1956年に最初のリーダーアルバム「New Jazz Conceptions」を録音し、ポール・モチアンとスコット・ラファロの歴史に残るピアノトリオ。1961年2月に録音し、Riverside からリリースしたアルバムです。Riverside 4部作と呼ばれる作品のうちの一枚で、他作品は Portrait in Jazz(1959年12月28日)、Waltz for Debby(1961年6月25日 ライブ録音)、Sunday at the Village Vanguard(1961年6月25日ライブ録音)。そしてメンバーの Scott La Faro の交通事故死は同年の7月とエヴァンスにとっては怒涛の1961年です。
ちなみに「Explorations」とは「探求」です。派手ではありませんが、シンプルな美しさがあり、即興性に満ちたインター・プレイで緊張しつつ音を探求し、テーマに戻るといった聴いている方も落ち着く盤であり、このアルバムが一押しのファンも多いようです。
それでは、全曲を再度聴きながらレビューです。「Israel」トランぺッターで作・編曲家としても知られる John Carisi の書いたマイナー・ブルースです。非常に端正で正調でアーティスティック。枠は崩さずしてピアノで引っ張りながらも各楽器が派手さはないものの有機的に曲を形成していく名演です。2曲目はバラード曲の「Haunted Heart」で、Arthur Schwartz 作曲の作品です。ピアノの音の響きをイントロで楽しませながら、徐々に Scott La Faro のベースが曲に輪郭を付け加え、Paul Motian は、二人の演奏を聴きながら、そっと効果音のようにブラシをこする。3分28秒と短いのですが余韻が長い。「Beautiful Love (take 2)」は、うって変わってリズミカルなトリオ演奏です。最初は律儀にテーマに沿っていますが、軽くステップを刻むようなリズムで、自然に発生するかのような Scott La Faro のベースソロ、Paul Motian のシャコシャコとしたブラシは軽いながらもリズムでこの曲の良さを引き出しています。実に気持ちの良い演奏です。「Elsa」では、少し流れを変えてアートな世界に没入します。ピアノの音にそっと寄り添うベースとドラムが妙に気持ち良い。エバンスのピアノも音数少な目にベースとドラムを聴きながら、そっと出番を譲りながら曲を引っ張っていきます。最初に聴いた時には、いささか退屈と感じたのですが聴きこむとなかなかのスリリングさ。「Nardis」マイルス作品で、最初は心地よく響きますが、曲が進むとテーマはなんのそのと難解になっていく感じです。「How Deep Is The Ocean?」オリジナルは1932年に Irving Berlin が、コメディドラマの Mammy の為に欠いた曲で軽いテンポの明るい曲調で、最初に弾かれるピアノでのテーマらしきものから、全くそれとは違う崩した旋律と明るさの質が全く違う曲調となっていて、最後にやっと原曲に近いメロディが顔を出すように聴こえますが、原曲を再度聴いたうえで、何回かこの曲を聴き直すとピアノの旋律の裏に原曲の歌部分がうっすらと見え隠れします。「 I Wish I Knew 」1945年に Harry Warren が作曲し、ミュージカル映画Billy Rose's Diamond Horseshoe のサウンドトラックとして作られスタンダード曲として定着した曲です。これは原曲が軽快に歩いていくような感じであるのが、そっと一歩一歩静かに歩いていくような曲に変わっています。何の変哲も無いように聴こえますが、一つの曲を三人が支える様に一体感があり秘かに素晴らしい。「 Sweet And Lovely」ここでアップテンポに所謂ジャズらしい演奏になりますが、テーマが終わってアドリブに入ってから Paul Motian のドラムがしばしば無音になり、その無音の間にアドリブがうねるように進行しまたドラムが入ってきてを繰り返します。演奏をしていないのに無音が一つの主役になってるような天才的な展開の曲かと思います。「Beautiful Love (Take 1 )」 3曲目のTake2の方が若干崩し方が冒険的でこちらの1テイク目の方が正調な感じでしょうか。細かな構成の違いもあるんでしょうが、そこは本職のピアニストの方やマニアに任せて心地よく聴く、これが庶民には一番です。「The Boy Next Door」1944年に公開された「若草の頃(Meet Me in St. Louis)」という映画の劇中歌でハリウッド女優 ジュディ・ガーランド(Judy Garland)が歌っています。イントロ、テーマ部分から自由に飛んでいきそうな素振りを見せて、アドリブに入るとドンドン舞い上るような上昇するスケール使いの多用は少し珍しいエヴァンスかもしれない。なかなか面白演奏です。曲名で間違いそうになったのですが、ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)出演する「戦慄の誘惑」が「The Boy Next Door」という題名であります。こちらの映画青年からのストーカー被害を描くスリラー映画で、なるほどそれでこの題名になったのかと。お隣の彼に対する恋心を歌った曲とは大きく異なるようです。
この人の演奏が好みではないと言うひねくれ者が私の周りには多かったので、いろいろなエヴァンスの聴き比べを真剣に行っていないので何とも言えないですが多分このアルバムはは、落ち着いて聞けてかつ面白い演奏も聞ける部類だと思いますので、お気に入りの棚にこれも入れときます🎶
あと忘れないうちにメモっとくと重要人物の一人、プロデューサーの Orrin Keepnews は、1953年に Riverside Record を設立しほとんどのアルバムにプロデューサーとして関わっていた人物で、 Riverside Record では Thelonious Monk, Cannonball Adderley, Nat Adderley, Montgomery, Johnny Griffin, Jimmy Heath などと契約し、順風満帆であったが、財政面を管理していた Bill Grauer が1963年に心臓発作で急死。リバーサイドも1964年夏に倒産。1966年に Milestone Records を設立しています。
piano : Bill Evans
bass : Scott La Faro
drums : Paul Motian
producer, liner Notes : Orrin Keepnews
recorded at Bell Sound Studios
recorded in New York City on February 2, 1961.
1. Israel / John Carisi
2. Haunted Heart / Schwartz & Dietz
3. Beautiful Love (Take 2) / Egbert Van Alstyne, Haven Gillespie, Victor Young, Wayne King
4. Elsa /Earl Zindars
5. Nardis / Miles Davis
6. How Deep Is The Ocean? / Irving Berlin
7. I Wish I Knew / Harry Warren, Mack Gordon
8. Sweet And Lovely / Gus Arnheim, Harry Tobias, Jules Lemare
9. Beautiful Love (Take 1) / Egbert Van Alstyne, Haven Gillespie, Victor Young, Wayne King
10. The Boy Next Door / Hugh Martin, Ralph Blane
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