演奏のようで何かのオムニバスを聴いているような気になってきて店で有線をBGMで流しているかのような感じに・・・。続く After The Funeral はニューオリンズ系のブラスバンドがやっているヤツで、もはや聴いているほうもカオスな感じになってきて、酒を飲むしかない。演奏はうまいんですけどねえ。Cold Shack になると、もはやファンク・ロックではなく普通のロックか・・。You're Still A Young Man は、聴きなれたイントロです。そうですT.O.P.のカバーで、レゲエ調にしています。やはり原曲が良くて、これは他のソウル好きという若者たちも「これはなんて曲ですか?」とメモしてますが、とりあえずT.O.Pの Bump City の購入を推奨しておきました。少しここでテンションを持ち直しましたが、マーカス・ミラーのソロアバムにありそうな楽曲の ESP であったり、どこかで聴いたことがある They Can't Stop Tomorrow ?どこかで聴いたことがあるメロディーとサビの、スローなファンク・ロック、アメリカンなノリのまたどこかで聴いたことのある明るいファンクロック Everything We Got ですが、あまりにもクルクル変わりすぎて疲れてきました。Volcano でまたマーカスが返ってきたな。Grease It は、ファンク的フュージョン。Downtown Score は、きっとこのバンドのライブの締めで使っているんであろうスタンダードな信仰のファンクとなります。やっと終わった。力が入ってしまった。
 Boston Horns はかなり硬派なイメージで、このバンドも聴いていると確かにその片鱗はあるものの、若干ポップな曲やエレクトリック・バンド、ブレッカー・ブラザーズ、マーカス・ミラーなどに聞こえる雑多な音楽性に、T.O.P.的なホーン・アンサンブルが基本となっているといった、かなり雑多な音楽性が秩序なく並べたてられているアルバムとなっているようです。演奏スキルはあるので、ボストンのクラブで培われた演奏能力で、メンバーが好きな曲を持ち込んで作っただけのコンセプトが見えないアルバムとなってしまい残念。いやホントに演奏は良くて1曲づつを聴いていればきっと良いんですが私は聴いてて疲れた感があります🎵

keyboards, vocals : John Matthews
guitar, vocals : Thaddeus Hogarth
bass : Ed Spalgo
drums, percussion : Jim Sturdevant
percussion, vocals : Hudson Samuel
tenor, alto, soprano sax, vocals : John Vanderpool
tenor, bariton sax : Henley Douglas (Boston Horns)
trumpet, vocals : Garret Savluk (Boston Horns)
trombone : Hikaru Tsukamoto

1. Hang Up Your Hng Ups
2. Horns In The House
3. Caught In The Middle
4. Meant To Be
5. After The Funeral
6. Cold Shack
7. You're Still A Young Man
8. ESP
9. They Can't Stop Tomorrow
10. Everything We Got
11. Volcano
12. Grease It
13. Downtown Score




muu music webzine

  

2022年2月25日金曜日

Stevie Wonder / Best Selection


 Stevie Wonder (スティービーワンダー) のアルバムは持っていませんが、高校生の時は、ラジオでエアチェック(昔はラジオで音楽番組を楽しむことをエアチェックと言いました)してカセット・テープに落として聴いていました。カセットテープは、機械が壊れて、CDに切り替えた時に段ボールで5箱ぐらいは捨てて結構な量だったことを覚えています。でも最近気づいたのですが、世界的には Vinyl、Cass、CD の全ての種類の音源が新譜では発売されていて、カセット・テープ・レコーダーは世の中では絶滅していないということ。つくりが単純なだけに先進国以外ではまだまだ需要があるようですね。初代のウォークマンは、カセットだったとも記憶しています。テープが絡まってしまって、テープもダメになり機械もよく壊れてました。
 そんな高校生の時はロックに目覚めていた時でハード・ロック系の外タレ・ライブにガンガンに行き、新宿ロフトなどのライブハウスのマイナーなパンク・ロックも聴いていたころ、姉の知り合いの小学校の先生がスティービー・ワンダーが好きで、来日の度にライブを奢ってもらっていました。音源で聴くよりもライブを見たことの方が先で、後で曲を聴くようになると言う贅沢なことがあった時代でした。
 ロック系のライブでは、ギターアンプのマーシャルが壁のように積まれているステージでしたが、スティービーワンダーのライブは武道館の真ん中にステージ組まれてグルグル回たり、ロック系とは照明も違うきらびやかなステージングとロック系ではあまり使われないクラビネットの音に感動たことを覚えています。


 知り合いの小学校の先生は、だいぶ前に癌で無くなってしまいましたが、ロック一辺倒の私に違うジャンルの楽しさを教えてくれたことには感謝ですね。私の聞く音楽はジャンルにこだわらないというのはこの頃から育成されていたんですね。
 そんな時代を思い出す名曲がこれでもかと17曲。中古屋でも Stevie Wonder はチェックしてみようかな。

1. My Girl
2. A Place In The Sun
3. Down To Earth
4. Hey Love
5. I Was Made To Love Her
6. Superstition
7. You Are The Sunshine Of My Life
8. Maybe Your Baby
9. I Believe
10. Don't You Worry Bout A Thing
11. Living For The City
12. Higher Ground
13. Boogie On Reggae Woman
14. You Haven't Done Nothin
15. Sir Duke
16. I Wish
17. Isn't She Lovely





muu music webzine

  

2022年2月23日水曜日

George Benson & Count Basie Orchestra ‎/ Big Boss Band


 ベイシーは既に存命ではないが、その遺志を引き継ぐCount Basie Orchestra (カウントベイシー・オーケストラ) とベンソンの共演の1990年作品。スタンダードやベイシー・バンドの定番をベンソンがギターを弾き歌っています。ベンソンの魅力を引き立てるアレンジは Frank Foster (フランク・フォスター) が担当しています。ベンソンはゴージャスなビッグバンドの演奏が楽しくてしょうがないような歌い方で歌いギターを弾き、スキャットしています。ここまでテンションをあげてくれれば聴いているほうも高揚してくるもの。
 一流は何をやっても一流で1980年代のポップ寄りブラコン系フュージョンも素晴らしいですが、スイングするサウンドをバックのこんなベンソンも楽しく、再びジャズ路線に回帰した天才ギタリストのアルバムとして注目を浴び、そのキャリアの中でも異色の一枚です。


 いったんブラコン路線に走っていたベンソンが何故このアルバムを制作したのか?といえば、ベンソンが存命だったベイシーとアルバムを創る約束を交わしていたのだが、そのプランがベイシーの存命中に果たされることが出来ず遺志を引き継ぐ「ザ・カウント・ベイシー・オーケストラ」との共演という形で、その7年後に実現したとのこと。
 それにしてもスイングするビッグバンドにベンソンの歌は非常によく合うし、ベンソンの持ち味をこれだけ引き出せるのも素晴らしい。どの曲が良いかと言えば正直全部良いのですが、On Green Dolphin Street なんかを歌っている気持ちよさそうな歌とギターとのスキャットとかは良いですし、異色の作品としては、エレクトリックなソウル調の16ビートから始まりスイングするビッグバンドにつながる Baby Workout なんかはアレンジの上手さが光ります。ベースパートはキーボードで代用していて私の大好きな Richard Tee が弾いているのは今回聴き直しての発見です。
 お買い得セット Original Alubum Series のこのセレクトはまさに王道で中々のセレクションまさにお買い得なんですが、ライナーノーツが無いのがちょっと寂しいかな🎵


producer, vocals, guitar : George Benson
bass : Cleveland Eaton
drums : Duffy Jackson
guitar : Charlton Johnson
piano : Carl Carter
sax : Danny Turner, David Glasser, Doug Miller, Frank Foster, John Williams , Kenneth Hing, Tim Williams
trombone : Bill Hughes, Clarence Banks, Mel Wanzo
trumpet : Bob Ojeda, Byron Stripling, Mike Williams , Sonny Cohn

arranged by Frank Foster

1. Without A Song
2. Ready Now That You Are / featuring : The Robert Farnon Orchestra
3. How Do You Keep The Music Playing / vocals : Carmen Bradford, piano, keyboards : Barry Eastmond, bass : Ron Carter
4. On Green Dolphin Street
5. Baby Workout
brass : Earl Gardner, James Pugh, Jon Faddis, Keith O'Quinn, Larry Farrell, Lewis Soloff, Paul Faulise, Randy Brecker
keyboards : David Witham, Terry Burrus
keyboards (bass) : Richard Tee
percussion : Bashiri Johnson, Ralph MacDonald
6. I Only Have Eyes For You
7. Portrait Of Jennie
8. Walkin' My Baby Back Home
9. Skylark
10. Basie's Bag




▶ Skylark


muu music webzine

  

2022年2月22日火曜日

Harold Mabern / The Leading Man

 

 2019年9月で惜しくも83才で世を去った Harold Mabern の追悼盤の Mabern Plays Mabern を先に聴いていたので本作も気になって購入してみました。Mabern Plays Mabernでの私の印象はコードを塊まりで跳ねるようにぶつけてくる印象ようなピアノで非常に力強く男性っぽいのが印象的でした。
 これはたしかタワレコで購入したもので、購入後にはいつもの「おでんバー」に直行して良いオーディオ環境で初聴きです。マスターも Harold Mabern に関しては余り知識はないようですが、以前の私のCDが記憶にあるようでこれは期待ですね、と言いながらデッキに挿入しました。
 しかし最初の Yes Or No をかけると、予想よりもかなりのテクニカルで華やかなピアノです。ウェインショーターの作品とのことですが、私的にはかなり合格なのですが抱いていた印象と違いすぎるので少々ビックリでした。続く Save The Best For Last はサックスの Bill Easley がリードをとるドラムは8ビートのフュージョンで異色な印象を受けます。またもや予想を裏切られる感じです。さらに3曲目の Full House はウェスの名曲です。ドラムレスでベース、ギターのとのトリオの演奏でギターに焦点を合わせた楽曲になっています。ここまで来ると私的には次にはどんな曲がくるのかワクワクします。さて She / Mr. Lucky ピアノ・イントロから入ってきて次の展開は?と思っていたら独奏でした。ジョージ・シアリングとヘンリー・マンシーニのメドレーです。店で聴いていた時には、ここらへんでマスターが好みではないと告白され、隙間のない装飾の多いピアノは多分マスターの好みではないと何となくわかる気がしました。店では技巧的であるかなとの第一印象ですが、今聴き直していると技巧よりも力強いコードのつけ方とセンスに以前聴いたメイバーンのアルバムの力強さの共通点が理解できたような気持になります。Alone Together はスタンダードですが、Jack DeJohnette の煽りっぷりが豪華な印象を与える印象でドラムに負けないリズムでダイナミックなメイバーンでなるほど、これもある意味メイバーンらしい演奏と思えるようになってきました。The Man From Hyde Park はハービー・ハンコックに捧げたメイバーンのオリジナルとのことで、歌ものになっています。ドルフィン・ダンスのフレーズがイントロとソロで出てきます。B & B もメイバーンのオリジナル・バラードですが、とても力強いバラードであるとの印象を受けます。T-Bone Steak はジミー・スミスのブルースで、こういった定番の演奏はリラックスして聴けます。最後 Mercury Retro はメイバーンのオリジナル・ソロで締めです。
 1992年~1993年まで、4回に分けてレコーディングされていて多彩な楽曲は、結構考えて作りこまれたアルバムと思います。最初に聴いた印象よりも聴きこんできたらドンドン印象が良くなってきました🎵

piano : Harold Mabern
guitar : Kevin Eubanks
bass : Ron Carter
drums : Jack DeJohnette
alto sax : Bill Easley
trumpet, flugelhorn : Bill Mobley
vocals : Pamela Baskin-Watson

producer : James Williams, Kazunori Sugiyama

recorded and mixed at Power Station, Clinton Recording and Effanel Towers, New York on November 9, 1992, January 21, March 12 & April 12, 1993.

1. Yes Or No
2. Save The Best For Last
3. Full House
4. She / Mr. Lucky
5. Alone Together
6. The Man From Hyde Park
7. B & B
8. T-Bone Steak
9. Mercury Retro





muu music webzine

  

2022年2月21日月曜日

Donald Byrd / Chant

 

 1961年録音のシカゴからドナルドが連れてきた Herbie Hancock とのブルーノートでの初セッションがこのアルバム。録音は1961年だがリリースされたのは1979年でブルーノートのテープ・ライブラリーの中で長い間、寝かせてあったもので発掘してプレミアがついた録音としてレコード発売されたのは日本であるとのこと。


 1958年にDonald Byrd は Blue Note とリーダー契約を結び、同年に Pepper Adams と協力関係を結び、4月にはファイブ・スポットでデビューライブを行います。このライブはRiver Side から Pepper Adams 名義でレコード化されています。同年の夏から秋にかけてバードがリーダーとなりベースの Doug Watkins とともにヨーロッパを巡演しています。ヨーロッパから帰国後にはそのバンドで今度はバード名義で Off To The Race を吹き込んでいます。その後もペッパーとは協力関係が続き、1961年までにバード名義で Blue Note に5枚、ベツレヘムに1枚、ペッパー名義ではワーウィックに1枚のアルバムが残されています。


 このセッションでの曲目は変化にとんだレパートリーが入っています。I'm An Old Cowhand は高速のバップで、リーダーのバードが吹きまくり、その後のペッパーのアグレッシブなバリトンのソロは迫力があります。ハンコックのピアノは録音レベルが低めで目立たないのですがソロ・パートではこれまた流れるような展開を見せています。でもハンコックらしいかと言えばそれは疑問符なところではありますが競い合うかのような演奏が魅力的。You're Next は落ち着いた楽曲で、アダムスのねっとりしたソロでやっとピアノのハンコックのソロがゆっくりと聴ける1曲目との緩急の差がにくい選曲。そして Chant はデューク・ピアスンのゆったりしたリズムの曲でバード、アダムス、ハンコックの順でのソロが続き、各々の持ち味の音が堪能できる曲となっています。この曲は後の Blue Note の1963年作 A New Perspective でスキャットコーラスを付けたアレンジで脚光を浴びることになります。That's All はこの当時ボビー・ダーリンのカバーが有名になっていたスタンダードで、本作では非常にダンサブルなアレンジ。アダムスのバリトン・ソロはかなり強力です。この低中音のソロの後のバードのソロの清々しさの対比もこのコンビの相性の良さを感じます。Great God はダンサブルなテーマが時代を感じる曲で、デューク・エリントンのSophisticated Lady は定番の名曲ですが、バードはリーダーでの録音にも関わらずお休みというのも面白い。Adams のリクエストの吹込みだったんでしょうか?
 このアルバムから10年後には、バードとハンコックは全く違う世界に乗り込んでいっているとは想像できないですね。

trumpet : Donald Byrd (1 to 5)
piano : Herbie Hancock
bass : Doug Watkins
drums : Teddy Robinson
baritone sax : Pepper Adams

producer : Alfred Lion
recorded by : Rudy Van Gelder
Recorded on April 17, 1961.

1. I'm An Old Cowhand
2. You're Next
3. Chant
4. That's All
5. Great God
6. Sophisticated Lady


▶ Chant



muu music webzine

  

2022年2月20日日曜日

Hank Mobley / Soul Station Blue Note 84031

 

 こんなアルバムは最初の曲のイントロを聴いた時から「すごく好き」なアルバムに分類されてしまいます。レトロな雰囲気のジャズ喫茶で煮詰まった珈琲を飲みながら、本を読んでいるふりをしながら、目を閉じて実は音楽しか聴いていないなんてシチュエーションが似合うアルバムです。ワンホーンで吹かれるおおらかでゆったりとしたテナーを伝統的なジャズのイディオムを用いてモブレーが歌っています。おそらく非常に多くのテナー・サックス・プレイヤーが教科書のようにしているはずです。


 絶賛の Soul Station は1960年の録音で、ピアノ Wynton Kelly、ベース Paul Chambers、ドラム Art Blakey とお馴染みのメンツは最強の布陣です。 Wynton Kelly、 Paul Chambers とは、このアルバムを皮切りに1961年までに4作を録音しています。この年の終わりにフレディ・ハバードを加えたRoll Call、翌年1961年にはドラムはフィリー・ジョー・ジョーンズに交代、グラント・グリーンを加えたWork Out、Another Work Out です。楽しみですが買い物リスト増えてしまって収拾がつかないですね。
 しかしテナー奏者としてHank Mobley は、いまいち注目度は低いとされているようでマイルス・デイビス・クインテットの Someday My Prince Will Come に参加した時にコルトレーンと共演したときに知名度はあがったもののコルトレーンとの比較で「モブレーいまいち」の評価がついてしまったとのことで日本では全く売れず「幻の名盤」となってしまっていたとのことでもったいない。まあ競争ではないのですが相手が悪かった。
 しかしながら最初に絶賛したようにこのアルバムでは Remember では暖かい音色と、落ち着いたフレーズのオープニングから始まり Dig Dis や Soul Station のような流れるようなブルージーなオリジナル、そしてアップ・テンポのナンバー This I Dig of You や Split Feelin's など、じっくりと聴きたい構成となっています。まろやかテナーも悪くない🎵

tenor sax : Hank Mobley
piano : Wynton Kelly
bass : Paul Chambers
drums : Art Blakey

producer : Alfred Lion
written by Mobley (2 to 5)

recorded on February 7, 1960.

1. Remember
2. This I Dig Of You
3. Dig Dis
4. Split Feelin's
5. Soul Station
6. If I Should Lose You


▶ Dig Dis




muu music webzine

  

2022年2月19日土曜日

Robert Glasper / Double Booked

 

 ロバート・グラスパーは雑誌などで知っていたのですが、なんとなく聴くことがありませんでした。しかし私もピアノの練習を始めたので俄然ピアニストにも興味が湧いてきましたし、あれだけ雑誌で高評価を得ているピアニストなのだから聴いてみようかと重い腰を上げてみました。中古CDでの購入ですが、このアルバムの他にアコースティックのトリオ作品も仕入れていますが、それは未だ聴いていません。
 さて購入して最初に聴くのはいつもの「おでんバー」です。マスターに今日はなんか持ってきた?と聴かれ今日は土曜日なんで中古屋とかタワレコに行って大量です。と言いながら本日に聴きたい3枚を選びます。マスターにロバート・グラスパーは聴いたことあります?と尋ねるとマスターも先入観で聞いてみようと思ったことはないとのことなので、強制的に聴かせることにします。確かこの日はモロジャズは避けて The Headhunters と Esperanza Spalding を選択していたかと思います。


 聴き始めると予想外にも普通にトリオのジャズが始まります。コンテンポラリー、ソウルジャズとの先入観があったので、かなり意外でした。そこでライナー・ノーツなどを見てみると本作はロバート・グラスパーのブルー・ノートからの第3作目となる2009年作品でアコースティックとエレクトリックを半分ずつを収録しグラスパーの2面性を表現しているとのこと。なるほど前半戦は静かに聴いていろとのことだなと、マスターにお酒のお代わりを頼みます。おそらくこの手の幾何学的な旋律が混じったピアノは好きではないだろうと思いつつモンクの Think Of One が始まった後に、少し反応していたようなので、マスターどうですか?と聴くと未だ好みかどうかは良くわかりませんとのことです。あまり好みではないがモンクの曲だけは聴いてから判断したいと私は受け止めました。私はどうかと言えば、どちらかと言えば好みの方ですがインパクトには欠けるので愛聴まで行くかと言えばそうでもない感じです。
 Trio によるモンクが終了すると Experiment 短いラップが始まりました。一瞬にして終わりますが、マスターには後半はエレクトリックとは敢えて言っていなかったので反応を見ると以外にも身体を動かしているのが見えます。マスターは、ジャズ好きではありますがノイズも聴けば演歌や浪曲もあり、フリージャズは好物の人なので意外なところに反応することがあります。後半はラップだけではなくエレクトリックな楽曲でボコーダーを入れたりして
ます。アプローチはジャズ的なものもあり前半戦に通ずる幾何学的なグラスパーの音楽性を感じ、私の感想としては嫌いではないないですがのめりこむほどの刺激は感じませんでしたが、グラスパーのアルバム自体はもう少し色々なアルバムを聴いてみたい興味は湧き、もしかしたら来年になったら傑作だと言っている可能性はありかもしれません。
 これを書きながら、ネット記事を見ていたら前作は傑作であり、この後のアルバムの Black Radio はHipHop系ながらも傑作だとも言われているようですので、そこらへんも聴いてみたく思います🎵

producer, piano, electric piano : Robert Glasper
double bass : Vicente Archer (1 to 6)
bass guitar : Derrick Hodge (7 to 12)
Drums : Chris Dave
sax, vocoder : Casey Benjamin (7 to 12)

Recorded and mixed at Systems 2 Studios

【Trio】
1. Intro / Voice – Terence Blanchard
2. No Worries
3. Yes I'm Country (And That's OK)
4. Downtime
5. 59 South
6. Think Of One / written by  T. Monk

【Experiment】
7. 4eva / rap, Vvcals : Mos Def, voice : Ahmir '?uestlove' Thompson
8. Butterfly / witten by B. Maupin, H. Hancock, J. Hancock
9. Festival
10. For You
11. All Matter / vocals : Bilal
12. Open Mind / scratches : Jahi Sundance, vocals : Bilal





muu music webzine